短編
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「ほれ、紗雪も着替えてこい。薄化粧でいいからしてこいよ」
「分かりました」
藤の家が用意してくれた簡素な着物を手に取ると紗雪は別室へ行くため立ち上がった。ふと宇髄が口元を歪める。
「お前着付けできる様になったのか?右前にとか着てくるなよ?」
「千寿郎さんに一度泣きながら叱られたので二度と間違えません」
右前に着るのは死装束とか知る訳のない紗雪は一度間違えて千寿郎にガチ泣きされている。ゲンナリとした顔をする紗雪に宇髄が僅かに笑った。隊服を風呂敷に包むと日輪刀は宇髄の忍獣ムキムキネズミに託す。紗雪が着替えを終えて宇髄の所に戻ると、悶絶する様な光景が待ち構えていた。
「………っ」
正座したまま体を折り曲げ顔を隠して震える。炭治郎達が居心地悪そうにした。
「す、すいませんっ…ちょっと、落ち着きます、ねっ」
「いえ、もういっそ思い切り笑ってください紗雪さん」
自分達の仕上がりが酷いのは良く承知している。遠い目をする炭治郎の横で善逸が紗雪をまじまじと見つめた。
「紗雪さんって美人だよね。普通の格好すると余計わかる」
「過分な評価をありがとうございます」
(過分じゃないんだけどな)
しかし善逸は口には出さなかった。紗雪から本気でお世辞だと信じている音がするからだ。
(紗雪さんって自己評価が凄い低いんだよな)
煉獄の継子で、次期炎柱と言われていて、医療の心得もある。受け答えも穏やかで、実は淡い思いを寄せている隊士も多いと聞く。
(まぁ、守りが堅すぎて誰も玉砕さえ出来てないらしいけ、ど…)
そこまで考えて善逸はゾワリと背筋が泡だった。変装を終えて戻ってきた宇髄をチラリと見る。宇髄がしーっと人差し指を口元に当てた。
(煉獄さんに内緒で連れてきてるーっ!!)
それはヤバイ。ヤバすぎる。善逸がアワアワしていると炭治郎が首を傾げた。
「どうした?善逸。何だか凄い匂いをさせてるけど」
「いや、そりゃそうだろう…だってさぁ…」
「さぁ!準備も出来たし行くぞ!!」
善逸の嘆きを打ち消す宇髄に炭治郎と伊之助が元気よく返事するのだった。
「あら!この子良いじゃない!ちょいとお兄さん!この子頂戴よ」
吉原を宇髄について歩いていると、紗雪はグイと肩を掴まれた。年嵩の女性が紗雪の顔を覗き込んでいる。
「おたくは…」
「なんだいまさか『花菱』を知らないとは言わせないよ?」
(花菱かよ)
宇髄は内心舌打ちした。花菱はこの吉原で一番大きい店だが今回の目的ではない。しかし断ればときと屋達に炭治郎達を売り込みに行くのを邪魔されかねない。宇髄はニッコリ笑ってみせると女に顔を寄せた。
「コイツは今回の目玉なんだよ。良い値段つけてくれるのかい?」
「ちょっとトウが立ってるんだ。その分ぐらいは安くしなよ」
遣手の目は確かな様である。宇髄は肩をすくめるとじゃあ宜しく頼むよと言った。腕を引かれ戸惑う紗雪を呼び止める。
「待ちな。荷物忘れてるぜ」
「あ、ありがとうございます」
荷物を受け取る紗雪に耳打ちする。
「花菱は京極屋の目の前だ。目を光らせておいてくれ」
紗雪はペコリと頭を下げると遣手の後について行った。今まで見た中で一番煌びやかで大きな建物に目を見張る。
「凄い…」
「そりゃそうさ!花菱は吉原一の遊郭だからね!さ、ぼさっとすんじゃないよ!こっちおいで!!」
紗雪は遣手に手を引かれるまま裏口から建物の中に入った。楼主に挨拶を済ませると大部屋に放り込まれる。
「明日から仕込むからね!面倒見ておやり」
ピシャリと戸を閉め遣手が立ち去ると、紗雪より僅かに幼い少女達が寄ってきた。
「大丈夫?」
「うちの遣手は性格キツイから、目をつけられない様にね」
「あ…これから宜しくお願いします」
これから何がどうなるかはさっぱりわからないが、とにかく目の前の少女達が心配してくれているのはわかる。紗雪が頭を下げると少女達はニッコリ微笑んだ。
「今日はもう寝ちゃいなよ」
「そうそう。長旅で疲れてるでしょ?」
「良いのでしょうか?」
吉原は夜の街と聞くのに夜寝てしまうのはどうなのか。紗雪が心配すると少女達がくすくす笑った。
「私たち見習いは夜はお店に出ちゃいけないの」
「手の早いお客に目をつけられないようにする為なんだって」
「突出しが一番値がつくから客を選ぶのかもね」
「はぁ…」
