死を記憶する女司書
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買い出しから帰って間もなく太宰さんと中島さんたちがお帰りになった。けれど私の考えとは全く違った傷だらけの姿で。
「ナオミちゃん達、大丈夫でしょうか……」
「大丈夫ですよ。与謝野先生が診ているんですから」
そわそわと落ち着きのない私に、中島さんのベッドの傍らに備えられたパイプ椅子に腰掛ける国木田さんが答える。
「谷崎 さんを守るために飛び出すなんて……」
異能力者でもない普通の女の子が怯むことなく銃弾の盾になる芸当をしてみせたり、明確な殺意を持った敵と命懸けで戦ったり。久しく感じていなかった、平和な元いた世界との激しいギャップに頭が痛い。
私が住む異世界 はそういうところで、私が働く武装探偵社はそういう仕事をする場所だ。それを嫌になるくらいに再確認させられる。
「ん……」
「起きたか小僧」
目を向ければ中島さんが目を覚ましていた。眠たげな目はあどけなく、こんな子が血まみれになって戦ったのかと思うと胸が痛い。国木田さんは彼と話をしたいようでこちらに目配せをする。私は何も言わず、中島さんへ安心させるように笑いかけてから部屋を辞した。
「おや、凛子さん」
「太宰さん。おかえりなさい、ご無事で何よりです」
医務室を出ればソファに腰掛ける太宰さんと対面する。しそびれていた出迎えの言葉を送った彼は怪我がないようでいつも通りだ。
「依頼の女性に盗聴器を仕掛けていたらしいですね」
「哀しいかな、美人さんの行動が気になるのは男の性 なのですよ、凛子さん。其れに彼女は依頼者じゃあない。マフィアの人間だ」
おちゃらけながら変わらぬ軽口を叩く。ご機嫌に音楽を聴いていたと思っていたけれど、それは女性――潜入してきたポート・マフィアの盗聴をしていたと国木田さんから聞いた。
「今、お茶の用意をしますね。皆さんもお疲れでしょう」
買ったばかりの茶葉を取り出し、やかんには水を入れて火にかける。谷崎さんたちには後で身体に優しいものを差し入れようかと思案した。
「嗚呼、そうそう凛子さん、ハンカチを貸して頂けないでしょうか?」
「ええと……実は今、持っていなくて……」
思い出したかのような表情で手を差し出す太宰さんに、居心地悪く首を振る。すると彼は眉をひょいと上げて驚いた様子で首を傾げた。芝居がかっているように見えるのは気のせいだろうか。
「おや、朝は持っていた筈では?」
「実はお買い物のとき、体調の優れない男性を見かけて。その方は急いでいらっしゃるようだったので、ハンカチだけでもと押し付けてしまったんですよ」
素直にそう答えれば太宰さんは愉快そうに笑った。意味を測りかねて首を傾げていると、いつの間にやら荷物を抱えた国木田さんが部屋へ入って来る。
「全く、あの小僧は勝手に出て行きやがって……!」
ぶつぶつと小言をこぼす国木田さんから拾い聞いた言葉に私は目を見開いた。
「ナオミちゃん達、大丈夫でしょうか……」
「大丈夫ですよ。与謝野先生が診ているんですから」
そわそわと落ち着きのない私に、中島さんのベッドの傍らに備えられたパイプ椅子に腰掛ける国木田さんが答える。
「
異能力者でもない普通の女の子が怯むことなく銃弾の盾になる芸当をしてみせたり、明確な殺意を持った敵と命懸けで戦ったり。久しく感じていなかった、平和な元いた世界との激しいギャップに頭が痛い。
私が住む
「ん……」
「起きたか小僧」
目を向ければ中島さんが目を覚ましていた。眠たげな目はあどけなく、こんな子が血まみれになって戦ったのかと思うと胸が痛い。国木田さんは彼と話をしたいようでこちらに目配せをする。私は何も言わず、中島さんへ安心させるように笑いかけてから部屋を辞した。
「おや、凛子さん」
「太宰さん。おかえりなさい、ご無事で何よりです」
医務室を出ればソファに腰掛ける太宰さんと対面する。しそびれていた出迎えの言葉を送った彼は怪我がないようでいつも通りだ。
「依頼の女性に盗聴器を仕掛けていたらしいですね」
「哀しいかな、美人さんの行動が気になるのは男の
おちゃらけながら変わらぬ軽口を叩く。ご機嫌に音楽を聴いていたと思っていたけれど、それは女性――潜入してきたポート・マフィアの盗聴をしていたと国木田さんから聞いた。
「今、お茶の用意をしますね。皆さんもお疲れでしょう」
買ったばかりの茶葉を取り出し、やかんには水を入れて火にかける。谷崎さんたちには後で身体に優しいものを差し入れようかと思案した。
「嗚呼、そうそう凛子さん、ハンカチを貸して頂けないでしょうか?」
「ええと……実は今、持っていなくて……」
思い出したかのような表情で手を差し出す太宰さんに、居心地悪く首を振る。すると彼は眉をひょいと上げて驚いた様子で首を傾げた。芝居がかっているように見えるのは気のせいだろうか。
「おや、朝は持っていた筈では?」
「実はお買い物のとき、体調の優れない男性を見かけて。その方は急いでいらっしゃるようだったので、ハンカチだけでもと押し付けてしまったんですよ」
素直にそう答えれば太宰さんは愉快そうに笑った。意味を測りかねて首を傾げていると、いつの間にやら荷物を抱えた国木田さんが部屋へ入って来る。
「全く、あの小僧は勝手に出て行きやがって……!」
ぶつぶつと小言をこぼす国木田さんから拾い聞いた言葉に私は目を見開いた。