素敵な夢になりますように…
darling 5
Name change
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「さっきはよくもやってくれたな…」
馬車の中で羽交い絞めにされているNAMEは、身体を押さえている男とは別の、目の前の鼻を赤くしている男を軽蔑の篭った目で睨みつけた。
それは、先ほどの一件で一緒だった憲兵の男達だった。
「…逃げ出した上にこんなことして。よっぽど小心者なのね」
「うるせぇ。女に殴られて黙ってられるか」
男の言い分に、NAMEは呆れたように息を吐く。
「加減してあげたんだから感謝してほしいくらいだけど。
でなきゃ今頃、あなたのその鼻折れてますよ」
「っうるせぇっつってんだろ!!!」
「っ!-っか、はっ…」
目の前の男は、NAMEの腹目掛けて思い切り拳を打ち込んだ。
鳩尾を殴られたNAMEは呻き、ぐったりと力が抜けていく。
男は後ろの相方に指示を出し、NAMEの両足と両手を縄で縛らせた。
黙って縛られるNAMEを見下ろしながら、男は言葉を続けた。
「てめぇは、二度と舐めた口がきけなくなるまでボロボロにしてやるから、覚悟しろ、よっ!!!!」
「ぐっ…!」
男はNAMEの手が縛られたのを確認すると、今度は頬に拳を振り下ろした。
口の中が切れたのか、NAMEの口の端からつつ、と赤い筋が流れる。
「せっかくの可愛い顔が台無しだなァ、分隊長さんよ」とヘラヘラ笑う男に対して、NAMEは痛みは感じつつも、血の流れているその口の端を吊り上げた。
「…は。随分と愉しそうね。…人類は巨人に制圧されるかもしれないっていうこの状況で。巨人とは無縁の憲兵という地位に胡坐をかくあなた方は、市民の平和よりも自分の体裁を守り、ちっぽけなプライドを保つ為女を嬲るとは…いいご趣味をお持ちですね。」
「…へッ。口が減らねぇ女だぜ。…人目につかない場所でたっぷり可愛がってやろうと思ってたが、少々仕置きが必要のようだ…。おい」
「ああ」
男が相方へ目配せすると、後ろの男は懐から折りたたみのナイフを取り出した。
それを目に捉えたNAMEがギクッと身体を震わせた間に、そのナイフは目の前の男に手渡される。
「どうしたらこの気の強い女が大人しくなってくれるのか…見ものだな」
「っ!」
男はそう言いながら気色の悪い笑顔を見せ、ナイフをNAMEの服にあてた。
その切っ先を、ゆっくりと下におろし、NAMEが着ていたTシャツは中央から裂けていく。
下までナイフが下りきったところで、男はその裂け目に手を掛け、勢いよく左右に開いた。
後ろにいた男もNAMEの前に回り込み、二人の男からじっくりと舐め回されるように見つめられ、NAMEは顔を背けた。
気持ちの悪い視線が自分の身体に注がれることに吐き気がする。
「生意気な女だが…こりゃ、イイ身体してるじゃねぇか…」
「ああ、思ってたよりやべぇぞ…」
「早く手つけてぇな」
「慌てるな、もう着くはずだ。着いたら、楽しませてもらおうぜぇ」
そんな男達の反吐が出そうな会話に耳も塞ぎたい気持ちのNAMEは、この状況を打開する何かいい方法はないかと必死に頭を回した。しかし、そんな考えはお見通しなのか、男はNAMEの顎を掴んで自分の方へ顔を向けさせた。
驚いたNAMEの瞳に、下卑た笑いを浮かべる男の顔が映る。
「無駄なことは考えないことだな。女のくせに調子に乗った報いだ。」
「……なら、男のくせに力の使い道も分からないあなた達にも報いがあって当然ね」
「フン。好きなだけ吠えてろ。強気な女が抵抗しなくなるのを見るのもまた楽しいからなァ」
「…外道」
「ははは!なんとでも言え!」
そう吐き捨て、男達が大きく笑い声を上げた時だった。
―ガタガタガタッ!!!
「「うおっ!!?」」
「!?」
走り続けていた馬車が、先と同じく馬の咆哮と共に大きな音を立てて急停止した。
急な衝撃に男達もNAMEも態勢が崩れたが、男はすぐにNAMEの背後に回って腕で首をホールドし、相方の男に外を確認しろと指示を出す。
指示された男は、御者と繋がる窓のカーテンを開き、御者に声を掛けた。
「おい、どうした!着いたのか!?……あ?」
―ドガァンッッ!!!!!!!!!
