短編
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「わふっ!!」
(不甲斐無い!!)
明るい茶の毛並みを持った犬…血気術にかかった煉獄は叫んだ。この巫山戯た血気術を持っていた鬼は倒したが、引き換えにこの姿である。
「わふわふっ!」
(胡蝶がいると良いのだが!)
日輪刀や隊服を羽織で包んで何とか蝶屋敷の近くまで戻ってきた煉獄は、嗅ぎ取った匂いに大慌てで荷物を草むらに押し込んだ。道の向こうから自分の継子である紗雪が歩いてくる。こんなみっともない姿を見せたくない煉獄は普通の犬を装い道の横に寝そべった。
(通り過ぎてくれ、頼む!)
「わ、大きな犬…」
煉獄の願いも虚しく任務帰りの紗雪は寝転ぶ犬に足を止めた。ゴールデンレトリバーよりも大きな体躯の犬に思わず近寄る。パタリと一つ尻尾が揺れて煉獄は慌てて頭を上げた。紗雪の顔が間近にあって身構える。
「あぁ、ゴメンね。驚かせる気はなかったの。ほら」
紗雪は声をかけながらそっと下の方から手の甲を犬の方へ近づけた。犬としての反射で煉獄がその手の甲の匂いを嗅ぐ。
(血の匂い!怪我をしているのか?)
どこを怪我しているのか調べようと煉獄は身を起こすと紗雪の腕に鼻先を擦り付けた。
(腕ではないな。では肩か?足か?)
「ふふ、人懐こいね」
擦り寄ってきた犬に紗雪は小さく笑うとその首のたっぷりとした毛並みを撫でた。ふわふわで清潔な毛並みに紗雪の顔が綻ぶ。
「あれ、お前何処かで飼われてるの?毛艶も良いしモフモフだね」
フンフンと匂いを嗅いでくる犬が大人しいのを良い事にその首に頬を寄せるとギュッと抱きつく。
「わふっ」
(なっ…)
煉獄は紗雪に抱き締められてピタッと動きを止めた。鼻先で揺れる紗雪の髪の香りがよく分かる。動かなくなってしまった犬に紗雪は苦笑するとその背中を撫でた。
「ゴメンゴメン、ビックリしたね」
「わふぅ…ワゥワゥ!わふっ!」
(紗雪…嫁入り前の娘が気安く抱きつくものじゃないぞ!)
煉獄は恥ずかしさを振り払おうと体をブルブルさせた。その勢いの良さに僅かにのけぞった紗雪の隊服の脇が切れているのを見つけて、煉獄は前脚を紗雪の太腿に乗せた。
「わうっ!わうわうっ!」
(やはり!怪我をしているではないか!!)
「そんなに嫌だった?ごめんて」
「わうっ!!」
(違う!)
伝わらないもどかしさに煉獄は鼻先を紗雪の脇腹に近づけた。フンスフンス!と鼻息を荒くする。
「あぁ、血の匂いがするのかな?大丈夫、私の怪我じゃないからね」
お前は優しいねーとまた首を撫でてくる紗雪に煉獄はホッと一安心した。気が緩みパタパタと尻尾が揺れる。ふと紗雪が正面から顔を覗き込んできた。
「お前の毛並みってなんだか師範に似てるね」
「ぅおふっ!?」
バレたか!?煉獄に緊張が走った。しかし紗雪は小さく笑うと首を振った。
「師範を犬と比べるとか怒られるよね。お前も内緒にしておいてね」
「わふぅ」
(本人なんだが…)
複雑な心境ながらもバレていないならば有難い。煉獄はおすわりをしたまま紗雪にされるがまま撫でられた。こんな状況で何だが非常に気持ちが良い。
「あー、本当に大人しい子だね。良いなぁ、昔犬飼いたかったんだよなぁ」
犬なんかにかける金は無いと言い切られて以来口に出す事の無かった希望だ。紗雪の表情に感じるものがあったのか煉獄は頭をポスリと紗雪の肩に乗せた。紗雪が耳の下に顔を押し付ける。
「ありがとう。優しいね」
「わっふ!わうわうわう!!」
(当然だ!君は俺の継子だからな!!)
