素敵な夢になりますように…
go on 6
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「す、すみません////この映画の話をするといつも力が入ってしまって…」
「趣味があることはいいことじゃねぇか。…どうせここじゃその映画とやらも観れねぇんだ。俺でよければ話くらい聞いてやる」
「え…、いい、んですか?」
「ああ。…お前の話は、悪くない」
そう言って紅茶を飲むリヴァイを見つめ、NAMEは思わずふふっと笑った。
…なんだ、…とっても良い人だ。
「…何笑ってやがる」
「いえ…なんでもないです」
「薄気味悪ぃ奴だな」と返してくるその言葉でさえ、NAMEは温かく感じた。しかし、そんなほのぼのした時間は一瞬で終わった。ふと時計に目をやると針は22時半を差していた。
「わっ!?も、もうこんな時間…!!」
NAMEはガタッと立ち上がると慌てて自分のカップを片付け始めた。
「長居してしまってごめんなさい…!訓練でお疲れなのに」
「ああ、悪かった。俺も時間を気にしてなかったな」
「リヴァイさん、飲み終わってたら片付けますよ」
「いや、まだ残ってる」
「では、明日また片付けますね。私、お風呂まだだったので行かないと…確か23時までと聞いたので」
「あ?ちょっと待て」
リヴァイは、自分の分とお湯の入ったポットをトレイに乗せて部屋を出ていこうとするNAMEを引き留めた。
「お前今から風呂に行くつもりか」
「?は、はい」
「昨日より遅ぇじゃねぇか」
「はい、ですから急いで…ってなんで昨日私がお風呂に行った時間知ってるんですか??」
「女が夜更けに、風呂上がりを一人で歩くんじゃねぇ」
NAMEの質問に答えるつもりはなさそうなリヴァイだが、すごく真っ当な話を若干怒っているかのように続ける為、NAMEも口を噤んだ。
「今後はもっと早い時間に入れ。それか誰かと行け。友達ももう出来たんだろ」
「は、はい…。明日から、…そうします。今日は、もう皆さんお休みだと思うので…」
一人で行く、と言葉を続けようとすると、リヴァイは突拍子もないことを発した。
「今日は俺の部屋のシャワーを使え」
「……え?」
決してふざけてるわけじゃなく、真剣に話すその言葉にNAMEは少し戸惑った。
「え、えっ…?こ、ここのお部屋のですか?」
「どうせ隣だ。入ったらすぐ部屋に戻れんだろ」
それはそう。確かにそうなんだが、上司の部屋でシャワーを借りるのはどうしても気が引けてしまう。
「ええっ…い、いや、でもそれはっ」
「…安心しろ。襲ったりしねぇよ。ガキに興味はねぇ」
そういうつもりで遠慮しようとしていたわけではないのだが、そこまで言われてしまうと、これ以上拒否すれば自分がそういうことを強く意識しているのではないかと思われそうで、結局NAMEはそれを承諾した。
「…で、では…お言葉に甘えて…/////」
「最初からそう言え」
NAMEは、紅茶の続きを楽しんでいるリヴァイの横を通り、着替えを準備してきますと部屋を出て隣の自分の部屋へと戻ってきた。
…なんか、変なことになっちゃったな…。なんでこんなことになったんだろう…。
着替えを準備しながら、NAMEは会話を思い返す。
…そもそも、なんで私の昨日のお風呂の時間を知ってたんだろう…。あ、ハンジさんかな…。……あ、れ?でも待って…。そういえばリヴァイさん…
『夜のは、俺しか聞こえてねぇだろ』
…私…昨日廊下のソファで歌って…それから記憶がない。
…気付いたら自分の部屋で寝てて…
・・・・・・・
っ!//////ま、まさか…昨日、廊下で寝落ちした私をリヴァイさんが運んでくれたんじゃ…。も、もしそうならリヴァイさんがちょっと怒ってたのも理解できるし…
うわわわわわ…///////私、一体何度リヴァイさんに迷惑掛ければ気が済むんだろう!で、でも聞けない…。万が一リヴァイさんじゃなかったとしたら、あんなところで寝てたのかってまた呆れられてしまう…。いや、もしそうなら既に呆れられてるんだと思うけど…
ああっもう、とにかくしっかりしよう!!これから汚名返上!名誉挽回だ!
混乱する頭を落ち着かせながら、NAMEは準備を整えて再びリヴァイの部屋へと戻っていった。
「で、では、シャワーお借りします」
「ああ、好きに使え」
先程と変わらず、ソファに腰掛け紅茶を飲むリヴァイはNAMEの方に見向きもせず返事をした。NAMEはそれをチラリと確認して脱衣所の扉をパタリと閉めた。
こうなったらパッと借りてパッと帰らなくては。
明日も朝早いし、リヴァイさんもまだ兵服だからお風呂はこれからみたいだし。早く寝かせてあげなない、と…。
・・・・・・
・・・あれ?
