素敵な夢になりますように…
darling 9
Name change
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「…明日か…」
ドクドクと心臓が脈を打つ。
いよいよ、ハッキリとさせる時が来てしまう。
願っていたことではあるけどやっぱり怖い。
面と向かって、ペトラを愛していると伝えられるのが怖い。
でも、このままじゃいつまで経っても前に進めないじゃないか
覚悟を決めろ!
私は兵士だろ!!
パンッと両手で頬を叩くと、NAMEは気合を入れ直した。
そうだ、もう一つ、やらなければいけないことがあるんだ。
NAMEは溜まっている書類に目を遣りながら、明日アランとも話をしなくては。と明日の予定に腹をくくった。
・-・-・-・-・-・-・
ーコンコンコン
「どうぞ」
中からの声に、俺は一つ深呼吸をしてから扉を開いた。
「呼び出してごめんね。書類も溜まってたから外に出れなくて」
そう言って笑顔を見せる分隊長は、ソファに掛けるよう俺に言う。失礼します、と腰を下ろせば、「コーヒーと紅茶どっちがいい?」と聞いてくれた。
分隊長なりの気遣いに苦笑いをし、俺は声を掛ける。
「分隊長、俺は今日、振られに来ただけですから」
俺の言葉を聞いた分隊長は眉を下げて微笑むと、松葉杖をつきながらゆっくりと正面のソファへと腰掛けた。
「アラン、約束を守ってくれてありがとう。
…正直に言うとね、あなたの命を守れるか、すごく不安だったし、実際、あなたを助けられないと思ってしまった瞬間もあった」
「……」
「でも、あなたが諦めなかったから私もそれに応えることが出来たんだよ。
命を諦めないでいてくれてありがとう。」
「そんな…。こっちのセリフです。分隊長は、俺の、俺達の命の恩人です。
医務室でも言いましたが、、本当にありがとうございました」
分隊長の言葉に、俺は涙が出そうだった。
でも泣くわけにはいかない。
分隊長が、とても優しく笑うから。
俺の大好きな笑顔だ。
「それと…、私を好きになってくれて本当にありがとう。
私も、アランのことが大好きだよ。
…仲間としてね!」
「はい。分かってます!
…俺も、これからも分隊長が大好きです!俺の、最高の上官です!!」
俺と分隊長は、お互いに目を合わせると大きく笑い合った。
これでいい。この関係になれてよかった。
分隊長は、せっかく来てくれたんだからお茶しよう、と言って結局紅茶を淹れてくれた。
そのまま、俺達はあの時の巨人はどうだったとか、あの数を相手に生きて帰ってこれたのは奇跡だ、とか殊の外話が盛り上がり、気付けば3時間も経っていた。
ふと時計に目を遣った分隊長が「ああっ!!」と声を上げたため、俺はつい淹れてもらったばかりの3杯目の紅茶を零してしまった。
「ど、どーしました?」
「やば…!もうこんな時間…!アラン、ごめん!私夜に、よ、予定があって」
「え?でもまだ14時ですよ」
「書類整理で必要な本を、資料室に取りにいかなきゃいけないの忘れてたの」
「ああ、なるほど。すみません、お忙しいのに長居してしまって」
「ううん!こっちこそごめん。また落ち着いたら話そう」
「はい。…あ、資料室なら僕が取ってきましょうか?分隊長、まだ足痛むんでしょう?」
そう分隊長の足を窺いながら聞けば、分隊長はフルフルと頭を横に振った。
「大丈夫大丈夫。それに、私もどの本が必要か見ないと分からないから。ありがとね!」
「そうですか」と答え、俺は次回の約束をしながら分隊長の部屋を後にした。
きっと、予定というのは兵長だ。
聞いたわけではないが、なんとなくそう感じた。
分隊長のことは勿論尊敬しているが、今回の壁外で、兵長の姿に俺は心底憧れた。
的確な判断力と統率力、そして圧倒的な戦闘能力。
その頼もしさに、この人には一生勝てないと感じた。
そしてまた、あの背中に追いつけるように努めようと強く思った。
