素敵な夢になりますように…
go on 8
Name change
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NAMEが調査兵団に所属してから1ヶ月が経過するという頃…。
NAMEは仕事にも大分慣れ、事務仕事に関しては文句のつけようのないほどの優秀さを発揮していた。自分では分からなかったが、周りから幾度となく賞賛される為、実は自分には意外と事務仕事が向いているのかなと新しい才能に喜びを感じていた。
そしてさらに嬉しいのは、兵士達とかなり打ち解けるようになったことだ。
ペトラ達リヴァイ班のメンバーや、ジャン達新兵からのNAMEの評価が高いことから、他の兵士にも伝播して友好的に接してくれる兵士達が増えたのだ。
そして、リヴァイとも良好な関係が続いている。
仕事のあった日は夕食後にリヴァイの部屋で紅茶を飲むことが習慣になっていて、既にリヴァイのイメージは良い方に変わってはいたが、この1ヶ月でさらにリヴァイの人間性が分かってきた気がした。
冷たい物言いや厳しさは、現実的だからこその正論だし、部下想いで人望が厚いことも分かった。不器用ながらも優しさを持っていることも。
そんな彼だからこそなのだろうが、異常にモテる、ということも分かった。
この1ヶ月の間にも、リヴァイに告白しては振られた、という話を何度耳にしただろうか。そして、そんなリヴァイに好意を持っている女性達に、自分がどう映っているのだろうか。きっと、目障りだと思う人が殆どなのではないだろうか。と考えるようになった。
それは、今もまさに、実感している最中だ。
「調子に乗らないでよね」
「…の、乗って、ないです…」
NAMEは今、人気の少ない本部の廊下で、3人の女兵士に壁を背にして囲まれていた。彼女達は、オーサとラッツとヤーニャ。3人とも班長にこそ抜擢はされていないものの、調査兵としてはそこそこの歴がある兵士だ。
「…なんで、あなたみたいな兵士でもなんでもない、ただの一般人が兵長の補佐になんてなれるのよ」
「それは…」
「いいわよね、あなたは命を懸けることもなく、ただ兵長の傍にいられるんだから」
「…」
「結局はただの雑用係でしょ?そんな誰でも出来る仕事のくせに出しゃばっていい気になって。随分ご立派ですこと」
「で、出しゃばってるつもりは…」
バシバシと浴びせられる中傷に、NAMEも中々強気には出れなかった。彼女達の言う通り、命を懸ける兵士とは違い、安全な場所でのうのうと過ごしてる自分が疎まれるのは当然だと思った。
しかし、次にオーサから紡ぎ出される言葉にはNAMEも黙ってはいられなかった。
「美人だからか知らないけど、あなた、男ばかり手懐けてるらしいわね」
「は…?」
「何それ…厭らしい…」
「そんな汚いやり口で調査兵団を汚さないでよ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「モブリットさんに親戚っていうことを利用して取り入って、さらには団長のことも色目を使って無理矢理ここに入り込んだらしいじゃない」
「最っっ低…!!!」
「私そんなことしてません…!それに、モブリットさんも団長もそんな方じゃないです!!誤解です!!」
「はっ!誤解?よく言うわ。私、この目で見てるんだから。あなたが、男性兵士と資料室で抱き合ってるのをね!!」
「え」
「なに、それ。信じられない!」
NAMEは必死に頭を巡らせた。思い当たるのはジャンとの出来事だった。しかし、あれは落ちてくる本からジャンが守ってくれただけで、抱き合ってなどいない。脚色もいいとこだ。
NAMEがそれに反論しようとすると、オーサはさらに続けた。
「しかも、あなた、毎晩兵長の部屋に行ってるでしょう」
「っ!?」
「ちょ、ちょっと…それどういうことよ…!」
「私、夜遅くに兵長の部屋からあなたが出てくるの何度も見てるんだから!!!」
毎晩、というのも夜遅く、というのももちろん誇張された表現だったが、否定できないのも確かであった。夜遅かったのは初日だけで、あとは21時には部屋に戻っている。しかもそれは、ただの食後のティータイムなだけであって男女の仲を深めるものでは決してない。
