短編
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「………」
煉獄は固まっていた。蝶屋敷からの緊急の呼び出しで来てみれば、何と言うことか自分の継子である紗雪がすっかりちんまくなっていた。
紗雪はカナヲに抱っこされて、きょとんと煉獄を見上げていた。
「胡蝶…」
「ご都合血気術ですね。話を聞いてみましたが、丸切り記憶がないようです。3歳だそうですよ」
胡蝶によると他の隊士を庇って血気術にかかってしまったらしい。鬼はカナヲが斬ったそうだが、紗雪の術が解けずにいる。
「紗雪、わかるか?」
無駄と分かっていつつも紗雪に話しかける。紗雪は煉獄から逃げるようにカナヲにしがみついた。
「パパとママは?」
「えっ…パパって?誰?」
聞き覚えのない単語にカナヲが慌てると紗雪の目にみるみるうちに涙が溜まった。ポロポロと大粒の涙をこぼす紗雪にカナヲが固まる。
「うえっ…ふぇぇぇー……」
「えっ?えっ?椎名…」
「パパぁー!ママぁー!!」
うわぁん!と声を上げて泣き出す紗雪を胡蝶が落ち着いて抱き上げた。いやいやと首を振る紗雪を辛抱強く宥める。
「大丈夫ですよ。椎名ちゃんのお父様とお母様は大事な用事で出掛けているだけです」
「椎名…おいて…?」
涙も鼻水もグジュグジュの紗雪を鼻紙で綺麗に拭ってやる。ふーん!と鼻をかむ紗雪を胡蝶が大袈裟に褒めた。
「あら、自分で鼻をかめるなんてお利口さんですね」
「……椎名、良い子しゅる。パパとママまちゅ」
真っ赤な鼻と目でそう言う紗雪にその場の全員がキューンとなった。我に帰った胡蝶が煉獄を振り返る。
「申し訳ありませんが、ここには小さな子供には危ない物が多いので…煉獄さんお願いできますか?」
「無論だ!紗雪、さぁおいで」
煉獄が手を広げるが、紗雪は胡蝶にしがみついたまま離れない。その事に煉獄は少なからずショックを受けた。
「紗雪…」
「椎名ちゃん、ですよ。煉獄さん」
煉獄が紗雪を見ればこっくり頷く。避けられる意味がわかって煉獄が柔らかく笑った。
「椎名おいで」
「薬を飲むのは難しいので、沢山お日様に当たって、沢山寝て下さいね」
煉獄は紗雪の小さな体を抱き上げた。軽すぎて力の入れ具合が分からなくなりそうだ。紗雪がペチペチと煉獄の頬を叩いた。
「お兄ちゃん、パパのともあち?」
「あぁ!そうだ!!椎名の父上と母上が戻るまでうちにいると良い!」
煉獄がニッコリ笑ってそう言うと、紗雪は急にモジモジした。
「どうした?椎名」
「椎名、一人でねんね…や」
「………うちには千寿郎という俺の弟がいる。弟と共に寝ると良い!」
胡蝶は二人のやりとりを聞きながら、内心胸を撫で下ろした。煉獄が一緒に寝ると言い出さなくて良かったと。
「せーちゃん遊ぼ!」
「あぁ!待って椎名ちゃん!庭に降りるなら靴を履かないと!!」
「やー!」
結論から言うと紗雪は大変なお転婆だった。朝から晩まで、それこそ電池が切れるまでノンストップだ。
今も靴を履かずに庭に駆け降りて千寿郎を慌てさせている。
「ほら、椎名ちゃん。靴を履いて」
「やーや!」
千寿郎は紗雪を膝の上に捕まえると小さな足に靴を履かせようとする。暴れる紗雪に大苦戦だ。
「貸せ」
千寿郎が持っていた紗雪の靴を愼寿郎が取り上げた。驚く千寿郎を他所に器用に紗雪に靴を履かせる。
「足が痛くなったら遊べんぞ」
愼寿郎は小さな紗雪に目を細めた。懐かしい記憶が愼寿郎を穏やかにさせる。紗雪はじっと愼寿郎を見ていたが、やがて目を輝かせるとビシッと愼寿郎を指差した。
「にあとり!にあとりのロック!!」
「鶏!?」
「にあとりのロックにしょっくりねー」
千寿郎は口を押さえるとそっぽを向いた。自分の父は紗雪が子供になっても弄ばれる運命らしい。愼寿郎は大きくため息をつくと紗雪の頭をグリグリ撫でて去っていってしまった。
「せーちゃん遊ぼ!」
「何して遊ぶの?」
「かくえんぼ!」
千寿郎が楽しく紗雪と遊べたのは三日が限界だった。
「…大丈夫か?千寿郎」
「だ、大丈夫です…ご心配お掛けして、申し訳ありません」
任務から戻ってきた煉獄は目の下に隈を作った千寿郎に眉を寄せた。原因が一つしか思い当たらない。
「椎名が夜寝ないのか?」
「いえ…椎名ちゃんはグッスリです。寝相はすごいですが…」
夜中蹴られたり踏まれたりで千寿郎は休まる暇がない。再び任務に向かわなければならない煉獄は考え込んだ。そこに千寿郎の隈の原因がやってくる。
「お兄ちゃんおかいり!」
元気一杯である。煉獄はひょいと紗雪を抱き上げると口を開いた。
「毎日ここでは飽きるだろう!他の所へ遊びに行ってみるか!」
「行くー!」
