素敵な夢になりますように…
go on 5
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訓練が休憩に入り、部下達と昼食を取りに戻ってきたリヴァイは、外から執務室兼自室の窓にふと目を向けていた。そこへ、同じく休憩で戻ってきたハンジが声を掛けた。
「やー!リヴァイ班も休憩?」
「ハンジさん!お疲れ様です!」
ハンジの登場に、ペトラらリヴァイ班のメンバーは敬礼をし、リヴァイは瞬時に顔を顰めた。「直していいよ」とハンジに言われ、敬礼をおろしたペトラは、「今日はモブリットさん、一緒じゃないんですか」と訊ねた。
「ああ。今日は新しく入ったNAMEと事務仕事をしてるんだ」
「あ、今日紹介された方ですね!すごく美人の!」
「確かにあれは美人だったな。ペトラよ、お前も俺の女房になるつもりならあれくらいは目指さないといけねぇな」
「うっさい、オルオ。それと、その喋り方マジでやめて」
「ははは!訓練後だってのに相変わらず元気だねぇ。…ちなみに、NAMEはオルオとペトラと同い年だよ」
「「「ええっ!?」」」
予想だにしないその言葉に、ペトラとオルオ、そしてエルドやグンタまでもが驚いた。
「同い年…お、大人っぽいですね…」
「見た目はね。喋ると年相応だよ。来たばっかりで友達もいないだろうからさ、仲良くしてあげてよ!」
「はい!喜んで!」
ハンジの頼みに、ペトラは笑顔で即答した。
「しかし珍しいですよね。そんな若い女性を調査兵団に兵士ではなく事務担当として引き入れるなんて。そんなに優秀な子なんですか?」
笑顔のペトラとは裏腹に、不思議そうな顔をしてエルドは訊ねた。
「あー、実は彼女はモブリットの血縁者でね。…この前の巨人の襲撃で家族を失ってさ。行く当てもないから兵団で引き取ることになったんだよ。モブリットの親族なら有能な人材だからね!」
「そうだったんですね」と、腑に落ちる部下達を見て、納得させてしまう力のあるモブリットにまたも頭が下がる思いのハンジだった。
「お前ら。早く飯を食わねぇと休憩が終わるぞ」
リヴァイの一言に、オルオ達は「失礼します!」とハンジに伝えて慌てて食堂へと走っていった。
「いやー、さすがモブリット!効果抜群だ」
「ああ、そうだな。お前の補佐官は上官よりも優秀らしい」
リヴァイと二人になったハンジは、相変わらず無愛想なその男の顔をニヤリと見つめた。
「ねぇ、そんなことよりさリヴァイ。…NAMEのこと、気になってるんじゃないの?」
「あ?」
「さっきボーっと見てたろ?モブリットと二人っきりの執務室の窓をさ!」
いつから自分のことを見てたのかと、リヴァイは苛立ちを隠さずに舌打ちをする。
「仕事が捗ってるか気になっただけだ。別にあいつらの仲をきにしてたわけじゃねぇ。…仲良くやってるならそれはそれで結構じゃねぇか」
「ふーーーーーーん?」
未だニヤつくハンジに、リヴァイは益々不機嫌さを露わにした。
「何が言いたいんだてめぇは」
「いやー?…昨夜見ちゃったからさ。NAMEを抱きながらその寝顔に見惚れてるリヴァイをね!」
…こいつ。だから朝から薄気味悪い笑みを零してやがったのか。…チッ。面倒な奴に見られたな…
「呑気に廊下で爆睡してるあいつに呆れてただけだ。見惚れてなんざいねぇよ」
「そんなこと言ってもさー、朝もNAMEの姿見て綺麗だなって思わなかったの!?少なくとも私は思ったよ!!」
―確かに、朝あいつが俺の部屋にやってきた時は思わず息を飲んだ。今まで見てきた格好は、どこかあどけなさを残していて年相応な雰囲気があった。俺の服を貸した時でさえだ。
しかし、今日の格好は違った。美人の類に入るあいつの雰囲気にしっかりと合っていて、それでいて喋ると幼さが見えるその相容れない危うさが俺の胸中をざわつかせた。
ハンジでさえ思ってるんだ。他の奴らも同じように感じているんだろう。事実、エルヴィンも「可愛いじゃないか。よく似合ってるよ」などと朝からほざいていた。
…チッ…だからなんだってんだ。俺には関係ねぇ。
リヴァイは、自分の考えを打ち消すように言葉を返した。
「…思ってねぇよ。そもそも、あいつが廊下で寝てたこととそれは関係ねぇだろうが」
