素敵な夢になりますように…
darling 8
Name change
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いよいよやってきた、この合同班での初の壁外調査当日。
調査兵団の兵士達は馬に乗り、開門の時を待っていた。
真っすぐ壁を見据えるNAMEに、アランがゆっくりと近付き声を掛ける。
NAMEはその声に振り向き、優しく微笑んだ。
「…怖い?」
「…はい。正直に言って、震えが止まんないです」
「うん。みんなそうだよ。…大丈夫、アランだけじゃない。私も、何回壁の外へ行って何回帰ってきてても、やっぱり怖い。」
「分隊長も、ですか…。あんなに強いのに」
「そりゃ怖いよー。楽しみにしてるのはハンジくらいじゃないかな。」
あははと笑うNAMEを見て、アランは少し力が抜けるような感覚になった。
それを感じ取ったNAMEは、もう一度微笑み、後ろにいるルースとベックも呼んだ。
「3人はこれが初陣だ。怖くて当たり前。緊張して当たり前。情けないと自分を責める必要はない。
でも、何も出来ないのと何もしないのは違う。それに、あなた達には私と、リヴァイ班がついてる。自信を持って!」
「「分隊長…」」
「必ず、生きて、ここにみんなで戻ってくるよ」
「「「はいっっ!!!!」」」
3人の士気が高まったと同時に、開門の合図が兵士達の耳に届いた。
ゴゴゴと音を立てて門がゆっくりと開いていくのを、兵士達はゴクリと喉を鳴らして見届ける。
アランはNAMEの隣で、もう一度口を開いた。
「分隊長、この前はまた無礼なことをしてすみませんでした」
「…。うん。…帰ってきたらちゃんと振ってあげるから逃げるなよ!」
「!…ふ、はは。こえー」
ニカっと大きく笑いながらそう言ったNAMEを見て、アランも大きく笑った。
そして、門が開ききりエルヴィンの声が響き渡った。
「第◇回、壁外調査を開始する!
前進せよーーっっ!!!!!」
・-・-・-・-・-・-・-・-・
今回の調査の主な目的は、兵站拠点の設置だ。
私達は荷馬車運搬班として拠点の設営を担っている。
リヴァイとエルドが先頭を走り、ルースがその後ろから荷馬車を引く。
荷馬車の両隣にペトラ、アラン、オルオ、ベックが走り両脇を固める。
私とグンタは、後方を警戒しながら後を追う形の陣形だ。
ハンジは、巨人の捕獲捕獲と騒いでいるけど、捕獲にはそれ相応の犠牲が増える。
巨人を捕獲して研究するのは勿論必要だ。
だけど、犠牲者が増えると分かっているものに私も中々同意出来なかった。
今回はハンジ達も設営が任務であるから、恐らく無茶なことはしないだろう。
「分隊長!任務完了しました!!」
「ベック、お疲れ様!
リヴァイ!こっちは完了!!」
「よし。…お前ら、あと1ヶ所だ!油断するな」
「「「はいっっ!!!」」」
ここまでの道のりはかなり順調に進んだ。
設営途中、7m級1体と5m級が2体襲ってきたが、今までの訓練の成果もあり、誰も怪我一つすることなく落ち着いて討伐が出来た。
ベックとルースはしっかり討伐補佐を1体ずつこなし、アランは7m級を討伐した。
初陣で素晴らしい戦果だ。
このまま、この調子で任務を終えて帰還するんだ。
誰一人、絶対に死なせない。
・-・-・-・-・-
「ここが最後の拠点場所だ」
目的の場所にようやく辿り着いたNAME達は、素早く行動を開始する。
リヴァイ、ペトラ、エルド、ルースから順にガスを補給し、その間にグンタ、ベック、アランが拠点の設営に取り掛かる。
NAMEとオルオはその間周囲の警戒に目を配らせた。
途中、自分達のいる反対の左翼側では、奇行種を知らせる黒い信号弾が上がった。
この間にも、誰かが命を懸けて戦っている。
