素敵な夢になりますように…
darling 8
Name change
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「チィッ!!」
視界の悪さから、リヴァイはやむを得ず今の場所からさらに隣の建物へと飛び移った。
NAMEはどこだ…!
激しく舞う砂ぼこりの中を、高い煙突の上から必死に目を凝らす。
巨人も身体を屈めているのか、薄い影しか確認できない。
リヴァイはもう一つ舌打ちをすると、さっきまでNAMEがいた位置へ向かい屋根の上を駆け出した。
その瞬間、アランの声が響き渡る。
「分隊長っっ後ろ!!!!!!」
「!?-っ…!」
アランの声に即座に反応したNAMEだったが、立体起動装置の使えない状態では結局何も出来ない。
前にいる巨人が、腕を伸ばしてNAMEを後ろから鷲掴もうとしたのだ。
ゆっくりと晴れていく靄により、NAMEの身体が巨人の手の中におさまっていくのも、スローになったようにリヴァイ達の瞳に映った。
―ボキボキッ
「ぐ、ぅっ…!!」―ブシュウッッ
「分隊長ーーーっ!!!」
巨人の手からは、骨が折れるような音と共に真っ赤な血飛沫が大きく噴き出した。
それと同時に意識を手放したNAMEの身体や顔には、その赤い血が飛び散る。
飛び出そうとするアランをエルドが抑えた時、二人の目の先には、掴み上げたNAMEを眺めながらゆっくりと立ち上がる巨人がいた。
その手は、巨人の口へと向かっていく。
どこまでもスローモーションに見えているのに、この身体は何もすることが出来ない。
助けられない。
愛しい人が巨人に喰われるのを、見ていることしかできないのか…!!
アランは自分の無力さを心の奥底から呪った。
そして、無力で役立たずの自分が唯一出来ることは、叫び、助けを求め、託すことだけだった。
「兵長っっ!!分隊長を助けてくださいっっっっ!!!」
「ったりめぇだ!」
閃光のように巨人の背後に現れたその姿に、アランは、苦しみ細めていた目を大きく見開いた。
「クソ野郎…、その汚ぇ手で、そいつに触れるんじゃねぇ!!!!」
―ズバァッッ!!!!
「!NAMEさん!」「!!!」
リヴァイが一瞬でその巨人のうなじを削ぎ落とした瞬間、巨人の指が緩み、ズルリと中からNAMEと、手放されたブレードがひゅっと抜けた。
エルドとアランは、頭から落ちていくNAMEを見ても一歩も動くことが出来ない。
今までスローで見えていた景色が一変し、NAMEが落下するのを目で追うのが精一杯だ。
間に合わない…!!
エルドとアランはそう思った。
しかし、リヴァイはうなじを削ぎ落とした瞬間、着地した巨人の肩から思い切り踏み込んでいた。
「―っあぁぁぁああッッ!!!」
リヴァイはガスを最大に放出し、勢いよく地面へ向かって降下する。
ギリギリでアンカーを抜いて奥の工場の壁にまたアンカーを突き刺し、そのままガスを噴出させた。
目にも止まらない速さで操作装置を操るリヴァイは、落ちてくるNAMEの身体を地面に激突するすんでのところでキャッチした。
「っ…はあぁぁ…さすが、兵長…!」
「…、…す…すごい…」
その一瞬の光景に目を奪われていたエルドとアランは、ほー、と安堵の溜め息をついた。
そしてリヴァイがNAMEを抱きとめたまま建物の屋根に上がった時、先程の巨人がズゥン、と地響きを立てて倒れ込んでいった。
「ぅ…、」
「!NAME…」
「リ、ヴァ…イ」
腕の中にいるボロボロのNAMEが身じろいだのを感じ、リヴァイは息をしているNAMEを見て安堵の息を漏らした。
「呼吸は、普通にできるか?」
「うん、へい、き。…みんなは…?」
「…全員、無事だ」
「そう、…よかった」
自分のことよりもまず部下達の安否を確認するNAMEに、リヴァイは相変わらずだなと心で思った。
「馬鹿野郎、無茶ばかりしやがって。
お前が一番重症だ。もう喋るな」
「大、丈夫…肋骨は、何本かいったかも、だけど。はは…」
そうニヘラっと笑うNAMEに、リヴァイは眉間の皺を深くする。
「…んなわけねぇだろ、この出血…」
「え…?あ、これ、巨人の、だから」
「あ?」
そうNAMEが答えると、その血は徐々に蒸気を纏って消えていく。
巨人の血なのは確からしい。
NAMEはギギギ、と音が鳴りそうなぎこちない動きで両手を持ち上げた。
「ブレードを、ね。こう、握り潰される前に、つっかえ棒みたいにしたから、巨人がそれ握って…血が噴き出したんだと思う。あいてて、、」
「…は。あの状況でよく頭が回ったな、…大した奴だ」
NAMEの説明にリヴァイは目を丸くすると、すぐにその目はいつもよりも柔らかいものとなった。NAMEはその目に見入ってしまう。
「……」
「…なんだ、どっか痛むのか」
