素敵な夢になりますように…
darling 1
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「え…リヴァイ班と?」
「次の壁外調査は合同班をいくつか作ると言ったな。
その一つが、リヴァイの班とNAMEの班。そして、ハンジ班はノト班、ミケ班がシアル班とだ。
今回はまずこの6班で様子を見たい」
次の壁外調査を来月に控えた日のことだ。
私とハンジ、ミケ、そしてリヴァイの幹部4人はエルヴィンに呼び出されていた。
数日前に行われた会議で、今エルヴィンが言った合同班を作る計画は聞いていた。
このところ、巨人の群れに襲われることが多々あった。
それにより陣形を崩され、多くの兵士が犠牲になった。
基本的な陣形は崩さないものの、まずはその、対多数に向けての対策が練られた結果が、この合同班だ。
被害が多ければ、補給地へ行くことすら難しい。
それならば、調査の範囲は狭まろうとも、犠牲を減らすことを第一に向かってみようとなった。
皆、その計画には賛成し、合同班の割り振りは追って連絡すると言われていたのだ。
「NAMEは分隊長だが、今回NAMEの班はNAME以外全員新兵だ。
リヴァイ班とならバランスがとれる」
今回の班編成で私の班に配属されたのは、アラン、ルース、ベックの新兵3人だけだ。
全員新兵になるのはこれが初めてだったが、その理由は編成が決まる時に聞いていた。
私の班が、調査兵団の歴史の中で一番生存率が高いからだ。
壁の外は、必ず何人かの命が奪われる過酷な世界だ。
そんな中、何度編成が行われても私の班だけは、無傷とは言えずともほぼ全員生還してきたのだ。
それは、兵士がとんでもなく強かったとか、私が班長として優秀だったとかでは決してない。
ただ単に、運が良かっただけだ。
巨人と相対することも勿論あったが、たまたま大きな被害を受けずに済んだだけなのだ。
それでも、高い生存率を誇ってしまったことには変わりない。
私は、私の力ではなくただの運で、次も運が良いとは限らないとエルヴィンに強く訴えたが、「それでも君の運に任せたい」と言われてしまい、この班となった。
勿論、私の班になったからには班員はみすみす見殺しにするような事はしたくないし、簡単に喰われないためにしっかりと指導もしている。
だから、この班で壁外へ行くのになんの躊躇いも戸惑いもない。
…ないんだけど!
「…おい。なんだ、そのクソ漏らしたみてぇな顔は」
「っ!そっそんな顔してないっ!そーゆーことレディーに言う!?」
「ハッ。どこにレディーがいる」
「~~~っ…!チビっっ!!」
「身長はお前と変わんねぇだろうが」
「残念でした!私の方が0.5㎝高いんです!」
「…付き合いきれねぇな」
「まあまあまあ!仲良いのは分かったからさ!二人ともちょっと落ち着きなって」
「仲良くないってば!」
そう。私とリヴァイは、会えば口喧嘩する間柄で、それをハンジが止めに入るというのがいつもの構図だ。
私達の言い争う姿は、調査兵団の中では皆が知ってる事実だし、勿論このエルヴィンだって知っているはずだ。
なのに。
なんでこの割り振りにするのか全くもって意味が分からない。
納得いかない!という顔でエルヴィンを見遣れば、エルヴィンはそんなものに全く動じず言葉を続けた。
「相変わらずだな。昔は随分と仲が良かったと記憶してるんだが?
