短編
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「にゃあ!!」
庭中を忙しなく走り回る煉獄に紗雪は夢であって欲しいと頭を抱えた。
「あの…胡蝶さん?」
耳と尻尾の生えただけの煉獄が蝶を追いかけ四つん這いで駆け回る。目は爛々と輝き大変楽しそうだ。
「ご覧の通りご都合血気術です。薬は先ほど口の中に捩じ込みましたし二、三日日向ぼっこでもさせておけば治りますよ」
「そう、ですか…」
怒りのこもった笑顔の胡蝶にそれ以上何も言えず、木の枝に寝そべろうとしている煉獄を遠い目で見つめる。すると胡蝶がさらに恐ろしいことを言い出した。
「命に別状はありませんし、煉獄さんのお家に連れて帰って下さいね」
「つ、連れて帰るんですか!?」
今の煉獄が二足歩行をしてくれるとは思えない。さぁっと顔色を悪くした紗雪に胡蝶の笑顔は揺るがなかった。
「ここで他の隊士に見られれば煉獄さんの柱としての沽券に関わります。煉獄家ならば愼寿郎さんと千寿郎君が居るだけですから大丈夫でしょう」
「連れて帰られて…くれますかね」
せめて犬ならば…と言いかけて紗雪は首を横に振った。それはそれで何か色々まずい気がする。
「これをどうぞ」
「猫じゃらしと煮干し…胡蝶さん、実は面白がってませんか?」
紗雪の台詞に胡蝶はウフフと笑うだけだ。ふと日が陰った気がして紗雪が振り返ると、煉獄が木の上からこちらに向かって飛びかかってきていた。
「!?」
「にゃう!!」
「あ、紗雪さん、言い忘れてましたけどその猫じゃらしと煮干し今の煉獄さんの好物ですから」
「もっと早く言って下さい!さようなら!!」
完全に獲物を狙う目の煉獄をかわすと屋根の上に駆け上がる。煉獄が猫になっても損なわれていない身体能力で紗雪の後を追ってきた。
「ひぇぇ…付いてきて欲しいけど付いてきて欲しくない」
蝶屋敷から屋根伝いに人気のない場所を選びながら移動する。途中何度か飛びかかって来る煉獄をいなしながら紗雪は何とか煉獄家に辿り着いた。庭に降りると思わずホッとする。
「みゃっ!」
「んぎょえっ!!」
背中に飛び乗られ支えきれずに地面に転がる。背中の上にお座りする煉獄はがっしりと重く紗雪は身動きが取れない。
「師範ちょ…と、重…っ!?」
レロン。
煉獄に頬を舐められて紗雪の動きは停止した。ゴロゴロと喉を鳴らした煉獄が良い笑顔を浮かべながら何度も何度も舐めて来る。
(い、いやいや!それは師範の為にもアウトでしょ!!)
「師範、ストップストップって…あぁ、分からないのか。止まりましょう師範。元に戻った時にダメージ大きいの師範ですから」
「にゃーあ」
「聞いてなーい」
叩きつけるように額を背中に擦り付けて来る煉獄にガックリ肩を落とす。早く他に興味が移ってくれと祈る紗雪の耳に砂利を踏む大慌ての足音が聞こえた。
「な、何をしとるんだ!杏寿郎!!」
愼寿郎が草履を履くのも忘れて駆けてくる。突然の大声にビビッと耳を震わせた煉獄は低木の陰にあっという間に駆け込んでいった。
「い、たた…やっと避けてくれた」
「おい…アイツ四つん這いで走って逃げたぞ」
顔を引き攣らせる愼寿郎に事の経緯を説明すると忌々しそうに舌打ちされた。
「そんな阿呆な血気術にかかるとは」
「すいません、阿呆な血気術にかかって」
以前子供の姿になった事のある紗雪が言えば愼寿郎は暫く黙った後、屋内に向かい足を向けた。
「数日で治るならばそれで良い」
(心配だって正直に言えば良いのに)
