200呉年・呉月呉日
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『200呉年・呉月呉日』
5月2日。昼過ぎ――――――――――
「な・ん・だ、いきなり呼び出されたと思ったらこのような要求。いくら最愛の妻からだろうと飲み込めん」
周瑜 は小喬 からの他愛もない要求をあっさり切り捨てる。
「なぁ?周瑜?何でダメなんだ?その日、祭りになるんだろ?」
同席していた孫策 が子供のような疑問を投げかけてくる。
「どうしてもなにも、5月5日を建国記念日などと…我ら孫呉も曹魏のように建国したいのは山々だが、あと2日で建国しようなど無理な話もいいところだ」
「えー、5月5日って呉がいっぱいあるみたいで縁起も語呂もピッタリだと思ったのにー」
「なんとか建てちまおうずぇ!」
「だから無理だと言ってるだろう!!孫策も小喬ももっと現実を見ろ!
建国しろと言われて出来るならもうとっくにしている!」
「あー、そうか。それもそうだな」
「そうだ。はぁ…、まったく。小喬?お前も分かったな?」
粗くなっていた言葉を落ち着けると、柔らかい笑みで周瑜は小喬に問いかけた。
「うーん。建国記念日には出来ないのはわかったけどぉ、でも何かしたくなーい?最近ひまだしー」
「何か、とは?」
「んー、たとえばぁ、孫策さまが言ったみたいにお祭りとかー、大会とかぁ?」
「お!大会!いいな!野球大会したいずぇ!親父も前に野球がどうのとか言ってたしな!」
「野球…まぁ、それくらいならいいだろう…。孫堅 さまも仰られていたならムゲにするわけにもいかないしな…」
「おう!じゃあ、そうと決まればみんなに伝えてくるずぇ!!」
「あたしもー!」
あまり乗り気ではない周瑜を気にする事もなく
孫策と小喬の2人は早速ここぞとばかりにメンバーを掻き集めるため勢いよく部屋を出て行ったのだった。
*
*
5月5日当日――――――
灼熱の太陽の光を邪魔するものは何一つ見当たらない。
スカッと晴れた青空が広がる中、掻き集められた呉の精鋭たちはそれぞれの闘志を燃やし、佇んでいた。
が…
「ついに、来てしまったな…この日が…周瑜どの。」
「そうだな。孫策や小喬は止めたところで止まらないだろうから、素直にやらせるのが一番の対処法…だと信じたいんだが…。」
「ふーん。たまにはこう言う息抜きもいいんじゃないですか?私は負けませんよ?」
呉の軍師陣は太陽に照らされながらはしゃぐ武将達を横目に見つつ
木陰に入って最後の打ち合わせをしていた。
その中で以外にもやる気を見せている陸遜 。
呂蒙 と周瑜はなんだか気乗りしないようだ。
「あぁ、息抜きになればいいが。 はぁぁあっ」
深いため息を吐いた周瑜は心なしか、いつもにもまして血の気がないように見えた。
「俺が四番だ!誰にも譲らん!」
「今日こそは親父に勝つぜー!!」
「孫権 さま、こちらへ…」
「幼平 !お前はどこのチームなんだ?」
「権兄さま!負けないわよー!」
「甘寧 、てめぇぶっ殺すかんな!!!」
「お前、あんまりおっかねぇ事言うなよ!まっ、俺も負ける気はしねぇけどな。」
「周瑜さまはドコのチームなのー?」
「小喬、あまり周瑜さまを困らせちゃダメよ。」
「ここから先は通させん。」
「何を言うかこの小童が!老いぼれも負けてはおれんな!はっはっは。」
孫堅 、孫策 、周泰 、
孫権 、尚香 、凌統 、
甘寧 、小喬 に大喬 、
太史慈 、黄蓋 。
皆が次々に言いたい事を言いたいように言いまくっている状況に、
陸遜が拡声器を使ってストップをかける。
「はーい!皆さん黙ってくださーい!今から試合始めますよー!」
いらないことに(?)は余計な体力を使わない。
