素敵な夢になりますように…
go on 6
Name change
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食堂に来たNAMEは、入った瞬間集まる視線に身体を強張らせた。
兵士達は、特殊な配属となったNAMEが珍しく、好奇の目を向ける。
なんとなく居心地の悪さを感じたNAMEは、時間をもう少しずらせばよかったなと思い踵を返した。すると、同じく食堂へやってきた兵士の一人と目が合った。
……あれ?
「あ…」
「あっ!」
「…ああっ!あの時の…もがっ!!?」
見覚えのある顔にNAMEが立ち止まっていると、目が合っていた兵士が先に声を漏らした。その瞬間に記憶が蘇ったNAMEは声を上げ、さらにはそれに気が付いたもう一人の坊主の兵士が声を荒げた。NAMEがまずい!と思ってその兵士の口を塞ごうと走り寄ると、それよりも早く隣の目が合っていた兵士が、その坊主の兵士の口を塞いだ。
「コニー!!おい、ちょっと外行こうぜ!」
「?ジャンどうしたの?コニーと何かするの?」
「お、おう!ちょっとな!!なっコニー?」
「もがが!」
「もうお腹ぺっこぺこなんで先に食べてますよー?」
口を塞いだ兵士は、NAMEに目配せをしながらそう坊主の兵士に声を掛けた。
NAMEは、きっと外で話そうと言っているのだろうと理解し、周りの兵士達に何か言い訳をしている横を通り過ぎて中庭へと向かった。
「この前は、大変申し訳ありませんでした!!!!」
中庭で待っていると先程の兵士二人が走ってやってきて、NAMEの前に立つなり勢いよく頭を下げて謝罪した。
「い、いえ!そんな、…こちらこそごめんね、見たくもないもの見せちゃって…」
そう頬を指でかきながら、NAMEは恥ずかしそうに微笑んだ。
そう、彼らは先日、医療棟でNAMEの着替えの場に遭遇してしまった兵士だった。
彼らは逆に謝るNAMEに対して、思い切り首を横に振った。
「あの、NAME、さんっすよね。今朝、エルヴィン団長から紹介されたのを見て思い出して。…ほんとはすぐ謝りに行きたかったんすけど、リヴァイ兵長の部屋には新兵の俺らはちょっと近寄りがたくて…すみませんでした」
「ううん!そんな、気にしないで!なんか、ごめんね、気を遣わせちゃって。私ほんとに気にしてないから」
「…俺ら、兵長の補佐官に…なあ?」
「ああ…普通に懲罰受けなきゃならねぇことしましたし」
やけに重い話になってしまってることにNAMEは慌てた。
「えっ、やだ!あれくらいで罰なんて受けないで!事故だったんだし!…これからはちゃんと注意してくれればいいだけだから」
「けど…」
「大丈夫!私がいいって言ってるんだもん。誰も罰しないよ。…その代わり、お願い聞いてもらってもいい?」
にっこりと微笑んでいたかと思うと、今度は困ったように小首を傾げるNAMEの姿に、二人の胸はドキリと高鳴った。
「も、もちろん聞きます!」
「なんでも言ってください!!」
バッと敬礼をし出す二人に、NAMEは思わず声を上げて笑った。そんな、今度は無邪気な顔を見せるNAMEにまたも二人はボーっと見惚れていた。
「私と友達になってくれる?」
「「…は?」」
NAMEのお願いとは、気が抜けるほど簡単なものであった。
「そ、そんなことでいいんすか?」
「もっと、こき使っていいんすけど…」
「…私、ここに来て日が浅くて。友達もさっき二人出来たとこなの。今も食堂行っても一人じゃ食べづらくて…。今日、一緒に食べてもいいかな」
「っ…も、もちろんです!!俺、ジャンです!ジャン・キルシュタイン」
「お、俺はコニー!コニー・スプリンガーです!!」
「ジャンとコニー…。うん、覚えた!じゃあ、お友達よろしく!!」
こうして、NAMEはジャンとコニーと一緒に食堂へ戻り、さっき一緒にいたアルミンとサシャ、そしてあとから合流したエレンとミカサとも仲良くなり、食事を共にした。
