短編
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「ようこそお出でいただきまして!最近は横浜から東京も近くなりましたでしょう」
「そうですねぇ。しかし東京は海輸が強い横浜とは又違う趣ですね」
「流行りの物もだいぶ違いそうだ!」
一週間後、予告通り煉獄と宇髄は横浜からの客として訪ねてきた。しかも二人揃ってスーツにネクタイ、ベストを着込んでいたので紗雪と善逸は思わずギョッとした。
(何あれ。メチャクチャ金かけてんじゃん!)
(商談にいらしたお客様ですからね)
自分たちばっかり格好つけて!と不満一杯の善逸に苦笑した紗雪だったが、そうは言いつつもつい目が煉獄を追ってしまう。肩周りが少し窮屈そうではあったが初めて見る煉獄の洋装姿は相当のインパクトだった。
(何を着ても似合いますね師範は)
弟子としてはかなり誇らしい気分になってしまう。
豪田の先導で例の談話室に通された宇髄と煉獄は三人がけソファにゆったりと腰掛けた。あまりの存在感に豪田が気圧されてはなるまいと踏ん反り返って一人がけソファに座る。しかしどう見ても押されているのは明明白白だった。
「失礼いたします」
ワゴンを押して談話室に入ると紗雪は紅茶の支度に取り掛かった。背中に煉獄の視線が突き刺さって落ち着かない。それは横でケーキの支度をしている善逸も同じようだった。尤も善逸に刺さっているのは宇髄の視線だが。
「どうぞ」
テーブルにケーキと紅茶を位置を間違わないよう気をつけながら置く。煉獄の視線が刺さりすぎて紗雪は思わず宇髄を見た。察した宇髄が咳払いをする。
「んんっ!今日はこちらでお世話になるのでいくつか土産をお持ちしたんですよ。気に入っていただけると良いのですが」
「舶来の物はまだ横浜の方が多いと聞くのでお眼鏡にかなうと有り難い!」
「それはそれは!わざわざありがとうございます。今夜は我が家の料理人が腕によりをかけますので楽しみになさって下さい」
「東京でも屈指の大商会の豪田さんがそう仰るなんて楽しみだ」
あっはっは!と笑い声が起こる中を素知らぬ顔をして壁際に控える。紗雪は吹き出しそうになっている善逸の脇を小突いた。
(善逸君)
(だって!あの宇髄さんがだよ!?)
善逸にそう言われても仕方ないほど宇髄は商人そのものだ。柱と言うのはなかなか役者なのだなと紗雪は感心した。夕食を終え食後の時間をブランデーを片手に過ごしていると、機嫌良く酔っ払った豪田がとんでもない事を言い出した。
「お二人は女性におモテになるでしょうなぁ!」
「いやいやそんな事は…」
あるに決まってんだろ!とは言えない宇髄が謙遜して見せると豪田はニヤニヤした笑いを浮かべた。
「しかし遊ぶ相手が女ばかりはでは少々物足りない。今夜はそこの二人を可愛がってやって下さい」
「!?」
「……へ?」
そこの二人と指し示されて紗雪と善逸が固まった。宇髄が立ち上がると善逸の顎を取って顔を挙げさせる。善逸はあわあわしていた。
「ふーん?豪田さんの所の使用人はそんな事もされるので?」
「なぁに、首になれば行く先のない連中です。使用人など躾次第ですよ」
「…っ!」
日々業務を懸命にこなしている福地達の姿がよぎって紗雪は豪田へと一歩踏み出した。横から腕を引かれ立ち止まる。
「客室へ案内してくれるか」
「…はい」
豪田から見えない角度の煉獄は額に青筋を浮かべており紗雪は怒りが一気に吹き飛んでしまった。にやつく豪田は業腹だが任務任務と自分に言い聞かせる。
「こちらへどうぞ」
「うむ!」
「どうぞごゆっくり」
「お先に失礼」
「………」
乾杯するようにグラスを高く掲げる豪田に善逸の襟首をひっつかんだ宇髄が渾身の愛想笑いを浮かべる。宇髄の奏でる怒りの音に善逸は気が遠くなりそうだった。
「こちらとそちらのお部屋でございます」
隣り合った部屋を案内すると宇髄は善逸を連れて部屋に消えていく。煉獄を先に部屋に通した紗雪はドアを閉めるとその場に立ち止まった。
「…宇髄さんは耳が良いのでこのまま失礼します。客室には覗き穴があります」
豪田が近づいてくる気配のないうちに手短な報告をする。煉獄は豪勢な天蓋のついたベッドに腰掛けた。宇髄と善逸の部屋からは物音一つしない。
「それから先程までいた応接間の鏡の裏に地下に繋がる隠し通路のボタンが…」
豪田の階段を上がってくる足音に紗雪は口を閉じた。黙って紗雪の報告を聞いていた煉獄が口を開く。
「君の名前を教えてもらえるだろうか!」
「…紗雪椎名と申します」
どうやら夜中の討伐までこの芝居を続けるということらしい。紗雪が名乗れば煉獄が自分の隣をポンと叩いた。
「こちらへ来なさい」
「………はい」
(いやチョット待って…これどうしたら良いの?いやいや師範はそんな無茶なことはしないと思うけど不審に思われるのはマズイんだよね?)