紗雪は煉獄が茂みの中でまだ警戒しているのを確認するとため息をつくのだった。
「あ、兄上…おいたわしい」
日当たりのいい縁側で毛繕いをする煉獄に千寿郎がガクリと項垂れた。紗雪が慌てて慰める。
「大丈夫ですよ千寿郎さん。胡蝶さんは二、三日で治ると仰っていましたから」
「は、はい…でも、どうしましょう紗雪さん。兄上が外に出てしまったら僕では止められないです」
「あー…」
それは確かに。返事に困った紗雪の元に胡蝶の鎹鴉、艶が手紙を持ってやってきた。礼を言って受け取り中を確認する。
「さすが胡蝶さん」
中身は煉獄が完治するまで紗雪を任務から除外する旨の書かれた柱としての命令書だった。
「任務が免除になりました。私もいますから、頑張りましょう千寿郎さん」
「みゃあ!」
任せろ!と言わんばかり鳴き声を上げる煉獄に紗雪と千寿郎は苦笑いした。まずは煉獄が寛げる空間を作ろうと自室に布団を敷いて、押し入れの中にある壊れては困るようなものを撤去する。障子を突き破ったりしないように可能な限り戸は全て開け放った。
「真冬じゃなくて良かったです」
「はは…本当ですね」
煉獄が丸くなって眠る頃、漸く作業の終わった二人はぐったりと呟いた。欠伸をかみ殺す紗雪に千寿郎が口を開く。
「紗雪さん、任務帰りなのですからお休みください。兄上も眠っていますから」
「いえ、ですが…」
煉獄から目を離すのは心配だ。しかし千寿郎は自分の胸を叩いて見せた。
「昼間ならば何とかなります。紗雪さんは夜をお願い出来ますか?」
「…分かりました。もし何かあった時には迷わず起こして下さいね」
気丈な千寿郎に感謝しつつ自分の部屋に戻る。着替えようとして、ふと紗雪は手を止めた。何やら視線を感じる。
「…わぁ」
いつの間にか廊下に目をぱっちり開けた煉獄が座っていた。そのお腹がぐぅぅ…と盛大に鳴る。吹き出した紗雪は羽織だけ脱ぐと煉獄に声をかけた。
「お腹が空きましたね。何か食べるものを用意しましょう。師範は…ねこまんまの方がいいのかな?」
紗雪はお勝手の方に足を向けたが、何故か煉獄は付いて来ようとしなかった。
「師範?」
つーん!と言う表現がピッタリの顔で無視される。紗雪は大いに戸惑った。
「えぇ…?実はお腹が空いてないとか?」
不機嫌そうな低いゴロゴロが聞こえる。
「ねこまんまはお嫌ですか?」
それもノー。
「えー?何だろう…あ、師範は自分の名前じゃないから、とか?」
猫となった煉獄にそこまでの自意識があるかは謎だが、お腹が空いているのを分かった上で放置はこちらも切ない。
「煉獄さん」
久しぶりにそう呼んだ紗雪にしかし煉獄はピクリと耳を動かすだけだった。煉獄呼びは不服らしい。マジか…と紗雪は小さく呟いた。
「き、杏寿りょ…さん?」
噛んでしまったが見逃して欲しいところである。紗雪が名前を呼ぶと煉獄がニャアと返事して付いてきた。頭を抱えたいのを我慢して食事を用意すると行儀良く待つ煉獄の前に置く。予想通り直接口で食べ出した煉獄をおにぎり片手に見守った。
わずかな間に皿の中身を綺麗に平らげた煉獄は満足げな顔で自分の口の周りを舐める。しかし人間の舌では限度があるのか苦戦するその姿にクスリと笑うと紗雪は手拭いで口周りを拭った。何とも手のかかる猫だ。
(いや、猫じゃないんだけど…でも仕草が全部猫だからうっかり可愛いとか思っちゃうな)
クワァと欠伸をする煉獄の猫耳の後ろをかいてやると紗雪は自分も休む為に部屋に戻った。布団を敷くと隊服のまま横になる。
(何かあった時、すぐ飛び出せる方が良いしね)
