その後のお話
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「それではお先に失礼します」
「お休みなさい!」
夜も更けて酔い潰れた者がぼちぼち出始めた頃、紗雪と炭治郎が煉獄達の席に退出の挨拶に来た。今日はこのまま女ばかり、男ばかりで大部屋に布団を敷いて寝るのだと言う。
「お館様もか?」
冨岡が尋ねれば炭治郎がとても良い笑顔を返した。
「はい!輝利哉君はこんなに大勢と一緒に寝たことないって楽しみにしてました!千寿郎君もです!!」
「くいな様とかなた様はこちらでお預かりしますのでご心配なく」
紗雪は煉獄達に隣の部屋を指差した。
「あちらの部屋に布団を敷いてありますから、お休みの際にはどうぞ」
「すまねぇな紗雪」
結局細々とした支度は紗雪や蝶屋敷の面々がしたのだ。結構な手間だったろう。しかし紗雪は不死川の労いに笑うだけだった。
「お休み竈門少年、紗雪」
「はい!お休みなさい!」
「お休みなさい」
ペコリと頭を下げるとカナヲや禰󠄀豆子達と大部屋へ向かう。皆んなでワイワイお風呂に入り終わると、布団の上で漸く一息ついた。
「無事に終わったわね」
「明日は二日酔いが山程いそう」
「薬草茶を沢山煮出しておきましょう」
「うーんと渋くね」
あははは!と笑いあう。小さな欠伸をした紗雪の隣に禰󠄀豆子が寄ってきた。
「ねぇ紗雪さん、これからは名前で呼んでも良い?」
「構いませんよ。そんなの断らなくてもそうして下さい」
わざわざ聞いてくるのが可愛らしくて紗雪は微笑んだ。私も!ときよ、すみ、なほが手を挙げる。カナヲがやってきて紗雪の腕に抱きついた。アオイがそわそわと紗雪を見る。
「妹が沢山出来て嬉しいです。是非仲間入りしませんか?アオイ」
「っ!す、する!」
ピョンと飛び込んで来たアオイの頭を撫でる。それを見ていた須磨が大人しく座っていたくいなとかなたに抱きついた。
「良いな良いな!私もこんな可愛い妹が欲しい!」
「「きゃっ」」
「こら!須磨!!」
驚いて声を上げる二人にまきをが須磨をポカリとやる。雛鶴がくいなとかなたに頭を下げた。
「申し訳ございません。不調法者でして」
「いいえ」
「お気になさらないで下さい」
そのやり取りがずいぶん硬く聞こえて紗雪はくいなとかなたに声をかけた。
「くいな様、かなた様……あー、もう鬼殺隊は解散したので良いですかね。くいなちゃん、かなたちゃん」
「「!」」
生まれて初めてちゃん付けされて二人は目を丸くした。
「これから輝利哉君と共に産屋敷を盛り立てていかなければいけないお二人の立場は分かります。きっと私では想像のつかない苦労であることも察することは出来ます」
でも…と紗雪は両手を広げた。
「もう少し子供らしく甘えてくれると私は嬉しいです。私ばかりでなく鬼殺隊に関わった者は全て輝利哉君とくいなちゃん、かなたちゃんを支えたいと思っているので」
「「………」」
くいなとかなたはパッと腰を上げると紗雪に飛びついた。器用に二人を受け止めた紗雪がくしゃっとその頭を撫でる。二人の目には涙が浮かんでいた。禰󠄀豆子が堪らずその上から抱きつくとカナヲ達が続く。くちゃっと団子になった紗雪達を見て雛鶴、まきを、須磨がほのぼのと微笑んだ。
ふと須磨の笑みが悪戯っぽく変わる。
「じゃあ私たちも椎名って呼ばなきゃですね!だってもうすぐ煉獄椎名になっちゃうし!」
「「「「「………えぇっ!!?」」」」」
全員の視線が集中し紗雪が首まで赤くなった。慌てて須磨を見る。
「須磨さん!なんで…」
「だってぇ~!真横であんなこと言われてたら嫌でも耳に入るし!」
確かに記念撮影の時、須磨は紗雪の真横にいた。カメラに向かってキャーキャー言ってたので聞こえていないものとばかり思っていた紗雪は両手で顔を覆った。あの後ずっと思い出さないようしていた煉獄の台詞まで思い出してしまう。
『紗雪、俺は君の事を愛している』
「………っ!」
紗雪は自分の両頬を思い切り引っ叩いた。そうしないと変な声が出てしまいそうだ。その紗雪の奇行に却って禰豆子が食い付いた。
「本当に!?煉獄さんってあの煉獄さん!?」
