素敵な夢になりますように…
darling 9
Name change
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壁外から戻って2週間後の今日、NAMEはようやく病室から出た。
肋骨7本の骨折と右肩の脱臼、右足首の捻挫、全身の打撲、裂傷多数…
と、色々と怪我はしていたが、それでも他に運び込まれた兵士達に比べれば軽傷だった。
通常、1ヶ月は安静にしなくてはいけないようだが、NAMEは2週間で骨もくっつき、足首もまだ痛みはあるが歩けない程ではない。
これ以上ベッドに横たわっていては身体がなまってしまうと、ここの所毎日思っていた。
松葉杖をちゃんと使うのと、あと1週間は訓練は厳禁、検診も毎日来ることを条件に、NAMEは自分の部屋へ戻る許可を得たのだ。
時刻はお昼を過ぎた頃。
自室へ戻る途中窓の外に目を向けると、そこには馬に乗ってる兵士達がいたり、休憩中なのか木の下で本を読んだり、昼寝をしたりしてる者もいた。
何気ないこの平和な光景に、NAMEの表情は緩む。
しかし、すぐにその表情はまた硬くなっていった。
この2週間、班員達やハンジ、ナナバなど、代わる代わる見舞いに来てくれていたが、リヴァイは一度も病室に来なかった。
NAMEは、リヴァイが来ない理由は単に壁外調査後は忙しいから、というのもあるし、そもそも、自分達はそんな間柄ではなかったはず、と自分に言い聞かせていた。
ただ、ここのところリヴァイとの距離が近くなったような気がしていたこともあり、会えないことに寂しさを感じていた。
諦めると決心したくせに、なんて自分はこうも情けない人間なんだろうと思い知らされ悲しくなる。
そして、そんなことを考えてNAMEの顔はみるみる青くなっていった。
…ていうか、私、一体どんな顔してリヴァイに会えばいいんだろう…
『リヴァイが好き』
『…今、なんて言った』
あああああああああああ!!!
思い出しただけで顔から火が出そうだ
ああ、なんで私のこの口は…!!
アホすぎる!馬鹿すぎる!
きっとリヴァイの顔を見たら平静でなんていられない。
2週間、会えなくて寂しい反面、ホッとしている自分もいた。
でも、いつまでも会わないわけにはいかない。
いつかは会う。
とにかく、落ち着こう。
どっちにしろ、中途半端に逃げちゃいけないんだ…
…この想いを断ち切ろうと決めたじゃないか。
言って、きっぱり振られれば諦められるじゃん!
「よしっ!!!」
そう決意を新たに自分に活を入れて歩みを進めると、ぷっと笑う声がNAMEの耳に聞こえてきた。
その声に反応したNAMEはパッと顔を上げる。
そこには、くっくっと声を殺しながら笑うエルヴィンが立っていた。
「元気そうだな、NAME。安心したよ」
「エ、エルヴィン…」
百面相のように表情を変えるNAMEをしばらく見ていたのだろう。エルヴィンは尚も笑いが止まらない様子だ。
いつから見られていたのか。考えると恥ずかしくなってくる。
しかし、いつまでも笑い続けるエルヴィンに、NAMEはムスッとして口を開いた。
「もう!エルヴィン、そんなに笑わなくってもいいでしょ!」
「ああ、はは。すまない。…いや、しかし、悪かったな、見舞いに行けなくて」
「…ううん。大した怪我じゃなかったし、それに団長様はお忙しいでしょうから」
「はは、ああ。ホントに、猫の手も借りたいくらいだな。」
「お疲れ様。ごめんね、私が2週間も使えないから仕事増やしちゃったよね。」
「なに、心配するな。普段研究にかこつけて書類整理からうまく逃れているハンジに回したからな」
「ぷ。あはは!そっか、だからハンジいつも眠そうだったんだ。お礼言わなきゃ」
子供のように無邪気に笑うNAMEに、エルヴィンは優しく微笑み、ポンと手をNAMEの頭に乗せた。
NAMEは「ん?」と微笑みながらエルヴィンを見上げる。
「本当に、無事に帰ってきてくれて嬉しいよ。
君の班員達が全員生きて戻ってこれたのも、君の力だ。」
「…、エルヴィン、私だけの力じゃな…」
「全部聞いてるさ。それでも、…最後まで、よく戦ったな。
今回も生きて戻ってこれたのは、紛れもない君自身の力だ。自信を持て。
…これからも、君に期待している」
「エルヴィン…。…はいっ!!」
NAMEは、今までで一番力強く敬礼をした。
とても、その言葉が嬉しかったから。
お互いに微笑み合うと、NAMEは松葉杖をつきながら歩を進めた。
エルヴィンも一歩足を踏み出したところで、「あ、そうだった」と声を漏らしてNAMEを呼び止めた。
「なに??」
「ハンジが、書類の確認をNAMEにすると言っていた。恐らくあとで君の部屋に行くだろう。君が自室に戻る話は聞いているはずだからね。
書類、準備しておいてやってくれ」
「あ、そういえばこの前言ってたかも!私のデスクに置いたから戻った時に確認してほしいって…。忘れてた。ありがとエルヴィン!」
そう返すと、エルヴィンは笑ってまた歩み出す。
しかし、今度はNAMEがエルヴィンを呼び止めた。
振り返ると、NAMEは目を泳がせ、言いづらそうにあ、だとか、う、だとかモゴモゴとしている。
エルヴィンはまた一つクスリと笑い、声を掛けた。
「リヴァイなら、今日中には仕事が落ち着くぞ」
その言葉にバッとエルヴィンと目線を合わせたNAMEは、顔を赤くさせながらまたえ、あ、と口をパクパクさせている。
「聞きたいのはそれだろう?
