死を記憶する女司書
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「やあやあこんにちは、今日もご機嫌麗しく。如何です美しい凛子さん、私とこの川で心中してくれはしませんか?」
「こ、こんにちは太宰さん。心中は辞退させていただきますね」
突然の心中の誘いに思わず言葉を詰まらせると、江戸川さんが呆れたように太宰さんにひらひらと手を振る。
「一寸、凛子を巻き込んで心中しようとするのやめてくれる? あまりしつこいと凛子に嫌われるよ」
「おや、それは失礼しました。ところで乱歩さんがいるということは、此処は事件現場ですか?」
川の水に濡れた太宰さんはそのまま成り行きで捜査に加わった。警察の方にタオルを貸してくれるよう頼んでずぶ濡れの太宰さんに渡せば、がしがしと乱暴に水滴を拭う。彼は中島さんの口から事件について聞き、大仰なほどに嘆いてみせて再び心中の件を口走った。それはこの場では少々、良くない。
「太宰さん……被害者の女性は自ら命を絶ったわけではありません。殺害されてしまったんです。その言葉はあまりにも不謹慎ですよ」
「嗚呼、失礼。以後気を付けます」
窘めても飄々としている太宰さんは江戸川さんに謎解きを聞かんと問いかけた。けれど彼は依頼はないと一蹴し、あろうことか巡査である杉本さんに謎を解けと言ってのける。
「江戸川さん、からかってはいけませんとあれほど……」
「まあまあ、凛子は見てなよ」
私が非難がましい目を向けようと、江戸川さんは笑って取り合わない。カウントダウンに急かされた杉本さんによる即席の推理は、犯人による偽装工作だと太宰さんに一蹴される。江戸川さんは箕浦さんからの挑戦とも取れる依頼を受けた。
「凛子、眼鏡」
「はい」
こちらへ来る前に預けられていた眼鏡を渡す。それを掛ければ探偵社を支える“名探偵”が出来上がり、いつも糸目の乱歩さんの翠緑の双眸が開かれた。
「な、る、ほ、ど……凛子、事件は解決だ」
そして名探偵は、自信に満ちた笑みを浮かべて犯人を指差す――
*
「お疲れ様でした、江戸川さん。今回の事件も素晴らしい推理でしたね」
「別にこのくらいの殺人事件なんて、僕にとってはわけないけど。あっ、でもお菓子は作ってよ!」
「はい、もちろんです」
華麗な推理で事件を解決へと導いた江戸川さんに、繋がれた手をぐいぐいと引っ張られて帰路に着く。眼鏡を外せばまた元の通りの“大きな子供”。まるで眼鏡に魔法が掛かっているみたいに思えた。
引力に負けて転ばないよう気をつけながら、後ろで何かを話している太宰さんと中島さんに振り返る。「帰りましょうか」そう言うと、2人は何も言わずに優しく笑った。
「こ、こんにちは太宰さん。心中は辞退させていただきますね」
突然の心中の誘いに思わず言葉を詰まらせると、江戸川さんが呆れたように太宰さんにひらひらと手を振る。
「一寸、凛子を巻き込んで心中しようとするのやめてくれる? あまりしつこいと凛子に嫌われるよ」
「おや、それは失礼しました。ところで乱歩さんがいるということは、此処は事件現場ですか?」
川の水に濡れた太宰さんはそのまま成り行きで捜査に加わった。警察の方にタオルを貸してくれるよう頼んでずぶ濡れの太宰さんに渡せば、がしがしと乱暴に水滴を拭う。彼は中島さんの口から事件について聞き、大仰なほどに嘆いてみせて再び心中の件を口走った。それはこの場では少々、良くない。
「太宰さん……被害者の女性は自ら命を絶ったわけではありません。殺害されてしまったんです。その言葉はあまりにも不謹慎ですよ」
「嗚呼、失礼。以後気を付けます」
窘めても飄々としている太宰さんは江戸川さんに謎解きを聞かんと問いかけた。けれど彼は依頼はないと一蹴し、あろうことか巡査である杉本さんに謎を解けと言ってのける。
「江戸川さん、からかってはいけませんとあれほど……」
「まあまあ、凛子は見てなよ」
私が非難がましい目を向けようと、江戸川さんは笑って取り合わない。カウントダウンに急かされた杉本さんによる即席の推理は、犯人による偽装工作だと太宰さんに一蹴される。江戸川さんは箕浦さんからの挑戦とも取れる依頼を受けた。
「凛子、眼鏡」
「はい」
こちらへ来る前に預けられていた眼鏡を渡す。それを掛ければ探偵社を支える“名探偵”が出来上がり、いつも糸目の乱歩さんの翠緑の双眸が開かれた。
「な、る、ほ、ど……凛子、事件は解決だ」
そして名探偵は、自信に満ちた笑みを浮かべて犯人を指差す――
*
「お疲れ様でした、江戸川さん。今回の事件も素晴らしい推理でしたね」
「別にこのくらいの殺人事件なんて、僕にとってはわけないけど。あっ、でもお菓子は作ってよ!」
「はい、もちろんです」
華麗な推理で事件を解決へと導いた江戸川さんに、繋がれた手をぐいぐいと引っ張られて帰路に着く。眼鏡を外せばまた元の通りの“大きな子供”。まるで眼鏡に魔法が掛かっているみたいに思えた。
引力に負けて転ばないよう気をつけながら、後ろで何かを話している太宰さんと中島さんに振り返る。「帰りましょうか」そう言うと、2人は何も言わずに優しく笑った。