悪役令嬢は恋を知らない
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「椎名、手拭いを取ってくれるかい?」
「…………」
「椎名?」
「あっ、はい!どうぞ夏彦お兄様」
いけない、夏彦お兄様の鍛錬を見学させてもらっていたのにボーッとしていたわ。私が慌てて差し出した手拭いで汗を拭きながらお兄様は小さく笑った。
「心ここに在らずだね」
「ごめんなさい……」
この前の廃屋での事をつい考えてしまう。どうして煉獄さんはあんな事をしたのだろう。彼は以前の私の冷たい態度に傷付き距離を取ろうとしていた筈だ。そこをヒロインちゃんに癒して貰うんだから間違いない。
(……傷付けているというのなら今も一緒か)
あんな悲しそうな顔させたいわけじゃ無かった。幸せになって欲しいだけなのに上手くいかないなぁ。
「悩み事かい?良ければ聞くよ?」
お兄様の穏やかな声に私は掻い摘んで話をした。
「だから、煉獄さんには今に素敵な人が見つかるだろうし、幸せになって欲しいんです」
その為に私に出来る事はなんでもするつもりだ。お兄様はいつもの笑顔で黙って話を聞いて下さった後、優しく頭を撫でてくれた。
「急に立ち振る舞いが変わったのはそれが理由なんだね」
「いつまでもただの幼馴染が隣に居続けるわけには参りませんわ。煉獄さんに良い方が見つかれば私はどこぞへなりと遠方にでも嫁ぐつもりです」
「遠方に……嫁ぐ……?」
「?」
何かおかしな事を言ったかしら?お兄様は小声で何かを呟かれた。笑顔が少し硬くなった気がするわ。私が首を傾げるとハッとこちらを見る。
「いや、何でもないよ。別に嫁いで行かなくとも気配鋭敏が使えるのだからこのまま紗雪家を継いだって良いんだよ?」
「嫌よ。この家はお兄様じゃないと回せないもの」
お父様は勿論いるけれど、最近はお兄様が家の事をしているのは知ってる。何があっても動じないぐらいドンと構えてないといけなくて、とてもじゃ無いけど私が出来るとは思えない。お兄様は何か微笑ましいものを見るような目を私に向けた。
「杏寿郎君の幸せを願える椎名は偉いね。だけど肝心の杏寿郎君がどうしたいかは考えたことがあるかい?」
「……煉獄さんが?」
そんなの考えるまでも無いわ。煉獄さんはヒロインちゃんと出会って初めて愛を知るのだもの。今はまだ知らないだけであんな素敵な恋を知ったらヒロインちゃんと居るのが幸せに決まってるじゃ無い。
「本人から直接聞いたかい?」
「直接は……」
未来の事は話せないし何て聞いたらいいか分からないもの。言い淀んだ私の頭をお兄様が再度撫でた。もう!子供じゃありませんのよ!
「ねぇ椎名。お前と杏寿郎君は同じような歳に母親を亡くしたよね」
お母様は私が8歳の時に亡くなられた。その2年後に煉獄さんのお母様が……確かその時煉獄さんは11歳だった筈。お母様の死の悲しみを乗り越えつつあった私達は少しでも煉獄家の皆さんの支えになれたらと、よく訪ねたのを覚えている。
「杏寿郎君にとってお前の存在はとても大きかったと思うよ」
「それは私も同じですわ。お兄様達はいて下さったけど夏彦お兄様は隊士になったばかり。冬吾お兄様はもうすぐ選抜で家での留守番が多かったですから」
最早途中からは煉獄さんに会いたいが為に行っていたようなものだ。あら?そう考えると支えるどころか支えられてたじゃ無いの私ったら。
「そうだね。あの時は寂しい思いをさせてすまなかっとと思っているよ。でも私たちにとってもお前と杏寿郎君の仲睦まじい様子は救いだったよ。二人の結婚の約束を本気で応援するぐらいには」
「…………」
二の句がつげなくなった私にお兄様が柔らかく微笑んだ。お兄様は決して感情が薄いわけじゃ無いと思う。少し分かりづらいだけだ。
「ねぇ椎名。約束はお互いの同意がないと成り立たない。杏寿郎君の気持ちは何処にあるんだろうね?」
「そ……んな、子供の頃の約束を真に受けるなんてお兄様ったら!煉獄さんはお優しいから行き遅れそうな私を心配しているだけですわ!あの方の優しさは全方向を向いているのですから、勘違いしないで下さい!」
「うーん、以前とは違う方向に拗れたね」
「何か仰いまして!?」
「いや?何も?」
夏彦お兄様といい冬吾お兄様といいどうして煉獄さんが私と結婚したいかのような前提で話をしてくるのかしら!全くもって推しへの侮辱だわ!煉獄さんだって外堀を埋められてるようで不快じゃないの!
「…………」
そうかー!そう言う事だったのね!!煉獄さんの『俺を何だと思ってるんだ』発言は自分の意思に反して埋まってる外堀への批判だったんだわ!そうよね!自分の意思を丸っと無視されたら怒って当然だわ!!
「大変!こうしちゃいられないわ!」
外堀って事はお兄様達だけじゃなく他の人もそう思ってるって事よね!誤解を解いて回らなくちゃ!!
「お兄様、私これで失礼します!」
「あ、ちょっと待ちなさい椎名。頭の中で出したその結論をまずは私に話してから……」
まず手近な所で蜜璃さんからね!あぁ、でも蜜璃さんも最近柱になったばかりでお忙しいかしら?でも大切な事だからお時間いただけると嬉しいわ!
外堀はちゃんと埋設して無かったものにしておきますから安心して下さいね!煉獄さん!!
