本編
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「あの…」
「無理に話す必要はない!俺は気にしていない!!」
「……」
帰り道を歩きながら紗雪は煉獄に声をかけた。気にしていないと煉獄は言ってくれるが、鍛えてもらっているのに問題を抱えた弟子なんて申し訳ない。
(あぁ、本当に情けない。5年も経ったのにまだ引き摺ってる)
紗雪は足を止めると煉獄に一方的に語り始めた。
「私が14歳の誕生日を迎えた日でした」
「………」
煉獄は立ち止まると紗雪を振り返った。紗雪の瞳は暗く翳っていて、いつものような快活さはなりを顰めている。まるで別人のような紗雪に煉獄は拳を握った。
「紗雪、無理に話す必要は…」
「聞いてください。その上で本当に私を弟子にしたままで良いのか判断して欲しいんです」
考えてもいなかった紗雪の言葉に煉獄は眉を顰めた。しかし紗雪はお構いなく話し続ける。
「両親は仕事に行っていました。私は学校帰りに普段なら寄らないファストフードで友達にご飯を奢ってもらって…帰り道で誘拐されました」
「!!」
煉獄は目を見開いて紗雪を見た。紗雪の視線は暗闇を彷徨っていてどこを見ているのか分からない。
「一年間、誘拐犯と狭い6畳間で生活を共にしました。私がいて良いのは布団の上だけで、食べ物も洋服も全て誘拐犯の買ってきたもので生活しました」
「紗雪…」
「別に!…何かされたわけじゃないですよ?ただ自分の気に入った顔の子が、側で自分の思い通りになっていれば満足している奴でしたから」
煉獄の言葉を遮って紗雪は続けた。ここまで話してしまえば最後まで話し切ってしまいたかった。
「結局1年後に誘拐犯の家族経由で私の事がバレて、私は家族の元に戻れました」
「でも、その後ずっとありとあらゆる人に言われました。自分でついていったんだろう。お前が唆したんだろう!誘拐犯は可哀想に!!」
「私は荒れました。進学が決まっていたけれど高校からはやんわりと辞退してくれと言われました。両親は仕事を言い訳に家に帰ってこなくなって…」
「……でもそんな私を拾ってくれたのが、当時自衛隊に勤めていた叔父でした。とにかく何も考えないぐらいやる事がある方がいいと」
「性に合っていたようで私は少しずつ立ち直れました。とくに戦闘訓練の時は他の事を考える暇がなくていい。そうして没頭していると今度は引き抜きがかかりました」
「内閣府にある秘密の軍隊でした。全く、一切表に出ない特殊部隊。私は二つ返事でそこに行く事にしました。念願叶って毎日訓練と戦闘と寝るだけの生活で…もうあの事は自分でも忘れたと思っていました」
「でも忘れてなかった」
ポロ…と紗雪の目から涙が溢れた。両目から次々涙を流しながらワナワナと震える両手を睨みつける。
「あの男の私を見る目とか、近寄ってきた時の脂臭さとか、下卑た笑いとか…!今でも殺してやりたい!!」
「紗雪!!」
煉獄はたまらず紗雪を抱きしめた。紗雪の話を考えれば悪手であるのは分かっている。それでも煉獄はそうしたくて我慢できなかった。力一杯抱きしめるとそっと頭を撫でる。
「君は本当に強い!俺は君を尊敬する!!」
紗雪は意外にも抵抗しなかった。強張っていた体から力が抜ける。
「ごめんなさい煉獄さん。こんな面倒な弟子はほっぽり出しちゃって良いですよ」
(どうしてこんなに安心できるんだろう…)
言葉とは裏腹に紗雪は煉獄の腕をギュッと掴んだ。今離れてしまったら立ち上がれなくなりそうだ。
(煉獄さんに依存してるのかな)
それは駄目だと思うが体は動いてくれない。
「紗雪、正式に君を継子として育てることにする」
「継子?」
煉獄は紗雪の両肩に手を置くと、静かに紗雪を見つめた。穏やかな顔の煉獄に紗雪が首を傾げる。
「柱は後継になり得ると思う者を継子として鍛錬する事ができる。俺は君に継子になって欲しい。だから俺を頼って良いんだ。俺は君の師範だからな!」
「…良いんですか?それで」
紗雪は信じられない者を見る目で煉獄を見た。正直自分ならこんな面倒な奴ごめんだ。しかし煉獄は力強く頷くと紗雪の手を取り歩き出した。
「さぁ、忙しくなるぞ!継子として育てるならば鍛錬にもっと時間を費やさなければ!!」
「あ、あの…煉獄さ」
「これからは師範と呼ぶように!!」
煉獄があんまり大声でしかも何だかとっても嬉しそうに言うものだから、紗雪も楽しくなって笑ってしまった。
「師範…師範!徒弟制度感が凄い!!」
「間違いなく徒弟制度だ!走るぞ紗雪!!全集中の常中を忘れるな!!」
「はい!師範!!」
紗雪の手を引いたまま走り出す煉獄について紗雪も走り出す。焼き魚のいい匂いがしてきて、煉獄と紗雪は元気よく煉獄家の門を潜った。
「千寿郎さん、手伝います!!」
「俺も手伝おう!」
「お帰りなさいませ兄上、紗雪さん」