キャラキャラ笑う紗雪を抱いたまま煉獄は任務へと出掛けていった。
煉獄は固まっていた。蝶屋敷からの緊急の呼び出しで来てみれば、何と言うことか自分の継子である紗雪がすっかりちんまくなっていた。
紗雪はカナヲに抱っこされて、きょとんと煉獄を見上げていた。
「胡蝶…」
「ご都合血気術ですね。話を聞いてみましたが、丸切り記憶がないようです。3歳だそうですよ」
胡蝶によると他の隊士を庇って血気術にかかってしまったらしい。鬼はカナヲが斬ったそうだが、紗雪の術が解けずにいる。
「紗雪、わかるか?」
無駄と分かっていつつも紗雪に話しかける。紗雪は煉獄から逃げるようにカナヲにしがみついた。
「パパとママは?」
「えっ…パパって?誰?」
聞き覚えのない単語にカナヲが慌てると紗雪の目にみるみるうちに涙が溜まった。ポロポロと大粒の涙をこぼす紗雪にカナヲが固まる。
「うえっ…ふぇぇぇー……」
「えっ?えっ?椎名…」
「パパぁー!ママぁー!!」
うわぁん!と声を上げて泣き出す紗雪を胡蝶が落ち着いて抱き上げた。いやいやと首を振る紗雪を辛抱強く宥める。
「大丈夫ですよ。椎名ちゃんのお父様とお母様は大事な用事で出掛けているだけです」
「椎名…おいて…?」
涙も鼻水もグジュグジュの紗雪を鼻紙で綺麗に拭ってやる。ふーん!と鼻をかむ紗雪を胡蝶が大袈裟に褒めた。
「あら、自分で鼻をかめるなんてお利口さんですね」
「……椎名、良い子しゅる。パパとママまちゅ」
真っ赤な鼻と目でそう言う紗雪にその場の全員がキューンとなった。我に帰った胡蝶が煉獄を振り返る。
「申し訳ありませんが、ここには小さな子供には危ない物が多いので…煉獄さんお願いできますか?」
「無論だ!紗雪、さぁおいで」
煉獄が手を広げるが、紗雪は胡蝶にしがみついたまま離れない。その事に煉獄は少なからずショックを受けた。
「紗雪…」
「椎名ちゃん、ですよ。煉獄さん」
煉獄が紗雪を見ればこっくり頷く。避けられる意味がわかって煉獄が柔らかく笑った。
「椎名おいで」
「薬を飲むのは難しいので、沢山お日様に当たって、沢山寝て下さいね」
煉獄は紗雪の小さな体を抱き上げた。軽すぎて力の入れ具合が分からなくなりそうだ。紗雪がペチペチと煉獄の頬を叩いた。
「お兄ちゃん、パパのともあち?」
「あぁ!そうだ!!椎名の父上と母上が戻るまでうちにいると良い!」
煉獄がニッコリ笑ってそう言うと、紗雪は急にモジモジした。
「どうした?椎名」
「椎名、一人でねんね…や」
「………うちには千寿郎という俺の弟がいる。弟と共に寝ると良い!」
胡蝶は二人のやりとりを聞きながら、内心胸を撫で下ろした。煉獄が一緒に寝ると言い出さなくて良かったと。
「せーちゃん遊ぼ!」
「あぁ!待って椎名ちゃん!庭に降りるなら靴を履かないと!!」
「やー!」
結論から言うと紗雪は大変なお転婆だった。朝から晩まで、それこそ電池が切れるまでノンストップだ。
今も靴を履かずに庭に駆け降りて千寿郎を慌てさせている。
「ほら、椎名ちゃん。靴を履いて」
「やーや!」
千寿郎は紗雪を膝の上に捕まえると小さな足に靴を履かせようとする。暴れる紗雪に大苦戦だ。
「貸せ」
千寿郎が持っていた紗雪の靴を愼寿郎が取り上げた。驚く千寿郎を他所に器用に紗雪に靴を履かせる。
「足が痛くなったら遊べんぞ」
愼寿郎は小さな紗雪に目を細めた。懐かしい記憶が愼寿郎を穏やかにさせる。紗雪はじっと愼寿郎を見ていたが、やがて目を輝かせるとビシッと愼寿郎を指差した。
「にあとり!にあとりのロック!!」
「鶏!?」
「にあとりのロックにしょっくりねー」
千寿郎は口を押さえるとそっぽを向いた。自分の父は紗雪が子供になっても弄ばれる運命らしい。愼寿郎は大きくため息をつくと紗雪の頭をグリグリ撫でて去っていってしまった。
「せーちゃん遊ぼ!」
「何して遊ぶの?」
「かくえんぼ!」
千寿郎が楽しく紗雪と遊べたのは三日が限界だった。
「…大丈夫か?千寿郎」
「だ、大丈夫です…ご心配お掛けして、申し訳ありません」
任務から戻ってきた煉獄は目の下に隈を作った千寿郎に眉を寄せた。原因が一つしか思い当たらない。
「椎名が夜寝ないのか?」
「いえ…椎名ちゃんはグッスリです。寝相はすごいですが…」
夜中蹴られたり踏まれたりで千寿郎は休まる暇がない。再び任務に向かわなければならない煉獄は考え込んだ。そこに千寿郎の隈の原因がやってくる。
「お兄ちゃんおかいり!」
元気一杯である。煉獄はひょいと紗雪を抱き上げると口を開いた。
「毎日ここでは飽きるだろう!他の所へ遊びに行ってみるか!」
「行くー!」
キャラキャラ笑う紗雪を抱いたまま煉獄は任務へと出掛けていった。