きっと、…いや、間違いなく、兵長は分隊長のことを特別に思っている。
分隊長を幸せにするのが俺じゃないというのは寂しいけど、悔しさはない。
分隊長が、一緒にいて幸せになれるのは兵長だけだ。
…どうか幸せになってほしい。
そう心から思えたことに、俺は少し安心した。
大丈夫、俺は前を向ける。
俺はここで、人類最強を目標に生きていく。
「……でも、今日はルースとベックに話、聞いてもらうかなぁ」
アランは、廊下でそう一人ごちて鼻を啜った。
・-・-・-・-・-・
夜のことに緊張して資料のことを忘れてしまうとは…。
NAMEは資料室でガサガサと段ボールを漁っていた。
昨日ハンジから受け取った書類はNAMEの代わりにやってくれていたもので、普段書類整理などからはうまく逃げているハンジにしてはとてもよく出来ていた。
しかし、一部分丸々抜け落ちているところがあったのだ。
綺麗に抜けていた為、優秀なモブリットも気付かなかったのだろう。
しかし、元々は自分の仕事だ。
急ぎの仕事ではないし、エルヴィンからも2、3日はゆっくりしていていいとも言われたが、明日以降はもしかしたら落ち込んで捗らないかもしれない。早めに片付けておこう、とそう思い、NAMEは資料室へやってきたのであった。
「っかしいなー?前に来た時はあったはずなのに…」
以前あったはずの本が棚になく、しまわれてしまったのかと段ボールの中も一通り探すが、目当ての本が出てこない。
NAMEは一息つくと、脚立を引っ張り出した。
「仕方ない。上から全部探していくか」
意を決し、NAMEは自分の倍以上の高さのある本棚の一番上から、本を探し始めることにした。
「……しかし埃っぽいなぁ。こんなのリヴァイが見たら大変なことに…」
「俺がなんだって?」
「え、!わっリヴァイ…!!」
上の方は誰も出し入れをしない為か埃が酷く溜まっていた。潔癖症のリヴァイがここを見たらとてもじゃないが許せないだろう。
そんなことを思いながら、念入りに探しても見つからない本にいい加減別の資料でもいいかと思い始めた頃、まさに今思っていた人物が現れNAMEは思わず脚立の上で肩を震わせた。
リヴァイはいつものように眉を寄せながら、怪訝そうにNAMEを見上げる。
「てめぇは、怪我が完治してねぇくせにそんな高いところに上ってどういうつもりだ。あ?」
「あ、えと…探してる資料が見つからなくて…はは、でも大丈夫だよ。さすがに落ちたりなんかしないし」
「そもそも必要以上に動き回るんじゃねぇよ。治るもんも治らねぇだろうが」
仰る通り。と納得せざるを得ないリヴァイの正論に、NAMEはすごすごと脚立から降り始めた。
と、その時。
今まで見ていた本棚から、中々の大きさの蜘蛛がNAMEの目の前にスッと現れた。
「っっっ!!?き、きゃああああああああっ!!!!!」
「!?NAME!」
目の前の蜘蛛に驚いたNAMEは、そのまま脚立から足を踏み外した。
脚立から落下するNAMEをリヴァイはなんとかキャッチし、抱きかかえたまま尻もちをつく。
脚立はグラリと傾き、ガシャアンと大きな音を立てて横に倒れていった。
「お前な…、」と呆れた声を掛けようとしたリヴァイだったが一瞬言葉を失った。なぜなら、落ちてきたNAMEがリヴァイに抱きとめられた瞬間、そのままリヴァイの首に両腕を回して抱きついていたからだ。
「…おい…、これは、どういう状況だ…」
「っ…リヴァイ、………と、…って…!」
「あ?」
「と、とってぇ!く、く、蜘蛛…!!」
その言葉にリヴァイは拍子抜けした。
この女は、あんなに巨人と勇ましく戦えるくせに、ちっぽけな蜘蛛如きにビビっているのかと。
リヴァイはくっと喉を鳴らして笑った。
そして、そのままNAMEの背中に腕を回し、ぎゅうと力強く抱きしめ返す。そのリヴァイの行為に、NAMEは急に、自分がとんでもない行動をしていると気付いた。