「他にも師範がいたら嫌ですよ!?」
「お父さんの方とか!」
「それは最高に嫌ですね!?」
「やっとですか。長かったですね」
「んん!?」
最後のアオイの言葉に紗雪が面食らう。雛鶴達を見ればこっくりと頷かれ紗雪は沈没した。
「やっとって…そんな風に見えてたんですか」
「むしろ早くくっ付けばいいのにと」
「うわぁ…」
頭を抱えた紗雪の腕をカナヲがつついた。
「なんて返事したの?」
「…容赦ないですねカナヲちゃん」
「私も聞きたい!」
「興味津々ですね!?」
禰豆子に体を揺さぶられて紗雪はあー、あー、うーとうめき声をあげた。あらと雛鶴が首を傾げる。
「もしかしてお返事してない…?」
「えー!?何でですか!?受けない理由が無いでしょう!?」
「こら!」
まきをが須磨を上から押さえつけて黙らせる。紗雪はまだあうあう言っていた。禰󠄀豆子が不思議そうに尋ねる。
「椎名も煉獄さんのこと好きなんでしょ?お兄ちゃんがそう言ってましたよ?」
「炭治郎君のお喋り!!」
紗雪はくいなとかなたの肩を抱くと泣きついた。二人がクスクス笑うのに唇を尖らせる。きよ、すみ、なほがズイと前に進み出た。
「煉獄さんはお優しいですよ!」
「私達にもよく話しかけて下さいます!」
「とっても頼りになりますよ!」
「そうですね。それは私も重々承知しています」
ずっとそれが自分の支えになってきたのだから間違いない。ではどうして?とカナヲや禰豆子、アオイに視線で尋ねられて紗雪は言葉に詰まった。
「気持ちの切り替えが間に合ってないだけよ」
「まきをさん…」
しどけない姿で布団に座るまきをは柔らかい笑みを浮かべていた。
「ずっと戦い戦いで来て今やっと全てが終わったところで、次を考える頭になってないのよ」
「それは…わかります。まだ蝶屋敷も入院患者がいますから」
アオイが神妙な顔で頷いた。退院したとしても不死川や冨岡のように経過を観察していかなければならない者もいる。紗雪自身もその一人だ。
「生活が落ち着けば自分から答えたくなるって」
「そうそう、好きなら気持ちを抑えておけるものじゃないわ」
「そうよ!私達が天元様を大好きなみたいにね!」
宇髄の妻たちに揃って言われて紗雪は少しホッとした。即答できなかった自分にちょっと後ろめたさを感じていたのだ。
「派手に盛り上がってるところ悪ぃがちょっと良いか?」
廊下から宇髄の声がして雛鶴が立ちあがった。襖を僅かに開けると宇髄と言葉を交わす。振り返ると雛鶴が苦笑した。
「酔い潰れた人数が多すぎるから布団の追加が欲しいんですって」
「お手伝いします」
紗雪がひょっこり廊下に顔を出すのにまきをが肩を叩く。
「椎名はもう休んでいいから。朝から動き過ぎ」
「そうそう先に休んでて!」
つん!と鼻先を須磨に突かれて紗雪は困った顔で笑った。宇髄にぐしゃっと頭をかき回される。
「そんな気の抜けまくった顔で行ったら煉獄に連れ去られるぞ。もう寝ろ」
「………」
どうやったらそんな状況になるのか想像もつかない紗雪は大人しく頷くのだった。
「本当に手伝わなくて宜しいのですか?」
翌日、父と共に一足先に帰宅することになった千寿郎が尋ねた。見送りに出てきた紗雪が手を振る。
「もう大きな物は手伝っていただきましたから大丈夫ですよ」
「後は二日酔いばかりだから大丈夫です!」
紗雪についてきた禰豆子が腕まくりして答えるのにカナヲが大きく頷く。千寿郎が声を上げて笑った。煉獄が宇髄と共に輝利哉、くいな、かなたを連れて現れる。
「では俺はお館様達を宇髄と共にお送りしてくる!」
「お気をつけて」
紗雪は昨日よりずっと落ち着いた気持ちで煉獄に対する事が出来た。その事に安堵していると禰豆子が横から紗雪にギュッと抱きついた。
「ん?」
「どうした!竃門少女!」
禰豆子は煉獄に挑戦的な顔で笑って見せた。
「椎名は昨日私達のお姉さんになったので、泣かせたら承知しませんよ!」
「そうよ」
カナヲも頷くと反対側から紗雪に抱きつく。目を丸くする紗雪を見て煉獄が声を上げて笑った。
「それは大変だな!肝に銘じておこう!!」
(私抜きで話が進んでる!?)
