本編
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「よーお!派手に久しぶりだな!」
一ヶ月後、宇髄は蝶屋敷の不死川と冨岡の病室を訪ねた。既に椅子に座っている先客に目を止める。
「煉獄。お前も来てたのか」
「あぁ!久々にと思ってな!!」
「お前ら暇じゃねぇのによく来るなぁ」
「隊士達の葬儀は済んだのか?」
「身寄りのない者は産屋敷家の墓に弔ったし、身寄りのある者は家族の元に返し終わったよ。次は藤の家への礼参りだな」
現在蝶屋敷は満室満床である。ある程度の怪我の者は藤の家に回したが、今回はとにかく重傷者が多い。なので柱と言えど不死川と冨岡は同室だ。
宇髄が椅子を引き寄せ腰掛けた。
「お前らはどうよ」
「特に問題はねぇなぁ。今は無惨の毒がどこまで無毒化されてるのか経過観察と、傷が化膿しないよう見てるって話だぁ」
「あ、そうだ煉獄」
「何だ!宇髄!!」
宇髄は病室の外を指差すと煉獄に尋ねた。
「紗雪知らねえか?嫁さん達が病室に居ないって戻ってきたぜ?」
「またか!」
宇髄の台詞に煉獄はため息をついた。不死川と冨岡も呆れた表情を隠さない。宇髄が首を傾げた。
「また?」
「紗雪ーっ!!テメェまたうろちょろしやがって!寝てろって言っただろーがっ!!」
廊下から轟いた怒声に宇髄は目を丸くした。煉獄は片手で顔を覆い、不死川は呆れ顔のまま天井を仰ぎ、冨岡は小さく笑っている。
「あのなぁ!他の患者の前にテメェは安静!安静にしてなきゃならない重傷者!頭の傷に貧血状態に肺の右は半分!左は三分の一!壊死してんだぞ!!」
「ちょ、ちょ…落ち着いて後藤さん!人の状態を大声で言い立てるのは感心しないな!?」
「だったら大人しく寝てやがれー!」
「この処置が終わったら!そうしたら大人しく寝ますから!!」
「それ!二日前にも!聞いた!!」
言い争う声が段々大きくなり煉獄達のいる部屋の前で止まる。ドアがバッと開いて、隠の後藤が隊服を着た紗雪を部屋の中にぺっと放り込んだ。
「煉獄さん!お宅の継子、ちっともジッとしてないんでここで見張っといて下さい!!」
「ちょっと後藤さん!」
シャーッと威嚇すると後藤はドアを荒々しく閉め去って行った。笑いを堪えてプルプル震える宇髄に紗雪は苦虫を噛み潰したような顔をした。処置のためにつけていた手袋を外す。
「お久しぶりです宇髄さん」
「よう!重傷者!」
心底楽しそうな宇髄に紗雪はため息をついた。
「重傷と言っても頭の傷は塞がりましたし、血は増えるのに時間がかかるだけです。肺の細胞は一度死ぬと戻る事はないのでこれ以上の回復は見込めませんし、する治療がないんですよ」
「テメェも無惨の毒は要経過観察だろうがぁ」
不死川の指摘に紗雪は気不味そうに頭をかいた。
「…そうですけど」
「ところで、何故隊服を着ているんだ?」
冨岡のもっともな疑問に紗雪が答える。
「予備で余っていた隊服を頂きました。汚れてもすぐに落ちるし便利なので」
効率一本やりの台詞である。冨岡の呆れた視線を受けて紗雪が苦笑した。
「結構まだまだいるんですよ?無惨戦の事を思い出して急に暴れては傷を悪化させる人」
「あぁ、夜中に聞こえる叫び声はそれかぁ」
「寝ましょうね不死川さん」
「君がそれを言うのか紗雪」
煉獄は呆れた顔で笑うと自分の隣の椅子を叩いた。
「こちらへおいで」
「…はい」
煉獄の顔を見た紗雪は神妙な顔になるとその隣に腰掛けた。隠が庭で談笑している声が小さく聞こえる。煉獄は紗雪を見ると口を開いた。
「あれから竈門少年に一度も会いに行っていないそうだな」
意外な煉獄の台詞に宇髄達が目を丸くした。口籠る紗雪を全員が見る。
「何故だ?」
煉獄の口調は決して責めていなかった。むしろ温かく紗雪を慰めているようだ。それに背中を押されて紗雪がポツリと呟いた。
「…申し訳なくて」
「何がだ」
「……あの時、私だけが最後の最後まで炭治郎君を斬るつもりでした。炭治郎君が人に戻る事を私だけが信じていなかったんです」
ヘチョと眉も肩も下げきって紗雪が泣きそうな顔をする。
「だから炭治郎君にも禰󠄀豆子ちゃんにもカナヲちゃんにも申し訳なくて、合わせる顔がありません」