…壁外調査まで1ヶ月だ。明日からこの6班は、合同演習を主体に訓練する。
ハンジとミケは、それぞれ合同となる班長に伝えてくれ。」
「「了解」」
「1ヶ月の間に、チームワーク、良くしておくことだな」
そうエルヴィンはNAMEに笑いかけながら、以上だ。と言って解散を命じた。
団長室を出ると、リヴァイとミケはまだ仕事があるらしくスタスタと行ってしまった。
今日の仕事は一通り終わってる私とハンジは、二人で食堂へと向かった。
「でもさ、エルヴィンも言ってたけど昔はNAMEとリヴァイ、めちゃくちゃ仲良かったよね?」
「…そう?そんなことないと思うけど」
「まあ、喧嘩するほど…とも言うし、今も仲良いんだろうけどさー
私はてっきり、二人は付き合ってるもんだと思ってたんだけど」
「っごほっ…!」
「そこんとこどーなの??」
ハンジのその言葉に、思わず食べてた物にむせた。
「くだらない話は終わり!」と言って私は急いで食事を進め、ハンジと別れた。
ハンジの推測通り、私とリヴァイは昔、ほんの少しだけ恋人だった時期がある。
でもそれは、本当に恋人だったのかと問われると甚だ疑問だ。
キスすらもしていない、ホントに数ヶ月のお付き合いだったから。
あの頃は、リヴァイとは普通に話すし、紅茶が好きだという趣向も似ていたりと、話が合いよく一緒に行動をしていた。
話すと楽しくて会えたら嬉しい。会えない日は無性に寂しかった。
そういう、他の男には抱かない感情を知って、思い切って付き合ってくれと告白した。
「別に構わない」と、意外にもあっさりオーケーをもらった私は柄にもなく一人舞い上がった。
なぜ別れたのかは、簡単に言えばリヴァイの浮気だ。
とはいえ、原因は私にあったと思う。
告白したはいいものの、二十歳にもなって男と付き合ったことなんて一度もなかった私は、それはそれは硬かった。
何が硬いってそれはもうあらゆる事に。
忙しいなりにも私との時間を作ってくれて、週に2,3度は二人で過ごしていたけど、付き合い始めた瞬間から信じられないくらい緊張し出して、今まで普通に話せてたのにうまく話せなくなるし、それまでは何も感じてなかった至近距離(といっても、一つのデスクで向き合う程度)にも動揺してぎこちなくなるしで。
そんな状態の私に、リヴァイも相当辟易していたと思う。
しかも、付き合ったのはリヴァイが兵士長になったばかりの頃で、奴はかなりモテ始めていた。
リヴァイと付き合ってることは、その時誰にも言わなかったし、なんとなく気恥ずかしくてバレないようにもしていた。
だから、リヴァイが色んな女性からアプローチされていることも知っていたけど何も出来なかった。
ただ、リヴァイはちゃんと私と付き合ってくれているはずだし、しっかり断ってくれているはずだと、その時は何の疑いもなく信じていたんだ。
そして、リヴァイの部屋にいつものように遊びに行った時だった。
まさか、他の女性とキスしてるシーンを目撃するとは思いもしなかった。
間違いなく、あれはリヴァイからしていた。
ソファに横たわっているリヴァイが女性の腕を引き寄せていたし、反対の手はその人の腰に回っていたから。
そんな光景を目の当たりにするとは思ってなくて、鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
私は持ってきていた紅茶のセットを見事にぶちまけて、堪らず部屋を飛び出した。
リヴァイはすぐに追いかけてきて、珍しく焦っているようにも見えた。
多分、あの時リヴァイは謝ろうとしてたと思う。
けど、私はそれを強く拒絶した。
私がちゃんと、彼女としての役目を果たせてなかったから他で解消するしかなかったのかもしれない。
(もしかしたら元々そーゆー対象じゃなかったかもしれないけど)
だからそんな言葉聞きたくなかったし、私も謝らなきゃいけない。でも、そんなこと、とてもじゃないけどその時は出来なかった。
別れた後は思い切り気まずかったけど、期間的には短いし、周りにも知られていないしで切り替えて訓練に励むようになった。
そのおかげか、分隊長という私にはもったいないくらいの肩書を手にした。
リヴァイと口喧嘩をするようになったのはその頃だ。
でも、その口喧嘩が始まってから気付いた。
…喧嘩になったとしても、またリヴァイと話せるようになったことが、分隊長になった時よりも嬉しく感じてることに。
さらにその時、リヴァイはペトラという兵士と付き合っているのでは、という噂もあって、それにショックを受けている自分がいることに。
そうだ。
この期に及んで、私はまだリヴァイが好きだった。
でも、もうあんな思いはしたくない。
口喧嘩でも、今の距離がとても居心地がいいし、この関係をもう壊したくない。
そう考えて、今日まで気にしないように、いつも通り過ごしていこうと思ってきたのに。
「エルヴィンのばかっ」
自分のベッドにばたりと倒れると、私は割り振りを決めた団長を思い浮かべて暴言を吐いた。
新しく編成された今のリヴァイ班には、あのペトラがいる。
今までも、たまに二人が仲睦まじい様子で一緒にいるところを見かけたことがあった。
なるべく目にしないようにしていたのに、まさか合同になって同じ訓練をしなきゃいけないとは…。
「拷問すぎる…。」
明日なんて来なければいい。
そんな願いは叶うはずもなく、合同演習がスタートした。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
「ペトラっ!!遅いぞ!寝てんのか!」
「はい兵長!すみません!!もう一度お願いします!!」
朝から始まった訓練。
リヴァイの怒声が森に響く。
初日は、立体起動の訓練を普段通りしながら、今後互いが互いをフォローできるように、仲間の動きの癖や長所、短所を徹底的に覚えていくことにした。
班員達の動きをチェックしているNAMEは、早速の二人の絡みに気が滅入る思いだった。
(…早く慣れなきゃ…。こんなことで気落ちしてどうする!)
