死を記憶する女司書
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いつものように朝を迎え、探偵社の業務をしていると、時計の針が10時を指した。
一度業務を切り上げて給湯室へ引っ込み、昨日のうちに作っておいたケーキを出してお茶を淹れる。盆を両手に談話テーブルを覗けば太宰さんと谷崎さんを除いた武装探偵社の男性陣がくつろいでいた。
「江戸川さん、リクエストされていたケーキです。皆さんもよろしければどうぞ」
「おお! 昨日の今日で直ぐに用意するなんて流石だねえ」
切り分けたそれを見た途端に江戸川さんは上機嫌にフォークを手にした。器用に大きく切り分けて口に入れると、とろけたように破顔する。どうやらお気に召していただけたらしい。国木田さんや中島さんの反応も良好だ。
「宮沢さんの分は包んでおきますね。お仕事が終わったときにでも、お召し上がりください」
「わあ、有り難うございます!」
朗らかに笑う宮沢さんに心が温まる。彼の異能力だと仕事中に食事をご一緒できないことが残念だ。また今度、非番の日にでもお茶のお誘いをしてみようかと思案する。
「にしても国木田さん、太宰さんは本当に大丈夫なのでしょうか……」
不安そうに言う中島さんから聞いたところ、太宰さんの行方が昨日から知れないらしい。けれど国木田さんが「大丈夫だ」と仰るのだからきっと大丈夫だ。あのひとはいつも飄々としていて、したたかだから。
「ご馳走様!」
江戸川さんの言葉を皮切りにお皿が空になっていく。片付けに下がると谷崎さんが医務室から出て来たのが見えた。あの様子なら晶子が治療したのだろう。
「……あら?」
「おや、凛子じゃないか。お早う」
「ああ、おはようございます、晶子」
谷崎さんたちにお出ししようとケーキを用意して談話テーブルに戻ると、中島さんと晶子が立っているだけだった。
状況が飲み込めず見回すと、テーブルの上には几帳面な字でしたためられた国木田さんからの置き手紙がある。読めば律儀にもケーキのお礼が書かれていて、彼らしいそれに笑みをこぼした。
「凛子、其のケェキは妾にかい?」
「はい。晶子と谷崎さんにと思って」
「ならご馳走になろう。谷崎は居なくなっちまったから、凛子が一緒に食べておくれよ」
片目を瞑って言う晶子と向かい合わせに席に着く。中島さんもおずおずと手近なところに腰掛けると、晶子と私のお茶が始まった。
「ところで、何で他の方々はいなくなられたんですか?」
「さァね? 折角だから買い物に付き合わせようとしたのに皆して消えちまったのさ。敦を連れて行くから、凛子も一緒に来ないかい?」
晶子の“買い物”の言葉で大体の察しがついた。男性陣は晶子のお買い物に恐れをなしてこの部屋を脱出したのだろう。私もここで断ったところで、きっと晶子に押し切られて行くことになる。無駄な抵抗は諦めて素直に頷けば彼女は愉しそうに笑ってみせた。
一度業務を切り上げて給湯室へ引っ込み、昨日のうちに作っておいたケーキを出してお茶を淹れる。盆を両手に談話テーブルを覗けば太宰さんと谷崎さんを除いた武装探偵社の男性陣がくつろいでいた。
「江戸川さん、リクエストされていたケーキです。皆さんもよろしければどうぞ」
「おお! 昨日の今日で直ぐに用意するなんて流石だねえ」
切り分けたそれを見た途端に江戸川さんは上機嫌にフォークを手にした。器用に大きく切り分けて口に入れると、とろけたように破顔する。どうやらお気に召していただけたらしい。国木田さんや中島さんの反応も良好だ。
「宮沢さんの分は包んでおきますね。お仕事が終わったときにでも、お召し上がりください」
「わあ、有り難うございます!」
朗らかに笑う宮沢さんに心が温まる。彼の異能力だと仕事中に食事をご一緒できないことが残念だ。また今度、非番の日にでもお茶のお誘いをしてみようかと思案する。
「にしても国木田さん、太宰さんは本当に大丈夫なのでしょうか……」
不安そうに言う中島さんから聞いたところ、太宰さんの行方が昨日から知れないらしい。けれど国木田さんが「大丈夫だ」と仰るのだからきっと大丈夫だ。あのひとはいつも飄々としていて、したたかだから。
「ご馳走様!」
江戸川さんの言葉を皮切りにお皿が空になっていく。片付けに下がると谷崎さんが医務室から出て来たのが見えた。あの様子なら晶子が治療したのだろう。
「……あら?」
「おや、凛子じゃないか。お早う」
「ああ、おはようございます、晶子」
谷崎さんたちにお出ししようとケーキを用意して談話テーブルに戻ると、中島さんと晶子が立っているだけだった。
状況が飲み込めず見回すと、テーブルの上には几帳面な字でしたためられた国木田さんからの置き手紙がある。読めば律儀にもケーキのお礼が書かれていて、彼らしいそれに笑みをこぼした。
「凛子、其のケェキは妾にかい?」
「はい。晶子と谷崎さんにと思って」
「ならご馳走になろう。谷崎は居なくなっちまったから、凛子が一緒に食べておくれよ」
片目を瞑って言う晶子と向かい合わせに席に着く。中島さんもおずおずと手近なところに腰掛けると、晶子と私のお茶が始まった。
「ところで、何で他の方々はいなくなられたんですか?」
「さァね? 折角だから買い物に付き合わせようとしたのに皆して消えちまったのさ。敦を連れて行くから、凛子も一緒に来ないかい?」
晶子の“買い物”の言葉で大体の察しがついた。男性陣は晶子のお買い物に恐れをなしてこの部屋を脱出したのだろう。私もここで断ったところで、きっと晶子に押し切られて行くことになる。無駄な抵抗は諦めて素直に頷けば彼女は愉しそうに笑ってみせた。
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