…働き詰めで相当機嫌は悪いが、NAMEの元気な姿を見たら安心するんじゃないか?」
そう言ってニヤニヤと笑うエルヴィンは、「それじゃ失礼するよ」と手をヒラヒラと振りながら今度こそ歩いていった。
残されたNAMEは、エルヴィンは本当に何でも知っているんじゃないかと、我が団のトップは侮れないと改めて感じたのであった。
・-・-・-・-・-・-
「お!リヴァイじゃないか!」
書類整理はまだ残っているが、キリの良いところで昼飯でも取っておこうと食堂に向かう途中だった。
前から歩いてくる変人に見つかり、食欲が一気に失せる。
「やだなー、そんなあからさまに嫌そうな顔しないでよ」
「これは地だ。てめぇこそ、そのイラつく面はなんとかならねぇのか」
「うわ、いつにも増して気が立ってるね。なになに?なにかあった?」
「用がねぇなら絡むな、鬱陶しい」
ハンジの言葉にイラつきは増したが、確かに気は立っている。
壁外から戻ってこの2週間、俺は書類整理や報告書の確認、エルヴィンに同行して王都へ行ったりだとか、会議だなんだと仕事に追われていた。
お陰でNAMEには一度も会っていない。
人づてに、NAMEの怪我は大したことないというのは聞いて安心はしたが。
壁外から帰った時の、あの言葉を早く確かめたいってのに次から次へと仕事を持ってこられ、ストレスは日に日に増していく。
元はと言えば、こいつがあの時邪魔さえしなければ。
そう思わずにはいられない目の前の元凶を、俺はひと睨みした。
「あ。そういえば、NAMEが医務室から自室に戻れたって話は聞いた?」
「あ?」
「さっき、医療班の子から今朝許可が出たって話を聞いたんだ。
だからもう戻ってると思うんだよね。
これからNAMEのとこへ行こうと思っててさ!どうせ書類を確認してもらう予定だったし。リヴァイも一緒に行く?」
それを早く言え、クソ眼鏡
俺は隠さず舌打ちをして「ああ」と答えた。
本当は、こいつがいない時にゆっくりと二人で会うつもりだったが…
そんなことを考えた結果2週間もタイミングが合わず顔すら見れなかった。
今はとにかく、あいつの顔が見てぇ。
それが叶うと思うだけで、いつもは不快にしか感じないハンジの話も気にならなくなった。
単純、…ガキのようにコロコロと変わる自分の感情に溜め息が出る。
―コンコンコン
「あ、待って!誰ー!?」
「私だよ、ハンジだ!」
「ああ、ハンジか。どうぞー!」
ハンジがノックをすると、中からNAMEの声が耳に届く。
ハンジがガチャリと扉を少し開けた時、「ハンジ分隊長!」と声を掛けるモブリットが廊下の先に現れた。
それに気付いたハンジは、「ちょっとごめんよ」と言ってモブリットの元へと駆けていく。
俺はそれを横目に見ながら、軽く開いたドアをそのまま大きく開いて中へと入った。
「ハンジごめん、書類ってどこに置いたのー?」
扉を閉めると、デスクの向こう側でゴソゴソと音を立てながらNAMEの声が通る。
ハンジが入ってきたと思っているのだろう。
顔は見せないが「どんなやつー?」などとずっと話しかけてきている。
ああ、NAMEの声だ
たった2週間だが、ひどく懐かしく感じた。
俺は、相当NAMEに会えないことで参っていたんだと実感した。
「さっきからずっと探してるんだけど見つからな…
―っ!!??リヴァイっ!?」
ようやく姿を見せたNAMEは俺を見て驚いたが、恐らくそれ以上に俺はギョッとした。
目の前のNAMEは、風呂上がりなのか濡れた頭にタオルを掛け、上半身は何も身につけていなかった。
白く滑らかな肌に、髪から落ちた滴が伝う。
鍛えられているその身体も、腰は細く女らしい曲線が残る。
そして、二つの双丘。
その先端はタオルで全く見えなかったが、形や大きさはありありと分かる。