「「「!!!?」」」
御者を確認すると、青い顔をしたままブルブルと顔を振っている。
意味が分からない。と男が首を傾げた瞬間、乗っている箱の扉が勢いよく壊され、御者に確認をしていた男はその扉に顔面を強打しそのまま潰された。
「お、おいっ」と、NAMEを捕まえたまま男は相方に声を掛けるが、どうやらそのまま気絶しているようだ。
この、予期せぬ事態に冷や汗をたらしながら、男はその砂ぼこりのたつ壊された入り口に目をやる。
砂ぼこりがスローモーションのように消えていくと、そこには、この世界で今一番有名な兵士が立っていた。
「お、お前は…!!!」
「…リヴァイ…」
「ああ、待たせたな。…こいつらをどう殺してやろうか考えてたら時間が掛かっちまった」
まさかリヴァイが助けに来てくれるとは思っていなかった。
NAMEはなんとか隙をついてうまく脱出しようと考えていたが、男達の気持ちの悪い欲の渦にのまれ本当に吐きそうになっていた。そんな時だ。
リヴァイの姿を見た瞬間、その場から一切の不安がなくなり、反吐が出そうな空気は一気に浄化されたかのように感じた。
しかし、よく見ればその男達以上に黒い渦を纏っているようにも見えるリヴァイだが、今のNAMEにとっては本気で輝いて見えた。
胸がまたドキンドキンと脈を打つ。
…助けに来てくれた…
リヴァイが、私を…
そんな感動をしていたNAMEは、「ぎゃあ!!!」という男の声で我に返った。
気付けば首をホールドされていた腕がなくなっている。
自由になった首を回せば、ナイフを掴んだ男の手を、リヴァイが踏みつけている光景が目に入った。
丸腰だった男は、落ちたナイフを武器にしようとしていたらしい。
「おい。…てめぇはこんな安っぽいナイフで俺とやり合える気でいるのか?
はっ。だとしたらお笑いだな」
そう告げると、リヴァイは足を持ち上げた。
踏みつけられていた足がどかされ男がホッとしたのも束の間、その足が男の顎を蹴り上げた。
「ガバァッ!!!」
男の口からは歯が数本血と一緒に飛び散り、吹っ飛んだ身体は反対側の扉に強く打ち付けられた。
ズルズルと身体が落ちていく間にもすぐさまリヴァイに胸倉を掴み上げられ、無理矢理に立たされる。そしてそのまま、何の防御もしていない腹へリヴァイの膝が勢いよく入った。
「ぐえぇ!!!!」
男は呻き声と同時にその場にベシャリと倒れ込んだ。
「ぅっ」とえずく男の後ろ襟を素早く掴むと、リヴァイは反対側の扉も蹴破り、そこから男の顔が外に出る場所へ放り投げる。
男は馬車の下へ嘔吐した。
「チッ…汚ぇな。
おいクソ野郎、これ以上吐くなよ。吐く度目も鼻も汚されちゃ堪らねぇ」
「ひッひィィッ…!も、もう、が、勘弁しでぐれっ…!