「そー?…んじゃ、そういうことにしといてあげるよ。…まあ、NAMEも新しい生活が始まって疲れてただろうからね。寝落ちしちゃうのも分かるよ」
「あ?だとしてもだ。部屋まで我慢できねぇのか。ガキじゃあるまいし」
「ははは。ほんとにね」
「笑い事じゃねぇ。女があんな時間に廊下で、しかもあんな格好で寝てるんだぞ。襲われたって文句言えねぇだろうが」
「確かにその通りだね。私からも忠告しておくよ。
…リヴァイは意外と紳士だよね。昨夜、あなたがNAMEを部屋まで運んだこと、教えてないんだろ?NAMEが朝、どうやって部屋に戻ったのか覚えてないって不思議がってたよ」
「フン…。わざわざ恩着せがましく言えと?…毎日毎日、あいつの謝罪と礼は聞き飽きてんだよ」
それを聞き、ハンジは「やっぱり紳士だね」と眉尻を下げながら笑った。
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「よし、財政関連の書類はひと段落したし、ちょっと休憩しようか」
同じ頃、リヴァイの執務室ではモブリットとNAMEが3分の1ほどの整理が終わっていた。
「はぃ…。ふぅー。これ、皆さん普段は一人でやってるんですよね?他の仕事もあるのに大変だ…」
「ハンジ分隊長以外はそうだね。ハンジさんは他の仕事プラス巨人の生態について研究と実験もあるから、どうしてもそれ以外の書類仕事は手が回らないんだ。…ていっても嫌いで後回しにしがちなだけだけどね」
「ふふ。それでモブリットさんがいるんですね」
「ほんとは、エルヴィン団長こそ補佐官が必要だと思うんだけどね。…あの人はすごいよ。俺達の倍の量あるはずなのに、淡々とこなして疲れを微塵も出さないし。…ミケ分隊長が手伝ったりはしてるんだろうけど」
「ふあー。そうなんですか…すごいなぁ」
モブリットの話を、NAMEは興味津々に聞いていた。巨人と戦う、という大きな役割がある人達でも、膨大な書類仕事をこなすには相当の精神力や体力が必要だと思った。
「リヴァイ兵長も、兵士長、っていう役職になってからは急激に仕事が増えたからね。そこに就くまでは書類仕事なんてやったことのない人だから、NAMEが来てくれてかなり助かると思うよ」
「でしょうか…。リヴァイさんには、まだあまり歓迎されてないので…。少しでも私が負担を減らせるようにはしたいなとは思ってます」
少し俯きがちになるNAMEに、モブリットは声を高くして続けた。
「いや、俺ビックリしてるよ。文字の読み書きも出来なかったのにこの短時間で読むスピードは上がってるし、何より理解力が速いから!読み書きをマスターしたら、かなりの力になるはずさ」
「い、いえ、そんな!…で、でも頑張ります!読むのは、元々語学の勉強が好きだったので覚えは速い方かもしれません。ただ…ここの文字、少し癖があるので書くのは難しくって。…分類したあと、報告書におこす時は苦労しそうです…」
そう言ってうーん、と書類と睨めっこするNAMEを、モブリットは優しく微笑みながら見ていた。すると、NAMEから、ぐぅー。と大きな音が鳴りだす。
「あっ//////…す、すみません」
顔を真っ赤にして、両手で口元を押さえるNAMEの姿は本当に愛らしくて、モブリットは思わずNAMEの頭をポンポンと撫でた。
「俺も思ってたけど腹減ったね!今は昼時で訓練してる兵士達で混んでるだろうから、もう少ししてから食堂へ行こうか」
「はい////ありがとうございます。…よーし!あともう少し進めちゃいます!」
そう言い、もう一度書類と向き合うNAMEを見ながら、モブリットも自分の仕事を再開した。
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NAMEの仕事ぶりは、初日にもかかわらず目を見張るものがあった。
元々頭の回転が速いのか、呑み込みもスムーズで一度言ったらしっかり把握出来る。ミスも少なく、それでいて丁寧だった。
期限は丸2日与えられているものの、そこまで掛からず終えられそうだとモブリットは思っていたのだが、昼休憩を挟み、残りを進めていると急にNAMEのペースがダウンした。
それは能力的な問題ではなく、精神的なものだ。