と言う陸遜の信念が「拡声器使用」に大きく表れている。
「チーム分けはコッチで勝手にやらせていただきました。今から発表するんでよく聞いていてくださいね。
それでは呂蒙どの、お願いします。」
拡声器を使ったまま一通りのことを告げると、陸遜は呂蒙に拡声器を手渡す。
「では、これから孫堅さまチームと、孫策さまチームの発表をする。
あ、ついでに、野球は本来9人制だが、参加人数が足りなかった為、ひとチーム7人で組んだ。
っと、じゃあ、孫堅さまチームからー、(敬称略)孫堅、太史慈、小喬、甘寧、黄蓋、凌統、俺、だ。
孫策さまチームが、(同じく敬称略)孫策、孫権、尚香、大喬、周泰、陸遜、周瑜、だ。」
あまり乗り気ではない呂蒙のぽつぽつ声には拡声器の音量が丁度よかった。
いつもの声なら皆の鼓膜が破れていたかもしれない。
「あぁ?何で俺がこいつと一緒何だよ!?」
「俺だってお前と一緒なんざ命がいくつあっても足りねぇ!」
「ふざけんな!1回逝ったら戻ってくんな!!」
「お前、いつまで親父の事、根にもってんだよ!」
「うるさいっ!!!!」
「「チーム変えてくれ!!」」
文句タラタラ、不満グチグチと漏らして言い合っていた凌統と甘寧の声がハモる。
「言い忘れていたが、苦情は受け付けない。厳選なる阿弥陀の結果だ。やり直しもしないし、ぶっちゃけ、めんどくさい。」
その訴えに周瑜は後ろ頭を掻きながらキッパリと返した。
周瑜のそっけなく、且つ適当な答えにギャアギャア騒ぐ二人だったが、周りから完璧に流されてしまっていた。
0-0
5回表。攻撃孫堅チーム。1アウト、ランナーは1塁3塁、バッター4番孫堅。ピッチャー陸遜。
この時点で時は夕刻も近い。
「こい!陸遜!!俺はどんな球でも打って見せる。」
少年のようなキラキラした瞳で自信満々に言ってのける孫堅。
「孫堅さまだからって容赦はしませんよ?全力でいかせてもらいます。」
策士らしい不敵な笑みを浮かべながら、今から出陣でもするような言葉を吐く陸遜。
辺りにはピリピリとした空気が流れる。
時の流れはまるでアノ歴史に残る野球漫画、「巨〇の星」のごとく、
とても進みが遅く感じられる。
このまま「次週へ続く!」とか言ってしまいそうだ。
「っは、」
「ふんっ!」
一球目、ストライク。
陸遜の投げたボールは相手の目の前でカクっと下がりストライクゾーンぎりぎりに入ってくる見事なフォークだった。
「はっ、」
「ふっん!」
カキーン
いつまでも続くかと思われた緊迫感の終わりは、思ったよりあっけないものだった。
孫堅の打ち放った打球は気持ちいいほどに延び、孫策が自分の持ち場の2塁を離れ、
ダッシュで追いかけたのも虚しく、ホームラン。
これで点差は2-0だ。
「ふっ、やりますね。流石は孫堅さまだ。…けど、次はこう簡単には打たせませんよ。」
爽やかな笑みを浮かべながらも内心グツグツ煮えたぎっている陸遜は次のバッター、甘寧に向かって更なる闘志を燃やしていた。
「今のリズムはこっちにある。戦はリズムが大事だぜ?軍師さんよぉ?」
「そのリズムを壊す事も出来なければ、一人前の軍師になることも出来ませ
ん。もとい、私が貴方に敵わないとでも?!」
そう言い終ったと同時に陸遜は恐ろしい速さで球を投げた。
空気との摩擦で火でも付きそうな速さだ。
……いや、実際、球に火が付いていた…
「っだぁっ!!お、おまっ!なにしてんだ!反則じゃないのか!?反則!!」
バスッ。
甘寧が喚いている間に白球は、キャチャーの周泰のミットに煙をはきながら綺麗におさまった。
ピッタリストライクど真ん中だった。
「反則だなんて侵害だなぁ。審判なんて誰もやってないのに、甘寧どのは何様なんでしょう?
