汝の愛よ我が胸に還れ
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木目の美しい焦茶色の扉にノックを3回。上質な木で造られたそれは低い音を奏で、私は「凛子です。報告書を提出に参りました」と告げる。
「嗚呼、凛子ちゃんかい? お這入りなさい」
「失礼します」
繊細な彫り細工が施されたドアノブを捻れば扉が開いた。アンティーク調の部屋の雰囲気が部屋の主人にぴったりで、来る度に熱い溜息が漏れる。
「シャルロッテねえさま!」
部屋に入るやいなや、落ち着いた雰囲気のそこには少々場違いな明るい声の女の子が弾けた。少し視線を下にずらすと、そこには豊かな金髪の巻き毛を揺らす、大きなガラス玉のような蒼い双眸を持った美少女 が私の腰の辺りに抱き着いている。
「あらエリー。こんにちは、今日もお姫さまみたいに素敵ね」
ヴィルヘルムお兄さまがかつての私にしてくれたように、彼女の頭を撫でてやった。するとエリーは満足そうに目を細めて可愛らしく甘えてくる。
「凛子ちゃん、立ったままというのも何だから座りなさい。報告書はゆっくり見させて貰おうじゃないか」
執務机の席から立ち、応接用のソファを勧められる。腰に絡められたエリーの細く華奢な腕を解いてそこに腰掛ければ、エリーは隣までついて来て抱き着き直した。
「報告書です。どうぞご確認下さい――お養父 さま」
エリーをそのままに報告書を渡せば、礼を言い置いて目を通し始める。彼は私にとっての養父であり、ヨコハマの闇社会に生きる者なら誰もが知るポート・マフィアの首領 森鷗外だ。
「……うん。今回の報告書も丁寧で分かりやすくて助かるよ。凛子ちゃんが作ったのかい?」
「いいえ、中原と私で作成しました」
「ふうん? 太宰君はまた作成に参加してないんだね」
慌てて「太宰幹部は多忙ですし、手が空いていなかったようでしたから」とフォローを入れれば、お養父さまは愉快そうに目を細める。それがかえってバツが悪い。
「シャルロッテねえさま、どうかしたの?」
どうしてあのちゃらんぽらんのフォローを私がしなければならないのかと思考が迷宮に入りかけたところで、エリーの声がそれを遮断した。じいっとこちらを見つめる瞳は、海に育まれたような青で美しい。
「いいえ、何でもないわ。ちょっとだけ考えごとをしてたのよ」
「あたしといるのに考えごとなんてしないでよ!」
むっと頬を膨らませて怒るエリーはやっぱり可愛らしくて、ご機嫌を取るように再び頭を撫でてやる。「怒ったエリスちゃんも可愛いね」とだらしなく目許を緩ませるお養父さまに「そうですね」と笑った。
「嗚呼、凛子ちゃんかい? お這入りなさい」
「失礼します」
繊細な彫り細工が施されたドアノブを捻れば扉が開いた。アンティーク調の部屋の雰囲気が部屋の主人にぴったりで、来る度に熱い溜息が漏れる。
「シャルロッテねえさま!」
部屋に入るやいなや、落ち着いた雰囲気のそこには少々場違いな明るい声の女の子が弾けた。少し視線を下にずらすと、そこには豊かな金髪の巻き毛を揺らす、大きなガラス玉のような蒼い双眸を持った
「あらエリー。こんにちは、今日もお姫さまみたいに素敵ね」
ヴィルヘルムお兄さまがかつての私にしてくれたように、彼女の頭を撫でてやった。するとエリーは満足そうに目を細めて可愛らしく甘えてくる。
「凛子ちゃん、立ったままというのも何だから座りなさい。報告書はゆっくり見させて貰おうじゃないか」
執務机の席から立ち、応接用のソファを勧められる。腰に絡められたエリーの細く華奢な腕を解いてそこに腰掛ければ、エリーは隣までついて来て抱き着き直した。
「報告書です。どうぞご確認下さい――お
エリーをそのままに報告書を渡せば、礼を言い置いて目を通し始める。彼は私にとっての養父であり、ヨコハマの闇社会に生きる者なら誰もが知るポート・マフィアの
「……うん。今回の報告書も丁寧で分かりやすくて助かるよ。凛子ちゃんが作ったのかい?」
「いいえ、中原と私で作成しました」
「ふうん? 太宰君はまた作成に参加してないんだね」
慌てて「太宰幹部は多忙ですし、手が空いていなかったようでしたから」とフォローを入れれば、お養父さまは愉快そうに目を細める。それがかえってバツが悪い。
「シャルロッテねえさま、どうかしたの?」
どうしてあのちゃらんぽらんのフォローを私がしなければならないのかと思考が迷宮に入りかけたところで、エリーの声がそれを遮断した。じいっとこちらを見つめる瞳は、海に育まれたような青で美しい。
「いいえ、何でもないわ。ちょっとだけ考えごとをしてたのよ」
「あたしといるのに考えごとなんてしないでよ!」
むっと頬を膨らませて怒るエリーはやっぱり可愛らしくて、ご機嫌を取るように再び頭を撫でてやる。「怒ったエリスちゃんも可愛いね」とだらしなく目許を緩ませるお養父さまに「そうですね」と笑った。