・-・-・-・-・-・-・-・-
―新しく出来た友達との会話につい夢中になっちゃった…。
時間決めてなかったけど…入ってもいい、かな…
時刻は21時になる頃…。
NAMEはリヴァイの部屋の前で紅茶のセットの乗ったトレイを持ち、ノックをするのに1分程悩んでいた。
すると、急に中から扉が開き、目の前に顔を顰めたリヴァイが現れた。
「…いつまでそうしてる気だ。入るなら入れ」
「き、気付いてらっしゃったんですか?」
「気配でな」
…すごい。…兵士長っていう肩書きの人は気配まで分かっちゃうんだ…。
そんなことに感服しながら、NAMEは失礼します、と断りをいれ入室した。
「すみません、時間を決めてなかったので入っていいか迷ってしまいました。…もう夕食は召し上がりましたか?」
「ああ、済ませた」
「よかった。じゃあすぐ淹れますね!」
NAMEが準備を始めると、リヴァイはどかりとソファに座り、腕と脚を組み、ジッとNAMEに視線を向けた。
…。。。う、なんだろう…。すごく視線を感じる…。み、見られてると思うと手が震えちゃう…。
リヴァイの視線を感じながら、NAMEはギクシャクと紅茶の準備を続ける。そしてなんとか淹れ終わり、カップをソファの前のテーブルに置くと、リヴァイがカップを受け取りながら口を開いた。
・-・-・-・-・-・-・-・-・
NAMEが分別した書類は完璧だった。俺は渡された書類の確認を全て済ませ、必要なものにサインをしていた。その最中、扉の外から人の気配を感じた。同時に、カチャカチャと小さく食器の音が聞こえる。NAMEが来たのかと思い、俺はサインを中断して書類をまとめた。
しかし、あいつは一向に入ってくる気配がない。扉の前にいるはずだが。
俺は、手が塞がって開けられないのかと、面倒だが扉を開けに行った。予想通り、開ければあいつが立っていたが、片手は空いていた。
…何故さっさと入ってこねぇ…。
俺はNAMEを一瞥したあと招き入れた。
どうやら、すぐ入ってこなかったのは俺が飯を食べたかどうか気になったからのようだ。勝手に予定を取り付けたくせに、変なところに気を遣いやがる。
すぐ淹れるというその言葉を聞き、俺はソファに腰を下ろしてこちらに背を向け、壁際の棚で準備を始めるNAMEを遠慮なく観察した。
NAMEの身体は本当に華奢だ。
ここの奴らは女でさえもデケェ奴ばかりだが、こいつは俺よりも小さい。ペトラ…よりもさらに低いな。
服装が変わってねぇ…。
まだ風呂に行ってねぇのか。
…昨日も随分遅い時間にあそこで寝てやがったな。…髪が濡れていたから風呂上りだったんだろうが、今日もあのくらいの時間に入るつもりなのか?…まあ大方、あれくらい遅い時間の方が他の兵士とかち合わなくて済むと思ってるんだろうが。
…そういや…昨日からずっと耳に残ってやがる…
リヴァイがそんなことを考え始めると、NAMEが紅茶のカップを持って目の前にやってきた。NAMEは「どうぞ」とテーブルに置き、そのまま向かいのソファに腰を下ろす。リヴァイはカップを上から掴むと、ゆっくりと口を開いた。
「今日も歌うのか?」
「え?」
「歌ってたろ、昨日」
「え、あっ聞こえてましたか!?すみません…夜遅くに…う、うるさかったですよね」
「夕方も歌ってたじゃねぇか」
「あ、そうでした…」
「…夜のは、恐らく俺しか聞こえてねぇだろ」
「…耳が、いいんですね///」
そう、少し照れ臭そうにするNAMEを視界に入れながら、リヴァイは口に含んだ紅茶を喉に通し、美味いな、と思った。
「人前では歌わない主義か?」
「い、いえ…そんなことはないのですが」
「なら歌え」
「へ」
「今、ここでだ。…お前の歌は、悪くない」
「っ…」
思い掛けないリヴァイの言葉に、NAMEは一瞬で身体中からぶわりと何かが湧き上がってくる感覚になった。
それは、リヴァイの悪くない、という言葉が、彼の中では良い意味だということを感じ取ったからだ。
