素敵な夢になりますように…
go on 9
Name change
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リヴァイ達が旧調査兵団本部へ行ってから4日が経ち、NAMEは主のいない執務室で事務仕事に精を出していた。
「うーん。…今日の仕事も終わり…でいいのかな」
ふと時計を見れば、まだ針は13時に差し掛かるところだ。
4日も朝からずっと一人だと集中力も上がるようで、1週間分の仕事はどんどん無くなっていく。
…これ以上やると残りの日数何もしなくていい感じだしなぁ…。
夏休みの宿題は、最初にまとめて9割ほどやってしまい、残りはちょこちょことやっていくタイプだったNAMEは、ここでもその真面目さを発揮していた。
ーリヴァイさんには、終わり次第休みにしていいとは言われたけど…。うーん。。
そんなことを思いながら、NAMEは一旦お茶にしよう!と思い立ち、自室へと戻った。
先日、街で買ってきた紅茶は、ハンジとモブリットの他に、エルヴィンとミケにも渡した。4人とも、NAMEがここにいる為に尽力してくれたメンバーだ。
ずっと何かお礼をしなければと思っていたのと、皆それぞれに喜んでくれたのでNAMEも嬉しくなった。
ただ、リヴァイの為に買った紅茶とクッキーは渡すことが出来なかった。
4人に買った物と種類こそ違えど、その気持ちは同じ筈なのに、なぜかリヴァイに買った物だけ特別な理由があるような気がしてならなかったのだ。
結局、その茶葉は包装紙に包まれたままNAMEの部屋にポツンと置かれていた。
…サッと渡せばよかったのに。いつもありがとうございます、って…。何も疚しいことはないじゃない…。
「…はぁ、何やってんだろう」
そう一人ゴチて、そうだ、散歩でもして気を紛らわせよう!
と、そんな考えに至り出掛ける準備を始めたその時、不意にノック音が部屋に響き、NAMEは、珍しい来客に慌てて扉を開けた。
「やあNAME!こっちにいたんだね」
「ハンジさん!、とモブリットさんも!」
「隣のリヴァイの執務室に行ったら返事がなかったからさ、こっちかなって思ったら当たりだ。なに?休憩中?」
「あ、いえ。今日の仕事はもう片付いてしまったので、散歩でもしてこようかと思って。…て、ハンジさん、昨日から旧本部に滞在じゃ…?」
もうこの本部にはいないと思っていた人物の訪問に、NAMEの頭には?が浮かんでいる。二人を招き入れてソファへ誘導したNAMEは、自分に淹れていた紅茶を二人にも出した。
「そうだったんだけどさー、リヴァイの小言がうるさくって。彼ら4日も前から向こうに行ってるのに、ずっと掃除してるんだよ。まあ確かに、ずっと使ってなかったからかなり廃墟化はしてるんだけどさあ。とまぁそんなわけで、ずっと掃除でこき使われた所為でエレンが相当疲労溜まっちゃって実験が全然進まないんだ。まいったよ!」
NAMEはその話を聞いて思わず笑った。とてもリヴァイらしいエピソードだな、と思ったのだ。
「もう、笑い事じゃないよ」
「あはは、ごめんなさい。それで、ハンジさんとモブリットさんは一旦引き上げてきたんですね?」
「んー、まあそれもあるっちゃあるんだけど、」
意味深に笑うハンジを見てNAMEは首を傾げるが、続くハンジの言葉にさらに頭を横に擡げた。
「NAMEを呼びに来たんだ!」
「?私をですか?」
「いつも思ってたんだけどさ、リヴァイって、NAMEがいた方が機嫌が良いんだよね!」
「…え、そ、そうでしょうか???」
「そうなんだよ。なーんか違うんだよね、NAMEといる時だけ。ね?モブリットもそう思うだろ?」
「そうですね、確かに兵長、NAMEが来てから穏やかになった気がします」
全く同意できないハンジとモブリットのその会話に、NAMEは困惑しつつもどこか嬉しくなるような気持になった。
「だからさ!NAMEから直接言ってくれないかな?エレンの実験を効率化する為に、彼に厳しくするのはやめてくれ!って」
「ええ!?」