あーあ、先回までの甘寧どのたちの乱闘騒ぎも大目に見てきたんだけどなぁ。」
「うっ…」
陸遜の言う通り、野球をするには集まった人数が少々、少ないために審判まで手が回らなかったのだ。
そのため、ルールはアウト、セーフ、ストライク、ぐらいの基本の基本ぐらいしか見ておらず
ファールだの、反則だのは、ほとんど無視したゲーム展開だった。
おかげで、毎回で起こる甘寧と凌統の無双乱舞暴発な乱闘騒ぎは適当にやり過ごされ
周瑜の小喬に対する過剰なまでの甘い投球にランニング、黄蓋の爆弾を投げ相手をビビらせる。
太史慈がバットの変わりに虎撲欧狼改(4のユニーク武器)で球を叩き割る。
など、とても尋常ではないプレーも大目に見られてきたのである。
そんなわけで、陸遜の火を噴く白球も甘寧以外、特に誰も気にする者はなく
ゲーム自体はスムーズに(?)流れていき、甘寧はあっさりと三振をとられてしまったのだった。
5回裏。攻撃孫策チーム。一球目。バッター孫策。ピッチャー凌統。
「おー!皆気合入れていくずぇー!!!!」
「孫策さま、行きますよ!覚悟してください!」
ぶぉっ!
凄い風圧が辺りを取り巻く。野〇もビックリな程回転の効いた凌統のトルネード投法。
孫策はそれにバットを振ったが思い切りのいい空振り。
そんな調子が2回続いた。2ストライク。残りあと一本。
「へへー、孫策さまも案外大したことないんですねぇー」
上機嫌で滑り止めの石灰を手に握る凌統。
「ははっ!江東の小覇王と呼ばれた孫伯符!そう甘く見てもらっちゃぁ困るぜ!」
これからが本番、と言ったところなのか、それともただの自信家なのか、どちらとも甲乙つけがたい孫策の言葉の後の短い沈黙の後に
またもや凌統のスペシャルトルネード投法が炸裂した。
しかし、今回は孫策の勝ちだった。
結果はセンター前ヒット。孫策は猛烈なダッシュで二塁まで進んだ。
ぴひょろろ~ピロリンぴろぴろ~♪
ドコからともなく綺麗な笛の音が聞こえてきた。周瑜の奏でる笛の音だ。
「試合終了―!!」
周瑜の笛の音と共に呂蒙の低い声が良く響く。
「もうそろそろ日も暮れる。皆解散だ!」
「待てよ、周瑜!せめて俺の回が終わってからにしようぜ!」
「そですよ。負けたままでは収まりがつきません。」
「今日はココまでだ。日が暮れては球もろくに見えなくなるだろう。」
「それなら火を焚けばいいじゃないですか!」
「そうだずぇ!それなら問題ないだろ?周瑜?」
「・・・・・・・・・」
笛を吹く手を止め、帰れ。と言う周瑜に詰め寄る孫策と陸遜。
「…勝手にしろ。 だが、私は休む。適当に穴は埋めておいてくれ。」
正直なところ、こんなレクリエーションさっさと終わらせるつもりだった周瑜は 定まらない視線を明後日の方向に流しながら
ふわふわと屋敷の方向へ歩いていく。
それに呂蒙が小走りで後を追いながら言う。
「お、俺も休む。そうすれば人数の均整が取れるだろう。じゃあな、」
「えー、周瑜さまがやらないんなら私もやめるー。」
呂蒙は一同に背を向けると、安堵のため息をつきながら家路へと急ぎ、それに次いで
小喬がお気軽な理由でチームを抜けた。
その場に残ったのは11人。
チームの人数比率がどうのとか、細かい事を考える人物はおらず、皆であたりに明かりを燈すと試合は再会された。
しかし、試合終了の最後まで残っていたのは
凌統と甘寧の2人だけだったとかじゃなかったとか・・・。
どうしようもないけど完。
5月2日。昼過ぎ――――――――――
「な・ん・だ、いきなり呼び出されたと思ったらこのような要求。いくら最愛の妻からだろうと飲み込めん」
「なぁ?周瑜?何でダメなんだ?その日、祭りになるんだろ?」
同席していた
「どうしてもなにも、5月5日を建国記念日などと…我ら孫呉も曹魏のように建国したいのは山々だが、あと2日で建国しようなど無理な話もいいところだ」
「えー、5月5日って呉がいっぱいあるみたいで縁起も語呂もピッタリだと思ったのにー」
「なんとか建てちまおうずぇ!」
「だから無理だと言ってるだろう!!孫策も小喬ももっと現実を見ろ!
