本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おはようございます、千寿郎さん」
「おはようございます紗雪さん。まだ休んでいて宜しかったんですよ?」
「いえ!時間で目が覚めてしまうので」
大正時代に来て一ヶ月が経っていた。
煉獄家に世話になる事となった紗雪は乳白色の着物に黒の袴を履いていた。慣れた手つきで千寿郎の朝食の支度を手伝い出す。初めこそ自分がやるからと言っていた千寿郎だが、紗雪は軍隊生活のお陰で大変手際がよく支度が早く済む為今は共に支度をしている。
「煉獄さんは今朝帰ってこられたんですね。どの位まで寝てるでしょう?」
「そうですね…9時ごろには起きてくると思います」
「よく体持ちますね」
夕方出かけて夜中鬼を追って駆け回り、夜明けと共に帰ってきて仮眠ののち紗雪に稽古をつける。考えただけで目が回りそうだ。
「でも紗雪さんが来てから兄上はとても楽しそうです。僕も…紗雪さんのお話を聞くの楽しいですし」
控えめながら好意的に紗雪を受け入れてくれた千寿郎に紗雪は心底感謝していた。彼のお陰で煉獄家での住み込みが苦にならない。
(気遣いのできる12歳…100年前だと当たり前なんだろうか)
つい自分の時代と比べて不憫に思ってしまう。しかし武家の次男として強くあろうと頑張っている千寿郎にそんな事は言えなかった。
「よし!支度はこんな所でしょうか?」
「はい、ありがとうございます」
後は食べる直前に焼くだけ、温めるだけの状態で手を止めると紗雪はたすきを外し外に出た。
「走ってきます!」
「えっ?紗雪さん朝餉は!」
「後で食べます!!」
言うが早いか紗雪は煉獄家を軽やかに飛び出した。30キロほど走れば煉獄の起きる時間になるだろう。
「空気が爽やかすぎる」
東京とは思えない澄んだ空気を胸一杯に吸い込むと紗雪は少し走るペースを上げてみた。煉獄に習った全集中に気を付けながら走る。
(肺活量を増やす為に肺を広げる感覚で…酸素が血液中に行き渡るように…その酸素を筋肉に取り入れる)
「とっとっと!」
くらりと目が回り紗雪は足を止めた。一気に心拍数と息が上がる。
(まだいっぺんには無理か)
しかし煉獄はこれを途切れる事なく24時間やりっぱなしで生活した上で、任務をしていると言うのだから恐れ入る。
(…頑張ろ)
一気に高みを目指すとへこむだけだと紗雪は自分に言い聞かせた。なにせ煉獄は鬼殺隊最高位の柱なのだ。紗雪はゆっくり呼吸を整えると再び走り出した。少しずつ呼吸を深く、長く続けることを意識する。
「………」
後ろをついてくる気配に紗雪は警戒レベルを上げた。足音は無いが何者かがついてきている。
(鬼は…明るい所は駄目だったよね。んじゃ変質者?こんな朝から?)
ただの一般人ならば振り切れると紗雪は走る速度を上げた。後ろの不審者がしっかりついてくるのにざわりと嫌な記憶が蘇る。
(大丈夫、対処出来る。もう14の子供じゃ無い)
紗雪は自分にそう言い聞かせると更に走る速度を上げた。角を曲がると立ち止まり掌を構える。
(鼻をへし折る!)
駆け込んできた人影に紗雪は思い切り掌底を突き出した。腕を掴まれ塀に叩きつけられる。
「っ!」
「まぁまぁだな。派手に良い勘はしている」
見下ろしてくるのが宇髄なのを理解して紗雪はへな…とその場に座り込んだ。気の抜けた途端に吐き気が迫り上がってくる。
「うぇ…っ……」
紗雪は申し訳ないと思いながらお堀に吐いた。えずく紗雪を宇髄が驚いた顔で見る。
「おいおいそんな派手な無茶してたのかよ?」
背中を摩ってやろうとするが、紗雪は首を振ってそれを断った。
「紗雪!」
響いた煉獄の声に紗雪は泣きそうになった。何もこんなタイミングで来る事はないだろうにと思う。隊服姿の煉獄は紗雪のそばに膝を着くと宇髄を睨んだ。
「宇髄!何をした!!」
「派手に何もしてねぇわ!走ってんの見かけたからちょっとからかっただけだ」
それでも決まりは悪いのか宇髄は紗雪の横にしゃがむと水筒を差し出した。
「派手に悪かったよ、ほれ」
「…いえ、これは自分の精神的な問題ですから」
紗雪はありがたく水筒を受け取ると口をゆすいだ。冷や汗が流れ落ちる。
「とにかく帰ろう!千寿郎も共に朝餉を食べようと待っている!!」
「はい…これ、ありがとうございました」
水筒の口を軽く拭うと紗雪は宇髄にそれを返却した。煉獄の後ろをトボトボと歩く。
「おい!マジで悪かったって!派手に謝ったからな!!」
煉獄の刺すような視線に宇髄はもう一度大声で謝るとその場を後にした。留まり続けると本当に刺されそうだ。
(随分大事にしてんじゃん煉獄の奴)