任務明けから今までのバタバタで流石に眠い。目を閉じると紗雪は瞬く間に眠りについた。
庭中を忙しなく走り回る煉獄に紗雪は夢であって欲しいと頭を抱えた。
「あの…胡蝶さん?」
耳と尻尾の生えただけの煉獄が蝶を追いかけ四つん這いで駆け回る。目は爛々と輝き大変楽しそうだ。
「ご覧の通りご都合血気術です。薬は先ほど口の中に捩じ込みましたし二、三日日向ぼっこでもさせておけば治りますよ」
「そう、ですか…」
怒りのこもった笑顔の胡蝶にそれ以上何も言えず、木の枝に寝そべろうとしている煉獄を遠い目で見つめる。すると胡蝶がさらに恐ろしいことを言い出した。
「命に別状はありませんし、煉獄さんのお家に連れて帰って下さいね」
「つ、連れて帰るんですか!?」
今の煉獄が二足歩行をしてくれるとは思えない。さぁっと顔色を悪くした紗雪に胡蝶の笑顔は揺るがなかった。
「ここで他の隊士に見られれば煉獄さんの柱としての沽券に関わります。煉獄家ならば愼寿郎さんと千寿郎君が居るだけですから大丈夫でしょう」
「連れて帰られて…くれますかね」
せめて犬ならば…と言いかけて紗雪は首を横に振った。それはそれで何か色々まずい気がする。
「これをどうぞ」
「猫じゃらしと煮干し…胡蝶さん、実は面白がってませんか?」
紗雪の台詞に胡蝶はウフフと笑うだけだ。ふと日が陰った気がして紗雪が振り返ると、煉獄が木の上からこちらに向かって飛びかかってきていた。
「!?」
「にゃう!!」
「あ、紗雪さん、言い忘れてましたけどその猫じゃらしと煮干し今の煉獄さんの好物ですから」
「もっと早く言って下さい!さようなら!!」
完全に獲物を狙う目の煉獄をかわすと屋根の上に駆け上がる。煉獄が猫になっても損なわれていない身体能力で紗雪の後を追ってきた。
「ひぇぇ…付いてきて欲しいけど付いてきて欲しくない」
蝶屋敷から屋根伝いに人気のない場所を選びながら移動する。途中何度か飛びかかって来る煉獄をいなしながら紗雪は何とか煉獄家に辿り着いた。庭に降りると思わずホッとする。
「みゃっ!」
「んぎょえっ!!」
背中に飛び乗られ支えきれずに地面に転がる。背中の上にお座りする煉獄はがっしりと重く紗雪は身動きが取れない。
「師範ちょ…と、重…っ!?」
レロン。
煉獄に頬を舐められて紗雪の動きは停止した。ゴロゴロと喉を鳴らした煉獄が良い笑顔を浮かべながら何度も何度も舐めて来る。
(い、いやいや!それは師範の為にもアウトでしょ!!)
「師範、ストップストップって…あぁ、分からないのか。止まりましょう師範。元に戻った時にダメージ大きいの師範ですから」
「にゃーあ」
「聞いてなーい」
叩きつけるように額を背中に擦り付けて来る煉獄にガックリ肩を落とす。早く他に興味が移ってくれと祈る紗雪の耳に砂利を踏む大慌ての足音が聞こえた。
「な、何をしとるんだ!杏寿郎!!」
愼寿郎が草履を履くのも忘れて駆けてくる。突然の大声にビビッと耳を震わせた煉獄は低木の陰にあっという間に駆け込んでいった。
「い、たた…やっと避けてくれた」
「おい…アイツ四つん這いで走って逃げたぞ」
顔を引き攣らせる愼寿郎に事の経緯を説明すると忌々しそうに舌打ちされた。
「そんな阿呆な血気術にかかるとは」
「すいません、阿呆な血気術にかかって」
以前子供の姿になった事のある紗雪が言えば愼寿郎は暫く黙った後、屋内に向かい足を向けた。
「数日で治るならばそれで良い」
(心配だって正直に言えば良いのに)
紗雪は煉獄が茂みの中でまだ警戒しているのを確認するとため息をつくのだった。