建国しろと言われて出来るならもうとっくにしている!」
「あー、そうか。それもそうだな」
「そうだ。はぁ…、まったく。小喬?お前も分かったな?」
粗くなっていた言葉を落ち着けると、柔らかい笑みで周瑜は小喬に問いかけた。
「うーん。建国記念日には出来ないのはわかったけどぉ、でも何かしたくなーい?最近ひまだしー」
「何か、とは?」
「んー、たとえばぁ、孫策さまが言ったみたいにお祭りとかー、大会とかぁ?」
「お!大会!いいな!野球大会したいずぇ!親父も前に野球がどうのとか言ってたしな!」
「野球…まぁ、それくらいならいいだろう…。
「おう!じゃあ、そうと決まればみんなに伝えてくるずぇ!!」
「あたしもー!」
あまり乗り気ではない周瑜を気にする事もなく
孫策と小喬の2人は早速ここぞとばかりにメンバーを掻き集めるため勢いよく部屋を出て行ったのだった。
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5月5日当日――――――
灼熱の太陽の光を邪魔するものは何一つ見当たらない。
スカッと晴れた青空が広がる中、掻き集められた呉の精鋭たちはそれぞれの闘志を燃やし、佇んでいた。
が…
「ついに、来てしまったな…この日が…周瑜どの。」
「そうだな。孫策や小喬は止めたところで止まらないだろうから、素直にやらせるのが一番の対処法…だと信じたいんだが…。」
「ふーん。たまにはこう言う息抜きもいいんじゃないですか?私は負けませんよ?」
呉の軍師陣は太陽に照らされながらはしゃぐ武将達を横目に見つつ
木陰に入って最後の打ち合わせをしていた。
その中で以外にもやる気を見せている
「あぁ、息抜きになればいいが。 はぁぁあっ」
深いため息を吐いた周瑜は心なしか、いつもにもまして血の気がないように見えた。
「俺が四番だ!誰にも譲らん!」
「今日こそは親父に勝つぜー!!」
「
「
「権兄さま!負けないわよー!」
「
「お前、あんまりおっかねぇ事言うなよ!まっ、俺も負ける気はしねぇけどな。」
「周瑜さまはドコのチームなのー?」
「小喬、あまり周瑜さまを困らせちゃダメよ。」
「ここから先は通させん。」
「何を言うかこの小童が!老いぼれも負けてはおれんな!はっはっは。」
皆が次々に言いたい事を言いたいように言いまくっている状況に、
陸遜が拡声器を使ってストップをかける。
「はーい!皆さん黙ってくださーい!今から試合始めますよー!」
いらないことに(?)は余計な体力を使わない。
と言う陸遜の信念が「拡声器使用」に大きく表れている。
「チーム分けはコッチで勝手にやらせていただきました。今から発表するんでよく聞いていてくださいね。
それでは呂蒙どの、お願いします。」
拡声器を使ったまま一通りのことを告げると、陸遜は呂蒙に拡声器を手渡す。
「では、これから孫堅さまチームと、孫策さまチームの発表をする。
あ、ついでに、野球は本来9人制だが、参加人数が足りなかった為、ひとチーム7人で組んだ。
っと、じゃあ、孫堅さまチームからー、(敬称略)孫堅、太史慈、小喬、甘寧、黄蓋、凌統、俺、だ。
