短編
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「つまり紗雪さんは100年後の未来から来たと」
「鬼の血気術でこっちに来て」
「帰らないでこっちに残った」
「………」
炭治郎、善逸、禰󠄀豆子、カナヲの唖然とした表情が刺さる。紗雪は困った顔で笑った。積極的に隠していたわけではないが話すには突飛な内容で、結果騙していたような罪悪感を感じる。
しかしその空気を壊したのは伊之助だった。炭治郎達の戸惑いに首を傾げる。
「お前ら何変な顔してんだよ」
「変ってお前…驚かねぇの?」
呆れる善逸に心底不思議そうにする。
「何か変わんのかよ」
「いや、勿論何も変わらないぞ」
炭治郎が慌てて否定する。伊之助が腰に手を当てると胸を張った。
「だよな!全くお前らが変な顔してるから、紗雪が未来から来てるのがわかったら何かあるのかと思っちまったじゃねえか!紛らわしいんだよ!!」
「伊之助君」
なんともシンプルな考え方の伊之助に紗雪は苦笑した。炭治郎がハッとしたように拳を握る。
「そ、そうだよな!紗雪さんが俺達の仲間なのに何の変わりもないよな!」
「確かに。紗雪さんがめちゃめちゃ強いのも、俺達と一緒に戦ったのも変わんないな」
「うんうん!そうよね!」
「………」
カナヲはつつ…と近寄ると紗雪の隣に座った。ギュッと袖を握られて紗雪が表情を緩める。ポンと紗雪がその頭を撫でた。
「ありがとうございます」
「ねぇねぇ!もっとこう…恋の歌みたいのは無いんですか?」
禰󠄀豆子は紗雪にもっと歌って貰いたくてそう尋ねた。未来の歌なんて普通なら聴けないものが聴けるなんてとても素敵だと思う。カナヲも興味津々で紗雪を覗き込んできた。紗雪が笑ってギターを抱える。
「恋の歌ですか…あんまり需要がなかったので…何かあったかな」
「需要がないってどうして?」
カナヲが尋ねる。紗雪は前奏を弾き始めながら答えた。
「家族や恋人や…待たせている者の顔を思い出させるような歌は本人にも里心がついてしまいますから」
「それってダメな事?」
キョトンとする禰󠄀豆子に紗雪はうーん…と首を傾けた。
「任務の遂行に邪魔になると思ったんでしょうね」
「そんなの酷い!」
「まぁまぁ、ではこの歌にしましょう」
憤る炭治郎を宥めると紗雪は茅●実里のみちし●べを歌い出した。
「ーー♪ーー」
禰󠄀豆子とカナヲと…そして善逸まで目をキラキラさせている。紗雪は笑い出してしまわないよう目を逸らした。と、その先に…。
(師範、いつからそこに…)
庭木に寄りかかり煉獄がこちらを見ていた。射抜かれるような視線が落ち着かなくて紗雪が視線を落とす。歌い終わるとカナヲと禰󠄀豆子が拍手をしてくれた。が、ここでずっと大人しかった宇髄が物申し出した。
「そのゆっくりした曲じゃなくて!もっと派手に最初みたいな速いやつねぇのかよ!?折角のギターなのに詰まんねぇだろ」
「んな暴虐なリスナーのような事を…」
「そうだぞ!ゆりかごに乗る赤ん坊じゃねぇぞ!俺達は!!」
「うわ、こっちにも」
伊之助にも言われて天を仰いだ紗雪はギョッとして後ろを振り返った。窓という窓から屋内の者がこちらを見ている。その中に不死川と冨岡の姿を認めて紗雪は頭を抱えた。
「えーっと…今日はこの辺で……」
「何言ってやがる。逃さねぇぞ。とっとと次歌いやがれ」
「なんの強制労働ですかね!?」
宇髄に首根っこを押さえられて紗雪は諦めるとギターを弾き始めた。
「速い曲でしたっけ?…あー、鬼殺隊にピッタリなのがありますよ。●銀って曲です」
「よし、じゃあそれ行け!」
ノリノリの宇髄に苦笑すると紗雪はギターをかき鳴らした。
「ーー♪ーー」
この歌が何のスイッチになったのかやれ次、それ次と声がかかる。曲が12を超えた頃、紗雪が小さく咳をした。後ろから伸びてきた手にギターを取り上げられてその場の全員がキョトンと顔を上げた。
「これ以上は喉を痛めるぞ紗雪!」
「うわ出た紗雪の管理人」
「すいません、それは初耳です」
煉獄を見ての宇髄の突っ込みに紗雪が突っ込み返した。管理人って何だ。しかも何故誰も何も言わない。宇髄が肩肘をついてニヤリとした。
「紗雪がちょっと咳しただけで過保護が過ぎねぇ?お前だって紗雪の歌聞きたいだろ?」
「俺は時折聞いているから大丈夫だ!」
「「「ん?」」」