私、そもそもリヴァイさんの寝つきをよくする為に紅茶を提案したはずなのに…!!!
あああ…。ほんとにもう、私は何をやってるんだろう。私の所為で今日も睡眠時間を削ってるじゃない。
激しい自己嫌悪に陥りながらも、急いで服を脱いで浴室へと入る。そして手早く済ませてしまおうと思っていたNAMEだったが、共有の浴場と違い、個室のシャワーは勝手が違っていた。
浴槽はなく、固定式のシャワーと石鹸などを置く備え付けの棚があるだけのそこは、一人ではかなり余裕のある長方形の空間で、シャワーがほぼ真上に付けられている造りだ。しかし、真上といっても真ん中ではなく、シャワーがあるのを前とするなら前側に付いている。
…シャワーのコック、これ…でいいんだよね??これしかないし。お湯とか水の区別が分からないけど適温が出るのかな…?
…うーん。水が出てきたら嫌だからな。よし、捻ってすぐ後ろに下がればいいか…
きっとどこにいてもシャワーの湯はかかってしまうだろうが、なるべく最初は当たらないように、捻ったらすぐに後ろの壁際に離れよう、そう考えながら、その広めの浴室でNAMEはシャワーのコックを捻りに前に進んだ。
本当は、コックを捻る3秒ほど前、外で大きな物音が聞こえた気がしたのだが、その時のNAMEは特に気に留めていなかったのだ。
そう。捻って後ろへ下がるまでは。
―バタンッ「出すなっ!!」
「っきゃ!!?リヴァイさ…!!」
「!-っ!!」
突如浴室の扉をリヴァイが勢いよく開け放ち、それと同時にザ、と上からシャワーの湯が降り始めた。
リヴァイはそのまま浴室へ足を踏み入れると、シャワーの湯が当たらないよう壁に手をつきNAMEの上に覆い被さった。
「//////!!!???????」
「ぐっ…!」
「…リ、リヴァイ、さん…?」
あまりにも突然の出来事に、NAMEはかなりパニックだ。強引に浴室へ入ってきたリヴァイに心臓が飛び出るほど驚き、壁に背を付けたまま腰を抜かした。しかし、自分の浴びるはずだったシャワーを代わりに浴びたリヴァイの顔は苦痛の表情を浮かべている。
様子のおかしいリヴァイに近付こうと手を伸ばした瞬間、リヴァイに当たって撥ねた飛沫が自分の手の甲に当たり、それがとてつもなく熱いことに気が付いたのだ。
「熱っ…え、ちょ、リヴァイさんっこれ、熱湯じゃ…!!?早く出ないとっ」
「馬鹿、動くな!動くとかかる…!」
「っっ、リヴァイさん、私は平気ですから早く」
「っ…はぁ…大丈夫だ…。水になった」
「へ…」
浴室から出ようと急き立てるも、頑なに動こうとしないリヴァイにNAMEの不安がさらに加速するが、次第に温度が下がり、それは水へと変わった。リヴァイは目を閉じ深く息を吐いて口を開いた。
「一度出てろ。今度は真水だ。風邪引く」
「…っ、い、今タオル持ってきますから待っててください!」
NAMEはリヴァイの下から抜け出ると、身体にバスタオルを巻き、クローゼットにあるであろうタオルを探し出して再び浴室へと戻った。そこには、兵服のままシャワーを背中で浴びるリヴァイが腰を下ろし、ジャケットを脱ごうとしていた。
NAMEは慌ててリヴァイの元に駆け寄り、肩に手を置いた。
「っリヴァイさん、服、まだ脱いじゃダメです」
「…」
「火傷が酷いと、皮膚が剥がれてしまいます…!あと、15分くらいはこのままでいてください…私、医療班の方を呼んできますので」
「いい、呼ぶな。こんな時間に出歩くなと言っただろうが」
「っなに言ってるんですか!緊急なんですよ!」
「いや、ほんとに大丈夫だから呼ぶんじゃねぇ」
「でも…!」
「いいからてめぇはこのタオル被ってろ。風邪引くっつっただろ」
「-っ…リ、リヴァイさんのばかっ!」
自分が持ってきたタオルをリヴァイに奪い取られ、それをそのまま頭から肩にかかるように被せられたNAMEは、目から涙を零して怒りをぶつけた。そんなNAMEの言動に、リヴァイは目を見開く。
「お、おい…何泣いてやがる」
「っ…、泣いてるんじゃないです!怒ってるんです!」
「…(泣いてるじゃねぇか)…悪かったな、風呂の邪魔して」