「うっううん…なんか、褒められたのが嬉しい、なって…。
…助けてくれて…ありがとう」
「………」
いつになく素直なNAMEに、リヴァイは面食らった。
顔を赤らめ、恥ずかしそうに礼を言うNAMEを見て、思わず抱きかかえる腕に力が入る。
「…酒、でも飲んだか?」
「え?…なに…?」
「いや、なんでもねぇ。
…もう黙ってろ。あばらに響くぞ」
そう言ってそっぽを向いたリヴァイは、NAMEを抱き直してエルド達の元へと向かった。
NAMEが素直に礼を言えたのには理由があった。
自分が巨人の口に運ばれる瞬間、うっすらと意識の戻ったNAMEは、ああ、死ぬ。と漠然と思った。
そしてそう思った直後、鬼のような形相のリヴァイが巨人のうなじを切り裂き、その瞬間、身体が重力に従い降下した。
そのほんの数秒で、NAMEの頭には走馬灯のように思い出が駆け巡り、なぜ今まで素直な気持ちをリヴァイに伝えなかったのだろうと悔いた。
その間に下へ向かっていた身体が急に真横へと力が加わり、薄く目を開ければ、そこにはこの世で一番頼もしく、愛しい腕が、力強く自分を抱き締めてくれていた。
NAMEは、また救われたと、とてつもない安心感と、感謝の気持ちで一杯になった。
・-・-・-・-・―・-・-・-・-
「NAMEは俺が抱えていく」
「え”!////い、いいよっ一人で乗れ―っ痛…」
「言わんこっちゃねぇ。てめぇは動くな」
班員と合流したリヴァイ達は、すでに帰路についているエルヴィン達を追いかける為準備を始めた。
ペトラは亡くなった兵士の立体起動装置を集め、まだ使える物を故障したリヴァイの装置と交換する。
その際、怪我を負ったNAMEとベックをどうするかという流れになった。
馬車は先程の巨人の瓦礫攻撃で大破してしまい、怪我人を乗せることは出来ない。
幸い、ベックは軽傷の為誰かの後ろに乗せてもらう形で大丈夫そうだが、NAMEの今の状態では自力で座ることも出来ず、誰かが抱きかかえないと難しい。
当然のごとく名乗り出たリヴァイに、NAMEは全力で拒否するが身体が言うことをきかない。
班員達も、何かあってもリヴァイならNAMEを抱えたまま対処出来るだろうと、満場一致で委ねられることとなった。
「グンタ、ルース。お前らはNAMEとベックの馬を引け」
「「はい!」」
「アラン、お前はベックを後ろに乗せていけ」
「はい!」
「エルドは俺と前方、ベック、お前は後方を見ていろ。
ペトラとオルオは左右を警戒して走れ!」
「「「はいっ!!」」」
「いいか!壁まで帰るだけだ、気を抜くなよ!」
リヴァイの声に呼応した班員達は、すばやく配置について馬を走らせた。
「…悪いな、揺れるが辛抱しろよ」
「…ごめん。お荷物になっちゃって…」
「…んなこと思ってねぇ。余計なこと考えてねぇで寝てろ」
「でも…」
「安心しろ。俺がお前を死んでも守る」
「っ…////////」
この男は、どこまで私の心臓を締め付ければ気が済むのだろう。
そんな事を考えているNAMEの隣では、エルドもちゃっかり話を聞いて顔を赤らめていた。
馬の振動も気にならないほど力強く抱きしめられ、NAMEは言われた通り安心し、その温かい腕の中でふっと意識が薄れていった。
・-・-・-・-・―・-・-・-・-
「ん…、」
「気付いたか」
「…、!ご、ごめ…ホントに眠って…いっ」
「馬鹿が、いきなり動くな。
…もう本部に着くから落ち着け」
穏やかな馬の足音が耳に届く。
軽く身体を起こしてその景色を見れば、見慣れた壁の中の、平和なそれが広がっていた。
息を吐いて安堵するNAMEに、リヴァイもふ、と笑った。
「今回もお互い生き延びたな。
ああ、お前の班は、また生存率が伸びたぞ」
そう言ってまた柔らかく笑うリヴァイを、NAMEはじっと見つめた。
―リヴァイ…
ああ、生きてるってなんて尊いのだろう
死にたくない
死なせたくない
リヴァイと、この残酷な世界をずっと生きていたい
あなたと、ずっと一緒にいたい
だってこんなにも…
「リヴァイが、好き…」
「…」
「…」
―あ、れ…、私…今、
「…おい…今、なんて言った」
「―っ!!(こ、声に出て…!!)」
「いやーー!!NAMEおかえりーっっ!!!」
本部前に到着した瞬間、遅れていたリヴァイとNAMEの合同班の帰還に、ハンジが両手を上げて出迎えた。
リヴァイはこれ以上ないくらいの皺を寄せ、会話をぶった切ったハンジを睨みつけるが当の本人は怪我をしているNAMEしか目に入っていない。
そしてハンジの後ろに控えていた医療班の班員達は、そのままNAMEを医務室へと運んでいった。
to be continued...
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