死を記憶する女司書
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凛子と知り合ったのはつい一年程前。買い物に途方もねェ時間を掛ける首領 にエリス嬢が機嫌を損ねて服飾店 抜け出しちまったことから始まった。そンなことはまァよくあることで俺は何時も通り迎えに行くことになる。
エリス嬢の髪飾りに付けているGPSを頼りに街中を歩いて行けば、小さな図書館に行き着いた。静かに歳月を重ねたそれは古めかしくも地元の人間に愛されたような痕跡が様々なところから窺える。
怪しい処ではないと踏み、特に警戒することなく中に這入って見ると、エリス嬢とひとりの女が椅子に隣り合って座って居た。女は絵本を手にエリス嬢に読み聞かせをしているようだった。
あ、チュウヤ! つい先程迄は不機嫌だったエリス嬢が御機嫌で俺に手を振って来る。
「エリス嬢、急に居なくなられるのは困りますよ。首領も心配して居ました」
「知らない。リンタロウのお買い物が長いのがいけないんだから!」
ぷうと頬を膨らませるエリス嬢に何とも云えねェ貌をして、その隣にいる女を見た。
「あ……初めまして、この図書館の司書をしている金沢凛子と申します」
椅子から立ち上がった女――凛子が自己紹介をして、俺は慌てて自分の名を口にする。
「チュウヤ、さっきまで凛子がね、あたしに絵本を読んでくれたの。ねえ、またここに来てもいい?」
「はい、もちろんですよ。お待ちしています」
すっかり御機嫌のエリス嬢は俺のことなどいざ知らず、勝手な約束を取り付けた。其れが只の気紛れだと思いきや今日の今日まで続いているのだから余程に凛子のことを好いているンだろう。
「――それでねリンタロウ、今日はマカロンをくれたのよ。凛子のお菓子はとってもおいしいの」
「うんうん、そっかあ」
燥 ぐエリス嬢にでれでれとだらしない貌をする首領。何処かズレた会話を首領もエリス嬢も気にしない、何処かズレた構図だ。其れは此処一年の恒例と化している。
「けれどそうか……エリスちゃんが其処迄お気に入りの“凛子さん”、ちょっと気になるねえ」
ふと何気なくこぼされた其れに思わず固まった。首領が守備範囲外の女に関心を寄せるなんて夢にも思ったことはなく、返事に詰まる。だが首領の反応にいち早く反応したエリス嬢がテーブルに手をつき勢い良く立ち上がった。
「そう! あたしね、凛子にリンタロウの図書館ではたらいてほしいの!」
「ええ?! エリスちゃん?!」
「許してくれないならリンタロウのことなんて嫌いになっちゃうわ!」
エリス嬢が落とした爆弾に頭が痛くなったのは、恐らく気の所為じゃねェ。
エリス嬢の髪飾りに付けているGPSを頼りに街中を歩いて行けば、小さな図書館に行き着いた。静かに歳月を重ねたそれは古めかしくも地元の人間に愛されたような痕跡が様々なところから窺える。
怪しい処ではないと踏み、特に警戒することなく中に這入って見ると、エリス嬢とひとりの女が椅子に隣り合って座って居た。女は絵本を手にエリス嬢に読み聞かせをしているようだった。
あ、チュウヤ! つい先程迄は不機嫌だったエリス嬢が御機嫌で俺に手を振って来る。
「エリス嬢、急に居なくなられるのは困りますよ。首領も心配して居ました」
「知らない。リンタロウのお買い物が長いのがいけないんだから!」
ぷうと頬を膨らませるエリス嬢に何とも云えねェ貌をして、その隣にいる女を見た。
「あ……初めまして、この図書館の司書をしている金沢凛子と申します」
椅子から立ち上がった女――凛子が自己紹介をして、俺は慌てて自分の名を口にする。
「チュウヤ、さっきまで凛子がね、あたしに絵本を読んでくれたの。ねえ、またここに来てもいい?」
「はい、もちろんですよ。お待ちしています」
すっかり御機嫌のエリス嬢は俺のことなどいざ知らず、勝手な約束を取り付けた。其れが只の気紛れだと思いきや今日の今日まで続いているのだから余程に凛子のことを好いているンだろう。
「――それでねリンタロウ、今日はマカロンをくれたのよ。凛子のお菓子はとってもおいしいの」
「うんうん、そっかあ」
「けれどそうか……エリスちゃんが其処迄お気に入りの“凛子さん”、ちょっと気になるねえ」
ふと何気なくこぼされた其れに思わず固まった。首領が守備範囲外の女に関心を寄せるなんて夢にも思ったことはなく、返事に詰まる。だが首領の反応にいち早く反応したエリス嬢がテーブルに手をつき勢い良く立ち上がった。
「そう! あたしね、凛子にリンタロウの図書館ではたらいてほしいの!」
「ええ?! エリスちゃん?!」
「許してくれないならリンタロウのことなんて嫌いになっちゃうわ!」
エリス嬢が落とした爆弾に頭が痛くなったのは、恐らく気の所為じゃねェ。