悪役令嬢は恋を知らない
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「椎名様!」
「お嬢様!ご無事ですか!?」
鍛錬の最中に強かに頭を打ち付けた私は全てを思い出した。
(あ、これキミコイの世界だわ)
二次創作でありながら異常な人気を博した『君と炎のような恋をする』、略してキミコイ。それは煉獄杏寿郎が時空を超えてやって来たヒロインと恋に落ちる話だ。
(でもって私は紗雪椎名)
煉獄杏寿郎の幼馴染で家はご近所。しかも同じ鬼狩りを生業にした名家の、上に兄二人の末っ子娘で代々雪の呼吸を使う。絹のような長い黒髪に白い肌、目は多少切長だがパッチリしていてなかなかの美人である、が。
(あー、詰んだ)
この紗雪椎名、凄まじく捻くれた人間である。元々紗雪家の人間は表情の乏しい者が多いけれど、その中でもトップクラスの無表情人間でついた渾名が『雪の女王』。ありのままの歌を歌ってやろうかと言う感じだ。
しかも煉獄さんの事が大好きなのに素っ気ない態度しか取らない。子供の頃はそうでも無かった分煉獄さんは毎度恐ろしく戸惑い、最後は素直で優しいヒロインちゃんを好きになるのだ。まぁ、ヒロインちゃんのことは私も好きだけど。
そう、ここまで言えばお分かりの通り。私はその二次創作が大っ好きだった。最早バイブル。朝起きたら読む。夜寝る前にも読む。そんな生活をしていた喪女のオタクだ。
(え?何?転生?転生したの?私が?しかもよりによって椎名に?)
煉獄さんと仲良くなるヒロインちゃんに嫉妬して嫌がらせしまくって、エスカレートしてやり過ぎた挙句隊律違反で切腹させられる悪役令嬢。それが紗雪椎名こと私だ。
(やばい!めっちゃヤバい!!)
キミコイは好きだし煉獄さんが生で見られるならそんな嬉しいことはないけど、私だって死ぬのは嫌だ。医者だなんだと騒いでいる使用人たちを他所に立ち上がると、私は自室へダッシュした。
(まずは今がストーリーのどこなのか確認!)
あ、まだキミコイの始まる結構前だわ。
私は日記をつけている。いや、日記といえば聞こえは良いが『今日の杏寿郎は』とか『杏寿郎がこんなことを』とか言う煉獄さんの観察日記だ。怖いって!
(まぁ、この子も歪に甘やかされて育ったんだよね)
椎名は鬼殺隊士としては戊止まりの平凡な隊士だ。それは才能が無いとかじゃなくて『女の子なのだから無理に階級を上げることはない』と言う親や兄達の意向だ。兄達が優秀だから雪の呼吸としては跡継ぎも十分だし、それより嫁に行くことを考えろって事なんだよね。大正時代だしさもありなんって感じかな。
だけど実はポテンシャルで言えば椎名は兄達に劣らない才能を持っているのだ。最後まで悪い方向にそのポテンシャルを発揮しちゃってたけど、それでも間違いなく椎名は強くなれる。
「よし」
ベタだけどここは一つ生き残り計画を立てよう。私は気味の悪い日記の中身をなるべく見ないようにしながら一番最後のページに目指すべき目標を書いた。
『煉獄さんとヒロインちゃんが幸せになる』
『私はどこか遠くに行く』
私が嫌がらせをしなくても、煉獄さんとヒロインちゃんが相思相愛になった時に私がいることで煉獄さんが気にしちゃいけないからね!人柄さえ酷くなければ何処にでもお嫁に行ってしまおう。
オタクを舐めんなよ!推しの為なら生き方変えられるぜ!!
でも取り敢えず何より大事な事がある。
「当面の目的はやっぱりこれよね」
私は日記のページを戻すと白紙部分に『強くなる』と書いた。実はキミコイはラストだけは賛否両論吹き荒れたのだ。あれだけ熱烈にヒロインちゃんと恋していた煉獄さんは無限列車で命を落としそうになり、助けに行ったヒロインちゃんと時空を超えてヒロインちゃんのいた世界に行ってしまうのだ。そこで一命を取り留めた煉獄さんはヒロインちゃんと幸せに暮らしました。めでたしめでたし。
いや!めでたく無いわ!!あれだけ家族が大事な煉獄さんが時空を超えるのはともかく帰る方法を模索もせずに仕方ないねと諦めるって!残念ながら私は否定派だ!!残された千寿郎君はどうするんだよ!!煉獄さんの鬼殺にかける想いは!?ホントにそこ以外はキミコイ大好きなのに!!
と言う訳で煉獄さんを助けられるぐらい強くなる。時空なんか超えさせない。ヒロインちゃんとは是非ともここで幸せになってくれ。
(あれ?なんか破綻してる?)
二人から離れつつ二人を助ける計画を立てている気がする。
(ま、いっか!)