午後からは、先日の壁外調査の損害を報告書におこす作業だった。NAMEは、数値で表れる損害の大きさに、ただただ言葉を失くしていった。
―ハンジさんが言っていた、慢性的な人手不足と資金不足というのはこういう事だったんだ…。
一度の壁外調査でこれほどの命が奪われてしまうなんて…
NAMEは書類を見つめながら、それを持つ手に無意識に力が入りクシャリと紙に皺が寄った。そんなNAMEの心情を察しつつも、当事者からの慰めを必要としないのは分かっていたモブリットは、そのままペンを走らせていた。
「…調査兵の方達は、かっこいいですね」
予想外に口を開いたNAMEに、モブリットは少々驚きを隠せずにいた。
「…どうしたの?」
「…私は、巨人を見たこともないですし、誰かと戦ったこともありません。でも、死に直面したことはあります」
NAMEの話に、モブリットは静かに耳を傾けた。
「私、すぐに諦めようとしたんです。生きることを。…大事な友達や母を一瞬で亡くして一人になってしまった時、生きてる意味なんてないって思いました。結果的に、皆さんに助けてもらって、夢に出てきた母から生きろって言われたからここにいます。…でも、ここの皆さんは違う。いつ死ぬかも分からない世界で、真っ先に死んでしまう道を進んでる。でもそれは生きることを諦めたからじゃなくて、生きるために進んでる。仲間や大切な人を亡くしてしまってるのに、その方達の分まで諦めずに戦ってる。…すごいです。…ほんとに、心からかっこいいなって思います…!きっと、この世界の人からしたら、調査兵の皆さんは英雄なんですね」
「…中々そううまくはいかねぇがな」
「え。」
モブリットがNAMEの言葉に笑顔で返している時、思い掛けない返答がありNAMEとモブリットは同時に声のした扉へ目を向けた。
そこには、リヴァイとハンジ、そしてペトラとオルオが立っていた。
「あっ…え、っと、おっお疲れ様ですっっ」
NAMEは慌ててソファから立ち上がり、4人に向かってペコリと頭を下げた。
…い、いつから居たんだろう…////なんか偉そうに語ってたの、聞かれたくないんだけど…
そんな心配をしてるNAMEの横で、モブリットがさっくりと「いつからいらしてたんですか」と訊ねた。
「声を掛けようとしたんだがな。…死に直面したっつー重い話をしてやがるからタイミングを失ってた」
―!!!うわぁ/////もう、全部じゃないか…。恥ずかしすぎる///
そんな激しく落ち込むNAMEとは反対に、ハンジやペトラ、そしてオルオは嬉しそうに頬を緩め、心なしかリヴァイでさえも穏やかな顔をしていた。
「はっは!さっすがNAME!私達のことちゃんと理解してくれてるんだなぁ!」
「ほんとに!!そんな風に言ってくれる人、中々いないから嬉しいですっ!!」
「さすが兵長の補佐官に任命される人は違うな。器がよ。なぁペトラ」
ハンジを筆頭に、喜びを露わにしてくるメンバーにNAMEは目を丸くしながら顔を上げた。
「立ち聞きなんかしてすまなかったね。NAMEにこの二人を紹介しようと思ってさ!リヴァイと一緒に立ち寄らせてもらったんだ」
ハンジはそう言うと、横の二人を紹介し出した。
「リヴァイ班のペトラとオルオだ。この二人はNAMEと同い年だから仲良くなれると思ってね」
「オルオ・ボザドだ。よろしくな」
「初めまして!ペトラ・ラルです。よろしくね!NAME、って呼んでもいいかな?」
ニヒルな笑い方をするオルオと、可愛らしくて明るいペトラが同い年だと聞き、NAMEはにこっと満面の笑みで答えた。
「NAME・バーナーです!オルオとペトラだね、よろしく!!」
「「(可愛い…!)」」
オルオとペトラは、黙っていれば大人っぽいが喋ると確かに年相応だと同時に思った。
「じゃあリヴァイ、私とモブリットは失礼するよ」
「ああ。モブリット、ご苦労だったな」
「いえ。とんでもないです。兵長、NAMEはかなり優秀な補佐官になると思います」
そうリヴァイの目を真っすぐに見て伝えるモブリットに、リヴァイは「そうか」とだけ返した。
そんなやり取りをしている間に、ペトラとNAMEも会話をしていた。
「NAME、今度ゆっくりお話しよ?」
「うん、ぜひ」
