素敵な夢になりますように…
go on 5
Name change
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「明日の朝、君を兵士達に公表する。ただし、幹部達には伝えているが、異世界から来たことは伏せ、事務担当として調査兵団に所属する特殊な例としてだ。君が記憶を失くしこの調査兵団の本部に迷い込んでしまった民間人として我々が保護し、監視している、というのはハンジの部下と医療班には伝わっている。何か聞かれて答えられなくても、記憶を失くしてるなら切り抜けられると思ったからだ。…ただ、これからはそうもいかない。憲兵に、ただの民間人を病院に連れて行かずにここで匿っていると知られるのは避けたい。君の身元を調べられたりでもしたら困るからな」
会議室にミケ、ハンジ、モブリット、リヴァイ、そしてNAMEが集まると、エルヴィンは話し始めた。
「け、憲兵、という方は私のことを探ろうとしているんですか…?」
「君を、というよりは我々調査兵のアラを探しているようなものだな。…そこでだ。今後は、君はモブリットの親戚として我々が引き抜いたこととする」
「モブリットさんの…」
「そうだ。モブリットにも了承してもらっている。君は先日の巨人襲撃により家と家族を奪われ記憶を失い、辛うじて覚えていたモブリットを頼りにここへ来た、というシナリオだ」
「なるほど…」
「まあこれを発案してくれたのはミケとハンジだがな。…モブリットは非常に有能な補佐官だ。その血縁というだけで信用度が上がる、とな」
エルヴィンがその二人に目配せをすると、ミケは小さく頷き、ハンジはモブリットの肩を組んでピースサインをしながらニカッと笑った。
「記憶は曖昧という事にしといていい。他の兵士にわからない事を聞かれても無理に答える必要はない」
エルヴィンの言葉に、NAMEはコクリと頷いた。
「君には、明日からリヴァイ兵士長の補佐に就いてもらう。と言っても、事務作業の補佐だ。壁外へは連れていったりしない。訓練も勿論参加しなくていい。その代わり、書類関係の仕事はしっかりサポートを頼む。もちろん、書類以外もリヴァイが指示した事は出来る限り対応してもらうよ。掃除とかな」
「はい!かしこまりました!」
「よし、良い返事だ。リヴァイ、やる事は明日から教えてやってくれ」
「ああ。」
「それと、君の世界のことも我々に話してもらいたい。それはハンジ分隊長が担当する。執務の合間に調べさせてもらうこともあるだろうが、それにも協力を頼むよ」
「はい!よろしくお願いします!」
「モブリット、君は、事務仕事の段取りや補佐官としての仕事をNAMEに教えてやってくれ」
「はい!かしこまりました」
「モブリットさん、よろしくお願いします」
「ふむ…ここまでで、何か質問はあるかな」
ざっくりと説明を受けたNAMEは、エルヴィンからの問い掛けに首を横に振って微笑んだ。
「いいえ。今のところは大丈夫だと思います」
「そうか。では何か分からないことがあれば、ここにいる誰かに都度聞いてくれ」
「はい!…あの、ひとつだけ、いいですか」
「ん?何かな」
「あの…、異世界という謎だらけの場所から来た私を、優しく受け入れてくれて本当にありがとうございます!…私も、まだこの世界のこと何にも分かってないですが、少しでも皆さんの力になりたいと思っています。私に何が出来るかは分かりませんし、ご迷惑をお掛けしてしまうかもしれません…。それでも、この世界で生きていく覚悟は出来ています。私に出来る事はなんでも協力致しますので、これから、よ、宜しくお願いしますっ」
それだけ言うと、NAMEは深く頭を下げた。
エルヴィン、ミケ、そしてモブリットはにこりと微笑み、リヴァイは「邪魔になるようなら追い出す」と溢した。しかしその声は、朝のものよりも柔らかい印象だった。
ハンジはNAMEの肩に手を回すと、下がっている頭を起こすように引き上げた。
「これからよろしくね!分かんないことや困ったことがあれば何でも言ってよ!」
「ありがとうございますっハンジさん」
そして、「今日の会議は以上だ」と、エルヴィンは解散を命じた。
