その後のお話
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あははは!と方々で笑い声が起こる。産屋敷輝利哉はその光景を上座から見渡した。隊士も隠もそれ以外の者も関係なく食べて飲み、笑いあう。
「酒でも水でもご自由にってのは気楽でいいなぁ」
輝利哉の周りには煉獄や宇髄、鱗滝、愼寿郎と不死川、冨岡が座っていた。不死川が酒を片手に場の中央に並べられたテーブルを眺める。そこには様々な食べ物と飲み物が所狭しと並べられていた。
「宴会になるとどうしても給仕に走り回る者が出てしまうからね。皆んなで座を囲みたいけれどどうしようかと思っていたんだよ」
天麩羅を口に運ぶと輝利哉は美味しそうに頷いた。座っているテーブルにも既に料理が並べられているので始めから立ち上がらなくていい。
「そうしたら椎名がこの方法を教えてくれたんだ。確か…ばいきんぐ方式だったかな?」
紗雪の時代には珍しくない方法らしい。礼儀作法に五月蝿いものには不評だろうが、今回は輝利哉の希望を飲んでもらった形だ。
「んで?この派手な方式を提案した本人はどこ行った?」
「向こうの座卓にいるぞ!蝶屋敷の者たちと一緒だ!」
宇髄の問いに煉獄が離れたテーブルを指し示した。カナヲやアオイ、禰󠄀豆子や宇髄の嫁達と賑やかにしているのが見える。その横のテーブルでは炭治郎、善逸、伊之助が村田や千寿郎などと楽しそうにしていた。
「皆んな体の方はもう良いのかい?」
「はい。数日の後には蝶屋敷を離れる予定です」
鮭大根を頬張っていた冨岡が答えると不死川が手拭いを投げつけた。
「テメェはまず口の周り拭けぇ」
「む…」
鱗滝が愼寿郎の盃に酒を注いだ。
「その節は炭治郎が大変失礼致しました。私からもお詫び申し上げます」
「こちらこそ。炭治郎君には申し訳ないことをしました」
「派手に固ぇよ!煉獄のおやっさん!鱗滝さんもそう言うのはなしなし!!お館様が無礼講って仰ってるんだからよ!」
宇髄は愼寿郎の肩をバシバシ叩くと豪快に笑った。相当痛かったらしい愼寿郎が横目に睨む。
「無礼講と無作法は違うぞ宇髄殿」
「そりゃ失礼!」
愼寿郎のため息を炭治郎のよく通る声が打ち消した。
「輝利哉君もこっちにおいでよ!」
「いや、だけど…」
自分が行って場が静まったりしないだろうか?輝利哉が躊躇すると口を綺麗に拭いた冨岡が言った。
「お館様がおっしゃられた通り無礼講なのですから気にする者はおりませぬ」
「そもそもあのガキにお館様への遠慮なんぞありはしません」
輝利哉は冨岡と不死川の顔を見ると小さく笑って炭治郎達のところへ向かった。賑やかに迎え入れられ輪の中に入って行く。
「酒飲みの席にいてもお館様も派手に退屈だろうからな」
「歳の近い千寿郎もいる。心配ないだろう」
宇髄の盃に酒を注ぎながら愼寿郎がそう言えば煉獄も大きく頷いた。
酒が進みそれぞれの場が大きく盛り上がる。中央のテーブルから酒をとって戻ってきた煉獄の横に紗雪が現れた。
「空いている徳利を下げますね」
さっと空の徳利を確認するとお盆に乗せていく。その手を煉獄が掴んだ。
「今日は給仕の必要が無いようにしていたのではないのか?」
「勿論そうですよ。でもやはり全部は無くならないですよ」
食器は有限だ。食べ物はともかく空になった徳利を洗って新たな酒を用意しなければ中央のテーブルにある分では絶対に足りない。
「お館様が知ったら気にされるので内緒にして下さいね」
紗雪のいるテーブルと炭治郎達のテーブルには酒を飲んでいる者がいない。お茶だけだと減りが遅いので無くなると言うことがない。
「お前なぁ」
お館様に秘密ごとをしろと言う紗雪に不死川が呆れた顔をした。この辺の感覚の違いが100年と言う時の差を感じさせる。紗雪は小さく笑うとお盆を手に立ち去った。
黙って盃を傾けていた宇髄がニヤリと笑った。
「煉獄、お前派手に紗雪になんかやらかしたろ」
「ぶほっ!」
その言葉に酒を噴き出したのは愼寿郎だった。驚愕した目で息子を見る。しかし煉獄は涼しい顔をしたままだった。
「やらかしたつもりはないぞ!」
「お前にとってはそうでも紗雪は派手に違うみたいだけどな?」
「あー…そういや様子が変だったな」
絶妙に煉獄を見ないようにしていた。宇髄に言わせると煉獄が手を掴んだ時の紗雪の音が凄かったらしい。