俺がいると思ってもいなかったNAMEは、ひどく慌ててバスルームへと駆け出したが…
確かこいつは足も怪我していたはずだ。
案の定、NAMEはそばにあった松葉杖に引っ掛かった。
俺は条件反射でデスクを飛び越え、派手に転びかけるその身体を支えた。
「落ち着け。…また医務室に戻る気か」
前に倒れていくNAMEの腹に腕を回し、そのまま引き寄せて同時に床に落ちた。
今、俺の足の間にNAMEが背を向けて座っている。
頭に掛けていたタオルは前に落ちて、もはやNAMEの上半身を隠すものは何一つない。
俺の目の前には、NAMEのうなじと、女らしい肩と背中が広がっていた。
抱きてぇ…
そんな考えが頭を支配し、吸い込まれるようにその白い首筋に口を寄せようとした時だった。
「ご、ごめん!ハンジだけだと思ってて…////、その、こんな、格好で…。
きっ着替えてくるね。えええっと、ハンジはっ?」
クソ眼鏡の名前を出された俺は、胸糞が悪くなり同時に頭が落ち着いた。
腹に回していた腕を離すと、NAMEは落ちたタオルを拾って上半身に掛ける。
恐る恐る振り返るNAMEの顔は真っ赤だ。
ガラじゃねぇが、久しぶりに見るNAMEの顔がホントに愛しくて仕方ない。
そんな考えがバレねぇように、眉間の皺を深くした。
「もうじき来る。さっさと着替えてこい」
NAMEはコクリと頷くと、ひょこひょことバスルームへ消えていった。
…一体、何度目だ
なんだってこんな生殺し状態を何度も味わわなきゃならねぇ
はぁぁと大きく息を吐きだすと、扉がガチャリと開いた。
「NAMEー!医務室から解放された気分はどう…ってあれ?NAME?リヴァイー?」
「チッ…ここだ。うるせぇな」
「え?そんなとこで何やってるの?」
ようやくやってきた、呑気な声を出すハンジに舌打ちをし、入り口からは見えないデスクの向こう側から面倒で顔も見せずに声を出せば、デスクに手をついてハンジが覗き込んでくる。
俺はその場に座ったまま答えた。
「てめぇが寄越した書類がねぇんだとよ」
「ええ?そんなはず…」
そんなやり取りをしていれば、バスルームからTシャツを着たNAMEが顔を出す。
「あ!ハンジ!書類なんて置いてなかったよ?さっきからずっと探してるけど…
ホントにデスクに置いたの?」
「勿論だよ!確か先週目を通して、モブリットにも確認してもらってからNAMEの部屋に…っああ!!モブリットに確認してもらったあとそのまま引き出しにしまっちゃった気がする…!!!!」
しまった、と頭を抱えるハンジにNAMEは呆れているようだ。
だが、その顔はどこか楽しそうに緩んでいる。
怪我を負い、痛みに耐える顔を見ると、俺だったらよかったと何度も思った。
そのNAMEが、元の穏やかな表情でここにいる。
元気そうなNAMEを見て安心した俺は、「すぐ取ってくるから!」と言って部屋を出るハンジに続いて扉に向かった。
「あ、リ、リヴァイ?」
「…なんだ」
「な、何か、用事があったんじゃない、の?」
「……いや。お前の顔を見に来ただけだ。…見舞いに行けなかったからな」
「あ////そ、そう、なんだ…」
そう言うとNAMEは途端に目を泳がす。
あの時の言葉が俺の聞き間違いでなければ、こいつは俺に惚れている。
…そうなんだよな?
それならば、俺は一切遠慮はしねぇ
お前を手に入れるだけだ
「おい、NAMEよ」
「えっ、なに?」
「俺は今日中に仕事を終わらせる」
「…?、うん?」
「明日の夜は空けておけ」
「え、…なん、で」
「わからねぇ訳ねぇだろ?」
「っ…」
「明日、またここに来る」
そう言い残し、俺は部屋を出た。
もう絶対に逃がさねぇぞ
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