煉獄の座るベッドまで歩いていく短い間に思考がぐるぐる回る。紗雪が横に座ると煉獄がその腰をぐっと引き寄せた。
「っ!」
「大丈夫だ、力を抜きなさい」
(いやいや世界一安心できない大丈夫なんですけど!?)
煉獄のことは信頼しているが任務のためならやらかさないとも限らない。紗雪は困り果てて煉獄を見上げた。
少し怯えたように自分を見上げてくる紗雪に煉獄は理性をフル動員させていた。自分の大事な継子を豪田のような阿呆のために傷つけるわけには行かない。いくら男としては中々美味しい状況であったとしてもだ。
「………」
煉獄は紗雪の上半身をベッドの上に寝かせると覆いかぶさるようにしてその耳元に唇を寄せた。
「豪田の酒には宇髄が睡眠薬を仕込んである。もう少しで聞いてくるはずだ」
「わ、かり…ました」
恥ずかしすぎて紗雪はギュッと目を閉じた。任務任務と自分に言い聞かせるにも限度がある。がちがちになってしまった紗雪に煉獄が小さく笑った。
「!?」
「いや、すまん」
「いーーーーー!やぁーーーーーー!!」
善逸の絶叫が聞こえて紗雪は驚いて壁の方を振り向いた。豪田も飛び上がったのだろう壁からゴン!と鈍い音がする。続いて宇髄の怒鳴り声も響いてきた。
「バカでかい声出すんじゃねぇよ!鼓膜破れるわ!!」
「アンタ巫山戯んなよ!?野郎相手に何しでかそうとしてんだよ!!頭沸いてんじゃないの!?」
「そうかよ!じゃあテメェの頭も沸かしてやろうか!?」
「ぎゃーーーーーーっ!!!」
「「……………」」
隠し部屋を挟んでいるのにはっきり聞こえる怒鳴り合いに緊張などどこかに吹き飛んで紗雪はポカンとした。同じく呆気にとられていた煉獄が紗雪の上からどくとベッドに転がる。
「興が削がれた!と言うよりやはり男を抱く気にはならん!!」
横向きになると肩肘をついてニヤリとする煉獄に紗雪がホッとする。
「とは言えこのまま帰れば君は主人に叱られるだろう!今夜はここに居ると良い!俺が口裏を合わせよう!!」
「…ありがとうございます」
宇髄と善逸の喉が枯れそうな怒鳴り合いはまだ続いているが、そんな中なのに豪田の気配がふらついているのが分かる。やがて動かなくなった豪田の気配に、煉獄は立ち上がると荷物の中から日輪刀と剣帯を二揃え取り出した。
「これを」
「ありがとうございます」
素早く帯刀する紗雪を煉獄が見つめる。
「何ですか?師範」
「いや、俺は君を襲うような男と思われていたのかと…な」
冗談交じりに告げれば紗雪が慌てて手を降った。
「いや!だって…どう考えたってイレギュラー過ぎてパニックにぐらいなりますって!」
「いれぎゅらーもぱにっくも意味がわからないぞ紗雪!」
「お前ら派手に遊んでんじゃねぇよ」
帯刀した宇髄と善逸が入ってきた。善逸の頬が赤くなっているのを紗雪が心配する。
「この筋肉だるま変態だから紗雪さんも近づかない方が良いよ」
「何したんですか?宇髄さん」
「お前俺のことは真っ直ぐ疑ってくるね!?覗き穴があるっつーからしょうがねぇ派手に頬っぺた齧っただけだぞ!」
「普通齧んないよ!まだちょっと痛いんですけど!?」
キーッ!と威嚇する善逸を紗雪がまぁまぁと宥める。宇髄が意味ありげに煉獄を見た。
「バレない為には派手にそんぐらいはするよなぁ?煉獄」
「君と一緒にするな!」
「先程の話の続きをしても良いでしょうか?」
収拾がつかなくなりそうで、紗雪は話を無理やり戻した。ポケットから敷地内を調べた紙を出す。
「一階のここが先程の応接間ですね。ここに地下に通じる道があって、小型の鬼が複数確認できました。どう言うわけか太陽の光ではなくても明かりを嫌がったので、姿を確認できていません。夜9時を過ぎると庭の外灯も全て消すのはそのためと思われます」
「多分20匹以上はいたよ。小さくて素早い音だった」
鬼が群れている。その情報に煉獄と宇髄が眉を顰めた。なにか鬼を引き寄せるものがあるのだろうか?