「そ、そんなことに怒ってるんじゃないですっ…、なんで、こんな時までご自分じゃなくて、私の心配してるんですかっ…!わ、私なんかより、リヴァイさんの方が身体大事にしなくちゃいけないのに…」
そう言って、全く威圧を感じない目で自分を睨みつけるNAMEに、リヴァイから思わず笑みが零れた。
「はっ、それで睨みつけてるつもりか…全然怖かねぇな」
「ふ、ふざけないでくださいっ私は真剣に…」
「ああ、そうだな。心配させて悪かった。…だがほんとに大したことねぇ」
「………でも、かなり、熱かったです、よ…」
「ああ、まぁ多少は痛ぇが、んな長く浴びてねぇし水圧も弱かったからな。昔火の中走ったこともある。これくらい大したことねぇよ」
どんな経歴なんだとも思ったが、その口ぶりから、無理にやせ我慢しているわけではないことは伝わっていた。NAMEは心底ほっとしてその場にペタリとへたり込んだ。下に流れている冷たい水が肌に触れ、NAMEの身体は小さく震えた。
「おい、座るなら外で…」
「っよかった…」
「…」
「リヴァイさんがもう動けないようになってしまったら、ほんとに、どうしようかと…」
心から安心したように声を上げたNAMEは、堰を切ったように涙が溢れ出していた。
リヴァイはその姿に胸が締め付けられるような感覚になりながらも、バツが悪そうにNAMEから視線を外す。
「…来い。一度出る、本気で風邪引くぞ」
「えっ、だ、ダメですよ!もう少し冷やさないと!」
「俺が問題ねぇと言ってるだろうが!分からねぇ奴だな」
「そ、そういう人ほど信用出来ないんですよっ」
「…ハッ。イイ度胸じゃねぇか」
「あ、いや、あの、…と、とにかくもう少しここに居てくださいっ」
今度はNAMEが頑として譲らず、リヴァイもようやくこの押し問答を諦め溜め息をついた。
「チッ…あと5分だぞ。俺もさすがに寒い」
「あ、じゃあ、私は先に出ますのでこのタオル使ってくださ…」
そう、NAMEが頭に被っていたタオルを取り、リヴァイの頭に被せた時だった。
慌てて巻いていたタオルは元々しっかりと巻き付けておらず、両手を上に上げたことでさらにたわんでしまったそれは、いとも簡単に下へと落ちていった。
「あっ//////」
ハッと気づいたNAMEは慌てて両腕で身体を隠すが、いかんせん全裸だ。それは全く意味をなさない。
巻いていたタオルは床でぐっしょりと冷たくなり、リヴァイの頭に被せたものも同様に、それらをもう一度使うことは出来なくなっていた。
さっき突入した時にもNAMEの裸体はリヴァイの目に入っていたのだが、その時はそれどころではなかった。しかし、今はその美しい身体がしっかりと視界におさまってしまっている。
リヴァイは一瞬、ほんとに一瞬だけ、全ての筋肉がギシ、と音を立てて固まった気がした。そして、すぐさま煩悩を振り払い、問答無用というようにNAMEの手首を掴んだ。
「やっぱり出るぞ」
「ーっ…」
今度ばかりは何も言えず、NAMEは自分の手を引き、びしょ濡れのまま寝室へと向かうリヴァイの背中を見つめて顔を伏せた。
寝室に入ると、リヴァイは手を離してクローゼットから新しいタオルを取り出しNAMEに放り投げ、自分の下で大きくなる水溜まりに不快感を覚えつつ冷えた頭のお陰で冷静になってきていた。
「…これを着て待ってろ。俺も着替えてくる。…これじゃあ話もできねぇ」
長袖のTシャツと兵団のマントをベッドに置いたリヴァイは、NAMEを見ずにまた浴室へと戻っていった。NAMEはその背中を見送ると、今まで息を止めていたかのように大きく吐き出した。
…せっかく、リヴァイさんと仲良くなれたと思って良い日だな、なんて思ってたのに…
結局多大な迷惑を掛けてしまうなんて。…何が補佐官…
NAMEが信じられないくらい落ち込んでいる一方で、浴室では同じように息を吐くリヴァイが、片手を首の後ろへ回し、ガックリと項垂れながら未だ流れ落ちるシャワーの水の下でしゃがみ込んでいた。
…クソッ…迂闊だった。
完全に俺の失態だ…。
「チッ…らしくねぇ」
そう小さく吐き捨てると、濡れて重たくなった兵服を乱暴に脱ぎ捨てた。