何か言うべきかと言葉を探す紗雪の頬を煉獄がそっと撫ぜた。耳たぶから頬を辿り顎の先までを煉獄の指が滑る。
「家に戻ったら…今夜少し話をしよう」
「………は、い」
視界の先で愼寿郎が千寿郎の目を隠している。向こうでは宇髄が雛鶴達と四人がかりで輝利哉達を隠していた。
両側から抱きつかれている紗雪は顔を隠すことも出来ずに赤い顔を俯かせた。余波を食らった禰豆子とカナヲまで真っ赤になっている。
「では行ってくる!」
煉獄は満足した顔をすると宇髄に頭を小突かれながら行ってしまった。愼寿郎も千寿郎を伴いそそくさと帰っていく。
「ごめん椎名。まさかああ来るなんて…」
「椎名、大丈夫?」
しがみついたまま動けない禰豆子とカナヲの手をギュッと握ると紗雪はため息をつくのだった。
(生活が落ち着くまで待ってくれなさそう)
今夜も蝶屋敷に泊まりたいと切実に思う紗雪だった。
「お休みなさい!」
夜も更けて酔い潰れた者がぼちぼち出始めた頃、紗雪と炭治郎が煉獄達の席に退出の挨拶に来た。今日はこのまま女ばかり、男ばかりで大部屋に布団を敷いて寝るのだと言う。
「お館様もか?」
冨岡が尋ねれば炭治郎がとても良い笑顔を返した。
「はい!輝利哉君はこんなに大勢と一緒に寝たことないって楽しみにしてました!千寿郎君もです!!」
「くいな様とかなた様はこちらでお預かりしますのでご心配なく」
紗雪は煉獄達に隣の部屋を指差した。
「あちらの部屋に布団を敷いてありますから、お休みの際にはどうぞ」
「すまねぇな紗雪」
結局細々とした支度は紗雪や蝶屋敷の面々がしたのだ。結構な手間だったろう。しかし紗雪は不死川の労いに笑うだけだった。
「お休み竈門少年、紗雪」
「はい!お休みなさい!」
「お休みなさい」
ペコリと頭を下げるとカナヲや禰󠄀豆子達と大部屋へ向かう。皆んなでワイワイお風呂に入り終わると、布団の上で漸く一息ついた。
「無事に終わったわね」
「明日は二日酔いが山程いそう」
「薬草茶を沢山煮出しておきましょう」
「うーんと渋くね」
あははは!と笑いあう。小さな欠伸をした紗雪の隣に禰󠄀豆子が寄ってきた。
「ねぇ紗雪さん、これからは名前で呼んでも良い?」
「構いませんよ。そんなの断らなくてもそうして下さい」
わざわざ聞いてくるのが可愛らしくて紗雪は微笑んだ。私も!ときよ、すみ、なほが手を挙げる。カナヲがやってきて紗雪の腕に抱きついた。アオイがそわそわと紗雪を見る。
「妹が沢山出来て嬉しいです。是非仲間入りしませんか?アオイ」
「っ!す、する!」
ピョンと飛び込んで来たアオイの頭を撫でる。それを見ていた須磨が大人しく座っていたくいなとかなたに抱きついた。
「良いな良いな!私もこんな可愛い妹が欲しい!」
「「きゃっ」」
「こら!須磨!!」
驚いて声を上げる二人にまきをが須磨をポカリとやる。雛鶴がくいなとかなたに頭を下げた。
「申し訳ございません。不調法者でして」
「いいえ」
「お気になさらないで下さい」
そのやり取りがずいぶん硬く聞こえて紗雪はくいなとかなたに声をかけた。
「くいな様、かなた様……あー、もう鬼殺隊は解散したので良いですかね。くいなちゃん、かなたちゃん」
「「!」」
生まれて初めてちゃん付けされて二人は目を丸くした。