しかし、もはやそんなことを言っても火に油を注ぐだけだと、興奮しきっている彼女達の目を見れば一目瞭然だった。
「これ以上その汚い体で兵長に近付かないで!!」
「いたっ…」
NAMEはオーサに胸倉を掴まれ引き寄せられると、そのまま後ろへ突き飛ばされた。その勢いでNAMEは背中を壁に打ち付け、痛みに顔を歪める。
「…それに知ってるの?兵長にはペトラさんがいるってこと」
「……え?」
まだ続く彼女の言葉に、NAMEは初めて思考が止まった。
「なんだ、知らなかったんだ?フフフ…兵長が誰の告白も受け付けないのはね、ペトラさんがいるからよ。あの二人は公にしないけどお互い想い合ってるの」
その言葉に、NAMEはズキリと胸が痛むのを感じた。
―なに…?この、感覚…胸が、締め付けられるみたいな…
「つまり、あなたの出番はないってことよ。ビッチなアバズレ女はね!!」
「っ!」
そう言い放つと、彼女はNAMEの身体をまた突き飛ばし、その身体は床になだれ込んだ。
言われた言葉の所為か、突き飛ばされた痛みの所為かは彼女達には分からなかったが、少なくともダメージを受けているように見えるその姿に、クスクスと嫌味な笑いを漏らす。
するとその時、呑気な声が廊下に響いた。
「あっれー?ねぇ君達、そんなとこで何してるのー?もう昼休憩は終わりだよー」
「やば、ハンジ分隊長だ」
「行くよ!!」
バタバタと逃げていくオーサ達に、通りがかったハンジとモブリットは首を傾げたが、その視線の先に誰かがまだいるのに気が付き、二人はゆっくりと近付いていく。
「!NAMEっ」
「え、NAME?なに?どうしたの?そんなとこに座り込んで…」
「あ、ハンジさん、モブリットさん!お、お疲れ様です」
「お、お疲れって。何かあったの?…まさか、さっきの子達に何か…」
「こ、転んだだけです!…何も、ないとこで転んじゃって、今の方達に笑われちゃっただけです」
必死に取り繕うとするNAMEの笑顔に若干の不自然さを感じるモブリットとハンジだったが、NAMEが何も言わない以上、突っ込むことは出来なかった。
「…」
「…そ、そう、なの?…あ、手、擦りむいてるじゃないか。モブリット、医務室へ…」
「だっ大丈夫です、これくらい!洗っておけば、大したことないので!!そ、それじゃ、私仕事が残ってるので…!失礼します」
そう言ってパタパタと走り去るNAMEの後ろ姿を、ハンジとモブリットは訝しげに見つめた。
「…NAME、何かあったんじゃないですかね」
「…あったんだろうね」
「!なら分隊長!ちゃんと話を聞いてあげないと…!」
「今無理矢理聞こうとしたってはぐらかされるだけさ。…まぁ、なんとなく察しはつくけどね」
「え…分隊長には、分かるんですか?」
モブリットがそう訊ねれば、ハンジは勝ち誇ったようにフフン、と鼻を鳴らした。
「そこは、男と女の感性の違いってやつだ。モブリット、君も勉強したまえ」
ハンジのその答えに、なんとなく不服そうなモブリットだった。
「ただいま、戻りました」
「…昼飯はちゃんと食ってきたか」
執務室に戻ったNAMEは、リヴァイの顔を見るとなぜか少し安心した。
「はい!休憩、ありがとうございました。リヴァイさんもお昼行ってきてください」
「あぁ、そうする。…その前に、NAME、お前に話すことがある」
「?…なんでしょうか」
「2日後、俺と、俺の班員は旧調査兵団本部に1週間滞在することになった」
「…え、…1週間、旧、調査兵団本部、ですか…?」
エルヴィンから、NAMEの監視はある程度は必要ないだろうとの判断と、それよりもまず、次の壁外に向けて行うエレンの巨人化実験を優先すべきと命じられたリヴァイは、ペトラら班員達と対処しやすく、実験もしやすいという理由で旧調査兵団本部に行くことが先程決まったらしい。
元々、巨人化するエレンのことはハンジからしつこく聞かされていたこともあり、それについては驚きはしなかったNAMEだが、1週間もリヴァイが居ない、ということにひどく動揺していた。
それは、まだNAME自身も気付いてない気持ちなのだが、それに気付くのはもう少し先だったりする。
なので、なぜ自分がこんなに動揺しているのかNAMEにはまだ、全く分からなかった。
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