短編
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(確か紗雪は蝶屋敷だったな!)
煉獄は自分の巡回任務に紗雪を同道させるために蝶屋敷へ向かっていた。最近なかなかに忙しい紗雪だが柱である煉獄の任務への同道を申し付ければ喜んでついて来る。その時の綻んだような気合が入ったような笑顔を煉獄は気に入っていた。
「紗雪!いるか!!」
勝手知ったるの蝶屋敷へ入ると煉獄は紗雪を呼んだ。ズンズンと診察室の方へ向かう。傷ついた隊士が多い事に煉獄は眉を寄せた。
「師範!どうかされましたか!?」
処置室から顔を出した紗雪は慌てて煉獄に駆け寄ってきた。羽織を脱ぎ肘まで腕まくりした紗雪の手には血がこびり付いている。
「どこか怪我でも…」
「いや!巡回に同道するよう伝えにきただけだ!それより怪我人が随分多いな!!」
元気一杯の煉獄の様子にホッとした紗雪は周りの隊士を見回すと頷いた。
「十二鬼月落ちの鬼だったそうで、増援で向かった隊士まで大勢が怪我をしました」
「鬼は?」
「何とか」
しかしこの様子では死者が出たのだろう。鎮痛な面持ちの紗雪の頭を煉獄はやや乱雑にかき混ぜた。
「鞭打ちになりそうですが!?」
「首回りの鍛錬が足りんな!」
「なるほど!?」
ちょっとした難癖に紗雪は首を傾げながら頷くと言う大変器用な事をして見せた。そんな自分がおかしくて思わず吹き出す。
「巡回任務への同道ですが30分だけ待っていただけますか?」
「うむ!その程度ならば問題ない!!」
「今、胡蝶さんがいないので怪我人の処置を進められるだけ進めてしまいます」
気持ちが切り替わった紗雪は気合の入った笑顔を浮かべると処置室へと戻って行った。邪魔になってはいけないと煉獄が外を回り庭へ出る。
「………」
(来ない)
30分後、時間に遅れたことのない紗雪が来ない事に煉獄は眉を寄せた。もう一度迎えに行くべきかと処置室へ足を向けかけた時、屋敷の裏から聞こえてきた声に煉獄は体の向きを変えた。
「それで…御礼も兼ねて今度食事に行かないか?」
「………!」
木影になる場所で向かい合う紗雪と男性隊士に煉獄は足を止めた。男の無遠慮な手が紗雪の手を掴んでいる。煉獄は自分の血管がビキッと音を立てるのを聞いた。
(この…!)
「…大変申し訳ないのですがお気持ちには答えられません」
煉獄が足を踏み出すより先に紗雪はキッパリ断ると頭を下げた。男の手から自分の手を取り戻すと赤くなってしまったそれをさする。
「師範をお待たせしていますので私はこれで」
会釈をすると背を向ける紗雪に男が掴みかかった。
「そ、そんな…待ってくれ!俺は…!!」
「ちょ…ッ!」
両肩を掴んで抱き寄せようとする男に紗雪が驚いて声を上げる。煉獄は飛び出すと紗雪の顔を自分の胸に押し付け、もう一方の手で男を引き剥がした。突然現れた煉獄に男が及び腰になる。
「え、炎柱様…」
「俺の継子に何か用だろうか!」
煉獄の強い視線に何を感じたのか男は慌てて一礼すると走り去った。その姿が見えなくなるまで動かない煉獄の胸で紗雪がその背中を叩いた。煉獄が腕の力を弱めると顔を上げて大きく息を吸う。
「窒息!!」
「すまん!」
「はぁ…もう驚かさないで下さい師範」
余程息苦しかったのか紗雪はくてっと煉獄の肩に頭を預けた。煉獄がポンポンとその頭を叩く。
「あ、そう言えばさっきの人…」
「うむ!任務があるので失礼してもらったぞ!」
そうですかとアッサリしている紗雪の顔を自分の方に向けさせると煉獄は眉を寄せた。
「先程のようなことは良くあるのか?」
「先程…?いえ、捕まえてこようとした人は初めて…」
「食事に誘われた事まで含めてだ!」
「どこから見てたんですか」
紗雪は呆れた顔をすると煉獄から離れて歩き始めた。煉獄がその後ろを黙ってついていく。
「怪我をして弱気になっている時に手当てされると錯覚を起こす人と言うのは一定割合いるものです」
「…よもや」
まさか自分の知らない所でそんな事になっていようとは。煉獄は顔色を変えたが紗雪はあっけらかんとしたものだった。
「全てお断りさせていただきました。まだまだ修行中の身ですし、そもそも私あまりそう言う事に興味が無いと言いますか…」
そこまで言ってはは…と紗雪は軽く笑った。こんな話をされても煉獄だって困るだけだ。紗雪は謝ろうと煉獄を振り返ったが、それより早く煉獄が口を開いた。
「先程の隊士に掴まれていた手は大丈夫か!赤くなっていたようだが!!」
「…はい、少し痺れただけでもう平気です」
話題の転換としては急だがこれも煉獄の気遣いだろう。紗雪は有り難くその話に乗せてもらう事にした。煉獄が気合いを入れるように紗雪の背中を叩く。
「うむ!では巡回任務に行くとしよう!!」
(これからはもっと同道回数を増やした方が良さそうだ!)