駆け付けたい気持ちはいつもある。
でも、今は仲間を信じるしかない。
自分の任務を全うするしかない。
NAMEは奥歯を噛みしめながら、周囲の見張りを続けた。
その時だ。
右翼側索敵から次々と紫の信号弾が上がる。
緊急事態だ。
「リヴァイ!」
「ああ。…グンタ!完了まであとどのくらいだ」
「あと…約4割です!」
「よし!グンタとベックはそのまま任務を続けろ!」
「「はい!!」」
「ペトラとルースは周囲を見張れ!いつでも動けるよう視野を広げろ!」
「「はいっ!」」
「アラン!お前は俺達と一緒に戦闘態勢に入れ!」
「は、はいっ!!!」
NAMEと同時に信号弾に気付いたリヴァイは、迅速に班員達に指示を出した。
全員配置につき、皆指示された新たな任務に落ち着いて対応する。
NAME、リヴァイ、エルド、オルオ、アランの5人は信号弾が上がった工場の方角へと意識を向けた。
アランはゴクリと喉を鳴らし、リヴァイ達の背中越しに薄れていく紫色の煙を見ていた。気付けば、馬の手綱を握る手が震えている。
手だけじゃない。足も、身体も、すべてが恐怖を感じていた。
怖ぇ…
さっき、初めて巨人と対峙した時も一瞬身体が固まった。
見張りの俺が出遅れたその瞬間、兵長が俺のカバーをしながら空を舞った。
その間に設営を完了させたルースやベックもあとに続く。
その時、分隊長の言葉が頭を過った。
「何も出来ないのと、何もしないのは違う」
その言葉を思い出して俺は固まっていた身体を動かした。
兵長や分隊長、先輩達の動きをしっかりと見た。
そして、俺は1体の巨人のうなじを削ぎ落とした。
俺だって立派な調査兵団の兵士だ。
怖がるな!
アランは自分にそう言い聞かせ、大きく深呼吸をした。
そしてもう一度、もうほとんど煙の薄れた工場の向こう側の景色を見据える。
震えはもうなかった。
―そして、その時は来た。
伝達として立体起動で飛んできた兵士がリヴァイ達に気付き叫んだ。
「きっ巨人多数襲来!!!右翼索敵はほぼ壊滅状た…ぎゃあっ」
「「!!!!」」
兵士の後を追って角から突如現れた奇行種が一瞬でその兵士を踏み潰した。
その奇行種は真っすぐにこちらへ向かってくる。
その後ろにも、住居の屋根越しに何体かの頭が見えた。4,5体ではなさそうだ。
「チッ…!全員、立体起動に移れ!!こいつは俺が仕留める!
他の巨人を確認しろっっ!!!」
リヴァイの合図で、残りの設営を任されていたグンタ達も一斉に立体起動へと移る。
高い屋根の上に上がった瞬間、そこには巨人の群れが前方を囲っており、NAMEは一瞬言葉を失った。
「-っ…こ、これは…!?」
「い、いつの間にこんなに囲まれて…!」
「右翼側は…ぜ、全滅ってことかよ」
それぞれの言葉を零しながら、皆冷や汗を流し、顔も青ざめていく。
慄くな…!
焦るな!!
絶対に、ここにいる全員は、死なせない!!
NAMEは、右翼側の兵士達が命を懸けて戦った意志と、他の兵士達に危険を知らせようと懸命に伝達してくれた想いを受け継ぎ自分を鼓舞した。
確認できる限りの巨人の数は12体。
うちデカいものは10m級が3体。
前方からは3体。右に10m級合わせて2体。左…は、距離はあるが10m級合わせて7体か…
数と位置を把握したNAMEは、大きく息を吸った。
「エルド、ルース、グンタ、ベックは前方3体!!
ペトラ、オルオ、アランは右2体!!
リヴァイっ!!!」
「ああ、見えてるし聞こえた!俺達が左奥だな!!!」
奇行種のうなじを一瞬で削ぎ落とし屋根に上がってきたリヴァイは、NAMEの声にすぐさま反応した。
NAMEはニッと笑いコクンと頷いた。
「慌てず倒して!!片付いたところから援護へ!!
倒れた兵士達の、潰された兵士達の意志を!こいつらに思い知らせる!!