煉獄の言葉に炭治郎達どころか紗雪まで首を傾げた。
「歌い…ましたっけ」
「洗濯物を干している時などよく歌っている!」
「おおぅ」
完全な無意識化の行動を改めて指摘されると恥ずかしい。赤くなってしまった紗雪とニコニコしている煉獄にアホらしくなった宇髄は解散を告げた。えー!?と不服そうにする禰󠄀豆子に紗雪が笑う。
「また宇髄さんがギターを持ってきてくださったときにでも歌いますよ。肺を鍛えるのにも良いですしね」
「あ?俺使えねぇしやるよ」
ぽいとギターを寄越されて紗雪は慌てた。絶対安いものではないはずだ。というか高級品だ。
「いやでも…」
「お館様が使えるやつが使えって言ってるんだから派手にお前で良いだろ。な?煉獄?」
高級品を紗雪に与えたからと逆恨みされては敵わない。宇髄はわざと産屋敷の名前を出すと煉獄を振り返った。そうだな!と返してくる煉獄が一瞬不満げだったのを宇髄は見逃さなかった。
(こいつは本当によぉ…)
「それより歌は肺の機能回復にいいのか?」
「強くなる為に鍛えるのとはまた違いますが、私のように肺の機能が半分死んでいるようなものには有効です」
人並みぐらいにはなれるだろう。紗雪の言葉に頷いた煉獄は再びギターを取り上げた。
「剥き出しのまま置いておくわけにはいくまい!入れ物を設えよう!」
「…流石にそうですね」
ギターのケースを作るとなると高そうだがこればかりはないと困る。完全に自分が買ってくるつもりの煉獄に紗雪はダメ元で反論してみた。
「私が頂いたものですし、自分で買いますが…」
「入院患者は療養すべきだろう!」
「いやでも手入れのための道具とか…」
「専門の店でちゃんと聞いてくるから大丈夫だ!」
「師範実は暇ですかね!?」
全然譲歩してくれない煉獄に紗雪は頭を抱えた。援護が欲しくて宇髄や炭治郎を振り返るがいい笑顔を返される。不死川達がいた窓を見上げたが、そこにはもう誰もいなかった。援護を諦めた紗雪が自分で頑張る。
「必要最小限でいいんですよ!?言われるがままに買うとか必要ないんですよ!?分かってます!?」
「よもや!俺はそこまで馬鹿じゃないぞ紗雪!」
「信頼度の低い台詞!!」
撃沈する紗雪を見ながら宇髄は思った。ギターと共に受け取った入れ物に関しては、我が家に封印してしまおうと。
「鬼の血気術でこっちに来て」
「帰らないでこっちに残った」
「………」
炭治郎、善逸、禰󠄀豆子、カナヲの唖然とした表情が刺さる。紗雪は困った顔で笑った。積極的に隠していたわけではないが話すには突飛な内容で、結果騙していたような罪悪感を感じる。
しかしその空気を壊したのは伊之助だった。炭治郎達の戸惑いに首を傾げる。
「お前ら何変な顔してんだよ」
「変ってお前…驚かねぇの?」
呆れる善逸に心底不思議そうにする。
「何か変わんのかよ」
「いや、勿論何も変わらないぞ」
炭治郎が慌てて否定する。伊之助が腰に手を当てると胸を張った。
「だよな!全くお前らが変な顔してるから、紗雪が未来から来てるのがわかったら何かあるのかと思っちまったじゃねえか!紛らわしいんだよ!!」
「伊之助君」
なんともシンプルな考え方の伊之助に紗雪は苦笑した。炭治郎がハッとしたように拳を握る。
「そ、そうだよな!紗雪さんが俺達の仲間なのに何の変わりもないよな!」
「確かに。紗雪さんがめちゃめちゃ強いのも、俺達と一緒に戦ったのも変わんないな」
「うんうん!そうよね!」
「………」
カナヲはつつ…と近寄ると紗雪の隣に座った。ギュッと袖を握られて紗雪が表情を緩める。ポンと紗雪がその頭を撫でた。
「ありがとうございます」
「ねぇねぇ!もっとこう…恋の歌みたいのは無いんですか?」
禰󠄀豆子は紗雪にもっと歌って貰いたくてそう尋ねた。未来の歌なんて普通なら聴けないものが聴けるなんてとても素敵だと思う。カナヲも興味津々で紗雪を覗き込んできた。紗雪が笑ってギターを抱える。
「恋の歌ですか…あんまり需要がなかったので…何かあったかな」
「需要がないってどうして?」
カナヲが尋ねる。紗雪は前奏を弾き始めながら答えた。
「家族や恋人や…待たせている者の顔を思い出させるような歌は本人にも里心がついてしまいますから」
「それってダメな事?」
キョトンとする禰󠄀豆子に紗雪はうーん…と首を傾けた。
「任務の遂行に邪魔になると思ったんでしょうね」
「そんなの酷い!」
「まぁまぁ、ではこの歌にしましょう」
