ありふれた休日

貴重な休日が、もう終わろうとしている。
朝ゆっくり起きて、出かけて、わりに早く帰ってきて、またゆっくりして。
ノープランのまま、思い付きだけでまったり休日を過ごす…最高の贅沢だ。

日中のゆったりした空気のまま、二人で晩酌していたところ。
私は見たい映画が動画配信サービスで配信開始されていたことを思い出し、思いつくまま再生した。
「え、なんか見んの?俺もう集中力とか残ってないわ」
「前から見たかったやつ。流し見でいいから入れといていい?」
「まぁええよ」
二人でソファに並んで、変わらずお酒を飲んで過ごし、あーでもないこーでもない、とわちゃわちゃ話す。
映画は映画で静かなヒューマンドラマだから、アクション映画のような盛り上がりもなく、淡々と進んでいく。

気づけば結構お酒もすすんで、私はとなりの神々廻に無性に甘えたくなってきた。
構ってくんないかなぁと距離を詰め、すり寄る。そういう私を見て、神々廻はよく「猫やん」って言う。
でも今日は気づいているのかいないのか、神々廻からのリアクションが一切ない。ずいぶん映画に集中しているみたいだ。
集中力ないとか言ってたのに、気づいたら真剣になってるのが可笑しい。
今度はソファに置かれた神々廻の手のひらから指にかけて、指先でつつー…となぞってみた。
そこで初めて、神々廻がこちらを見た。

「…なんそれ。誘ってる?」
「うーん。ちょっと飽きた」
「お前が見たいて言い出したんやんか。…ちょお待って、続き気になる」
「神々廻のほうがちゃんと見てんの笑う」
「おもろいねんこれ、だから待って」
「はぁい」
映画を楽しんでくれているのは嬉しいので、私はまたお酒を飲んだりおつまみをかじったりして待つことに。

……とはいえ、甘えたい衝動は一度湧き上がると抑えられないんだよねぇ。
邪魔にならない程度を推し量りながら、手を握ったり、恋人つなぎにしてみたり、神々廻の長い髪を指先でくるくるもてあそんだり、横でこそこそ楽しんでいた。
ひとしきり遊び倒したところでひとまず満足し、まだまだ映画に集中している横顔をぼんやり眺めていたんだけど。

不意に、神々廻の指が私の腿をルームウェア越しにすす…と撫で上げてきた。
顔の方を見てたから一瞬気づくのが遅れて、びくりと体がわずかにはねた。
腿を撫で上げていた指は内に入るように進んできて、きわどい部分めがけてゆっくりと進んでいく。
「…ふ、ぅ」
我慢しきれず、吐息が漏れた。
「……」
それでも神々廻は素知らぬ顔だ。ちょっと意図が読めなくて、戸惑う。
「ん…神々廻?」
「なんや、構って欲しいねやろ」
こちらを見て口元だけで微笑むと、内腿あたりにあった指先を今度は上へと移動させ、立ち上がりかけていた乳首をTシャツの上からきゅ、とつまんだ。
「これで待っとって」
「あッッ」
「しぃー。上映中はお静かにな」
空いた方の手の人差し指を口元に当てて見せると、神々廻はまたテレビの方に向き直り、映画に集中しだした。

その間も、手だけは別の生き物みたいに私の体を器用にまさぐってくる。なんで見てないのにわかるのっていうくらい、ピンポイントで「待って」と言いたくなるような敏感な箇所ばかり触ってくるので、どうしても声が漏れてしまう。
そのたび神々廻の方を見るけど、相変わらず何食わぬ顔で画面を注視していて、ちょっと腹立たしい。

「ふ、ふぅッ…」
乳首を薄い布の上から指先でカリッ…カリカリッ…と引っかかれて、手で口元を抑えてもくぐもった声が吐息と一緒に漏れだす。
部屋には私たち以外誰もいないのに、必死に声を抑えて、感じていることもなんならバレたくなくて堪えているこの妙な状況が、私の興奮をいやに駆り立てる。
快感に酔いしれて、声が上ずってきているのが自分でもわかる。すごくドキドキしている。

神々廻の手が胸からするすると降りてきて、下腹のあたりをキュッと押した。
「ひぅっ!」
え、なにここ、こんな押されたことない。でも、押されるたびに子宮?のあたりが甘く痺れて、それがじわ、じわ、と全身に広がっていく。
不慣れな甘い感覚に、さらに声が上ずった。
「う、ぅ、うぅ、…ぅぅ…~ッ」
私の声に神々廻がちらっと目だけで私を見たけど、またすぐに視線を画面に戻す。
相変わらず涼しい顔してるけど、ちょっと神々廻も興奮してきているのはなんとなくわかる。