「…………」
「椎名?」
「あっ、はい!どうぞ夏彦お兄様」
いけない、夏彦お兄様の鍛錬を見学させてもらっていたのにボーッとしていたわ。私が慌てて差し出した手拭いで汗を拭きながらお兄様は小さく笑った。
「心ここに在らずだね」
「ごめんなさい……」
この前の廃屋での事をつい考えてしまう。どうして煉獄さんはあんな事をしたのだろう。彼は以前の私の冷たい態度に傷付き距離を取ろうとしていた筈だ。そこをヒロインちゃんに癒して貰うんだから間違いない。
(……傷付けているというのなら今も一緒か)
あんな悲しそうな顔させたいわけじゃ無かった。幸せになって欲しいだけなのに上手くいかないなぁ。
「悩み事かい?良ければ聞くよ?」
お兄様の穏やかな声に私は掻い摘んで話をした。
「だから、煉獄さんには今に素敵な人が見つかるだろうし、幸せになって欲しいんです」
その為に私に出来る事はなんでもするつもりだ。お兄様はいつもの笑顔で黙って話を聞いて下さった後、優しく頭を撫でてくれた。
「急に立ち振る舞いが変わったのはそれが理由なんだね」
「いつまでもただの幼馴染が隣に居続けるわけには参りませんわ。煉獄さんに良い方が見つかれば私はどこぞへなりと遠方にでも嫁ぐつもりです」
「遠方に……嫁ぐ……?」
「?」
何かおかしな事を言ったかしら?お兄様は小声で何かを呟かれた。笑顔が少し硬くなった気がするわ。私が首を傾げるとハッとこちらを見る。
「いや、何でもないよ。別に嫁いで行かなくとも気配鋭敏が使えるのだからこのまま紗雪家を継いだって良いんだよ?」
「嫌よ。この家はお兄様じゃないと回せないもの」
お父様は勿論いるけれど、最近はお兄様が家の事をしているのは知ってる。何があっても動じないぐらいドンと構えてないといけなくて、とてもじゃ無いけど私が出来るとは思えない。お兄様は何か微笑ましいものを見るような目を私に向けた。
「杏寿郎君の幸せを願える椎名は偉いね。だけど肝心の杏寿郎君がどうしたいかは考えたことがあるかい?」
「……煉獄さんが?」
そんなの考えるまでも無いわ。煉獄さんはヒロインちゃんと出会って初めて愛を知るのだもの。今はまだ知らないだけであんな素敵な恋を知ったらヒロインちゃんと居るのが幸せに決まってるじゃ無い。
「本人から直接聞いたかい?」
「直接は……」
未来の事は話せないし何て聞いたらいいか分からないもの。言い淀んだ私の頭をお兄様が再度撫でた。もう!子供じゃありませんのよ!
「ねぇ椎名。お前と杏寿郎君は同じような歳に母親を亡くしたよね」
お母様は私が8歳の時に亡くなられた。その2年後に煉獄さんのお母様が……確かその時煉獄さんは11歳だった筈。お母様の死の悲しみを乗り越えつつあった私達は少しでも煉獄家の皆さんの支えになれたらと、よく訪ねたのを覚えている。
「杏寿郎君にとってお前の存在はとても大きかったと思うよ」
「それは私も同じですわ。お兄様達はいて下さったけど夏彦お兄様は隊士になったばかり。冬吾お兄様はもうすぐ選抜で家での留守番が多かったですから」
最早途中からは煉獄さんに会いたいが為に行っていたようなものだ。あら?そう考えると支えるどころか支えられてたじゃ無いの私ったら。
「そうだね。あの時は寂しい思いをさせてすまなかっとと思っているよ。でも私たちにとってもお前と杏寿郎君の仲睦まじい様子は救いだったよ。二人の結婚の約束を本気で応援するぐらいには」
「…………」
二の句がつげなくなった私にお兄様が柔らかく微笑んだ。お兄様は決して感情が薄いわけじゃ無いと思う。少し分かりづらいだけだ。
「ねぇ椎名。約束はお互いの同意がないと成り立たない。杏寿郎君の気持ちは何処にあるんだろうね?」
「そ……んな、子供の頃の約束を真に受けるなんてお兄様ったら!煉獄さんはお優しいから行き遅れそうな私を心配しているだけですわ!あの方の優しさは全方向を向いているのですから、勘違いしないで下さい!」
「うーん、以前とは違う方向に拗れたね」
「何か仰いまして!?」
「いや?何も?」
夏彦お兄様といい冬吾お兄様といいどうして煉獄さんが私と結婚したいかのような前提で話をしてくるのかしら!全くもって推しへの侮辱だわ!煉獄さんだって外堀を埋められてるようで不快じゃないの!
「…………」
そうかー!そう言う事だったのね!!煉獄さんの『俺を何だと思ってるんだ』発言は自分の意思に反して埋まってる外堀への批判だったんだわ!そうよね!自分の意思を丸っと無視されたら怒って当然だわ!!
「大変!こうしちゃいられないわ!」
外堀って事はお兄様達だけじゃなく他の人もそう思ってるって事よね!誤解を解いて回らなくちゃ!!
「お兄様、私これで失礼します!」
「あ、ちょっと待ちなさい椎名。頭の中で出したその結論をまずは私に話してから……」
まず手近な所で蜜璃さんからね!あぁ、でも蜜璃さんも最近柱になったばかりでお忙しいかしら?でも大切な事だからお時間いただけると嬉しいわ!
外堀はちゃんと埋設して無かったものにしておきますから安心して下さいね!煉獄さん!!