憤る炭治郎を宥めると紗雪は茅●実里のみちし●べを歌い出した。
「ーー♪ーー」
禰󠄀豆子とカナヲと…そして善逸まで目をキラキラさせている。紗雪は笑い出してしまわないよう目を逸らした。と、その先に…。
(師範、いつからそこに…)
庭木に寄りかかり煉獄がこちらを見ていた。射抜かれるような視線が落ち着かなくて紗雪が視線を落とす。歌い終わるとカナヲと禰󠄀豆子が拍手をしてくれた。が、ここでずっと大人しかった宇髄が物申し出した。
「そのゆっくりした曲じゃなくて!もっと派手に最初みたいな速いやつねぇのかよ!?折角のギターなのに詰まんねぇだろ」
「んな暴虐なリスナーのような事を…」
「そうだぞ!ゆりかごに乗る赤ん坊じゃねぇぞ!俺達は!!」
「うわ、こっちにも」
伊之助にも言われて天を仰いだ紗雪はギョッとして後ろを振り返った。窓という窓から屋内の者がこちらを見ている。その中に不死川と冨岡の姿を認めて紗雪は頭を抱えた。
「えーっと…今日はこの辺で……」
「何言ってやがる。逃さねぇぞ。とっとと次歌いやがれ」
「なんの強制労働ですかね!?」
宇髄に首根っこを押さえられて紗雪は諦めるとギターを弾き始めた。
「速い曲でしたっけ?…あー、鬼殺隊にピッタリなのがありますよ。●銀って曲です」
「よし、じゃあそれ行け!」
ノリノリの宇髄に苦笑すると紗雪はギターをかき鳴らした。
「ーー♪ーー」
この歌が何のスイッチになったのかやれ次、それ次と声がかかる。曲が12を超えた頃、紗雪が小さく咳をした。後ろから伸びてきた手にギターを取り上げられてその場の全員がキョトンと顔を上げた。
「これ以上は喉を痛めるぞ紗雪!」
「うわ出た紗雪の管理人」
「すいません、それは初耳です」
煉獄を見ての宇髄の突っ込みに紗雪が突っ込み返した。管理人って何だ。しかも何故誰も何も言わない。宇髄が肩肘をついてニヤリとした。
「紗雪がちょっと咳しただけで過保護が過ぎねぇ?お前だって紗雪の歌聞きたいだろ?」
「俺は時折聞いているから大丈夫だ!」
「「「ん?」」」
煉獄の言葉に炭治郎達どころか紗雪まで首を傾げた。
「歌い…ましたっけ」
「洗濯物を干している時などよく歌っている!」
「おおぅ」
完全な無意識化の行動を改めて指摘されると恥ずかしい。赤くなってしまった紗雪とニコニコしている煉獄にアホらしくなった宇髄は解散を告げた。えー!?と不服そうにする禰󠄀豆子に紗雪が笑う。
「また宇髄さんがギターを持ってきてくださったときにでも歌いますよ。肺を鍛えるのにも良いですしね」
「あ?俺使えねぇしやるよ」
ぽいとギターを寄越されて紗雪は慌てた。絶対安いものではないはずだ。というか高級品だ。
「いやでも…」
「お館様が使えるやつが使えって言ってるんだから派手にお前で良いだろ。な?煉獄?」
高級品を紗雪に与えたからと逆恨みされては敵わない。宇髄はわざと産屋敷の名前を出すと煉獄を振り返った。そうだな!と返してくる煉獄が一瞬不満げだったのを宇髄は見逃さなかった。
(こいつは本当によぉ…)
「それより歌は肺の機能回復にいいのか?」
「強くなる為に鍛えるのとはまた違いますが、私のように肺の機能が半分死んでいるようなものには有効です」
人並みぐらいにはなれるだろう。紗雪の言葉に頷いた煉獄は再びギターを取り上げた。
「剥き出しのまま置いておくわけにはいくまい!入れ物を設えよう!」
「…流石にそうですね」
ギターのケースを作るとなると高そうだがこればかりはないと困る。完全に自分が買ってくるつもりの煉獄に紗雪はダメ元で反論してみた。
「私が頂いたものですし、自分で買いますが…」
「入院患者は療養すべきだろう!」
「いやでも手入れのための道具とか…」
「専門の店でちゃんと聞いてくるから大丈夫だ!」
「師範実は暇ですかね!?」
全然譲歩してくれない煉獄に紗雪は頭を抱えた。援護が欲しくて宇髄や炭治郎を振り返るがいい笑顔を返される。不死川達がいた窓を見上げたが、そこにはもう誰もいなかった。援護を諦めた紗雪が自分で頑張る。
「必要最小限でいいんですよ!?言われるがままに買うとか必要ないんですよ!?分かってます!?」
「よもや!俺はそこまで馬鹿じゃないぞ紗雪!」
「信頼度の低い台詞!!」
撃沈する紗雪を見ながら宇髄は思った。ギターと共に受け取った入れ物に関しては、我が家に封印してしまおうと。