紗雪が四つある蔵の一つを指差した。
「ここに大きな鬼の気配が一つ。方角的に応接間からの地下通路と通じていると思われます。これは確認が取れませんでした。申し訳ありません」
「日輪刀が無い以上鬼との接触はすべきでは無い!充分だ!」
ジッと地図を見ていた宇髄が手をパンと叩いた。
「んじゃ、役割分担だな。紗雪と善逸は俺達が隠し通路に入ったら壁を閉めろ」
「えっ!そんな事したら宇髄さん達閉じ込められちゃうよ!?」
顔色を悪くする善逸の額を宇髄が小突く。
「あぁ?お前は俺達が何者か派手に忘れてんじゃねぇだろうな」
「紗雪達は使用人の安全を確保してくれ!取りこぼしのないよう気をつけるが絶対は無いからな!」
「わかりました。お気をつけて」
四人はそれぞれに顔を見合わせると頷き合った。
「そうですねぇ。しかし東京は海輸が強い横浜とは又違う趣ですね」
「流行りの物もだいぶ違いそうだ!」
一週間後、予告通り煉獄と宇髄は横浜からの客として訪ねてきた。しかも二人揃ってスーツにネクタイ、ベストを着込んでいたので紗雪と善逸は思わずギョッとした。
(何あれ。メチャクチャ金かけてんじゃん!)
(商談にいらしたお客様ですからね)
自分たちばっかり格好つけて!と不満一杯の善逸に苦笑した紗雪だったが、そうは言いつつもつい目が煉獄を追ってしまう。肩周りが少し窮屈そうではあったが初めて見る煉獄の洋装姿は相当のインパクトだった。
(何を着ても似合いますね師範は)
弟子としてはかなり誇らしい気分になってしまう。
豪田の先導で例の談話室に通された宇髄と煉獄は三人がけソファにゆったりと腰掛けた。あまりの存在感に豪田が気圧されてはなるまいと踏ん反り返って一人がけソファに座る。しかしどう見ても押されているのは明明白白だった。
「失礼いたします」
ワゴンを押して談話室に入ると紗雪は紅茶の支度に取り掛かった。背中に煉獄の視線が突き刺さって落ち着かない。それは横でケーキの支度をしている善逸も同じようだった。尤も善逸に刺さっているのは宇髄の視線だが。
「どうぞ」
テーブルにケーキと紅茶を位置を間違わないよう気をつけながら置く。煉獄の視線が刺さりすぎて紗雪は思わず宇髄を見た。察した宇髄が咳払いをする。
「んんっ!今日はこちらでお世話になるのでいくつか土産をお持ちしたんですよ。気に入っていただけると良いのですが」
「舶来の物はまだ横浜の方が多いと聞くのでお眼鏡にかなうと有り難い!」
「それはそれは!わざわざありがとうございます。今夜は我が家の料理人が腕によりをかけますので楽しみになさって下さい」
「東京でも屈指の大商会の豪田さんがそう仰るなんて楽しみだ」
あっはっは!と笑い声が起こる中を素知らぬ顔をして壁際に控える。紗雪は吹き出しそうになっている善逸の脇を小突いた。
(善逸君)
(だって!あの宇髄さんがだよ!?)