そう心で叱咤し、気を引き締め直した。
「NAME分隊長!」
「?なに、アラン」
そんな練習の合間、新兵のアランがNAMEのもとへやってきた。
「俺、今回が初陣ですし、まだ本物の巨人を見たこともありません…」
「…うん。分かってるよ。それがどうかした?」
「その、なので、まだ俺自身動きが定まってなくて…
今までの訓練はしっかり臨んできましたが…長所も短所も分からないし、癖も分かりません。
ましてや、リヴァイ兵長やリヴァイ班の皆さんの動きなんか」
「なんだ、そんなことか」
不安そうに言葉を紡ぐアランに、NAMEは安心させるように大きく笑った。
「アラン達は、自分達の動きをいつも通りやればいいんだよ。フォローするのは私達上官や先輩の仕事だから。
足引っ張ちゃうかも、なんて気にしないの。ここに入団してる時点で、足手纏いなんて一人もいないんだから」
その言葉に、戸惑いを見せていたアランの瞳は落ち着きを戻した。
「でも先輩達の良い所はどんどん盗むこと!
上級者と一緒に訓練出来るなんて中々ないからね」
「はい!!」
「よし!ほら、あとの二人のこともよろしくね。アランには期待してるんだから」
「ありがとうございます!訓練に戻ります!!」
アランはビシっと心臓を捧げる敬礼をし、元気よく訓練に戻っていく。
それを見つめて、NAMEはモヤモヤとしていた気持ちが晴れていくようだった。
「…随分といい上官をやってるな」
「っ…!」
不意に現れたリヴァイにNAMEの胸は思わずドキリと鳴ったが、悟られないようにゆっくりと息を吐いた。
「あんまり甘やかすなよ。外へ出たら生きるか死ぬかだ」
「…甘やかしてなんか…!…リヴァイこそ、指導に熱が入るのも分かるけど、女の子にはもうちょっと優しい言葉を使ってあげたら?」
「あ?」
ペトラへの嫉妬心もあった。
NAMEは言わなくていいことを言ったなと自覚したが、ジロリと睨むリヴァイに怯みながらも視線は外さなかった。
「…フン。どっかの馬鹿と違ってペトラは素直だ。お前に指図される覚えはねぇ」
グサリとナイフで刺されたように身体が強張り言葉を失った。
だが、その直後、フツフツと言い表せない怒りがNAMEに湧き上がってきた。
(…な、なによ…誰の所為でこんなにひねくれたと思ってるのよ…!あったまくる!)
「うる、さい!どうせ私は馬鹿だし可愛げがありませんよ!リヴァイこそ、自分の部下が優秀だからって思い上がってんじゃないの?あれは彼女達の実力であってリヴァイが育てたわけじゃないんだからいい気になるのも大概に…!……あ。」
一気に捲し立てたNAMEの声に、リヴァイはもちろん、訓練していた兵士達まで停止した。
ピリ。と空気が張り詰める。
そして、一番に口を開いたのはリヴァイだった。
「…誰が思い上がってるって?」
「~っ…!リヴァイに決まってるでしょ!」
「俺は思い上がってもいねぇしあいつらを育てたなんて思っちゃいねぇ。勝手に俺の思考を作り上げるな、馬鹿が」
「っ、部下の前で馬鹿馬鹿言わないで!大体リヴァイは」
「…また始まったな。名物喧嘩が。」
ぶら下がっていた木から降りてきたエルドは苦笑いしながら零した。
隣には、オルオにグンタ、そしてアランがいる。
「エルドさん、分隊長達はいつもこんな仲が悪いんですか…?」
アランの質問にその場にいた3人は小さく笑った。
「仲悪いっていうか…なんか日課?的な」
「日課…」
その後、エルドの「訓練再開していいですかー」の一声で二人はピタリと喧嘩を止め、リヴァイはいつもの涼しい顔で「ああ」と答え、NAMEは申し訳なさそうに笑い「続けて」と答えた。
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