食卓を煉獄、千寿郎と囲みながら紗雪は自分の幸運と幸福を噛み締めるのだった。
「無理に話す必要はない!俺は気にしていない!!」
「……」
帰り道を歩きながら紗雪は煉獄に声をかけた。気にしていないと煉獄は言ってくれるが、鍛えてもらっているのに問題を抱えた弟子なんて申し訳ない。
(あぁ、本当に情けない。5年も経ったのにまだ引き摺ってる)
紗雪は足を止めると煉獄に一方的に語り始めた。
「私が14歳の誕生日を迎えた日でした」
「………」
煉獄は立ち止まると紗雪を振り返った。紗雪の瞳は暗く翳っていて、いつものような快活さはなりを顰めている。まるで別人のような紗雪に煉獄は拳を握った。
「紗雪、無理に話す必要は…」
「聞いてください。その上で本当に私を弟子にしたままで良いのか判断して欲しいんです」
考えてもいなかった紗雪の言葉に煉獄は眉を顰めた。しかし紗雪はお構いなく話し続ける。
「両親は仕事に行っていました。私は学校帰りに普段なら寄らないファストフードで友達にご飯を奢ってもらって…帰り道で誘拐されました」
「!!」
煉獄は目を見開いて紗雪を見た。紗雪の視線は暗闇を彷徨っていてどこを見ているのか分からない。
「一年間、誘拐犯と狭い6畳間で生活を共にしました。私がいて良いのは布団の上だけで、食べ物も洋服も全て誘拐犯の買ってきたもので生活しました」
「紗雪…」
「別に!…何かされたわけじゃないですよ?ただ自分の気に入った顔の子が、側で自分の思い通りになっていれば満足している奴でしたから」
煉獄の言葉を遮って紗雪は続けた。ここまで話してしまえば最後まで話し切ってしまいたかった。
「結局1年後に誘拐犯の家族経由で私の事がバレて、私は家族の元に戻れました」
「でも、その後ずっとありとあらゆる人に言われました。自分でついていったんだろう。お前が唆したんだろう!誘拐犯は可哀想に!!」
「私は荒れました。進学が決まっていたけれど高校からはやんわりと辞退してくれと言われました。両親は仕事を言い訳に家に帰ってこなくなって…」
「……でもそんな私を拾ってくれたのが、当時自衛隊に勤めていた叔父でした。とにかく何も考えないぐらいやる事がある方がいいと」
「性に合っていたようで私は少しずつ立ち直れました。とくに戦闘訓練の時は他の事を考える暇がなくていい。そうして没頭していると今度は引き抜きがかかりました」
「内閣府にある秘密の軍隊でした。全く、一切表に出ない特殊部隊。私は二つ返事でそこに行く事にしました。念願叶って毎日訓練と戦闘と寝るだけの生活で…もうあの事は自分でも忘れたと思っていました」
「でも忘れてなかった」
ポロ…と紗雪の目から涙が溢れた。両目から次々涙を流しながらワナワナと震える両手を睨みつける。
「あの男の私を見る目とか、近寄ってきた時の脂臭さとか、下卑た笑いとか…!今でも殺してやりたい!!」
「紗雪!!」
煉獄はたまらず紗雪を抱きしめた。紗雪の話を考えれば悪手であるのは分かっている。それでも煉獄はそうしたくて我慢できなかった。力一杯抱きしめるとそっと頭を撫でる。
「君は本当に強い!俺は君を尊敬する!!」
紗雪は意外にも抵抗しなかった。強張っていた体から力が抜ける。
「ごめんなさい煉獄さん。こんな面倒な弟子はほっぽり出しちゃって良いですよ」
(どうしてこんなに安心できるんだろう…)
言葉とは裏腹に紗雪は煉獄の腕をギュッと掴んだ。今離れてしまったら立ち上がれなくなりそうだ。
(煉獄さんに依存してるのかな)
それは駄目だと思うが体は動いてくれない。
「紗雪、正式に君を継子として育てることにする」
「継子?」
煉獄は紗雪の両肩に手を置くと、静かに紗雪を見つめた。穏やかな顔の煉獄に紗雪が首を傾げる。
「柱は後継になり得ると思う者を継子として鍛錬する事ができる。俺は君に継子になって欲しい。だから俺を頼って良いんだ。俺は君の師範だからな!」
「…良いんですか?それで」
紗雪は信じられない者を見る目で煉獄を見た。正直自分ならこんな面倒な奴ごめんだ。しかし煉獄は力強く頷くと紗雪の手を取り歩き出した。
「さぁ、忙しくなるぞ!継子として育てるならば鍛錬にもっと時間を費やさなければ!!」
「あ、あの…煉獄さ」
「これからは師範と呼ぶように!!」
煉獄があんまり大声でしかも何だかとっても嬉しそうに言うものだから、紗雪も楽しくなって笑ってしまった。
「師範…師範!徒弟制度感が凄い!!」
「間違いなく徒弟制度だ!走るぞ紗雪!!全集中の常中を忘れるな!!」
「はい!師範!!」
紗雪の手を引いたまま走り出す煉獄について紗雪も走り出す。焼き魚のいい匂いがしてきて、煉獄と紗雪は元気よく煉獄家の門を潜った。
「千寿郎さん、手伝います!!」
「俺も手伝おう!」
「お帰りなさいませ兄上、紗雪さん」
食卓を煉獄、千寿郎と囲みながら紗雪は自分の幸運と幸福を噛み締めるのだった。