かかれぇっっ!!!!!!!!!」
「「オオッッ!!!!!!!!」」
NAMEの心の奥から湧き出るような叫びに、班員達も同じ気持ちで応えた。
その瞬間にNAMEとリヴァイは先陣を切って前方、右前方へと飛び出し、それぞれ先頭の1体のアキレス腱や腕を斬り裂いた。
それらが再生する前に、あとに続いたエルド、オルオがそれぞれその巨人のうなじを削ぎ落とす。
アラン達新兵はその鮮やかな連携プレーと、何も言わなくても伝わる上官と先輩達の阿吽の呼吸のようなものに身震いがした。
これが、調査兵団の精鋭達の実力なんだと。
尊敬と同時に、頼もしさと、あの背中に追いつきたいという願いが生まれた。
リヴァイとNAMEの背中は、さらに遠くへと進んでいく。
アラン達は互いに目を合わせ、それぞれの立ち向かうべき巨人へと飛び出していった。
・-・-・-・-・-・-
ズゥウン…と巨人の倒れる音が響いていく。
「ペトラ、お前はアランと兵長達のところへ援護に行け!俺はエルド達のところへ行く!!!」
「了解!!気を付けてよ!」
「へッ!誰に言ってやがる!!」
ウィンクをしながら、オルオは残り2体と戦っているエルド達の元へとガスを噴いて飛ばしていった。
ペトラは、オルオが向かった先と反対側を見遣る。
その先には、たった二人で多数と対峙する上官達の姿。
7体もいたはずの巨人は、残り2体となっていた。
私達が2体倒している間に、あの二人は5体も倒している。
なんてすごい人達だろう…
そう思いながらペトラは震えた。
「アラン!!行こう」
「はいっっ!!!!」
二人はNAMEとリヴァイの元へと急いだ。
「はぁっ…はぁ…(…あと、2体…みんなは…よし、ペトラ達は片付いたみたいね…
エルド達は…あっちもあと2体…)
リヴァイ!もう少しだ!」
「ああ。…ったく…どいつもこいつもマヌケな面してやがるくせに中々しぶとい。
NAME、ガスはまだ残ってるのか」
「まだ大丈夫!あと2体ならギリギリ持つはず!
ただ、ブレードが折れちゃったからこれがラストかな」
「……お前はここで」
「やだよ。待たない。リヴァイだってブレード残り少ないでしょ?帰りだってあるんだから残しておいて。大丈夫、これで十分戦えるから」
リヴァイは、言おうとしたことを見透かされて思わず片眉を顰めた。しかし、ニッとまた笑うNAMEにつられてリヴァイも口の端を上げる。
二人は2体の巨人に再度目を向けた。
地を揺らしながら、2体の巨人はお互いに背を向けてのらりくらりと歩いている。
1体はエルド達の方へゆっくりと向かい、もう1体はNAME達を見てにやけた顔をしながら向かってくる。
本当に忌々しい顔だ。
なんでこんな奴らに人類は脅かされなければいけないのか。
そんな、今考えてもしょうがないことをどうしても考えてしまう。
NAMEは乱れた呼吸を整え、リヴァイと目を合わす。
言葉には出さないが、互いにそれぞれの目標とする巨人に視線を戻した。
リヴァイは離れていく巨人に。NAMEは向かってくる巨人に。
二人が標的を絞ると同時に、そのタイミングでペトラとアランが二人のいる屋根に到着した。
「兵長!分隊長!!援護に来ました!!!」
「アラン!!ペトラ!!エルド達の方は!?」
「オルオが向かいました!向こうはもう残り1体です!
恐らく、ベックが腕を負傷したようですが戦闘に問題はなさそうです!」
「よし!
お前らはそっちのアホ面を片付けろ。NAMEとアランはガスが少ないはずだ、油断するな!」
「うん、リヴァイも!!
行くよ、ペトラ、アラン!!!」
「「はいっ!!!」」
ペトラとアランの加勢に、一気に役割が固まる。
リヴァイは即座にエルド達の方へ向かう巨人目掛けて飛び出し、NAMEは素早く二人に指示を出した。
「ペトラ!巨人の気を引きながらその工場を回って裏の通りに誘い込んで!」
「はい!!」
「アラン!!その裏道に最短距離で回り込んで!私が補佐する!その隙にうなじを狙って!!」
「はい!!!」
「ペトラっ!!」
その声を合図に、ペトラは巨人の目の前を横切った。
ペトラに気付いた巨人はゆらりとそのあとを追う。アランは先回りをし、巨人が近付いてくるのを待ち構えた。
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