「あっあの、リヴァイさんっ」
NAMEはいち早く会議室を退室したリヴァイの後を追って声を掛けると、リヴァイは無表情のまま振り向き、ぶっきらぼうに言葉を発した。
「…8時だ」
「え?」
「明日、8時に俺の部屋へ来い。お前の公表をしてから仕事は教えてやる」
ぶっきらぼうだが、NAMEが聞きたかったことをしっかりと伝えてくれるリヴァイに、NAMEはもう一度礼を述べた。リヴァイは歩を戻し、NAMEはその背中を見送る。
そんなNAMEに、今度はハンジが声を掛けた。
「NAMEっ、今日は一緒にお風呂に入ろうか!」
「えっ…一緒に行ってくれるんですか?」
「うん!もう包帯もとれたし入れるんだろ?本当は私の部屋にもシャワーはあるんだけど、初めては緊張するだろうし、それに、まだ君を紹介する前に風呂場で誰かと会っても困るだろうしね」
「わ、助かります…!ちょっと不安だったので…」
「ならよかった!…ま、これもモブリットの提案なんだけどね!」
そう言って、ハンジは笑いながら隣にいるモブリットに視線を移した。
「それでも、一緒に行ってくれるのは嬉しいです。ありがとうございます!モブリットさんも!…モブリットさんて、ほんとに気配りが出来る方なんですね。尊敬します…!」
「え、あ、いやっそんなことないよ!ぶ、分隊長も、そろそろ風呂に入った方がいいと思っただけだから!」
「おやおやぁ?モブリット?君、なんか照れてない?やっぱりNAMEに気があるんじゃ…」
「だから違いますって!分隊長もそのくらいしてくれないと、今日も風呂に入らないつもりだったでしょう。今日こそはちゃんと入って、疲れを取ってくださいよ」
二人のやり取りを見て、NAMEはクスクスと笑った。
・-・-・-・-・-・-・-・-
「ハンジさんとモブリットさんの関係って、ほんとに素敵ですね」
「えー?」
遅くなったせいか、運良く誰も居ない風呂場にやってきたNAMEとハンジは、それぞれ身体や髪を洗い、湯船に二人で浸かっていた。
「なんか、ほんとに信頼し合ってて…考えてることも理解してる感じが素敵だなぁって思ったんです」
「ははっ。確かに、モブリットはよく出来た部下だな!彼には私も頭が上がらないよ」
「…私も、リヴァイさんからそう思ってもらえるようにならないとですね…」
「リヴァイは神経質だからね。最初は手こずると思うけど…NAMEならきっと大丈夫な気がするよ」
「…だと、いいんですけど…。…ううん、頑張ります!」
「あはは。その意気!その意気!」
ハンジとの親交を深めたNAMEは、ミケの人の匂いを嗅いでは鼻で笑う癖があることや、リヴァイの前で掃除を怠れば、不機嫌を通り越して制裁があることなども教えてもらった。
・-・-・-・-・-・-・-・-
「じゃあNAME、また明日!おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
浴場を出たところで、NAMEはもう夜も遅いというのにまだ研究室に用事があるというハンジと別れた。
―ふぅ。長湯しちゃった。
でも久しぶりのお風呂、気持ちよかったなぁ。
そんなことを思いながら、NAMEは今日部屋着用に買った白のワンピースの襟元をパタパタと扇いで部屋へと歩いた。その途中、ふわりと外気を感じてそちらに目を遣ると、廊下の窓が少し開いて風が入ってきたところだった。
NAMEは窓の下に設置されているベンチソファに腰を下ろした。
「気持ちいい…」
冷たい風が、のぼせて火照った身体に心地よく撫ぜていく。
満点の星空を眺めながら、NAMEはまたメロディーを奏でた。
夜も更ける時間の為、声のトーンを最小限に落として口ずさむ。
…お母さん、聴こえる?
私、またたくさん、歌うからね
静かに響いていたメロディーはいつの間にかなくなり、かわりに規則正しい寝息が聞こえてくる。
ニファの話を聞いて朝方ハンジが来るまで、ほとんど眠れなかったNAMEは、どっと襲ってきた睡魔により窓に凭れ掛かったまま眠りについた。
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