しかし、そのとんでもないお願いに嬉しさは吹っ飛び、思わず声が大きくなってしまう。
「む、無理ですよ!私からそんなこと言えるわけないじゃないですか」
「大丈夫だって!NAMEならリヴァイもきっと怒らないしさ!」
「い、いや、さすがに全然関係ない私がそんな口出しなんてしたら怒られますよ!…ていうか、リヴァイさん、私にだって普段から怒りますし…」
「大丈夫大丈夫!!」
何が大丈夫なんだ、とNAMEはさすがにげんなりした。
「さすがにこのままだと、どんどん実験が遅れて何も成果が出ないまま壁外調査、なんて最悪のケースになりかねない」
「…」
「私らが言っても、体力のないエレンが悪いと言って取り合ってくれないんだよー。エレンも、自分が悪いって思い込んで余計プレッシャー感じて力が発揮出来なくて悪循環なんだ。その点、NAMEならエレンとも仲良いだろ?鬼のようなリヴァイや精鋭と言われるエルド達といるよりもエレンの癒しになるだろうし、一石二鳥って感じじゃん!?」
確かにエレンとはジャン達と仲良くなってからよく話すようになり、弟のように可愛いがるようになった。エレンも、NAMEを姉のように慕っている。
このまま実験がうまくいかずに壁外調査へ行けば、予想以上に被害が増えてしまう可能性もあり、それは、壁外へ行くことのないNAMEでさえ避けたいと思う。
だが、自分が行ったところでそれが解決出来るのかは甚だ疑問だった。
でも…、と渋るNAMEに、ハンジはもう一押しだ、とさらに言葉を続けた。
「あとはね!NAMEに巨人も見せてあげようと思ったんだ!!」
「…巨人、ですか?」
エレンが巨人化出来るからだろうか、と考えを巡らせていると、想像の斜め上の答えが返ってきた。
「実はね、今2体の巨人を捕獲してるんだ!」
「え…」
「ぶ、分隊長!ソニーとビーンをNAMEに見せるつもりですか!?」
「そうさ!!大丈夫だって。私がついてるから危険はないよ」
「そ、そういうことではなく!NAMEに見せるのは少々刺激が」
「NAMEも見てみたいって言ってたろう?」
確かに言った。壁外調査の報告書を作ってる時にその被害の多さを見て、巨人という存在がどれほど脅威なのかというのも書面上では分かった。だが、それだけだ。本物を見たことのない自分には、その脅威なんて想像でしかない。
巨人に仲間や家族を殺された人の気持ちすら、表面上の同情しか出来ないのだ。
勿論、巨人を見たからといって、被害者の気持ちを理解するなんてことは到底出来ないだろうが、それでも、同じ調査兵団の一員として何も知らないよりは、仲間たちが何と戦っているのかは知りたいと思ったのだ。
「…分かりました。行きます」
「NAME!?」
「ははっ!そうこなくっちゃ!じゃあ早速だけど準備して!」
「えっ、今からですか!?」
「もちろん!善は急げって言うだろ?何日でも居れるように準備しといてね!私はエルヴィンに許可をもらってくるから!」
そう言い残し、ハンジは早々に部屋を出ていった。
残されたNAMEに、モブリットが心配そうに声を掛ける。
「NAME、無理しなくていいんだよ?」
「…いえ。私が巨人を見てみたいと言ったのは本心ですし、かといって壁外調査に同行なんて足手纏いになることは出来ません…。だから、いい機会かなって。それに、少しでも私が力になれることがあるならやりたいんです。そしたら、ここへ来た意味がありますから」
「まぁ、リヴァイさんに意見を言えるかは別ですが…」と言って笑うNAMEを見て、モブリットは、たくましくなったな、と心の中で思い、微笑んだ。
「じゃあ10分後にまた迎えにくるよ」
「はいっ、準備しておきます!」
モブリットが部屋から出ていくのを見送ると、NAMEは着替えなどの準備を始めた。
…何日も居れるようにって言ってたし…向こうでも出来そうな仕事は持っていこうかな。
あ、そうだ…これも一応持っていこう。
NAMEは、ちょっとした小旅行並みの荷物をバッグに詰め、迎えにきたモブリットと一緒に厩舎へと向かった。
「あの…やっぱり、私が行ったらお邪魔じゃないでしょうか…?」