「これから輝利哉君と共に産屋敷を盛り立てていかなければいけないお二人の立場は分かります。きっと私では想像のつかない苦労であることも察することは出来ます」
でも…と紗雪は両手を広げた。
「もう少し子供らしく甘えてくれると私は嬉しいです。私ばかりでなく鬼殺隊に関わった者は全て輝利哉君とくいなちゃん、かなたちゃんを支えたいと思っているので」
「「………」」
くいなとかなたはパッと腰を上げると紗雪に飛びついた。器用に二人を受け止めた紗雪がくしゃっとその頭を撫でる。二人の目には涙が浮かんでいた。禰󠄀豆子が堪らずその上から抱きつくとカナヲ達が続く。くちゃっと団子になった紗雪達を見て雛鶴、まきを、須磨がほのぼのと微笑んだ。
ふと須磨の笑みが悪戯っぽく変わる。
「じゃあ私たちも椎名って呼ばなきゃですね!だってもうすぐ煉獄椎名になっちゃうし!」
「「「「「………えぇっ!!?」」」」」
全員の視線が集中し紗雪が首まで赤くなった。慌てて須磨を見る。
「須磨さん!なんで…」
「だってぇ~!真横であんなこと言われてたら嫌でも耳に入るし!」
確かに記念撮影の時、須磨は紗雪の真横にいた。カメラに向かってキャーキャー言ってたので聞こえていないものとばかり思っていた紗雪は両手で顔を覆った。あの後ずっと思い出さないようしていた煉獄の台詞まで思い出してしまう。
『紗雪、俺は君の事を愛している』
「………っ!」
紗雪は自分の両頬を思い切り引っ叩いた。そうしないと変な声が出てしまいそうだ。その紗雪の奇行に却って禰豆子が食い付いた。
「本当に!?煉獄さんってあの煉獄さん!?」
「他にも師範がいたら嫌ですよ!?」
「お父さんの方とか!」
「それは最高に嫌ですね!?」
「やっとですか。長かったですね」
「んん!?」
最後のアオイの言葉に紗雪が面食らう。雛鶴達を見ればこっくりと頷かれ紗雪は沈没した。
「やっとって…そんな風に見えてたんですか」
「むしろ早くくっ付けばいいのにと」
「うわぁ…」
頭を抱えた紗雪の腕をカナヲがつついた。
「なんて返事したの?」
「…容赦ないですねカナヲちゃん」
「私も聞きたい!」
「興味津々ですね!?」
禰豆子に体を揺さぶられて紗雪はあー、あー、うーとうめき声をあげた。あらと雛鶴が首を傾げる。
「もしかしてお返事してない…?」
「えー!?何でですか!?受けない理由が無いでしょう!?」
「こら!」
まきをが須磨を上から押さえつけて黙らせる。紗雪はまだあうあう言っていた。禰󠄀豆子が不思議そうに尋ねる。
「椎名も煉獄さんのこと好きなんでしょ?お兄ちゃんがそう言ってましたよ?」
「炭治郎君のお喋り!!」
紗雪はくいなとかなたの肩を抱くと泣きついた。二人がクスクス笑うのに唇を尖らせる。きよ、すみ、なほがズイと前に進み出た。
「煉獄さんはお優しいですよ!」
「私達にもよく話しかけて下さいます!」
「とっても頼りになりますよ!」
「そうですね。それは私も重々承知しています」
ずっとそれが自分の支えになってきたのだから間違いない。ではどうして?とカナヲや禰豆子、アオイに視線で尋ねられて紗雪は言葉に詰まった。
「気持ちの切り替えが間に合ってないだけよ」
「まきをさん…」
しどけない姿で布団に座るまきをは柔らかい笑みを浮かべていた。
「ずっと戦い戦いで来て今やっと全てが終わったところで、次を考える頭になってないのよ」