「愼寿郎殿。向こうでゆっくり飲もうか」
「…そうですな」
若者の話にはついていけない。鱗滝と愼寿郎はそそくさと縁側へ逃げていった。宇髄がテーブルに肘をつく。
「んで?」
「…君達の酒の肴になるつもりはないぞ!」
ニヤリと笑ってそう答える煉獄に宇髄がマジか!と叫んだ。話が見えない不死川が眉を寄せる。
「おい、俺らにも分かるように話せぇ」
「あー、つまりは煉獄が派手に紗雪を口説き始めたってことだな!」
「「今更か!?」」
不死川と冨岡の声が重なる。宇髄が腹を抱えて笑った。
「で?紗雪はどんな反応だった?」
「む!そうだな…」
煉獄はその時のことを思い返した。
『はい撮りますよー!』
写真店の主人がシャッターを切りシュボッと音が上がる。ありがとうございました!と誰かのお礼の言葉を聞きながら紗雪はゆっくり煉獄を振り返った。微笑む煉獄にキョトンとした顔を返す。
『…へ?』
『ん?』
『……え?』
事態が飲み込めず目を瞬く。あまりの驚きっぷりに煉獄は苦笑した。紗雪の頬に手を伸ばす。
『どうした?紗雪』
『うえ!?え?いや、え?え?うわっ!』
『うおっ!?』
思わず後ずさった紗雪は足を踏み外して宇髄の上に転がり落ちる。宇髄が驚いて背中で紗雪を支えた。
『おいおいどうした紗雪』
『す、すいません宇髄さん!』
『紗雪さん!お手伝いお願いします!!』
アオイに呼ばれて紗雪は宇髄の背中からも転がり落ちると走り去ったのだった。
「という感じで逃げられたな!」
「紗雪が降ってきたあの時かよ!」
宇髄は呆れた声を上げた。結局紗雪の答えは分からずじまいだ。しかし煉獄は落ち着いたものだった。
「余裕があるな」
首を傾げる冨岡に頷く。
「俺の想いは伝えたばかりだ!拒絶されなかったのだから今はそれで良い!!」
同じ家に住んでいるのだから今すぐなどと急く気はない。楽しそうな煉獄に不死川がため息をついた。
「一応言っておくがなぁ。あんまりやり過ぎんなよぉ」
どう見ても紗雪はその方面には初心である。煉獄が本気で口説きにかかったらパニックを起こしかねない。
「善処はする!だが俺も随分待った身だ!約束は出来んな!!」
「………そぉかよ」
胸を張って答える煉獄に不死川はそれ以上なにも言わなかった。
「酒でも水でもご自由にってのは気楽でいいなぁ」
輝利哉の周りには煉獄や宇髄、鱗滝、愼寿郎と不死川、冨岡が座っていた。不死川が酒を片手に場の中央に並べられたテーブルを眺める。そこには様々な食べ物と飲み物が所狭しと並べられていた。
「宴会になるとどうしても給仕に走り回る者が出てしまうからね。皆んなで座を囲みたいけれどどうしようかと思っていたんだよ」
天麩羅を口に運ぶと輝利哉は美味しそうに頷いた。座っているテーブルにも既に料理が並べられているので始めから立ち上がらなくていい。
「そうしたら椎名がこの方法を教えてくれたんだ。確か…ばいきんぐ方式だったかな?」
紗雪の時代には珍しくない方法らしい。礼儀作法に五月蝿いものには不評だろうが、今回は輝利哉の希望を飲んでもらった形だ。
「んで?この派手な方式を提案した本人はどこ行った?」
「向こうの座卓にいるぞ!蝶屋敷の者たちと一緒だ!」
宇髄の問いに煉獄が離れたテーブルを指し示した。カナヲやアオイ、禰󠄀豆子や宇髄の嫁達と賑やかにしているのが見える。その横のテーブルでは炭治郎、善逸、伊之助が村田や千寿郎などと楽しそうにしていた。
「皆んな体の方はもう良いのかい?」
「はい。数日の後には蝶屋敷を離れる予定です」
鮭大根を頬張っていた冨岡が答えると不死川が手拭いを投げつけた。
「テメェはまず口の周り拭けぇ」
「む…」
鱗滝が愼寿郎の盃に酒を注いだ。
「その節は炭治郎が大変失礼致しました。私からもお詫び申し上げます」
「こちらこそ。炭治郎君には申し訳ないことをしました」
「派手に固ぇよ!煉獄のおやっさん!鱗滝さんもそう言うのはなしなし!!お館様が無礼講って仰ってるんだからよ!」
宇髄は愼寿郎の肩をバシバシ叩くと豪快に笑った。相当痛かったらしい愼寿郎が横目に睨む。
「無礼講と無作法は違うぞ宇髄殿」
「そりゃ失礼!」
愼寿郎のため息を炭治郎のよく通る声が打ち消した。
「輝利哉君もこっちにおいでよ!」
「いや、だけど…」