善逸にそう言われても仕方ないほど宇髄は商人そのものだ。柱と言うのはなかなか役者なのだなと紗雪は感心した。夕食を終え食後の時間をブランデーを片手に過ごしていると、機嫌良く酔っ払った豪田がとんでもない事を言い出した。
「お二人は女性におモテになるでしょうなぁ!」
「いやいやそんな事は…」
あるに決まってんだろ!とは言えない宇髄が謙遜して見せると豪田はニヤニヤした笑いを浮かべた。
「しかし遊ぶ相手が女ばかりはでは少々物足りない。今夜はそこの二人を可愛がってやって下さい」
「!?」
「……へ?」
そこの二人と指し示されて紗雪と善逸が固まった。宇髄が立ち上がると善逸の顎を取って顔を挙げさせる。善逸はあわあわしていた。
「ふーん?豪田さんの所の使用人はそんな事もされるので?」
「なぁに、首になれば行く先のない連中です。使用人など躾次第ですよ」
「…っ!」
日々業務を懸命にこなしている福地達の姿がよぎって紗雪は豪田へと一歩踏み出した。横から腕を引かれ立ち止まる。
「客室へ案内してくれるか」
「…はい」
豪田から見えない角度の煉獄は額に青筋を浮かべており紗雪は怒りが一気に吹き飛んでしまった。にやつく豪田は業腹だが任務任務と自分に言い聞かせる。
「こちらへどうぞ」
「うむ!」
「どうぞごゆっくり」
「お先に失礼」
「………」
乾杯するようにグラスを高く掲げる豪田に善逸の襟首をひっつかんだ宇髄が渾身の愛想笑いを浮かべる。宇髄の奏でる怒りの音に善逸は気が遠くなりそうだった。
「こちらとそちらのお部屋でございます」
隣り合った部屋を案内すると宇髄は善逸を連れて部屋に消えていく。煉獄を先に部屋に通した紗雪はドアを閉めるとその場に立ち止まった。
「…宇髄さんは耳が良いのでこのまま失礼します。客室には覗き穴があります」
豪田が近づいてくる気配のないうちに手短な報告をする。煉獄は豪勢な天蓋のついたベッドに腰掛けた。宇髄と善逸の部屋からは物音一つしない。
「それから先程までいた応接間の鏡の裏に地下に繋がる隠し通路のボタンが…」
豪田の階段を上がってくる足音に紗雪は口を閉じた。黙って紗雪の報告を聞いていた煉獄が口を開く。
「君の名前を教えてもらえるだろうか!」
「…紗雪椎名と申します」
どうやら夜中の討伐までこの芝居を続けるということらしい。紗雪が名乗れば煉獄が自分の隣をポンと叩いた。
「こちらへ来なさい」
「………はい」
(いやチョット待って…これどうしたら良いの?いやいや師範はそんな無茶なことはしないと思うけど不審に思われるのはマズイんだよね?)
煉獄の座るベッドまで歩いていく短い間に思考がぐるぐる回る。紗雪が横に座ると煉獄がその腰をぐっと引き寄せた。
「っ!」
「大丈夫だ、力を抜きなさい」
(いやいや世界一安心できない大丈夫なんですけど!?)