「あ、兄上…おいたわしい」
日当たりのいい縁側で毛繕いをする煉獄に千寿郎がガクリと項垂れた。紗雪が慌てて慰める。
「大丈夫ですよ千寿郎さん。胡蝶さんは二、三日で治ると仰っていましたから」
「は、はい…でも、どうしましょう紗雪さん。兄上が外に出てしまったら僕では止められないです」
「あー…」
それは確かに。返事に困った紗雪の元に胡蝶の鎹鴉、艶が手紙を持ってやってきた。礼を言って受け取り中を確認する。
「さすが胡蝶さん」
中身は煉獄が完治するまで紗雪を任務から除外する旨の書かれた柱としての命令書だった。
「任務が免除になりました。私もいますから、頑張りましょう千寿郎さん」
「みゃあ!」
任せろ!と言わんばかり鳴き声を上げる煉獄に紗雪と千寿郎は苦笑いした。まずは煉獄が寛げる空間を作ろうと自室に布団を敷いて、押し入れの中にある壊れては困るようなものを撤去する。障子を突き破ったりしないように可能な限り戸は全て開け放った。
「真冬じゃなくて良かったです」
「はは…本当ですね」
煉獄が丸くなって眠る頃、漸く作業の終わった二人はぐったりと呟いた。欠伸をかみ殺す紗雪に千寿郎が口を開く。
「紗雪さん、任務帰りなのですからお休みください。兄上も眠っていますから」
「いえ、ですが…」
煉獄から目を離すのは心配だ。しかし千寿郎は自分の胸を叩いて見せた。
「昼間ならば何とかなります。紗雪さんは夜をお願い出来ますか?」
「…分かりました。もし何かあった時には迷わず起こして下さいね」
気丈な千寿郎に感謝しつつ自分の部屋に戻る。着替えようとして、ふと紗雪は手を止めた。何やら視線を感じる。
「…わぁ」
いつの間にか廊下に目をぱっちり開けた煉獄が座っていた。そのお腹がぐぅぅ…と盛大に鳴る。吹き出した紗雪は羽織だけ脱ぐと煉獄に声をかけた。
「お腹が空きましたね。何か食べるものを用意しましょう。師範は…ねこまんまの方がいいのかな?」
紗雪はお勝手の方に足を向けたが、何故か煉獄は付いて来ようとしなかった。
「師範?」
つーん!と言う表現がピッタリの顔で無視される。紗雪は大いに戸惑った。
「えぇ…?実はお腹が空いてないとか?」
不機嫌そうな低いゴロゴロが聞こえる。
「ねこまんまはお嫌ですか?」
それもノー。
「えー?何だろう…あ、師範は自分の名前じゃないから、とか?」
猫となった煉獄にそこまでの自意識があるかは謎だが、お腹が空いているのを分かった上で放置はこちらも切ない。
「煉獄さん」
久しぶりにそう呼んだ紗雪にしかし煉獄はピクリと耳を動かすだけだった。煉獄呼びは不服らしい。マジか…と紗雪は小さく呟いた。
「き、杏寿りょ…さん?」
噛んでしまったが見逃して欲しいところである。紗雪が名前を呼ぶと煉獄がニャアと返事して付いてきた。頭を抱えたいのを我慢して食事を用意すると行儀良く待つ煉獄の前に置く。予想通り直接口で食べ出した煉獄をおにぎり片手に見守った。
わずかな間に皿の中身を綺麗に平らげた煉獄は満足げな顔で自分の口の周りを舐める。しかし人間の舌では限度があるのか苦戦するその姿にクスリと笑うと紗雪は手拭いで口周りを拭った。何とも手のかかる猫だ。
(いや、猫じゃないんだけど…でも仕草が全部猫だからうっかり可愛いとか思っちゃうな)
クワァと欠伸をする煉獄の猫耳の後ろをかいてやると紗雪は自分も休む為に部屋に戻った。布団を敷くと隊服のまま横になる。
(何かあった時、すぐ飛び出せる方が良いしね)
任務明けから今までのバタバタで流石に眠い。目を閉じると紗雪は瞬く間に眠りについた。