やばい、なんかもうイっちゃいそうかも。
ぞくぞく、ぞくぞくと絶え間なく快感の波がおそってきて、頭がぼーっとして、高まって弾けるその瞬間しか考えられなくなっていく。

「し、しば…」
あ…静かに、って言われたのに声かけちゃった。

勝手に課されたバカみたいな縛りに、従順に従おうとしている自分も全くバカみたいだ。
神々廻はまた目だけで私を見やって、もう一度画面を見たあと、大仰にため息をついた。
映画はそのままに、私と向きあって片膝をつき、背もたれに手をついて、私を見下ろす形になった。

「しゃあないなぁ。…我慢できひんかったん?」
長い金髪が顔にかかって、少しくすぐったい。左側だけ髪が耳にかけられて、テレビからの光と照明で表情が浮かび上がっている。
少しだけ呆れたような顔で見下ろされて、その雰囲気に、強烈なまでの色気に、気圧される。

まだ口元を抑えたまま、こくこくと頷く。
頷いてから、ああもうこれはいいのか、とそっと手を口から離して神々廻のシャツをきゅ、と握った。
「これ好きやった?」
「あッ!や、やっ」
また下腹のあたりをそっと押されて、その独特の甘い痺れに背がのけぞった。
「そんなにええんか」
「うんっきもちぃ…、それ、」
「ふぅん」
そっけない返事とは裏腹に、とどめとばかりにゆっくりと、少しだけ深めに下腹部を押し込まれる。
深い快感に、腰から背中がぶるぶると震えた。
「あぁぁっ!」
「こっちはどうなっとんのかな」
ルームウェアのウエストはゴムで、ベルトやら邪魔なものは何もない。
神々廻の手はいとも簡単に私のパンツの中まで入ってきてしまった。
「やぁッすぐ触るの…、」
「あーあー濡れすぎやろこれ…」
聞いてもらえると思ってないけど、制止などどこ吹く風で下着の中をゆるゆると長い指先が往復する。
くちゅ、くちゅと水音が耳に届く。本当に信じられないくらい濡れているみたいで、さすがに恥ずかしい。
「やっ待って、ししば、まって」
「待ってて、イかせて欲しかったんちゃうん」
そうなんですけど!
どうしても口先だけ「待って」とか「いや」とか言ってしまうのは羞恥心となんか…潜在的恐怖?からなんだから、しょうがないんだって。

…でも、映画を中断してまで欲しがったのは確かに私だから、これで「待って」はかえって神々廻に悪いのか…
熱に浮かされて思考がよくわからない方向に向いてしまったらしく、そろっと神々廻を見上げると

「ごめん…イかせて、も、無理」
と、普段とても言えるはずのない言葉を口走っていた。

「…は、」
一瞬目を丸くして、そのまま神々廻は下着の中の手を思い切り動かした。
親指でクリトリス、人差し指と、多分中指?わかんないけど、ナカへぬるりと入ってきて、一気にどちらもぐちゅぐちゅとかき回される。

「あぁッ!あ、あ、あぁ、あ、も、もうイくッイッ……うぅッ…!!♡」
大きく腰を浮かせ、あっという間に果ててしまった。

イった後もしばらくゆるゆると神々廻の手がうごくので、その間ずっと深く甘い痺れが全身を駆け抜ける。体中が快感で満たされて、息をつくのも忘れるほどだった。

「はっ…はぁ…」
ようやく神々廻の手が引き抜かれて、余韻に浸りながらもなんとか息を整える。
今更になって、映画を見ていたことを思い出した。とっくの昔に本編は終了したらしく、BGMとともにエンドロールが流れていた。

「えいが…ごめん、途中で」
「そんなん、もっとええもん見れたわ」
神々廻はそのまま、私をソファへ押し倒し、上から覆いかぶさってきた。
「なぁ、さっきのおねだりもっかい聞きたい」
「え…絶対やだ」
絶対やだ。絶対やだ!!
先ほどと打って変わって断固拒否!の姿勢をみせる。
すると神々廻は意地悪そうな、そして駄々洩れの色気を漂わせた笑みを浮かべ耳元でささやいた。
「あぁ、言わせたらええんやな」
耳に当たる吐息が、思った以上に熱い。

あーあ、明日仕事なのに。


おしまい
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