素敵な夢になりますように…
go on 8
Name change
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「お前にはその間、ここで通常の業務を引き続き進めてもらう。サインが必要なものだけ置いておけ。…ハンジやモブリットも俺達の方へ来ることが多くなる。しばらく一人で仕事させちまうが…。悪いな」
「は、い…。了解、しました」
「…どうした。いつもの覇気がねぇな。…不安か?」
…なんだろう。私、何にこんなに悲しくなってるんだろう…。
1週間一人で仕事するのが不安なの?…何考えてんの…リヴァイさんがいなくたってちゃんと一人前にならないと。リヴァイさんに頼ってばっかじゃダメ。さっきの人達にも、ちゃんと認めてもらえるようにならなきゃ…
何も答えないNAMEを、リヴァイは眉根を寄せて伺い見る。
すると、しばらく無言だったNAMEがゆっくりと口を開いた。
「通常の業務は私に任せてください。リヴァイさんはこちらのことは気にせず、エレン達と実験頑張ってくださいね」
いつも通りの笑顔を浮かべるNAMEに安心したリヴァイは、ふと、彼女の手を見て声を荒げた。
「おいっ」
―びくっ!「はっはいっ?」
NAMEが肩を震わせ目を見開いていると、デスクに座っていたはずのリヴァイが目の前まで歩み寄り、NAMEの右手をがしりと掴んだ。
「痛っ…」
「どうした、この傷」
―しまった…そのまま戻ってきちゃったんだった…
掌と手首の部分に擦りむいた痕があり、そこから血も少し滲んでいる。リヴァイの射抜くような三白眼に見つめられ、NAMEは目を泳がせたあと、とってつけたような笑顔を作って声を出した。
「これは、その、さっき、廊下で転んでしまって…」
リヴァイはその理由を聞くと、呆れたように大きく溜息を漏らした。
「本当にどんくさい奴だな、てめぇは」
「あは…そう思います…。」
「来い」
リヴァイはNAMEの怪我をしていない上腕部分に手を掴み直すと、ぐいと引っ張って洗面台へと歩き出した。そのままNAMEの傷へ水を流していく。
「っ…」
「我慢しろ」
大した傷ではないにしろ、やはり沁みる。普段粗暴なリヴァイだが、その優しい手つきで自分の手をタオルで拭う様子を、NAMEは涙目になりながらぼーっと見ていた。
「…。これくらいで泣くんじゃねぇよ」
「っ…あ、//////こ、これは泣いてるわけではなくて生理的に…!////」
そう反論しながら真っ赤になって慌てるNAMEの頬に、リヴァイがそっと手を添える。
その突然の行為に、NAMEはギシ、と身体が硬直した。
リヴァイは手を頬に添えたまま、親指をス、とその肌の上を滑らせる。鋭い瞳はNAMEの大きく開かれた瞳を捉えて離さない。NAMEは、息をすることも忘れてただただ固まっていた。
しかし次の瞬間、リヴァイがフ、と優しく微笑んだのを見てNAMEの心臓はドックンと大きく脈を打った。
「…ガキ」
「・・・・・・・・え」
一言、リヴァイは言葉を発すると、スッと身体を反転させてデスクへと戻っていった。NAMEはその瞬間にボッと赤面してワナワナと震え出した。
「がっガキではありませんっ////////」
「ハッ。どーだかな。…そんなことより、痛むようなら医務室行って包帯でも巻いてもらえ」
「…だ、大丈夫ですよ…。ご心配、お掛けしてすみません。…ありがとうございます」
まだ不服そうにムス、としているような顔のNAMEに、リヴァイは、だからガキだっつうんだよ。と思いながらまた笑いが込み上げてくる。
「飯を食ってくる。てめぇは午後の仕事にとっとと取り掛かれ」
そう言って扉へ向かえば、背後から「はぁい」と気の抜けたような返事が聞こえてくる。リヴァイはくっ、と喉を鳴らして部屋を出た。
―なによ、もうっリヴァイさんったら人の事バカにして…/////
…。
でも、…不思議だな。…さっきまで暗かった気持ちがちょっと晴れたみたい…。