意外と遊女になるまでは守られている様だ。とにかく寝て!と布団をかけられまさか抜け出すわけにもいかず、紗雪は大人しく目を閉じるのだった。
「分かりました」
藤の家が用意してくれた簡素な着物を手に取ると紗雪は別室へ行くため立ち上がった。ふと宇髄が口元を歪める。
「お前着付けできる様になったのか?右前にとか着てくるなよ?」
「千寿郎さんに一度泣きながら叱られたので二度と間違えません」
右前に着るのは死装束とか知る訳のない紗雪は一度間違えて千寿郎にガチ泣きされている。ゲンナリとした顔をする紗雪に宇髄が僅かに笑った。隊服を風呂敷に包むと日輪刀は宇髄の忍獣ムキムキネズミに託す。紗雪が着替えを終えて宇髄の所に戻ると、悶絶する様な光景が待ち構えていた。
「………っ」
正座したまま体を折り曲げ顔を隠して震える。炭治郎達が居心地悪そうにした。
「す、すいませんっ…ちょっと、落ち着きます、ねっ」
「いえ、もういっそ思い切り笑ってください紗雪さん」
自分達の仕上がりが酷いのは良く承知している。遠い目をする炭治郎の横で善逸が紗雪をまじまじと見つめた。
「紗雪さんって美人だよね。普通の格好すると余計わかる」
「過分な評価をありがとうございます」
(過分じゃないんだけどな)
しかし善逸は口には出さなかった。紗雪から本気でお世辞だと信じている音がするからだ。
(紗雪さんって自己評価が凄い低いんだよな)
煉獄の継子で、次期炎柱と言われていて、医療の心得もある。受け答えも穏やかで、実は淡い思いを寄せている隊士も多いと聞く。
(まぁ、守りが堅すぎて誰も玉砕さえ出来てないらしいけ、ど…)
そこまで考えて善逸はゾワリと背筋が泡だった。変装を終えて戻ってきた宇髄をチラリと見る。宇髄がしーっと人差し指を口元に当てた。
(煉獄さんに内緒で連れてきてるーっ!!)
それはヤバイ。ヤバすぎる。善逸がアワアワしていると炭治郎が首を傾げた。
「どうした?善逸。何だか凄い匂いをさせてるけど」
「いや、そりゃそうだろう…だってさぁ…」
「さぁ!準備も出来たし行くぞ!!」
善逸の嘆きを打ち消す宇髄に炭治郎と伊之助が元気よく返事するのだった。
「あら!この子良いじゃない!ちょいとお兄さん!この子頂戴よ」
吉原を宇髄について歩いていると、紗雪はグイと肩を掴まれた。年嵩の女性が紗雪の顔を覗き込んでいる。
「おたくは…」
「なんだいまさか『花菱』を知らないとは言わせないよ?」
(花菱かよ)
宇髄は内心舌打ちした。花菱はこの吉原で一番大きい店だが今回の目的ではない。しかし断ればときと屋達に炭治郎達を売り込みに行くのを邪魔されかねない。宇髄はニッコリ笑ってみせると女に顔を寄せた。
「コイツは今回の目玉なんだよ。良い値段つけてくれるのかい?」
「ちょっとトウが立ってるんだ。その分ぐらいは安くしなよ」
遣手の目は確かな様である。宇髄は肩をすくめるとじゃあ宜しく頼むよと言った。腕を引かれ戸惑う紗雪を呼び止める。
「待ちな。荷物忘れてるぜ」
「あ、ありがとうございます」
荷物を受け取る紗雪に耳打ちする。
「花菱は京極屋の目の前だ。目を光らせておいてくれ」
紗雪はペコリと頭を下げると遣手の後について行った。今まで見た中で一番煌びやかで大きな建物に目を見張る。
「凄い…」
「そりゃそうさ!花菱は吉原一の遊郭だからね!さ、ぼさっとすんじゃないよ!こっちおいで!!」
紗雪は遣手に手を引かれるまま裏口から建物の中に入った。楼主に挨拶を済ませると大部屋に放り込まれる。
「明日から仕込むからね!面倒見ておやり」
ピシャリと戸を閉め遣手が立ち去ると、紗雪より僅かに幼い少女達が寄ってきた。
「大丈夫?」
「うちの遣手は性格キツイから、目をつけられない様にね」
「あ…これから宜しくお願いします」
これから何がどうなるかはさっぱりわからないが、とにかく目の前の少女達が心配してくれているのはわかる。紗雪が頭を下げると少女達はニッコリ微笑んだ。
「今日はもう寝ちゃいなよ」
「そうそう。長旅で疲れてるでしょ?」
「良いのでしょうか?」
吉原は夜の街と聞くのに夜寝てしまうのはどうなのか。紗雪が心配すると少女達がくすくす笑った。
「私たち見習いは夜はお店に出ちゃいけないの」
「手の早いお客に目をつけられないようにする為なんだって」
「突出しが一番値がつくから客を選ぶのかもね」
「はぁ…」
意外と遊女になるまでは守られている様だ。とにかく寝て!と布団をかけられまさか抜け出すわけにもいかず、紗雪は大人しく目を閉じるのだった。