「それは…わかります。まだ蝶屋敷も入院患者がいますから」
アオイが神妙な顔で頷いた。退院したとしても不死川や冨岡のように経過を観察していかなければならない者もいる。紗雪自身もその一人だ。
「生活が落ち着けば自分から答えたくなるって」
「そうそう、好きなら気持ちを抑えておけるものじゃないわ」
「そうよ!私達が天元様を大好きなみたいにね!」
宇髄の妻たちに揃って言われて紗雪は少しホッとした。即答できなかった自分にちょっと後ろめたさを感じていたのだ。
「派手に盛り上がってるところ悪ぃがちょっと良いか?」
廊下から宇髄の声がして雛鶴が立ちあがった。襖を僅かに開けると宇髄と言葉を交わす。振り返ると雛鶴が苦笑した。
「酔い潰れた人数が多すぎるから布団の追加が欲しいんですって」
「お手伝いします」
紗雪がひょっこり廊下に顔を出すのにまきをが肩を叩く。
「椎名はもう休んでいいから。朝から動き過ぎ」
「そうそう先に休んでて!」
つん!と鼻先を須磨に突かれて紗雪は困った顔で笑った。宇髄にぐしゃっと頭をかき回される。
「そんな気の抜けまくった顔で行ったら煉獄に連れ去られるぞ。もう寝ろ」
「………」
どうやったらそんな状況になるのか想像もつかない紗雪は大人しく頷くのだった。
「本当に手伝わなくて宜しいのですか?」
翌日、父と共に一足先に帰宅することになった千寿郎が尋ねた。見送りに出てきた紗雪が手を振る。
「もう大きな物は手伝っていただきましたから大丈夫ですよ」
「後は二日酔いばかりだから大丈夫です!」
紗雪についてきた禰豆子が腕まくりして答えるのにカナヲが大きく頷く。千寿郎が声を上げて笑った。煉獄が宇髄と共に輝利哉、くいな、かなたを連れて現れる。
「では俺はお館様達を宇髄と共にお送りしてくる!」
「お気をつけて」
紗雪は昨日よりずっと落ち着いた気持ちで煉獄に対する事が出来た。その事に安堵していると禰豆子が横から紗雪にギュッと抱きついた。
「ん?」
「どうした!竃門少女!」
禰豆子は煉獄に挑戦的な顔で笑って見せた。
「椎名は昨日私達のお姉さんになったので、泣かせたら承知しませんよ!」
「そうよ」
カナヲも頷くと反対側から紗雪に抱きつく。目を丸くする紗雪を見て煉獄が声を上げて笑った。
「それは大変だな!肝に銘じておこう!!」
(私抜きで話が進んでる!?)
何か言うべきかと言葉を探す紗雪の頬を煉獄がそっと撫ぜた。耳たぶから頬を辿り顎の先までを煉獄の指が滑る。
「家に戻ったら…今夜少し話をしよう」
「………は、い」
視界の先で愼寿郎が千寿郎の目を隠している。向こうでは宇髄が雛鶴達と四人がかりで輝利哉達を隠していた。
両側から抱きつかれている紗雪は顔を隠すことも出来ずに赤い顔を俯かせた。余波を食らった禰豆子とカナヲまで真っ赤になっている。
「では行ってくる!」
煉獄は満足した顔をすると宇髄に頭を小突かれながら行ってしまった。愼寿郎も千寿郎を伴いそそくさと帰っていく。
「ごめん椎名。まさかああ来るなんて…」
「椎名、大丈夫?」
しがみついたまま動けない禰豆子とカナヲの手をギュッと握ると紗雪はため息をつくのだった。
(生活が落ち着くまで待ってくれなさそう)
今夜も蝶屋敷に泊まりたいと切実に思う紗雪だった。