主のいなくなった部屋のソファに腰掛けると、NAMEはふぅ、と息を吐いた。
「さっ!仕事仕事!」
両手でパン、と頬を叩いて気合を入れたNAMEは、目の前の書類に手を伸ばした。
・-・-・-・-・-
翌日、久しぶりに休みをもらったNAMEは、旧調査兵団本部に1週間滞在する為の生活用品を買い出しするペトラ達に付き添い、街に繰り出していた。
「まさか1週間もだなんてね」
「大変だね。…その旧調査兵団本部って、遠いの?」
「まあな。しかもかなり奥まった森の中にあるんだ。買い出しはしっかりしとかねぇと不便で仕方ねぇ」
「悪いなNAME、休みなのに買い出しに付き合わせて」
「いえ。暇だったので気にしないでください!街にも久々に来れて嬉しいですし」
「お前も買いたいものがあれば適当に店入ってこいよ?」
「はいっそうします!」
ペトラ、オルオ、エルド、グンタと共に、ある程度買い出しが終わったところでランチをしにカフェに来ていたNAMEは、窓の外に広がる賑わう街を楽しそうに眺めた。ここへ来るのは、ハンジ達と来たあの日以来だ。
あの時と違うのは、ちゃんと自分の働いたお金で買い物が出来ることだけだが、それはNAMEにとって大きな違いだった。
―今日は紅茶やお菓子を買って、ハンジさんやモブリットさんにあの時のお礼をしなくちゃ…。…それに、リヴァイさんにも…。喜んでくれるかな…。
そう頭で考えていると、無意識に頬が緩んでいたらしい。オルオが目ざとく気付いて茶化した。
「なんだぁNAME、ニヤニヤしやがって。気持ち悪ぃ」
「えっ、ニヤニヤしてた!?/////」
「ねぇ、オルオ。その喋り方も兵長のマネしてるの?ほんっとに不快」
二人のそんないつも通りのやり取りにNAMEはクスクスと笑った。
ランチを済ませ、食後のデザートや飲み物をそれぞれが堪能している間、メンバーは残りの買い出しリストの確認を始めた。
「あとは掃除道具か…」
グンタのその単語に、NAMEはピクリと反応した。
絶対、リヴァイさんが指示したものだ、と確信できたから。
「これはちゃんと揃えないとだな」
「安っぽいもの買ってったらどやされるぞ」
みんなが誰を想像してるのかが分かってNAMEはクスクスと笑う。NAME自身、掃除に関しては毎日厳しく言われてきていたのだ。
そして、リヴァイさんが一番信頼しているのは雑巾だよ、とアドバイスしようとした瞬間だった。
「雑巾は多めに買っとかないと!兵長の一番は雑巾だから、それがないと不機嫌になるもの」
ペトラのその言葉に、NAMEは途端にカァと顔が熱くなった。
―わ、私、今何を言おうとしてたの…?たかが1ヶ月一緒にいたからって、誰に対してアドバイスなんて偉そうなこと考えてたんだろう…!//////ここにいる人達は、もっと前から、ずっとリヴァイさんと一緒に過ごしてきてるのに…
そう羞恥心で顔を伏せていると、横からエルドとオルオが口を挟んだ。
「え?兵長はハタキだろ?」
「ちっげぇよ!兵長は箒だ!」
「あらー!まだまだねあなた達。兵長が一番信頼してるのは雑巾なんですー!兵長本人から聞いたんだから」
フフン、と勝ち誇ったような顔を向けるペトラに、「クソ!」と悔しそうに吐き捨てるオルオ。いつもなら、NAMEがここでまたクスリと笑う場面なのだが、彼女はペトラの話を聞き、ズキリ、と前にもあった胸の痛みを感じていた。
それは本人にしか分からない些細なことで、他の4人はNAMEの異変に全く気付く者はいなかった。
NAMEだけが知ってると思ってたことを皆が知っていたと思った時は恥ずかしい気持ちだったのだが、それはペトラだけだったと知った瞬間、NAMEの中にモヤモヤとした気持ちの悪い感覚が身体の中を支配した。
「あの…へ、変な事聞いてもいいですか?」
「?どうした?」
トイレに行く、というペトラを見送ったあと、NAMEは残った3人にある質問を投げ掛けた。
「あの…、リヴァイさんとペトラって、付き合ってたり、するんですか…?」