とにかく第一の目標のため、私は日記を片付けると腰を上げた。
「お嬢様!ご無事ですか!?」
鍛錬の最中に強かに頭を打ち付けた私は全てを思い出した。
(あ、これキミコイの世界だわ)
二次創作でありながら異常な人気を博した『君と炎のような恋をする』、略してキミコイ。それは煉獄杏寿郎が時空を超えてやって来たヒロインと恋に落ちる話だ。
(でもって私は紗雪椎名)
煉獄杏寿郎の幼馴染で家はご近所。しかも同じ鬼狩りを生業にした名家の、上に兄二人の末っ子娘で代々雪の呼吸を使う。絹のような長い黒髪に白い肌、目は多少切長だがパッチリしていてなかなかの美人である、が。
(あー、詰んだ)
この紗雪椎名、凄まじく捻くれた人間である。元々紗雪家の人間は表情の乏しい者が多いけれど、その中でもトップクラスの無表情人間でついた渾名が『雪の女王』。ありのままの歌を歌ってやろうかと言う感じだ。
しかも煉獄さんの事が大好きなのに素っ気ない態度しか取らない。子供の頃はそうでも無かった分煉獄さんは毎度恐ろしく戸惑い、最後は素直で優しいヒロインちゃんを好きになるのだ。まぁ、ヒロインちゃんのことは私も好きだけど。
そう、ここまで言えばお分かりの通り。私はその二次創作が大っ好きだった。最早バイブル。朝起きたら読む。夜寝る前にも読む。そんな生活をしていた喪女のオタクだ。
(え?何?転生?転生したの?私が?しかもよりによって椎名に?)
煉獄さんと仲良くなるヒロインちゃんに嫉妬して嫌がらせしまくって、エスカレートしてやり過ぎた挙句隊律違反で切腹させられる悪役令嬢。それが紗雪椎名こと私だ。
(やばい!めっちゃヤバい!!)
キミコイは好きだし煉獄さんが生で見られるならそんな嬉しいことはないけど、私だって死ぬのは嫌だ。医者だなんだと騒いでいる使用人たちを他所に立ち上がると、私は自室へダッシュした。
(まずは今がストーリーのどこなのか確認!)
あ、まだキミコイの始まる結構前だわ。
私は日記をつけている。いや、日記といえば聞こえは良いが『今日の杏寿郎は』とか『杏寿郎がこんなことを』とか言う煉獄さんの観察日記だ。怖いって!
(まぁ、この子も歪に甘やかされて育ったんだよね)
椎名は鬼殺隊士としては戊止まりの平凡な隊士だ。それは才能が無いとかじゃなくて『女の子なのだから無理に階級を上げることはない』と言う親や兄達の意向だ。兄達が優秀だから雪の呼吸としては跡継ぎも十分だし、それより嫁に行くことを考えろって事なんだよね。大正時代だしさもありなんって感じかな。
だけど実はポテンシャルで言えば椎名は兄達に劣らない才能を持っているのだ。最後まで悪い方向にそのポテンシャルを発揮しちゃってたけど、それでも間違いなく椎名は強くなれる。
「よし」
ベタだけどここは一つ生き残り計画を立てよう。私は気味の悪い日記の中身をなるべく見ないようにしながら一番最後のページに目指すべき目標を書いた。
『煉獄さんとヒロインちゃんが幸せになる』
『私はどこか遠くに行く』
私が嫌がらせをしなくても、煉獄さんとヒロインちゃんが相思相愛になった時に私がいることで煉獄さんが気にしちゃいけないからね!人柄さえ酷くなければ何処にでもお嫁に行ってしまおう。
オタクを舐めんなよ!推しの為なら生き方変えられるぜ!!
でも取り敢えず何より大事な事がある。
「当面の目的はやっぱりこれよね」
私は日記のページを戻すと白紙部分に『強くなる』と書いた。実はキミコイはラストだけは賛否両論吹き荒れたのだ。あれだけ熱烈にヒロインちゃんと恋していた煉獄さんは無限列車で命を落としそうになり、助けに行ったヒロインちゃんと時空を超えてヒロインちゃんのいた世界に行ってしまうのだ。そこで一命を取り留めた煉獄さんはヒロインちゃんと幸せに暮らしました。めでたしめでたし。
いや!めでたく無いわ!!あれだけ家族が大事な煉獄さんが時空を超えるのはともかく帰る方法を模索もせずに仕方ないねと諦めるって!残念ながら私は否定派だ!!残された千寿郎君はどうするんだよ!!煉獄さんの鬼殺にかける想いは!?ホントにそこ以外はキミコイ大好きなのに!!
と言う訳で煉獄さんを助けられるぐらい強くなる。時空なんか超えさせない。ヒロインちゃんとは是非ともここで幸せになってくれ。
(あれ?なんか破綻してる?)
二人から離れつつ二人を助ける計画を立てている気がする。
(ま、いっか!)
とにかく第一の目標のため、私は日記を片付けると腰を上げた。
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