悪役令嬢は恋を知らない
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「杏寿郎君」
柔らかな声に呼び止められて煉獄は後ろを振り返った。胸と背中に紗雪家の家紋の入った、白地に下につれ青いぼかしの入った羽織を着た青年が微笑んでいる。
「夏彦さん!」
「久しぶり。あ、それと炎柱就任誠におめでとうございます」
「ありがとうございます!!」
煉獄が頭を下げれば炎柱の証である炎の羽織が緩やかに広がった。一ヶ月前、煉獄は十二鬼月の下弦の鬼を倒し柱となっていた。傷も漸く癒え体調は万全だ。
「おじ様が塞いでいたから心配していたけれど、煉獄家は安泰だね」
「夏彦さんにそう言っていただけると力強いです!父上のご心配まで頂きありがとうございます!」
「杏寿郎君が頑張っているからだよ」
「ですが、本当ならば夏彦さんが柱になってもおかしく無かった」
「うーん、うちの家の人間はどうも情熱に欠けるようだからね。十二鬼月を倒したいとか柱になりたいとか無いんだよね」
(相変わらず感情の読めない方だ)
ほのほのと微笑んでいる夏彦を見ながら煉獄はそう思った。この夏彦と言う人物、いつもこんな感じで微笑んでいて怒ったところを見たことがない。
「まぁ、紗雪家の人間は感情が薄い者が多いからね。遺伝かな。だけど冬吾は違うから少し期待してたんだけどね」
「期待?あぁ、気配鋭敏の能力ですか」
紗雪家には時折気配の察知に異常に鋭い者が生まれることがあった。大抵は紗雪家には珍しく感情豊かな者である事が多く、夏彦には望めない能力だ。
「うん、だけど椎名は持っていると思う」
「椎名が、ですか」
言い切った夏彦に煉獄は目を丸くした。これまで椎名をずっと見てきたがそんな力がある様子は無かった筈だ。
「うん。と言っても子供の頃に少しその片鱗を見せたきりで、それ以降はそもそも鍛錬に力を入れてこなかったからね。能力を使い切れていないんだと思う」
「しかし椎名は感情豊かとは……あ、いや……ん?」
最近の椎名の様子を思い出して煉獄は言葉を濁した。夏彦の笑顔が苦笑気味に変わる。
「妹が迷惑をかけているね」
「迷惑など!冬吾さんは血気術を疑っておいででしたが……」
煉獄も正直その線を疑っていた。しかしそれにしては期間が長すぎる。
「あの子はね、無理をして感情を抑え込んでいたんだ。そうだなぁ……きっとこんな所だと思うよ。能力を持っている事が知れれば自分が紗雪家の跡取りに据えられるかも知れない。そうなると自分の好いた相手とは添い遂げられなくなる。だから感情を抑え、鍛錬を減らし、ただの我儘な末っ子を演じよう」
「椎名が……」
煉獄は幼い頃の椎名との約束を思い出していた。将来は結婚しようと言う他愛のない口約束だったが椎名はついこの間までは氷の女王と呼ばれる程頑張っていたのだ。
「椎名は頑張ることを辞めたのでしょうか」
それはつまり好きな相手と添い遂げることを諦めたと言うことだ。難しい顔をなった煉獄の眉間を夏彦は指で押した。
「それは分からないね。知るは本人ばかりなりだ」
「…………」
黙ってしまった煉獄を夏彦は穏やかな笑みをたたえ見ていた。
柔らかな声に呼び止められて煉獄は後ろを振り返った。胸と背中に紗雪家の家紋の入った、白地に下につれ青いぼかしの入った羽織を着た青年が微笑んでいる。
「夏彦さん!」
「久しぶり。あ、それと炎柱就任誠におめでとうございます」
「ありがとうございます!!」
煉獄が頭を下げれば炎柱の証である炎の羽織が緩やかに広がった。一ヶ月前、煉獄は十二鬼月の下弦の鬼を倒し柱となっていた。傷も漸く癒え体調は万全だ。
「おじ様が塞いでいたから心配していたけれど、煉獄家は安泰だね」
「夏彦さんにそう言っていただけると力強いです!父上のご心配まで頂きありがとうございます!」
「杏寿郎君が頑張っているからだよ」
「ですが、本当ならば夏彦さんが柱になってもおかしく無かった」
「うーん、うちの家の人間はどうも情熱に欠けるようだからね。十二鬼月を倒したいとか柱になりたいとか無いんだよね」
(相変わらず感情の読めない方だ)
ほのほのと微笑んでいる夏彦を見ながら煉獄はそう思った。この夏彦と言う人物、いつもこんな感じで微笑んでいて怒ったところを見たことがない。
「まぁ、紗雪家の人間は感情が薄い者が多いからね。遺伝かな。だけど冬吾は違うから少し期待してたんだけどね」
「期待?あぁ、気配鋭敏の能力ですか」
紗雪家には時折気配の察知に異常に鋭い者が生まれることがあった。大抵は紗雪家には珍しく感情豊かな者である事が多く、夏彦には望めない能力だ。
「うん、だけど椎名は持っていると思う」
「椎名が、ですか」
言い切った夏彦に煉獄は目を丸くした。これまで椎名をずっと見てきたがそんな力がある様子は無かった筈だ。
「うん。と言っても子供の頃に少しその片鱗を見せたきりで、それ以降はそもそも鍛錬に力を入れてこなかったからね。能力を使い切れていないんだと思う」
「しかし椎名は感情豊かとは……あ、いや……ん?」
最近の椎名の様子を思い出して煉獄は言葉を濁した。夏彦の笑顔が苦笑気味に変わる。
「妹が迷惑をかけているね」
「迷惑など!冬吾さんは血気術を疑っておいででしたが……」
煉獄も正直その線を疑っていた。しかしそれにしては期間が長すぎる。
「あの子はね、無理をして感情を抑え込んでいたんだ。そうだなぁ……きっとこんな所だと思うよ。能力を持っている事が知れれば自分が紗雪家の跡取りに据えられるかも知れない。そうなると自分の好いた相手とは添い遂げられなくなる。だから感情を抑え、鍛錬を減らし、ただの我儘な末っ子を演じよう」
「椎名が……」
煉獄は幼い頃の椎名との約束を思い出していた。将来は結婚しようと言う他愛のない口約束だったが椎名はついこの間までは氷の女王と呼ばれる程頑張っていたのだ。
「椎名は頑張ることを辞めたのでしょうか」
それはつまり好きな相手と添い遂げることを諦めたと言うことだ。難しい顔をなった煉獄の眉間を夏彦は指で押した。
「それは分からないね。知るは本人ばかりなりだ」
「…………」
黙ってしまった煉獄を夏彦は穏やかな笑みをたたえ見ていた。