汝の愛よ我が胸に還れ
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どうせ今日は夜の任務だけだからと、宵口にマフィアのビルヂングへと赴けば、凛子に首根っこを摑まれてまたしても報告書の作成をさぼったことを叱られてしまった。
まあまあと言葉巧みに宥めすかせば「なら夕食くらい奢って頂戴」という可愛いお強請りを受けてしまったので、其れなら喜んでと彼女の好きなレストランに這入った。
「やっぱり故国 の料理は美味しいわ」
「イェーガー……何だっけ?」
「イェーガーシュニッツェルよ。日本で言うところの……カツレツ?」
凛子は上機嫌に其れを咀嚼している。私にとっては初めて食べるものだけれど中々美味しい。任務がなければ麦酒 も呑みたかったなあとぼんやり思った。
無理を云って貸切にした為に店内には誰一人として客は居らず、私たちふたりの会話の声しか聞こえない。邪魔者が居ないという開放感と心地良さに目を細めていると、凛子が何かを思い出したような顔をした。
「実を云うと治の前に中也からお誘いを受けていたのよ。でも治に奢らせるつもりだったから断ったの」
楽しく食事をしているときに聞きたくもない相棒の名前を聞かされ、私の機嫌は急降下する。遠慮することなく眉根を寄せると凛子はやっと察したようで苦笑した。
「ああ、ごめんなさい。あなたたちは犬猿の仲だものね。あまり嬉しくないかしら」
「あまりどころか全くだね」
「でも私は治と食べたかったから断ったのよ?」
「其れでも落第点だよ。私の前で彼奴の名前を出すなんて以ての外さ」
「手厳しいのね」
愉しそうに笑う凛子につられ、口の端が持ち上がる。我慢出来ずに一杯くらい酒を頼もうとメニュー表に伸ばした手の甲を彼女に叩かれてしまった。手厳しいのはどっちだか。
「へべれけになったらどうするつもりなのかしら。これから任務があることお忘れじゃなくて、太宰幹部?」
「私がへべれけになったところを見たことがあるのかい、首領のご令嬢?」
売られた言葉を買うようににやりと笑って挑発する。すると凛子は食事の最後の一口を嚥下して、呆れたように溜息を吐いた。
「参ったわ、私の負けよ。貴方ってばどれだけ飲んでもしらふだものね。面白くないわ本当に」
手元の紙ナプキンで口元を拭うと、塗られていた口紅が剥げ落ちる。凛子はさっとポーチを手にして立ち上がった。
「食事はおしまい。あまり待たせちゃ怒られるから、化粧直しが終わったら向かいましょう」
遅れるくらいが、あのチビを妬かせるには丁度好いんだけどね。そう考え乍らウェイターを呼んで会計を済ませた。
まあまあと言葉巧みに宥めすかせば「なら夕食くらい奢って頂戴」という可愛いお強請りを受けてしまったので、其れなら喜んでと彼女の好きなレストランに這入った。
「やっぱり
「イェーガー……何だっけ?」
「イェーガーシュニッツェルよ。日本で言うところの……カツレツ?」
凛子は上機嫌に其れを咀嚼している。私にとっては初めて食べるものだけれど中々美味しい。任務がなければ
無理を云って貸切にした為に店内には誰一人として客は居らず、私たちふたりの会話の声しか聞こえない。邪魔者が居ないという開放感と心地良さに目を細めていると、凛子が何かを思い出したような顔をした。
「実を云うと治の前に中也からお誘いを受けていたのよ。でも治に奢らせるつもりだったから断ったの」
楽しく食事をしているときに聞きたくもない相棒の名前を聞かされ、私の機嫌は急降下する。遠慮することなく眉根を寄せると凛子はやっと察したようで苦笑した。
「ああ、ごめんなさい。あなたたちは犬猿の仲だものね。あまり嬉しくないかしら」
「あまりどころか全くだね」
「でも私は治と食べたかったから断ったのよ?」
「其れでも落第点だよ。私の前で彼奴の名前を出すなんて以ての外さ」
「手厳しいのね」
愉しそうに笑う凛子につられ、口の端が持ち上がる。我慢出来ずに一杯くらい酒を頼もうとメニュー表に伸ばした手の甲を彼女に叩かれてしまった。手厳しいのはどっちだか。
「へべれけになったらどうするつもりなのかしら。これから任務があることお忘れじゃなくて、太宰幹部?」
「私がへべれけになったところを見たことがあるのかい、首領のご令嬢?」
売られた言葉を買うようににやりと笑って挑発する。すると凛子は食事の最後の一口を嚥下して、呆れたように溜息を吐いた。
「参ったわ、私の負けよ。貴方ってばどれだけ飲んでもしらふだものね。面白くないわ本当に」
手元の紙ナプキンで口元を拭うと、塗られていた口紅が剥げ落ちる。凛子はさっとポーチを手にして立ち上がった。
「食事はおしまい。あまり待たせちゃ怒られるから、化粧直しが終わったら向かいましょう」
遅れるくらいが、あのチビを妬かせるには丁度好いんだけどね。そう考え乍らウェイターを呼んで会計を済ませた。
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