死を記憶する女司書
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血に染まった女性を抱えて探偵社に戻った社長は、今やすっかり着替えを済ませ、少しぬるめのお茶を啜り一息ついている。お茶は熱々の方が美味しいンじゃないかと思うけど、社長は生憎猫舌なのだ。
「如何であった」
「妾 の異能力で綺麗さっぱり治りましたよ。今は眠っています」
少しげんなりした表情で汚れた白衣の始末をする与謝野さんが医務室から出て来た。疲労を滲ませた溜息を吐きながら首を回せば、こきりと軽い音を立てて関節が鳴る。
「如何したンですあの娘 は」
「拾った」
「拾った? そンな犬猫じゃあるまいし……乱歩さん、本当のところは如何なンです?」
「本当に決まってるじゃないか。僕があのひとを見つけて、社長が抱えて来たンだよ」
社長が自分の着流しを真ッ赤に汚し乍ら抱えて持ち帰った女性を見て、国木田は卒倒しそうな程に焦り、与謝野さんは珍しく顔の色を失くした。国木田は兎も角、医師である与謝野さんがそうなってしまうのも無理はない。彼女は人一倍“生命 ”というモノに執着し、それを大切にしない者は言語道断だと切って捨てるのだから。
「妾の異能力発動の為に解体しなくて済むなんて、滅多なことがなけりゃ有り得ない。其れ程の深傷 を一般市民が負うなンてこと、そう考えられることじゃないですよ」
探偵社に着いて尚、奇蹟的に生き永らえたあの女性は何ら問題なく与謝野さんの異能力の恩恵に与って命拾いしたらしい。今は綺麗になった躰で何も知らずに寝 んでいるのだろう。意識がないとはいえあの解体を体験しないで済んだのは幸運だったと思うけど。
「あの周辺で大きな交通事故は起きていない。況 してやポート・マフィアの抗争があった訳でもテロがあった訳でもない。唯あの娘だけが血塗れだった」
「嘘のような本当の話ってヤツですか。乱歩さん、此れは事件か何かです?」
「さァね。僕にも全ッ然分かんない」
「オヤ、乱歩さんでも分からないンじゃ、妾もさっぱりだね」
困ったように苦笑する与謝野さんを横目で見る。僕は世界一の探偵なのに、この怪事件の答えを見付けられないのは些か気に食わない。彼女が起きる前に絶対に解決してやる。でないと僕の自尊心 が許さない。
「ポート・マフィアではない何処かの組織と戦闘をした可能性は?」
「そんな訳ないでしょ。あのひとはそういう類を生業とする人間の筋肉の付き方はしていなかった。寧 ろ室内で仕事をしているね。それにあんな派手にやらかす組織はマフィアが黙ってない」
其れくらい判ってるだろう? そう続けて見やると、国木田はバツが悪そうに眼鏡を押し上げた。
「あァ不可 ない。社長、此れを」
与謝野さんが差し出したのはあのひとの持っていた鞄。流石に置いて行く訳にもいかずに持ち込んで来た其れは土と少しの血で汚れてよれていた。
「身元特定になるものが入っているかも知れないンでね」
「……嗚呼、判った」
あのひとが起きたら色々と事情を聴かなきゃ不可ないだろう。もっとも、僕の興味の対象は彼女の置かれていた理解不能な状況であって、彼女の生い立ちなんて知ったことではないけれど。
「如何であった」
「
少しげんなりした表情で汚れた白衣の始末をする与謝野さんが医務室から出て来た。疲労を滲ませた溜息を吐きながら首を回せば、こきりと軽い音を立てて関節が鳴る。
「如何したンですあの
「拾った」
「拾った? そンな犬猫じゃあるまいし……乱歩さん、本当のところは如何なンです?」
「本当に決まってるじゃないか。僕があのひとを見つけて、社長が抱えて来たンだよ」
社長が自分の着流しを真ッ赤に汚し乍ら抱えて持ち帰った女性を見て、国木田は卒倒しそうな程に焦り、与謝野さんは珍しく顔の色を失くした。国木田は兎も角、医師である与謝野さんがそうなってしまうのも無理はない。彼女は人一倍“
「妾の異能力発動の為に解体しなくて済むなんて、滅多なことがなけりゃ有り得ない。其れ程の
探偵社に着いて尚、奇蹟的に生き永らえたあの女性は何ら問題なく与謝野さんの異能力の恩恵に与って命拾いしたらしい。今は綺麗になった躰で何も知らずに
「あの周辺で大きな交通事故は起きていない。
「嘘のような本当の話ってヤツですか。乱歩さん、此れは事件か何かです?」
「さァね。僕にも全ッ然分かんない」
「オヤ、乱歩さんでも分からないンじゃ、妾もさっぱりだね」
困ったように苦笑する与謝野さんを横目で見る。僕は世界一の探偵なのに、この怪事件の答えを見付けられないのは些か気に食わない。彼女が起きる前に絶対に解決してやる。でないと僕の
「ポート・マフィアではない何処かの組織と戦闘をした可能性は?」
「そんな訳ないでしょ。あのひとはそういう類を生業とする人間の筋肉の付き方はしていなかった。
其れくらい判ってるだろう? そう続けて見やると、国木田はバツが悪そうに眼鏡を押し上げた。
「あァ
与謝野さんが差し出したのはあのひとの持っていた鞄。流石に置いて行く訳にもいかずに持ち込んで来た其れは土と少しの血で汚れてよれていた。
「身元特定になるものが入っているかも知れないンでね」
「……嗚呼、判った」
あのひとが起きたら色々と事情を聴かなきゃ不可ないだろう。もっとも、僕の興味の対象は彼女の置かれていた理解不能な状況であって、彼女の生い立ちなんて知ったことではないけれど。