「今日は忙しそうだって聞いてるから、また近いうちに!」
そう言い残すと、ペトラはオルオを引っ張りながら「失礼しました!」と部屋を後にした。それに続いてハンジとモブリットも出て行こうとする。
「あっモブリットさん!今日は本当にありがとうございました!分かりやすく教えていただいたお陰でかなり覚えられました」
「ほとんど君の力だけどね。役に立ててよかった」
「また、お時間ある時はよろしくお願いします。…ハンジさんも!大事な補佐のモブリットさんの貴重なお時間をいただきありがとうございました!!」
「モブリットは補佐の鑑だからね!なんでも聞いてくれよ!!」
笑いながら手を振る二人を見送り、NAMEは扉を閉めた。
そして、すでにデスクに座っているリヴァイに視線を移す。
「リヴァイさん、訓練お疲れ様でした」
「ああ」
「お疲れのところ申し訳ありませんが、今日の報告をしてもよろしいですか?」
「頼む」
リヴァイの返答に安心しながら、NAMEは今日終わった書類をデスクに並べた。
「分別は全て終わりました。サインが必要なものがこちらです。こちらのは、このまま保管するものなのでご確認をお願いします。報告書にまとめるのがまだ途中ですが、明日の午後までには完了出来ると思います」
NAMEの報告を静かに聞いていたリヴァイは、ほう、と声を漏らした。
「今日1日でここまでやったとはな。初日の割によくやった」
「…。あ、…モブリットさんが丁寧に教えてくださったので…」
「それでもあの大量の書類をここまで終わらすのは大したものだろ」
「…」
リヴァイからの労いに、NAMEは素直に嬉しく思った。
思わず言葉を失うも、顔が緩んでしまう。
「…どうした」
「あ、いえ…褒めていただけると思っていなかったので…」
「…俺は成果を出した奴や努力している奴には、ちゃんと評価する」
「…そう言ってもらえると…嬉しいです」
「…」
ハニカムように笑うNAMEに、リヴァイの心臓が僅かに撥ねる。
…昨日から、いちいち落ち着かねぇ…。
こいつの、コロコロと変わる表情に俺は何を思ってる…
そんな自問自答を頭でしていると、急にNAMEが「あっ!」と声を上げた為リヴァイは思わず肩を震わせた。
「なんだいきなり」
「あ、すみません…!あの、もしよかったらなんですが、夕食が済んだらまたこちらに来てもいいですか?」
その質問の意図が全く分からず、リヴァイは眉根を寄せる。
「リヴァイさん、あんまり眠れてないんじゃないかと思って…。目の下の隈が濃いようなので」
「…だったらなんだ」
「あ、よく眠れるようにしたいな、と思ったんですけど…」
趣旨が見えず、段々と険しくなるリヴァイの表情にNAMEはビクビクとしながら更にしどろもどろになる。
「…てめぇは、俺を寝かしつける為に部屋に来る気か」
「えっ?あ、いっいえっ!そ、そういう意味ではなくてですね、その、紅茶を!」
「紅茶だと…?」
その単語に、リヴァイはピクリと片眉を上げた。
「はい!昨日買い出しに行った時に紅茶を買わせていただいたのですが、リヴァイさんもお好きだと聞いて…。新しい茶葉らしくて、リラックス効果があるらしいんです!とっても香りが良くて!…それで、あの…一緒にどうかな、と…」
勢いよく話したものの、NAMEは出過ぎたマネをしているのでは。と急に不安になり最後は俯きながら尻すぼみになっていった。リヴァイは、そんな様子のNAMEを目を開いて見つめた。
「…食後のティータイムか…。まあ、悪くない」
「え…?」
「付き合ってやると言ってる。飯食ったら持ってこい」
「あっはいっ!」
―よかった。「余計な事するな」とか言われなくて…
NAMEはほっと胸を撫で下ろした。
「書類は確認しておく。行っていいぞ」
「はい。よろしくお願いします。…では、また夜に」
ペコリとお辞儀をして出ていくNAMEを見送ると、リヴァイは大きく息を吐いた。
…あいつは…一体何を考えてる…
NAMEの全く読めない行動に、リヴァイはもう一度溜め息をつき、綺麗に揃えられた書類に視線を戻すのだった。
to be continued...
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