素敵な夢になりますように…
darling 8
Name change
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ペトラは、自分を捕まえようと巨人が振り回す腕を、流れるような身のこなしで見事に躱していく。
そして、裏道へ誘い込んだペトラは身体を切り返し、巨人の脇を抜けて背後に回った。
ペトラを捕まえ損ねた巨人は、そのまま追いかけ身体を反転させる。
その瞬間、巨人の視力は一瞬で奪われた。
巨人が振り向くと同時に、NAMEが巨人の両眼を潰したのだ。
一気に何も見えなくなった巨人はヨロヨロと膝をつく。
アランは、その時を待っていたかのように巨人のうなじにアンカーを刺した。
「とったぞ…!!
く、た、ば、れぇぇぇぇっ!!!!!!」
ズシャアッ!!!
と大きな音を立て、巨人は倒れた。
シュゥゥと蒸発の音と蒸気が辺り一面に立ち込める。
NAMEは後ろを確認すると、リヴァイの方も討伐したらしく、こちらに手を上げて合図を送ってくれている。ペトラが報告をしに行ってくれたようだ。
エルド達の方も片付き、どうやらベックの手当てと残りの設営、そしてガスの補給を始めているようだった。エルドがこちらへ向かおうとしているのが見えたので、きっと報告をしに来てくれるのだろう。
NAMEはほー、と安堵の息を漏らして屋根の上にへたり込んだ。
こんなに沢山の巨人を一気に相手にしたのは初めてだった。
一度は怯んだが、自分や部下達を鼓舞できたこと、そして何より、班員が誰一人命を落とさなかったことにとにかく安心した。
下にいるアランに目を向ければ、アランも上を見上げたところのようでNAMEと視線が重なる。
アランの装置は丁度ガスがなくなり、頭をガシガシと掻きながらセーフ、というジェスチャーをしている。
それを見たNAMEはふふ、と笑い出し、親指を立てて「よくやった!」と声を掛けた。
そしてちょうどその時だ。
ようやく、陣形の中央から青の信号弾が放たれた。
撤退の合図だ。
NAMEはもう一度胸を撫で下ろした。
だが、壁に着くまでは決して油断できない。
NAMEは気を引き締め直して立ち上がり、アランに「ガスの補給をしに行こう!」
そう声を掛けようとした。
そんな時だった。
リヴァイの張り上げた声が耳に響く。
「逃げろっ!!!奇行種だ!!!!!!!!」
「!!?」
その声を聞いたNAMEはバッと振り返ると、猛スピードで地を這うような四足歩行の巨人が走ってきていた。
身体を低くしている所為で発見が遅れたのだ。
巨人はその勢いのまま、アランに向かって走ってくる。
「チィッ!!
ペトラ!黒の信号弾を撃て!!!!!!!」
「はっはい!!!!!」
リヴァイはペトラに指示を出しながら奇行種を追いかけた。
放たれた黒い煙に、こちらに向かってきてるエルドや、ガスの補給をしているオルオ達も気が付く。
NAMEは屋根の上から、身体が止まってしまっているアランに叫んだ。
「アランっ馬に乗って!!!そこから左の路地を抜けたところにいる!!!」
「!はっはいっっ!!!!」
ハッと我に返ったアランが走り出したのを確認すると、NAMEは巨人目掛けてアランとは逆方向に信号弾を放つ。
巨人はその信号弾を放ったNAMEに視線を向けた。
「はいはーい!!こっちだよ巨人くん!!」
NAMEは巨人を反対側へ誘導しようとすると、巨人はぬらりと立ち上がった。
「う、わ。15m級か、よ…」
四足歩行から二足歩行に切り替えた巨人は、悠々と屋根を超える高さだ。
巨人はそのままくるりと視線を戻すと、再びアラン目掛けて突進を開始した。
「なっ!…っこれだから奇行種は…!!
待てこの木偶の坊っっ!!!!
「!あ、の馬鹿…!!NAMEっ無茶するな!!!!!!」
リヴァイは、ガスがもうなくなるはずのNAMEの無茶な行動に気付き追いかける速度を速める。
しかし、発見が遅れた所為もありどうしても距離が縮まらない。
図体の割に素早い巨人にリヴァイは焦った。
そして、NAMEも焦った。
追いつかない…!!