煉獄のことは信頼しているが任務のためならやらかさないとも限らない。紗雪は困り果てて煉獄を見上げた。
少し怯えたように自分を見上げてくる紗雪に煉獄は理性をフル動員させていた。自分の大事な継子を豪田のような阿呆のために傷つけるわけには行かない。いくら男としては中々美味しい状況であったとしてもだ。
「………」
煉獄は紗雪の上半身をベッドの上に寝かせると覆いかぶさるようにしてその耳元に唇を寄せた。
「豪田の酒には宇髄が睡眠薬を仕込んである。もう少しで聞いてくるはずだ」
「わ、かり…ました」
恥ずかしすぎて紗雪はギュッと目を閉じた。任務任務と自分に言い聞かせるにも限度がある。がちがちになってしまった紗雪に煉獄が小さく笑った。
「!?」
「いや、すまん」
「いーーーーー!やぁーーーーーー!!」
善逸の絶叫が聞こえて紗雪は驚いて壁の方を振り向いた。豪田も飛び上がったのだろう壁からゴン!と鈍い音がする。続いて宇髄の怒鳴り声も響いてきた。
「バカでかい声出すんじゃねぇよ!鼓膜破れるわ!!」
「アンタ巫山戯んなよ!?野郎相手に何しでかそうとしてんだよ!!頭沸いてんじゃないの!?」
「そうかよ!じゃあテメェの頭も沸かしてやろうか!?」
「ぎゃーーーーーーっ!!!」
「「……………」」
隠し部屋を挟んでいるのにはっきり聞こえる怒鳴り合いに緊張などどこかに吹き飛んで紗雪はポカンとした。同じく呆気にとられていた煉獄が紗雪の上からどくとベッドに転がる。
「興が削がれた!と言うよりやはり男を抱く気にはならん!!」
横向きになると肩肘をついてニヤリとする煉獄に紗雪がホッとする。
「とは言えこのまま帰れば君は主人に叱られるだろう!今夜はここに居ると良い!俺が口裏を合わせよう!!」
「…ありがとうございます」
宇髄と善逸の喉が枯れそうな怒鳴り合いはまだ続いているが、そんな中なのに豪田の気配がふらついているのが分かる。やがて動かなくなった豪田の気配に、煉獄は立ち上がると荷物の中から日輪刀と剣帯を二揃え取り出した。
「これを」
「ありがとうございます」
素早く帯刀する紗雪を煉獄が見つめる。
「何ですか?師範」
「いや、俺は君を襲うような男と思われていたのかと…な」
冗談交じりに告げれば紗雪が慌てて手を降った。
「いや!だって…どう考えたってイレギュラー過ぎてパニックにぐらいなりますって!」
「いれぎゅらーもぱにっくも意味がわからないぞ紗雪!」
「お前ら派手に遊んでんじゃねぇよ」
帯刀した宇髄と善逸が入ってきた。善逸の頬が赤くなっているのを紗雪が心配する。
「この筋肉だるま変態だから紗雪さんも近づかない方が良いよ」
「何したんですか?宇髄さん」
「お前俺のことは真っ直ぐ疑ってくるね!?覗き穴があるっつーからしょうがねぇ派手に頬っぺた齧っただけだぞ!」
「普通齧んないよ!まだちょっと痛いんですけど!?」
キーッ!と威嚇する善逸を紗雪がまぁまぁと宥める。宇髄が意味ありげに煉獄を見た。
「バレない為には派手にそんぐらいはするよなぁ?煉獄」
「君と一緒にするな!」
「先程の話の続きをしても良いでしょうか?」
収拾がつかなくなりそうで、紗雪は話を無理やり戻した。ポケットから敷地内を調べた紙を出す。
「一階のここが先程の応接間ですね。ここに地下に通じる道があって、小型の鬼が複数確認できました。どう言うわけか太陽の光ではなくても明かりを嫌がったので、姿を確認できていません。夜9時を過ぎると庭の外灯も全て消すのはそのためと思われます」
「多分20匹以上はいたよ。小さくて素早い音だった」
鬼が群れている。その情報に煉獄と宇髄が眉を顰めた。なにか鬼を引き寄せるものがあるのだろうか?
紗雪が四つある蔵の一つを指差した。
「ここに大きな鬼の気配が一つ。方角的に応接間からの地下通路と通じていると思われます。これは確認が取れませんでした。申し訳ありません」
「日輪刀が無い以上鬼との接触はすべきでは無い!充分だ!」
ジッと地図を見ていた宇髄が手をパンと叩いた。
「んじゃ、役割分担だな。紗雪と善逸は俺達が隠し通路に入ったら壁を閉めろ」
「えっ!そんな事したら宇髄さん達閉じ込められちゃうよ!?」
顔色を悪くする善逸の額を宇髄が小突く。
「あぁ?お前は俺達が何者か派手に忘れてんじゃねぇだろうな」
「紗雪達は使用人の安全を確保してくれ!取りこぼしのないよう気をつけるが絶対は無いからな!」
「わかりました。お気をつけて」
四人はそれぞれに顔を見合わせると頷き合った。