紗雪の身の回りのものに炎の意匠の物を増やすのもいいかもしれない。煉獄はそんなことを考えながら紗雪の横に並んだのだった。
煉獄は自分の巡回任務に紗雪を同道させるために蝶屋敷へ向かっていた。最近なかなかに忙しい紗雪だが柱である煉獄の任務への同道を申し付ければ喜んでついて来る。その時の綻んだような気合が入ったような笑顔を煉獄は気に入っていた。
「紗雪!いるか!!」
勝手知ったるの蝶屋敷へ入ると煉獄は紗雪を呼んだ。ズンズンと診察室の方へ向かう。傷ついた隊士が多い事に煉獄は眉を寄せた。
「師範!どうかされましたか!?」
処置室から顔を出した紗雪は慌てて煉獄に駆け寄ってきた。羽織を脱ぎ肘まで腕まくりした紗雪の手には血がこびり付いている。
「どこか怪我でも…」
「いや!巡回に同道するよう伝えにきただけだ!それより怪我人が随分多いな!!」
元気一杯の煉獄の様子にホッとした紗雪は周りの隊士を見回すと頷いた。
「十二鬼月落ちの鬼だったそうで、増援で向かった隊士まで大勢が怪我をしました」
「鬼は?」
「何とか」
しかしこの様子では死者が出たのだろう。鎮痛な面持ちの紗雪の頭を煉獄はやや乱雑にかき混ぜた。
「鞭打ちになりそうですが!?」
「首回りの鍛錬が足りんな!」
「なるほど!?」
ちょっとした難癖に紗雪は首を傾げながら頷くと言う大変器用な事をして見せた。そんな自分がおかしくて思わず吹き出す。
「巡回任務への同道ですが30分だけ待っていただけますか?」
「うむ!その程度ならば問題ない!!」
「今、胡蝶さんがいないので怪我人の処置を進められるだけ進めてしまいます」
気持ちが切り替わった紗雪は気合の入った笑顔を浮かべると処置室へと戻って行った。邪魔になってはいけないと煉獄が外を回り庭へ出る。
「………」
(来ない)
30分後、時間に遅れたことのない紗雪が来ない事に煉獄は眉を寄せた。もう一度迎えに行くべきかと処置室へ足を向けかけた時、屋敷の裏から聞こえてきた声に煉獄は体の向きを変えた。
「それで…御礼も兼ねて今度食事に行かないか?」
「………!」
木影になる場所で向かい合う紗雪と男性隊士に煉獄は足を止めた。男の無遠慮な手が紗雪の手を掴んでいる。煉獄は自分の血管がビキッと音を立てるのを聞いた。
(この…!)
「…大変申し訳ないのですがお気持ちには答えられません」
煉獄が足を踏み出すより先に紗雪はキッパリ断ると頭を下げた。男の手から自分の手を取り戻すと赤くなってしまったそれをさする。
「師範をお待たせしていますので私はこれで」
会釈をすると背を向ける紗雪に男が掴みかかった。
「そ、そんな…待ってくれ!俺は…!!」
「ちょ…ッ!」
両肩を掴んで抱き寄せようとする男に紗雪が驚いて声を上げる。煉獄は飛び出すと紗雪の顔を自分の胸に押し付け、もう一方の手で男を引き剥がした。突然現れた煉獄に男が及び腰になる。
「え、炎柱様…」
「俺の継子に何か用だろうか!」
煉獄の強い視線に何を感じたのか男は慌てて一礼すると走り去った。その姿が見えなくなるまで動かない煉獄の胸で紗雪がその背中を叩いた。煉獄が腕の力を弱めると顔を上げて大きく息を吸う。
「窒息!!」
「すまん!」
「はぁ…もう驚かさないで下さい師範」
余程息苦しかったのか紗雪はくてっと煉獄の肩に頭を預けた。煉獄がポンポンとその頭を叩く。
「あ、そう言えばさっきの人…」
「うむ!任務があるので失礼してもらったぞ!」
そうですかとアッサリしている紗雪の顔を自分の方に向けさせると煉獄は眉を寄せた。
「先程のようなことは良くあるのか?」
「先程…?いえ、捕まえてこようとした人は初めて…」
「食事に誘われた事まで含めてだ!」
「どこから見てたんですか」
紗雪は呆れた顔をすると煉獄から離れて歩き始めた。煉獄がその後ろを黙ってついていく。
「怪我をして弱気になっている時に手当てされると錯覚を起こす人と言うのは一定割合いるものです」
「…よもや」
まさか自分の知らない所でそんな事になっていようとは。煉獄は顔色を変えたが紗雪はあっけらかんとしたものだった。
「全てお断りさせていただきました。まだまだ修行中の身ですし、そもそも私あまりそう言う事に興味が無いと言いますか…」
そこまで言ってはは…と紗雪は軽く笑った。こんな話をされても煉獄だって困るだけだ。紗雪は謝ろうと煉獄を振り返ったが、それより早く煉獄が口を開いた。
「先程の隊士に掴まれていた手は大丈夫か!赤くなっていたようだが!!」
「…はい、少し痺れただけでもう平気です」
話題の転換としては急だがこれも煉獄の気遣いだろう。紗雪は有り難くその話に乗せてもらう事にした。煉獄が気合いを入れるように紗雪の背中を叩く。
「うむ!では巡回任務に行くとしよう!!」
(これからはもっと同道回数を増やした方が良さそうだ!)
紗雪の身の回りのものに炎の意匠の物を増やすのもいいかもしれない。煉獄はそんなことを考えながら紗雪の横に並んだのだった。