自分が行って場が静まったりしないだろうか?輝利哉が躊躇すると口を綺麗に拭いた冨岡が言った。
「お館様がおっしゃられた通り無礼講なのですから気にする者はおりませぬ」
「そもそもあのガキにお館様への遠慮なんぞありはしません」
輝利哉は冨岡と不死川の顔を見ると小さく笑って炭治郎達のところへ向かった。賑やかに迎え入れられ輪の中に入って行く。
「酒飲みの席にいてもお館様も派手に退屈だろうからな」
「歳の近い千寿郎もいる。心配ないだろう」
宇髄の盃に酒を注ぎながら愼寿郎がそう言えば煉獄も大きく頷いた。
酒が進みそれぞれの場が大きく盛り上がる。中央のテーブルから酒をとって戻ってきた煉獄の横に紗雪が現れた。
「空いている徳利を下げますね」
さっと空の徳利を確認するとお盆に乗せていく。その手を煉獄が掴んだ。
「今日は給仕の必要が無いようにしていたのではないのか?」
「勿論そうですよ。でもやはり全部は無くならないですよ」
食器は有限だ。食べ物はともかく空になった徳利を洗って新たな酒を用意しなければ中央のテーブルにある分では絶対に足りない。
「お館様が知ったら気にされるので内緒にして下さいね」
紗雪のいるテーブルと炭治郎達のテーブルには酒を飲んでいる者がいない。お茶だけだと減りが遅いので無くなると言うことがない。
「お前なぁ」
お館様に秘密ごとをしろと言う紗雪に不死川が呆れた顔をした。この辺の感覚の違いが100年と言う時の差を感じさせる。紗雪は小さく笑うとお盆を手に立ち去った。
黙って盃を傾けていた宇髄がニヤリと笑った。
「煉獄、お前派手に紗雪になんかやらかしたろ」
「ぶほっ!」
その言葉に酒を噴き出したのは愼寿郎だった。驚愕した目で息子を見る。しかし煉獄は涼しい顔をしたままだった。
「やらかしたつもりはないぞ!」
「お前にとってはそうでも紗雪は派手に違うみたいだけどな?」
「あー…そういや様子が変だったな」
絶妙に煉獄を見ないようにしていた。宇髄に言わせると煉獄が手を掴んだ時の紗雪の音が凄かったらしい。
「愼寿郎殿。向こうでゆっくり飲もうか」
「…そうですな」
若者の話にはついていけない。鱗滝と愼寿郎はそそくさと縁側へ逃げていった。宇髄がテーブルに肘をつく。
「んで?」
「…君達の酒の肴になるつもりはないぞ!」
ニヤリと笑ってそう答える煉獄に宇髄がマジか!と叫んだ。話が見えない不死川が眉を寄せる。
「おい、俺らにも分かるように話せぇ」
「あー、つまりは煉獄が派手に紗雪を口説き始めたってことだな!」
「「今更か!?」」
不死川と冨岡の声が重なる。宇髄が腹を抱えて笑った。
「で?紗雪はどんな反応だった?」
「む!そうだな…」
煉獄はその時のことを思い返した。
『はい撮りますよー!』
写真店の主人がシャッターを切りシュボッと音が上がる。ありがとうございました!と誰かのお礼の言葉を聞きながら紗雪はゆっくり煉獄を振り返った。微笑む煉獄にキョトンとした顔を返す。
『…へ?』
『ん?』
『……え?』
事態が飲み込めず目を瞬く。あまりの驚きっぷりに煉獄は苦笑した。紗雪の頬に手を伸ばす。
『どうした?紗雪』
『うえ!?え?いや、え?え?うわっ!』
『うおっ!?』
思わず後ずさった紗雪は足を踏み外して宇髄の上に転がり落ちる。宇髄が驚いて背中で紗雪を支えた。
『おいおいどうした紗雪』
『す、すいません宇髄さん!』
『紗雪さん!お手伝いお願いします!!』
アオイに呼ばれて紗雪は宇髄の背中からも転がり落ちると走り去ったのだった。
「という感じで逃げられたな!」
「紗雪が降ってきたあの時かよ!」
宇髄は呆れた声を上げた。結局紗雪の答えは分からずじまいだ。しかし煉獄は落ち着いたものだった。
「余裕があるな」
首を傾げる冨岡に頷く。
「俺の想いは伝えたばかりだ!拒絶されなかったのだから今はそれで良い!!」
同じ家に住んでいるのだから今すぐなどと急く気はない。楽しそうな煉獄に不死川がため息をついた。
「一応言っておくがなぁ。あんまりやり過ぎんなよぉ」
どう見ても紗雪はその方面には初心である。煉獄が本気で口説きにかかったらパニックを起こしかねない。
「善処はする!だが俺も随分待った身だ!約束は出来んな!!」
「………そぉかよ」
胸を張って答える煉獄に不死川はそれ以上なにも言わなかった。