返事するように鳴き声を上げる犬に紗雪はあははと笑い声を上げた。くしゃくしゃっと耳の後ろをかき混ぜると立ち上がる。
「ありがとう。お前も早く帰るんだよ?」
こんなお利口な犬なら飼い主はさぞ心配しているだろう。わふっ!と返事を返す犬に手を振ると紗雪は立ち去っていった。
「………」
(ふー…気付かれずに済んだ)
煉獄は脱力するとその場に寝そべった。紗雪に散々撫で回され顔をくっつけられて色んな意味でライフがゼロだ。
(蝶屋敷に行かなければ)
煉獄は何とか立ち上がると草むらから荷物を取り出し、蝶屋敷へと足を向けるのだった。
「ん、ふふっ…災難でしたね、煉獄さ…んふっ」
笑いを殺しきれず胡蝶は肩を震わせた。目の前の大きな犬が不服そうに鳴く。
「わうっ!わふわふっ!!」
「ふふ!ふ…ふっ、お願いですから鳴くの止めてもらえます?」
「ぐるぅ…」
主張すればするほどドツボである。煉獄は唸り声を上げるとその場にお座りした。あまりに自然に犬をしている煉獄に胡蝶が机に突っ伏す。
「わ、私に笑い死に、させたいのですか…っ」
(頼むから早く薬をくれ…)
胡蝶が笑いを鎮めるまでに半刻待ち惚けを喰らう煉獄であった。
後日。
「今日はこれで失礼します」
今日の予定の翻訳を終えた紗雪は胡蝶に挨拶をするため診察室に顔を出した。ちょうどカルテを書き終えたしのぶが振り返る。
「あら、もうそんな時間なのですね。いつもありがとうございます紗雪さん」
「いえ!お役に立てているなら幸いです」
パタパタと手を振る紗雪に胡蝶がクスリと笑う。窓の外、塀の上をのんびり歩いていく猫が見えて紗雪は先日の犬を思い出した。
「そう言えば前回お邪魔した時に道で大きな犬に会いました」
「犬ですか?」
珍しく紗雪が目を輝かせながら続ける。
「物凄い大人しくて賢い犬だったんですよ。撫で回しても抱きついても嫌がらなくて!」
「…その犬の特徴をお伺いしても?」
紗雪の言う犬の特徴に胡蝶は作り笑いを顔に貼り付けた。この辺にそんな大きな犬がいたことなどその時しかない。
「今日は見なかったんですよ。残念だなぁ、凄く可愛かったのに」
「それだけ大人しい犬だったのならば飼い主がいたのでしょう。家に戻ったのだと思いますよ」
紗雪を慰めつつ、今度煉獄に会ったら説教が必要だなと思う胡蝶だった。
(不甲斐無い!!)
明るい茶の毛並みを持った犬…血気術にかかった煉獄は叫んだ。この巫山戯た血気術を持っていた鬼は倒したが、引き換えにこの姿である。
「わふわふっ!」
(胡蝶がいると良いのだが!)
日輪刀や隊服を羽織で包んで何とか蝶屋敷の近くまで戻ってきた煉獄は、嗅ぎ取った匂いに大慌てで荷物を草むらに押し込んだ。道の向こうから自分の継子である紗雪が歩いてくる。こんなみっともない姿を見せたくない煉獄は普通の犬を装い道の横に寝そべった。
(通り過ぎてくれ、頼む!)
「わ、大きな犬…」
煉獄の願いも虚しく任務帰りの紗雪は寝転ぶ犬に足を止めた。ゴールデンレトリバーよりも大きな体躯の犬に思わず近寄る。パタリと一つ尻尾が揺れて煉獄は慌てて頭を上げた。紗雪の顔が間近にあって身構える。
「あぁ、ゴメンね。驚かせる気はなかったの。ほら」
紗雪は声をかけながらそっと下の方から手の甲を犬の方へ近づけた。犬としての反射で煉獄がその手の甲の匂いを嗅ぐ。
(血の匂い!怪我をしているのか?)
どこを怪我しているのか調べようと煉獄は身を起こすと紗雪の腕に鼻先を擦り付けた。
(腕ではないな。では肩か?足か?)
「ふふ、人懐こいね」
擦り寄ってきた犬に紗雪は小さく笑うとその首のたっぷりとした毛並みを撫でた。ふわふわで清潔な毛並みに紗雪の顔が綻ぶ。
「あれ、お前何処かで飼われてるの?毛艶も良いしモフモフだね」
フンフンと匂いを嗅いでくる犬が大人しいのを良い事にその首に頬を寄せるとギュッと抱きつく。
「わふっ」
(なっ…)
煉獄は紗雪に抱き締められてピタッと動きを止めた。鼻先で揺れる紗雪の髪の香りがよく分かる。動かなくなってしまった犬に紗雪は苦笑するとその背中を撫でた。
「ゴメンゴメン、ビックリしたね」
「わふぅ…ワゥワゥ!わふっ!」
(紗雪…嫁入り前の娘が気安く抱きつくものじゃないぞ!)