「アランっ!!!!!!」
NAMEが叫び、アランは必死に走りながら迫りくる巨人を振り返った。
そこには、自分の身体以上の掌が視界を覆い尽くしているのが見えた。
潰される
そうアランが思った瞬間、急に世界がスローになった気がした。
ああ、分隊長、みんなで生きて帰ると約束したのに守れなくてすみません…
帰ったら、ちゃんと振られるはずだったのに、逃げて、すみません…!
………
…っく、そ!
俺は!もっと、みんなと戦いたい…!
あの背中に、追いつきたい!!!!!
「諦めるかぁぁぁぁ!!!!!」
アランは残っていたブレードを振り抜き、巨人の指をバラバラに斬り落とした。
その反動で態勢を崩したアランはその場にゴロゴロと倒れ込む。
しかし巨人も、指を斬られたことで一瞬動きが鈍る。
その一瞬をNAMEは逃さなかった。
「私の部下にっ!!手をっ、出す、なぁぁぁっっ!!!」
NAMEは巨人の膝裏を瞬時に斬り裂いた。
その際にブレードが欠けたが、巨人はドォンッと音を上げて膝から崩れ落ちていく。
その時アランのところに追いついたエルドが、アランの身体を抱えて素早く屋根の上に飛び上がる。
NAMEはそれを視界に入れると巨人のうなじにアンカーを刺しそのまま斬り抜いた。
巨人は血飛沫を上げながら、ゆっくりと倒れていく。
NAMEは巨人が倒れるのと同時に地面に着地した。
リヴァイは、はー、と息を漏らし動きを止め、後ろからついてきていたペトラに指示を出した。
「ペトラ、まだ巨人がいるかもしれねぇ。周囲を警戒しながらオルオ達と先に合流しろ。
俺とエルドはNAMEとアランを連れて向かう。」
「了解です!!」
「ふぅー…。エルド、ありがとう!アランー、無事―??」
「は、はい!!」
アランが上から答えれば、今度はNAMEが、ガスのなくなった装置に気付いてセーフ、と下で表現した。
互いにふっと笑い合い安堵した。
そう、この場にいる全員が安堵した。
だからこそ、誰も気付けなかった。
先の1体を倒した時の蒸気がまだ立ち込めていたことも、その所為で、それが今倒した巨人のものだと錯覚していたことも、NAMEのブレードが欠けた所為で僅かにうなじを削ぎきれていなかったことも。
窮地を脱したことに安堵して油断し、詰めの甘さに気付かなかったことに後悔した。
「さ、ガスを補給しに行くぞ、アラン。」
「はい!…分隊長!先に行ってま…(?あ、れ?…俺が斬り落とした指って右手だった、よな…)」
「はーい!私もすぐ行くから!エルド、アランをよろし」
「分隊長っ!!!巨人が再生してます!!!!」
「ガアアぁアァあああアアアッッ!!」
「「「!!?」」」
「チィッ!!死んでなかったか、クソ野郎が!!」
アランの声でNAMEが背後を振り返ると同時に、ガバリと起き上がった巨人は耳が千切れそうになるくらいの声で吠えた。
反射的にブレードを構えたNAMEだったが、その声に思わず耳を塞ぐ。
巨人は四つん這いのまま右手を振り上げて勢いよくNAMEにそれを振り下ろした。
NAMEは後ろに飛んで避けたが、耳を塞いでいた為万全の態勢で踏み切れなかった。
「―っっっっつぁ”っ!!!!」
「NAMEさん!!」「分隊長ぉ!!!」
巨人の手との衝突は避けれたものの、間近で風圧を受けたNAMEはそのまま建物の壁まで吹き飛ばされ、背中を強打した。
ズルリと壁をつたってNAMEの身体は落ちていく。
エルドとアランが名を叫ぶと、NAMEは「ゴホッ」と咳き込んでヨロリと立ち上がった。
よかった!生きてる
そうエルドとアランが安堵したのも束の間、巨人は立ち上がると、目の前の屋根の瓦を腕全体で撫でるようにその腕を振り抜いた。
―ドォンドォンドォンッ
「!チッ」
「「「うわああっ」」」「きゃあああ!!」
「うわ!!」「く、アラン掴まれ!」
「っっ!?」
NAMEが目を開くと、そこには巨人の腕で集められた瓦が班員達へと大砲のように飛ばされていく信じられない光景が映った。
これは、本当にただの奇行種なの…?