『あんたの歌を求める人は、絶対に現れるから』
…お母さん…
NAMEは、いつかの母の言葉を思い出していた。
「…昨日歌っていた歌、私が一番好きな歌なんです。…それでもいいですか?」
「ああ」
NAMEはリヴァイに笑顔を向け、ゆっくりと立ち上がる。
そして、瞳を伏せ、深く息を吸った。
♪~「Every night in my dreams
I see you, I feel you,
That is how I know you go on
Far across the distance
And spaces between us
You have come to show you go on
Near, far, wherever you are
I believe that the heart does go on
Once more you open the door
And you’re here in my heart
And my heart will go on and on
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」~♪
歌ってる時のNAMEは別人のようだった。
リヴァイは、真正面からその歌を聴き鳥肌が立っていた。
普段も、黙っていれば大人びて見え、喋れば途端に幼くなるようにコロコロと表情を変えるのだが、今のNAMEはまた違う、圧倒的な存在感を放っていた。
夜ということもあって声を抑えていたであろうその状態でさえ、NAMEのオーラは力強いものがあった。
リヴァイは、こいつが本気で歌ったら鳥肌どころじゃねぇのかもな…と密かに思った。
「…良い歌だ。意味は分からねぇが」
そう感想を伝えれば、NAMEは少し息を切らしながら微笑んだ。
そのあどけない表情に、リヴァイはなんとなくほっとする。
「この曲は、深い愛の歌なんです。
どんなに近くても、遠く離れていても、命ある限り共に生き続ける。心の中に、あなたは居続ける、っていう歌です」
「…そうか」
「大好きな映画の曲で、それは恋人同士なんですけどね、今は母を想って歌ってます」
「えいが?」
ああ、そうだった。この世界には映画はないんだ、と、NAMEは思い出した。
「映画っていうのはですね!」
それから、NAMEは少し緊張していたのもどこかに忘れ、リヴァイに自分の世界の話を始めた。リヴァイも、それに相槌を打ちながら、時折り興味をそそられたりしてNAMEの話に耳を寄せていた。
「…~~私、もう何回もこの映画観てるんですけど、その度に号泣で。もう俳優さんから映像、挿入歌まで、すべてにおいて完璧なんですっ!なんといっても、その船に乗りさえしなければ事故に遭うこともなかったのに、彼は彼女に言うんです。この船のチケットを手に入れた僕は世界一幸運だった。君に出会えたからだ、って…!
はあ~リヴァイさんにもぜひ見せてあげたい…!!」
「…ああ、そうだな。そこまで言うなら俺もぜひお目にかかりたいもんだ。…それと、どうでもいいが紅茶が飲めねぇ」
「え」
リヴァイの言葉にパッと現実に戻ったNAMEは、つい話に熱が入り、自分でも気づかないうちにこの場所に移動していたことに驚愕した。
リヴァイの向かい側のソファにいたはずのNAMEは、いつの間にかリヴァイの隣に座り、さらには至近距離でリヴァイの両手を自分のそれで握っているのだから。
「わっ/////ご、ごめんなさ…!!」
NAMEは瞬時にその手を離し、慌ててリヴァイから距離を取る。
「別に構わねぇ。立ち回りの多い話で中々興味深かった」
興奮しすぎて、どうやら登場人物の動きまでしていたらしいNAMEは、恥ずかしそうに元の位置へと戻り紅茶を含んだ。
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