煉獄は恥ずかしさを振り払おうと体をブルブルさせた。その勢いの良さに僅かにのけぞった紗雪の隊服の脇が切れているのを見つけて、煉獄は前脚を紗雪の太腿に乗せた。
「わうっ!わうわうっ!」
(やはり!怪我をしているではないか!!)
「そんなに嫌だった?ごめんて」
「わうっ!!」
(違う!)
伝わらないもどかしさに煉獄は鼻先を紗雪の脇腹に近づけた。フンスフンス!と鼻息を荒くする。
「あぁ、血の匂いがするのかな?大丈夫、私の怪我じゃないからね」
お前は優しいねーとまた首を撫でてくる紗雪に煉獄はホッと一安心した。気が緩みパタパタと尻尾が揺れる。ふと紗雪が正面から顔を覗き込んできた。
「お前の毛並みってなんだか師範に似てるね」
「ぅおふっ!?」
バレたか!?煉獄に緊張が走った。しかし紗雪は小さく笑うと首を振った。
「師範を犬と比べるとか怒られるよね。お前も内緒にしておいてね」
「わふぅ」
(本人なんだが…)
複雑な心境ながらもバレていないならば有難い。煉獄はおすわりをしたまま紗雪にされるがまま撫でられた。こんな状況で何だが非常に気持ちが良い。
「あー、本当に大人しい子だね。良いなぁ、昔犬飼いたかったんだよなぁ」
犬なんかにかける金は無いと言い切られて以来口に出す事の無かった希望だ。紗雪の表情に感じるものがあったのか煉獄は頭をポスリと紗雪の肩に乗せた。紗雪が耳の下に顔を押し付ける。
「ありがとう。優しいね」
「わっふ!わうわうわう!!」
(当然だ!君は俺の継子だからな!!)
返事するように鳴き声を上げる犬に紗雪はあははと笑い声を上げた。くしゃくしゃっと耳の後ろをかき混ぜると立ち上がる。
「ありがとう。お前も早く帰るんだよ?」
こんなお利口な犬なら飼い主はさぞ心配しているだろう。わふっ!と返事を返す犬に手を振ると紗雪は立ち去っていった。
「………」
(ふー…気付かれずに済んだ)
煉獄は脱力するとその場に寝そべった。紗雪に散々撫で回され顔をくっつけられて色んな意味でライフがゼロだ。
(蝶屋敷に行かなければ)
煉獄は何とか立ち上がると草むらから荷物を取り出し、蝶屋敷へと足を向けるのだった。
「ん、ふふっ…災難でしたね、煉獄さ…んふっ」
笑いを殺しきれず胡蝶は肩を震わせた。目の前の大きな犬が不服そうに鳴く。
「わうっ!わふわふっ!!」
「ふふ!ふ…ふっ、お願いですから鳴くの止めてもらえます?」
「ぐるぅ…」
主張すればするほどドツボである。煉獄は唸り声を上げるとその場にお座りした。あまりに自然に犬をしている煉獄に胡蝶が机に突っ伏す。
「わ、私に笑い死に、させたいのですか…っ」
(頼むから早く薬をくれ…)
胡蝶が笑いを鎮めるまでに半刻待ち惚けを喰らう煉獄であった。
後日。
「今日はこれで失礼します」
今日の予定の翻訳を終えた紗雪は胡蝶に挨拶をするため診察室に顔を出した。ちょうどカルテを書き終えたしのぶが振り返る。
「あら、もうそんな時間なのですね。いつもありがとうございます紗雪さん」
「いえ!お役に立てているなら幸いです」
パタパタと手を振る紗雪に胡蝶がクスリと笑う。窓の外、塀の上をのんびり歩いていく猫が見えて紗雪は先日の犬を思い出した。
「そう言えば前回お邪魔した時に道で大きな犬に会いました」
「犬ですか?」
珍しく紗雪が目を輝かせながら続ける。
「物凄い大人しくて賢い犬だったんですよ。撫で回しても抱きついても嫌がらなくて!」
「…その犬の特徴をお伺いしても?」
紗雪の言う犬の特徴に胡蝶は作り笑いを顔に貼り付けた。この辺にそんな大きな犬がいたことなどその時しかない。
「今日は見なかったんですよ。残念だなぁ、凄く可愛かったのに」
「それだけ大人しい犬だったのならば飼い主がいたのでしょう。家に戻ったのだと思いますよ」
紗雪を慰めつつ、今度煉獄に会ったら説教が必要だなと思う胡蝶だった。