孫策さまチームが、(同じく敬称略)孫策、孫権、尚香、大喬、周泰、陸遜、周瑜、だ。」
あまり乗り気ではない呂蒙のぽつぽつ声には拡声器の音量が丁度よかった。
いつもの声なら皆の鼓膜が破れていたかもしれない。
「あぁ?何で俺がこいつと一緒何だよ!?」
「俺だってお前と一緒なんざ命がいくつあっても足りねぇ!」
「ふざけんな!1回逝ったら戻ってくんな!!」
「お前、いつまで親父の事、根にもってんだよ!」
「うるさいっ!!!!」
「「チーム変えてくれ!!」」
文句タラタラ、不満グチグチと漏らして言い合っていた凌統と甘寧の声がハモる。
「言い忘れていたが、苦情は受け付けない。厳選なる阿弥陀の結果だ。やり直しもしないし、ぶっちゃけ、めんどくさい。」
その訴えに周瑜は後ろ頭を掻きながらキッパリと返した。
周瑜のそっけなく、且つ適当な答えにギャアギャア騒ぐ二人だったが、周りから完璧に流されてしまっていた。
0-0
5回表。攻撃孫堅チーム。1アウト、ランナーは1塁3塁、バッター4番孫堅。ピッチャー陸遜。
この時点で時は夕刻も近い。
「こい!陸遜!!俺はどんな球でも打って見せる。」
少年のようなキラキラした瞳で自信満々に言ってのける孫堅。
「孫堅さまだからって容赦はしませんよ?全力でいかせてもらいます。」
策士らしい不敵な笑みを浮かべながら、今から出陣でもするような言葉を吐く陸遜。
辺りにはピリピリとした空気が流れる。
時の流れはまるでアノ歴史に残る野球漫画、「巨〇の星」のごとく、
とても進みが遅く感じられる。
このまま「次週へ続く!」とか言ってしまいそうだ。
「っは、」
「ふんっ!」
一球目、ストライク。
陸遜の投げたボールは相手の目の前でカクっと下がりストライクゾーンぎりぎりに入ってくる見事なフォークだった。
「はっ、」
「ふっん!」
カキーン
いつまでも続くかと思われた緊迫感の終わりは、思ったよりあっけないものだった。
孫堅の打ち放った打球は気持ちいいほどに延び、孫策が自分の持ち場の2塁を離れ、
ダッシュで追いかけたのも虚しく、ホームラン。
これで点差は2-0だ。
「ふっ、やりますね。流石は孫堅さまだ。…けど、次はこう簡単には打たせませんよ。」
爽やかな笑みを浮かべながらも内心グツグツ煮えたぎっている陸遜は次のバッター、甘寧に向かって更なる闘志を燃やしていた。
「今のリズムはこっちにある。戦はリズムが大事だぜ?軍師さんよぉ?」
「そのリズムを壊す事も出来なければ、一人前の軍師になることも出来ませ
ん。もとい、私が貴方に敵わないとでも?!」
そう言い終ったと同時に陸遜は恐ろしい速さで球を投げた。
空気との摩擦で火でも付きそうな速さだ。
……いや、実際、球に火が付いていた…
「っだぁっ!!お、おまっ!なにしてんだ!反則じゃないのか!?反則!!」
バスッ。
甘寧が喚いている間に白球は、キャチャーの周泰のミットに煙をはきながら綺麗におさまった。
ピッタリストライクど真ん中だった。
「反則だなんて侵害だなぁ。審判なんて誰もやってないのに、甘寧どのは何様なんでしょう?
