死を記憶する女司書
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荷物を有りッ丈纏めて武装探偵社を飛び出した。国木田さんに小言を云われたけど聞かぬ振りをして。
僕の所為で探偵社に害が及ぶなんて我慢出来ない。そして何より、僕なんかを勇気付けてくれた凛子さんがナオミさんのように傷付く事が怖かった。
「中島さん! 待って、待って下さい!」
「なっ……凛子さん?!」
凛子さんが走って追いかけて来る姿を捉える。慌てて止まって追いつくのを待てば、彼女は肩で息をして僕を捕まえた。ずっと走った所為で暑いのか額に汗を滲ませている。汗で張り付く髪を手で払って安心したように息をした。
「心配したんですよ。マフィアに襲われたばかりなのに、急に探偵社から出て行ってしまうなんて……皆さん心配しています。さ、帰りましょう」
差し出された綺麗な手を、僕はもう取ることは出来ない。
「僕が居たら探偵社が……皆が、凛子さんが危ないんです! 僕が大人しくマフィアに捕まれば、探偵社が危害を加えられることはありません。だからもう……」
「放って置いて下さい」とは云えなかった。僕が飛び出すのは、其れが僕に出来る唯一のことだと思ったから。本当は怖いし、逃げられるだけの力もなければ勇気もない。だからどうか、僕が臆病風に吹かれる前に見棄ててくれと願う。
「『男って、正直ね。何もかも、まる見えなのに、それでも、何かと女をだました気で居るらしいのね』」けれど僕の願いとは裏腹に、優しく細められた凛子さんの目が僕を捉えた。其の目に見詰められるだけで恐怖と孤独に荒んだ心が凪いで行く。
「怖くないはずはないのに、それでも探偵社のために去ろうとする。中島さんは優しいひとです。優し過ぎるくらいに。でも、その心配は要りませんよ」と云う凛子さんに理由を訊こうとした刹那、耳を劈 く銃声が響いた。あろうことか探偵社から。
慌てて踵を返して走り出す。昇降機昇降機 なんて待つ暇も惜しい。脇にある階段を駆け上がり、探偵社のドアを蹴破るように開け放った。
然し其処には、僕の想像とは全く違った光景が広がっている。
特殊部隊並みだと謳われていた筈のマフィアの武闘派が、国木田さんをはじめとした探偵社の社員たちに呆気無く伸されていたのだ。此れでは探偵社とマフィアの何方が物騒なのか分かったものじゃない。
「ほら、大丈夫だったでしょう?」
後ろを見ると、僕の後を着いて来ていた凛子さんが佇んでいる。思わずぽかんとして、彼らの強さと自分の間抜けさに呆れつつ半分泣くと、国木田さんにしつこいくらいに泣いているのかと問い質された。自棄になって「泣いてます!」と叫ぶように云えば凛子さんは朗らかに笑ったのだ。
僕の所為で探偵社に害が及ぶなんて我慢出来ない。そして何より、僕なんかを勇気付けてくれた凛子さんがナオミさんのように傷付く事が怖かった。
「中島さん! 待って、待って下さい!」
「なっ……凛子さん?!」
凛子さんが走って追いかけて来る姿を捉える。慌てて止まって追いつくのを待てば、彼女は肩で息をして僕を捕まえた。ずっと走った所為で暑いのか額に汗を滲ませている。汗で張り付く髪を手で払って安心したように息をした。
「心配したんですよ。マフィアに襲われたばかりなのに、急に探偵社から出て行ってしまうなんて……皆さん心配しています。さ、帰りましょう」
差し出された綺麗な手を、僕はもう取ることは出来ない。
「僕が居たら探偵社が……皆が、凛子さんが危ないんです! 僕が大人しくマフィアに捕まれば、探偵社が危害を加えられることはありません。だからもう……」
「放って置いて下さい」とは云えなかった。僕が飛び出すのは、其れが僕に出来る唯一のことだと思ったから。本当は怖いし、逃げられるだけの力もなければ勇気もない。だからどうか、僕が臆病風に吹かれる前に見棄ててくれと願う。
「『男って、正直ね。何もかも、まる見えなのに、それでも、何かと女をだました気で居るらしいのね』」けれど僕の願いとは裏腹に、優しく細められた凛子さんの目が僕を捉えた。其の目に見詰められるだけで恐怖と孤独に荒んだ心が凪いで行く。
「怖くないはずはないのに、それでも探偵社のために去ろうとする。中島さんは優しいひとです。優し過ぎるくらいに。でも、その心配は要りませんよ」と云う凛子さんに理由を訊こうとした刹那、耳を
慌てて踵を返して走り出す。昇降機
然し其処には、僕の想像とは全く違った光景が広がっている。
特殊部隊並みだと謳われていた筈のマフィアの武闘派が、国木田さんをはじめとした探偵社の社員たちに呆気無く伸されていたのだ。此れでは探偵社とマフィアの何方が物騒なのか分かったものじゃない。
「ほら、大丈夫だったでしょう?」
後ろを見ると、僕の後を着いて来ていた凛子さんが佇んでいる。思わずぽかんとして、彼らの強さと自分の間抜けさに呆れつつ半分泣くと、国木田さんにしつこいくらいに泣いているのかと問い質された。自棄になって「泣いてます!」と叫ぶように云えば凛子さんは朗らかに笑ったのだ。