恐る恐る聞いた質問に、3人は一瞬キョトンとし、エルドとグンタは互いを見てにこやかに笑い、オルオに関してはプルプルと震え「なんでそんなこと聞いてくんだ!」と語気を強めている。
「あ、ごめん…ちょっと、噂を聞いて。…本当のところどうなのかなぁ、って…」
NAMEが申し訳なさそうにそう言えば、エルドから順に口を開いていった。
「んー、付き合ってはいないだろうけど、ペトラは間違いなく兵長に惚れてるからな」
「まぁ、兵長の方もペトラのこと、満更でもないんじゃないか?訓練の時もよく気に掛けてるしな」
「フン、それはアイツが人一倍抜けてるとこがあるからだろ!?」
「ハハ、オルオ、妬くな妬くな」
「別に妬いてんじゃねぇ!」
「NAMEも、ペトラのこと応援してやってくれよ。きっと女性同士の方が何かと相談しやすいだろうしな」
その後、カフェを出たNAMEは、掃除用具を買いにいく4人と別れ、以前訪れた紅茶の専門店へとトボトボと向かっていた。
…さっき、応援してとエルドさんから言われた時、私はちゃんと笑えていたのだろうか…。
自分の中で何とも言えない感情が蠢いている気がして、NAMEは不快感に顔を顰めた。
…ああ、もう、やだな…。昨日、オーサさん達に囲まれてから浮き沈みが激しい…。
しっかりしなきゃ。明日からしばらく一人なんだから!
…それに…リヴァイさんとペトラ…。
NAMEは、その二人の姿を頭に思い浮かべた。
ペトラの気持ちにはなんとなく気付いていた。それは、彼女の行動や仕草から、どことなく滲み出てしまうようなものなので確証はないし、彼女もそのことについて一切触れようともしないので話したこともない。だが、エルド達が言うのだ。きっと間違いないのだろう。
リヴァイに関しても、一緒に仕事をしているとペトラの名前がよく上がることは知っていた。勿論、それは訓練や業務についてのことではあるのだが。
二人でよく一緒にいるのも見かけた。訓練の時だったり、昼食の時だったり、執務室へ報告書を届けにきた時だったり。
ペトラは明るくてよく気が利き、神経質なリヴァイも、彼女といる時は眉間の皺も少ないように見えた。
―お似合い、だなぁ…。
二人の姿を思い浮かべていたNAMEは、違和感のないその姿にそう思った。
その瞬間、またズキリと胸が痛む。
「おや?この前の調査兵の新人さんじゃないか」
「!」
ぼーっと考え事をしている間に、目的の店に辿り着いていたNAMEは店主の声にハッと我に返った。
「あ、お、お久しぶりです」
「今日は一人なのかい?」
店主の笑顔に、NAMEはほっとしながら同じように笑顔で答えた。
「はい。今日はこの前一緒に来てくれた方にお土産を買っていこうと思って」
「そうかい。気になるものがあれば言ってくれよ」
「あ、実はもう決めてるんです!」
「はっはっ!早いな。どれだい?」
NAMEは前回買った茶葉を4セットとリヴァイが好きだといっていた茶葉、そして前回来た時に見つけた紅茶のクッキーを購入した。
「お、来た来た」
「NAME~!」
「お待たせしました!」
待ち合わせをしていたペトラ達と合流し、NAMEは馬車へと乗り込んだ。
「何買ってきたの??」
「あ、…えっと、…ハンジさん達にお土産を!前回買い出しを手伝ってくれたから」
そっか!と笑顔を向けてくるペトラに、NAMEは少し後ろめたさを感じた。なんとなく、リヴァイの為に買った紅茶とクッキーのことは言えなかった。
「そ、掃除道具は買えた?」
「うん!バッチリ!」
話題を変えるべくそう問いかければ、ペトラは満足気に笑った。そして、他の3人も加わり、明日はきっと大掃除から始まるな、とわいわいと盛り上がるのを見てNAMEはまたほ、と安堵の息をバレないように漏らすのであった。
to be continued...
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