あーあ、先回までの甘寧どのたちの乱闘騒ぎも大目に見てきたんだけどなぁ。」
「うっ…」
陸遜の言う通り、野球をするには集まった人数が少々、少ないために審判まで手が回らなかったのだ。
そのため、ルールはアウト、セーフ、ストライク、ぐらいの基本の基本ぐらいしか見ておらず
ファールだの、反則だのは、ほとんど無視したゲーム展開だった。
おかげで、毎回で起こる甘寧と凌統の無双乱舞暴発な乱闘騒ぎは適当にやり過ごされ
周瑜の小喬に対する過剰なまでの甘い投球にランニング、黄蓋の爆弾を投げ相手をビビらせる。
太史慈がバットの変わりに虎撲欧狼改(4のユニーク武器)で球を叩き割る。
など、とても尋常ではないプレーも大目に見られてきたのである。
そんなわけで、陸遜の火を噴く白球も甘寧以外、特に誰も気にする者はなく
ゲーム自体はスムーズに(?)流れていき、甘寧はあっさりと三振をとられてしまったのだった。
5回裏。攻撃孫策チーム。一球目。バッター孫策。ピッチャー凌統。
「おー!皆気合入れていくずぇー!!!!」
「孫策さま、行きますよ!覚悟してください!」
ぶぉっ!
凄い風圧が辺りを取り巻く。野〇もビックリな程回転の効いた凌統のトルネード投法。
孫策はそれにバットを振ったが思い切りのいい空振り。
そんな調子が2回続いた。2ストライク。残りあと一本。
「へへー、孫策さまも案外大したことないんですねぇー」
上機嫌で滑り止めの石灰を手に握る凌統。
「ははっ!江東の小覇王と呼ばれた孫伯符!そう甘く見てもらっちゃぁ困るぜ!」
これからが本番、と言ったところなのか、それともただの自信家なのか、どちらとも甲乙つけがたい孫策の言葉の後の短い沈黙の後に
またもや凌統のスペシャルトルネード投法が炸裂した。
しかし、今回は孫策の勝ちだった。
結果はセンター前ヒット。孫策は猛烈なダッシュで二塁まで進んだ。
ぴひょろろ~ピロリンぴろぴろ~♪
ドコからともなく綺麗な笛の音が聞こえてきた。周瑜の奏でる笛の音だ。
「試合終了―!!」
周瑜の笛の音と共に呂蒙の低い声が良く響く。
「もうそろそろ日も暮れる。皆解散だ!」
「待てよ、周瑜!せめて俺の回が終わってからにしようぜ!」
「そですよ。負けたままでは収まりがつきません。」
「今日はココまでだ。日が暮れては球もろくに見えなくなるだろう。」
「それなら火を焚けばいいじゃないですか!」
「そうだずぇ!それなら問題ないだろ?周瑜?」
「・・・・・・・・・」
笛を吹く手を止め、帰れ。と言う周瑜に詰め寄る孫策と陸遜。
「…勝手にしろ。 だが、私は休む。適当に穴は埋めておいてくれ。」
正直なところ、こんなレクリエーションさっさと終わらせるつもりだった周瑜は 定まらない視線を明後日の方向に流しながら
ふわふわと屋敷の方向へ歩いていく。
それに呂蒙が小走りで後を追いながら言う。
「お、俺も休む。そうすれば人数の均整が取れるだろう。じゃあな、」
「えー、周瑜さまがやらないんなら私もやめるー。」
呂蒙は一同に背を向けると、安堵のため息をつきながら家路へと急ぎ、それに次いで
小喬がお気軽な理由でチームを抜けた。
その場に残ったのは11人。
チームの人数比率がどうのとか、細かい事を考える人物はおらず、皆であたりに明かりを燈すと試合は再会された。
しかし、試合終了の最後まで残っていたのは
凌統と甘寧の2人だけだったとかじゃなかったとか・・・。
どうしようもないけど完。
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