性懲りも無くそんなことを考えつつ家路を辿る宇髄だった。
「おはようございます紗雪さん。まだ休んでいて宜しかったんですよ?」
「いえ!時間で目が覚めてしまうので」
大正時代に来て一ヶ月が経っていた。
煉獄家に世話になる事となった紗雪は乳白色の着物に黒の袴を履いていた。慣れた手つきで千寿郎の朝食の支度を手伝い出す。初めこそ自分がやるからと言っていた千寿郎だが、紗雪は軍隊生活のお陰で大変手際がよく支度が早く済む為今は共に支度をしている。
「煉獄さんは今朝帰ってこられたんですね。どの位まで寝てるでしょう?」
「そうですね…9時ごろには起きてくると思います」
「よく体持ちますね」
夕方出かけて夜中鬼を追って駆け回り、夜明けと共に帰ってきて仮眠ののち紗雪に稽古をつける。考えただけで目が回りそうだ。
「でも紗雪さんが来てから兄上はとても楽しそうです。僕も…紗雪さんのお話を聞くの楽しいですし」
控えめながら好意的に紗雪を受け入れてくれた千寿郎に紗雪は心底感謝していた。彼のお陰で煉獄家での住み込みが苦にならない。
(気遣いのできる12歳…100年前だと当たり前なんだろうか)
つい自分の時代と比べて不憫に思ってしまう。しかし武家の次男として強くあろうと頑張っている千寿郎にそんな事は言えなかった。
「よし!支度はこんな所でしょうか?」
「はい、ありがとうございます」
後は食べる直前に焼くだけ、温めるだけの状態で手を止めると紗雪はたすきを外し外に出た。
「走ってきます!」
「えっ?紗雪さん朝餉は!」
「後で食べます!!」
言うが早いか紗雪は煉獄家を軽やかに飛び出した。30キロほど走れば煉獄の起きる時間になるだろう。
「空気が爽やかすぎる」
東京とは思えない澄んだ空気を胸一杯に吸い込むと紗雪は少し走るペースを上げてみた。煉獄に習った全集中に気を付けながら走る。
(肺活量を増やす為に肺を広げる感覚で…酸素が血液中に行き渡るように…その酸素を筋肉に取り入れる)
「とっとっと!」
くらりと目が回り紗雪は足を止めた。一気に心拍数と息が上がる。
(まだいっぺんには無理か)
しかし煉獄はこれを途切れる事なく24時間やりっぱなしで生活した上で、任務をしていると言うのだから恐れ入る。
(…頑張ろ)
一気に高みを目指すとへこむだけだと紗雪は自分に言い聞かせた。なにせ煉獄は鬼殺隊最高位の柱なのだ。紗雪はゆっくり呼吸を整えると再び走り出した。少しずつ呼吸を深く、長く続けることを意識する。
「………」
後ろをついてくる気配に紗雪は警戒レベルを上げた。足音は無いが何者かがついてきている。
(鬼は…明るい所は駄目だったよね。んじゃ変質者?こんな朝から?)
ただの一般人ならば振り切れると紗雪は走る速度を上げた。後ろの不審者がしっかりついてくるのにざわりと嫌な記憶が蘇る。
(大丈夫、対処出来る。もう14の子供じゃ無い)
紗雪は自分にそう言い聞かせると更に走る速度を上げた。角を曲がると立ち止まり掌を構える。
(鼻をへし折る!)
駆け込んできた人影に紗雪は思い切り掌底を突き出した。腕を掴まれ塀に叩きつけられる。
「っ!」
「まぁまぁだな。派手に良い勘はしている」
見下ろしてくるのが宇髄なのを理解して紗雪はへな…とその場に座り込んだ。気の抜けた途端に吐き気が迫り上がってくる。
「うぇ…っ……」
紗雪は申し訳ないと思いながらお堀に吐いた。えずく紗雪を宇髄が驚いた顔で見る。
「おいおいそんな派手な無茶してたのかよ?」
背中を摩ってやろうとするが、紗雪は首を振ってそれを断った。
「紗雪!」
響いた煉獄の声に紗雪は泣きそうになった。何もこんなタイミングで来る事はないだろうにと思う。隊服姿の煉獄は紗雪のそばに膝を着くと宇髄を睨んだ。
「宇髄!何をした!!」
「派手に何もしてねぇわ!走ってんの見かけたからちょっとからかっただけだ」
それでも決まりは悪いのか宇髄は紗雪の横にしゃがむと水筒を差し出した。
「派手に悪かったよ、ほれ」
「…いえ、これは自分の精神的な問題ですから」
紗雪はありがたく水筒を受け取ると口をゆすいだ。冷や汗が流れ落ちる。
「とにかく帰ろう!千寿郎も共に朝餉を食べようと待っている!!」
「はい…これ、ありがとうございました」
水筒の口を軽く拭うと紗雪は宇髄にそれを返却した。煉獄の後ろをトボトボと歩く。
「おい!マジで悪かったって!派手に謝ったからな!!」
煉獄の刺すような視線に宇髄はもう一度大声で謝るとその場を後にした。留まり続けると本当に刺されそうだ。
(随分大事にしてんじゃん煉獄の奴)
性懲りも無くそんなことを考えつつ家路を辿る宇髄だった。