途端に熱くなってくる顔や身体から、タラタラと汗が噴き出る感覚に慌てる。
「あ、え、っと…リ、リヴァイ、ごめん、急、に…」
「おい、動くな。とれねぇだろうが」
「ひっ!?や、やだやだ、とって、とって!!」
「ああ。…とってやるからちょっと黙ってろ」
そうリヴァイは答えたが、いくら待ってもリヴァイが動く気配はない。
ただ、自分の身体を抱きしめる力が強くなっていくのを感じ、NAMEはもう一度声を掛けようとした。
しかし。
「兵長ー!さっきすごい音してましたが資料は見つかりまし…っ!?」
「っ!」
「あ、しっ失礼しましたっっ////////!!」
タイミングよく現れたペトラは、互いに強く抱き合うNAMEとリヴァイの姿を目の当たりにすると、顔を真っ赤にして慌ててその場から走り去っていった。
「っリヴァイ!!ペトラ、ペトラに見ら、見られ…!!」
「ああ」
「あ、ああ、って…」
ペトラとは真逆に顔面蒼白になったNAMEは、リヴァイから離れようと首に回していた手を肩に置き、ぐっとリヴァイを押し返す。
しかし、リヴァイの力は増すばかりでNAMEの力は全く意味がない。
「あ、あの…リヴァイ?…は、離して」
「…てめぇから抱きついてきたんだろうが」
「っ////ご、ごめんってば!もう大丈夫だから…!離してっ」
「断る」
「リヴァイ!?」
「誰が離すかよ。
…ようやく捕まえたってのに」
「え、…」
「…てめぇは、すぐ逃げる」
ドクンドクンと、自分の心臓の音が爆音で流れているようにハッキリ耳に聞こえてくる気がした。
NAMEは言葉に詰まりつつ、ゆっくりと口を開く。
「…リヴァイ…、に、逃げ、ないから。…離して…?」
リヴァイはその言葉でゆっくりと力を緩めたが、その手はNAMEの腕をがっしりと掴んだままだ。
「…ペトラ、誤解、したと思うから…ちゃんと話してきて」
「…あいつは、何も誤解なんかしちゃいねぇよ」
「だ、だって、きっと彼女は、リヴァイのことが好きなんだよ?」
「ああ、…知ってる」
「っ!……だったら…ちゃんと誤解、解いてあげてよ…」
―泣くな…!
泣いたらリヴァイが気にする。今はペトラのところへ行かせなきゃダメだ!
振られるのはあとででいい。
今は泣くな!
「…あいつが、俺に好意を持っていることは知っている。
だが、…俺がお前に惚れていることも、あいつはちゃんと知ってる」
「……………?……………へ…」
…え、…今、なに…?
「……リヴァ、イ。…今、な、なんて…」
「…聞こえなかったか?」
NAMEとリヴァイの視線が絡み合う。
堪えていた涙が一粒頬を伝った。
―リヴァイが、真っすぐ私を見ている
ずっと、この瞳で、私だけを見ていてほしいと願ってた
そのリヴァイの瞳が、今私を見てくれている
夢じゃ、ないのかな…
NAMEの瞳から、ポロポロと涙が溢れだす。
ただ、リヴァイを見つめているだけの、どこにも力の入っていない状態でもその涙は止まることはない。
リヴァイはその涙に優しく触れた。
「…き、…聞こえ、たよ…?
でも…聞き間違い、かも、しれないし」
「ならせいぜいしっかり聞いておけ。
俺は、お前に惚れていると言ったんだ」
その言葉を聞いた瞬間、NAMEは眉を寄せ溢れる涙が勢いを増す。
ぼやけるリヴァイの顔を、NAMEは目を細めてしっかりと見据えた。
「わ、私も…っ
私…ぅ、…ずっと…、っ、リ、リヴァイ、がっ…ぅうっ」
涙と一緒に息も乱れる。
リヴァイは、NAMEの髪に触れ、頬に触れ、耳の後ろを通って後頭部に手を回した。
優しい瞳で見つめるリヴァイに、NAMEの涙は止めどなく溢れていく。
「ああ、ちゃんと聞いてるぞ…俺が、なんだ。
…言えよ、NAME」
「っ…リヴァイが、…好きぃっ…
―っんぅ…!」
その言葉を聞いた瞬間、リヴァイはNAMEの後頭部に置いていた手を一気に引き寄せ、噛みつくようにNAMEの唇を奪った。