知性があるように感じる…
そんな不気味な考えに一瞬ふけっていたNAMEだが、呆然としている場合ではない。
今の攻撃でみんなが無事かどうかが分からない。
アランとエルドは隣の建物の煙突に隠れたのは見えた。
オルオ達は見えない。ここからは距離がある。きっと無事だ、信じるしかない。
しかし、リヴァイが見えない。
さっきまであの屋根にいたはずだ。
…まさか今の攻撃をモロに受けてしまったんじゃ…
僅か1秒足らずでその不吉な推測まで考えたNAMEだったが、住居の間を飛び越えるリヴァイをその目で捉えた。
ほっ、と息を吐いたが、リヴァイは飛び移る際にアンカーを出していなかった。
立体起動が壊れたのかもしれない。
そんな考えを巡らせているうちに、NAMEは巨人が再び別の屋根に視線を向けたのに気が付いた。
こいつ…!目の前にいる私じゃなく、みんなを狙ってる…!!!!
リヴァイは生きてる…!でもきっとこいつを倒しにリヴァイは飛んでくる。
その時また同じ攻撃を受けたら今度は本当に死んでしまうかもしれない。
どうする!どうすればこいつは攻撃を変える!?
私は立体起動に移れない
考えろ、考えろ、考えろ…!!
ジンジンと、さっき強打した背中の痛みを感じながら、NAMEは必死に頭を回転させる。
その時、パラパラと屋根から残った瓦が落ちてくるのと一緒に、さっきの戦いで捨てたブレードが巨人と自分のちょうど中間あたりに落ちてきた。
…!折れたブレード!!
短いけどまだ使える!!!
NAMEは一気に駆け出した。
「!兵長!!無事でしたか!!」
「エルド!お前の立体起動装置を貸せ!今の瓦がぶつかった所為か、アンカーが出ない」
「は、はい!!!」
「…俺があいつを倒す。すまないが待っていろ、必ず戻る!」
こんな危機的状況なのにも関わらず、リヴァイは全くぶれない。
飛んできたあの大量の瓦を躱しきれなかったのだろう、頬や腕、足から血が滲んでいても、身体も、精神も、リヴァイはずっとぶれなかった。
使えない立体起動装置しかない状態で置いていかれる恐怖は、言葉に出来ない。
しかし、リヴァイの言葉はその恐怖さえも払拭してくれるようだった。
立体起動装置を付け替えたリヴァイは、すぐさま巨人のいる二つ先の通りへ向かった。
エルドとアランも、その場からその姿を目で追った。
すると、その視界には巨人に向かって疾走するNAMEが映った。
リヴァイの視界もそれを捉える。
!?NAME、何をする気だ…
「っゥラァッッ!!!!」
走り込んだままNAMEは自分の腕を振りかぶり、ブレードを切り離した。
遠心力で飛ばされたブレードは、急速に回転しながら巨人の右目に突き刺さった。
巨人は声を上げながら、屋根に乗せていた右手を咄嗟にその目にあてた。
よし!!!
攻撃を一旦阻止できたことを確認したNAMEは、折れたブレードを拾い上げ、今振り投げて空になった操作装置の柄の部分に嵌めた。
そうこうしてるうちに巨人はまだ見える左目で、ギョロリと視線を流す。
そしてそこに捉えたリヴァイに気付くと左腕を屋根に乗せる動作に移った。
「チッ、またあれか!」
リヴァイは危険を察知して進行方向を真横に変えた。
その攻撃に同じく気付いたNAMEは、もう一度腕を振りかぶる。
「っだから、それやめろって言ってんでしょーがぁっ!!」
「!!NAMEっ、よせ!!!!!!」
巨人の斜め後方の住居に飛び移ったリヴァイの制止も間に合わず、NAMEはブレードを再度振り投げた。その瞬間、ずっと合わなかった目線が初めて重なった。
「ぉっ…と」
巨人は投げられたブレードを左腕で払い除けると、その左腕を屋根の上に大きく振り落とした。その住居はけたたましい音をあげて潰れていき、その瓦礫の破片がNAMEやリヴァイまでをも襲う。
砂ぼこりが舞い辺りは靄に包まれた。
まずい、視界が悪い…!
NAMEはブレードと柄だけになった操作装置を両手に握ったまま、その腕を顔の前に当て砂と瓦礫から目を守る。