にっ二度と、ごんな事しないとちっ誓う!ほ、本当だ、信じてぐれ!」
鬼のような形相のリヴァイに、男はガタガタと震え上がる。
そんな男を冷たい目で見下しつつ、リヴァイは男の髪を掴んで顔を上げさせた。
「あ?二度とだと?…てめぇ何を勘違いしてやがる。
…てめぇの今後なんて知らねぇよ。
今、死ね」
「ひっ…!!!」
《リヴァイっっ!!!!》
NAMEは今出る最大の声量でその名を叫んだ。
完全に目がイってしまっているリヴァイを制止することは不可能かもしれない、そう思いはしたが、止めなければ。でないとリヴァイは本当に人を殺してしまう。
そう感じて成しうる限りの力で声を上げた。
しかし、予想よりもすぐにNAMEの声に反応したリヴァイは、眉根を寄せながら口を開いた。
「…声がデケェ。ビックリするだろうが」
リヴァイの普段通りの口調に、NAMEはほっ、と息をついた。
口では凄んでも、実際、本当に殺したりはしないのかもしれない。
…きっとそんなこともないのだが、考え過ぎであってくれと心の中でNAMEは思っていた。
「その人、もう気絶してるよ」
白目をむいている男に視線を落としつつ、NAMEはふっと笑った。
「やり過ぎ。」
「…馬鹿言え。こいつが軟弱過ぎるだけだ」
クスクスと笑い出したNAMEを見て、リヴァイは自分の周りにあった張り詰めた空気が、ふわりと溶けていくような感覚になった。
リヴァイはゆっくりとNAMEに近付き隣に腰掛けると、縛られている手足の縄を優しく解いた。
NAMEは嬉しそうにその手を前に回す。
「はーっ痛かったぁ。うーわ、痕ついてる。さいあ、く…っ!?」
自由になった手首を撫でていると、不意に伸びてきたリヴァイの片腕が自分の背後に回ったかと思うと、そのままグイと引き寄せられた。
正面向きの椅子に対して真横を向いているリヴァイは、NAMEの身体を優しく回し、向かい合うように引き寄せる。
今NAMEは、リヴァイに抱きしめられていた。
「っ!?////////////リ、リヴァイ…?」
訳も分からず、NAMEは狼狽えながらもそのままリヴァイの腕の中におさまっていた。
なんとなく、自分の胸がリヴァイにあたってしまうのは申し訳ないと思い、行き場に困った手をリヴァイの胸に置くことにした。
その際に、自分のTシャツがはだけていることを思い出し、内心、さらに動揺しながら胸元を押さえた。
…心臓の音がする…。
リヴァイの心臓なのかな…私の、だろうか…
分からないけど、すごく…安心、するなぁ…
リヴァイの逞しい腕が、NAMEの身体を優しく包み込む。
それだけでもNAMEはとてつもなく幸せに感じ、一分も経っていないであろうその短い時間が、永遠に続くような気がしていた。
リヴァイはその状態のまま、「はぁ…」と息を漏らした。
その吐息に気付いたNAMEは、途端に恥ずかしさを思い出したかのように狼狽えた。
「あ、//////あの、リヴァイ?わ、私は全然大丈夫…」
「無事でよかった」
「っ…リヴァイ…」
心の底から安堵したような言葉に、NAMEはきゅうっと胸が締め付けられた。
と同時に、このリヴァイをここまで心配させてしまったことに、分隊長という立場の人間として申し訳なさと情けなさも込み上げてきた。
「し、…心配、かけてごめん、ね。…それと、迷惑もかけて…ごめん、なさい」
「……」
「は、はは。なんか、不甲斐ないよねっ、私に任せてなんて言っておいてさ!
結局、リヴァイに助けにきてもらっちゃって…世話、ないよ、ね」
「……」
「…な、なんか言ってよ!いつもみたいにさー。ホント馬鹿だなとか。詰めが甘いんだよとか!……ね、ねえリヴァイ?」
リヴァイが答えないことで、NAMEは自分の不甲斐なさにますます惨めな気持ちになった。上官として部下を従える立場に、思い上がっていたのではないかと。
そう思っていると、リヴァイの息を吸う音が耳に入ってきた。
「無理するな」
「へ…」
「…女一人で、こんなクソ野郎共相手によく耐えたな」
「あ、…こ、こんなの、大したこと」
「大したことないわけあるか!男の俺だって反吐が出る」
「あ、う、ん…ごめん…」
荒げた声に怒られていると思ったNAMEは咄嗟に謝ったが、リヴァイは決まりが悪そうに言葉を選びながら喋った。
「…いや、悪い。……来るのが、遅くなって悪かったな」
「う、ううん!き、来てくれただけで、充分…!
それに、ちょっと殴られただけだし」
「…よくやった」
「え?」
「アラン達から聞いた。…ちゃんと、部下を守ったな。
調査兵団の名誉も、守ってくれたんだろ?
すげぇことだろうが。…少しは、自信持て。
…まあ、確かに詰めが甘いとは思うがな」
「-っ…ぅ…」
涙が出た。
一番不安に思っていたことを認めてくれたことが、本当に嬉しかったから。
「ぅっ…ぅー…っ」
「馬鹿。我慢すんな。泣きたきゃ泣け」
「っ…う、うわあん!…な、なによぉ急に、お、おと、大人ぶってぇ」
「俺は大人だ馬鹿が。泣くか文句言うかどっちかにしろ」
抱きしめてくれているこの腕の中が、心地いいと心から思った。
病的に潔癖なリヴァイが、自分の涙で兵服がぐちゃぐちゃになるのも構わず、抱きしめ続けてくれることが嬉しかった。
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