ハンジの馬に乗せてもらいながら、エルヴィンの許可がもらえたとはいえやはり不安になるNAMEは呟くように問いかけた。
「なんでさ。行っちゃダメな理由はないだろう?それに、業務の進捗だとかの報告も兼ねてってことにすればいいんじゃない?」
ハンジのその答えに、確かにそれも一理あるな。と自分を納得させた。それに、リヴァイに4日ぶりに会えるというのが、少し嬉しくもあった。たかが4日だが、今まで毎日顔を合わせていた為、なんとなく寂しさを感じていたのだ。
だが、やはりリヴァイは自分がそこへ来ることは嫌がるのではないか、とも考えていた。何故なら、自分が任されているのは事務仕事の補佐なだけで、リヴァイ自身の補佐ではない。ハンジに頼まれたからと言っても、自分が任されていない仕事にまで踏み込むのは逆に迷惑を掛けてしまうのではないか。とそう感じていた。
しかも先日、兵士達に調子に乗るなと釘を刺されたばかりだ。まさに今、自分は調子に乗って力量以上の仕事を勝手に行おうとしているのではないか…。そんな不安がぐるぐると頭の中を回っていた。
「さあ!見えてきたよ」
しばらく馬を走らせていると、NAMEの目にお城のような建物が見えてきた。
「わ…素敵ですね…!あれが旧本部なんですか?」
「そう!でも、あそこへ行く前にまずは先に巨人のとこに連れてくね。リヴァイに言うとどやされそうだからさ」
その言葉の本意は分からなかったが、やっぱり自分が行くのは場違いなんじゃないかと不安になるNAME。そして、また別の意味で不安そうな表情を浮かべるモブリット。
その二人の気持ちに全く気付かないハンジは、とてもウキウキした表情で馬を走らせた。
「さぁ、この先だ!」
ハンジの後について歩くNAMEの隣を、モブリットが声を掛けながら歩いた。
「NAME、怖くなったらすぐ戻っていいから」
「だ、大丈夫です…!…も、もう、モブリットさん、あんまり怖がらせないでください」
「そうだぞモブリット!ソニーとビーン、可愛いじゃないか!!」
「その感覚を持ってるのはあなただけです!」
そんなやり取りをしていると、向かう先からおどろおどろしい叫び声が聞こえてくる。
NAMEはその、声なのか騒音なのか分からないものに、ビク、と身体を震わせた。
「あぁ、そういえば今日は、昨日に引き続き痛覚のテストをするって言っておいたから先に始めてるのかもしれないな」
そんなハンジの言葉は、NAMEの耳には届いていなかったのかもしれない。
バクバクと大きくなる心臓に手を当て、NAMEはついに巨人と対面した。
「オオォオォオオッッッ!!!!!!」
「ひっ…!!!!!」
NAMEは、思わず傍にいたモブリットにしがみついた。
そこには、何人もいる兵士達に囲まれ、磔にされた状態で身体を槍で刺されている巨人が2体、身体の中から響くような叫び声を上げていた。
―こ、これが巨人…!!こ、怖い…。なんで、こんな痛いことされてるのに、笑ってるの…?なんで…なんでこんなものが、この世にいるの…?
「-っ、…NAMEっ!」
―ハッ「…っ?」
「…大丈夫かい?」
呆然としていたNAMEが気が付くと、モブリットが震えるNAMEの肩をしっかりと支えて心配そうな顔で覗き込んでいた。
「あ…は、はい、すみませ…そ、想像以上に、その、不気味で…」
そう、やっとの思いで答えれば、「無理もないよ。初めて見る時は誰だってそうだ」とモブリットが優しく伝えた。NAMEは、さっきよりも大きく脈打つ心臓を落ち着かせるようにゆっくり呼吸を繰り返しながら、巨人に槍を刺す兵士に槍を抜くよう指示するハンジに目を移した。
…ハンジさん、ほんとに怖くないんだ…。なんで、あんなに楽しそう、なの…?
周りにいる兵士達は、皆不安そうだったり、憎しみを向けているような表情を浮かべているのに対し、ハンジだけは巨人に対し、友達のように接していた。それが、NAMEにとっては本当に奇妙で仕方がなかった。
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