「阿呆かテメェはぁ!俺だって意識さえありゃ同じことするぞぉ!」
不死川に怒られても紗雪の眉は下がったままだ。冨岡が続く。
「合わせる顔が無いというならば俺の方だろう。実際炭治郎に刀を刺したし、炭治郎を殺せと命令したのは俺だ」
「でも冨岡さんは斬らなかった!…炭治郎君が薬で倒れた後、一生懸命呼び掛けてたじゃ無いですか」
ウジウジと頭にキノコが生えそうな紗雪に宇髄がため息をついた。
「んなもん派手に気にしてたって仕方ねぇだろ。炭治郎や禰󠄀豆子なら気にしてねぇよ」
「そんなの…」
「では今から聞きに行くとしよう!!」
そんなの分からないと言おうとした紗雪は、急に立ち上がった煉獄に目を見開いた。煉獄が紗雪の手を取り歩き出す。
「あの、ちょ…師範!?」
「他の者が何を言っても納得出来ないなら本人から聞くのが一番簡単だ!!」
「うぇぇ〜!?」
煉獄と紗雪が部屋を出て行くと宇髄が口を開いた。
「元気な重傷者だなぁアイツ」
「死にかけてたんだぜぇ、あれでも」
「煉獄が荒れて大変だった」
「マジか!!」
アオイによるとなにより肺の状態が良くなかったらしい。上弦の鬼の血気術に無惨の毒で、愈史郎の血気止めの薬がなければどうなっていた事か。煉獄は事後処理に追われながらも見舞いを欠かさなかったという。
「肺って事は呼吸は…」
「もう使えねぇとよぉ。紗雪が真っ先に煉獄に謝ってたぜ」
「炎の呼吸を継いでいけずに申し訳ありません、だったか」
「煉獄が怒りまくってなぁ」
煉獄とは短く無い付き合いのつもりだったが、不死川も冨岡もあそこまで怒った煉獄を見るのは初めてだった。
「そんなものがお前の命より大事だと思うのか?とか何とか」
「…あいつらさっさとくっ付きゃ良いのにな」
宇髄がボヤけば二人がこっくりと頷いた。
一ヶ月後、宇髄は蝶屋敷の不死川と冨岡の病室を訪ねた。既に椅子に座っている先客に目を止める。
「煉獄。お前も来てたのか」
「あぁ!久々にと思ってな!!」
「お前ら暇じゃねぇのによく来るなぁ」
「隊士達の葬儀は済んだのか?」
「身寄りのない者は産屋敷家の墓に弔ったし、身寄りのある者は家族の元に返し終わったよ。次は藤の家への礼参りだな」
現在蝶屋敷は満室満床である。ある程度の怪我の者は藤の家に回したが、今回はとにかく重傷者が多い。なので柱と言えど不死川と冨岡は同室だ。
宇髄が椅子を引き寄せ腰掛けた。
「お前らはどうよ」
「特に問題はねぇなぁ。今は無惨の毒がどこまで無毒化されてるのか経過観察と、傷が化膿しないよう見てるって話だぁ」
「あ、そうだ煉獄」
「何だ!宇髄!!」
宇髄は病室の外を指差すと煉獄に尋ねた。
「紗雪知らねえか?嫁さん達が病室に居ないって戻ってきたぜ?」
「またか!」
宇髄の台詞に煉獄はため息をついた。不死川と冨岡も呆れた表情を隠さない。宇髄が首を傾げた。
「また?」
「紗雪ーっ!!テメェまたうろちょろしやがって!寝てろって言っただろーがっ!!」
廊下から轟いた怒声に宇髄は目を丸くした。煉獄は片手で顔を覆い、不死川は呆れ顔のまま天井を仰ぎ、冨岡は小さく笑っている。
「あのなぁ!他の患者の前にテメェは安静!安静にしてなきゃならない重傷者!頭の傷に貧血状態に肺の右は半分!左は三分の一!壊死してんだぞ!!」
「ちょ、ちょ…落ち着いて後藤さん!人の状態を大声で言い立てるのは感心しないな!?」
「だったら大人しく寝てやがれー!」
「この処置が終わったら!そうしたら大人しく寝ますから!!」
「それ!二日前にも!聞いた!!」
言い争う声が段々大きくなり煉獄達のいる部屋の前で止まる。ドアがバッと開いて、隠の後藤が隊服を着た紗雪を部屋の中にぺっと放り込んだ。
「煉獄さん!お宅の継子、ちっともジッとしてないんでここで見張っといて下さい!!」
「ちょっと後藤さん!」
シャーッと威嚇すると後藤はドアを荒々しく閉め去って行った。笑いを堪えてプルプル震える宇髄に紗雪は苦虫を噛み潰したような顔をした。処置のためにつけていた手袋を外す。
「お久しぶりです宇髄さん」
「よう!重傷者!」
心底楽しそうな宇髄に紗雪はため息をついた。
「重傷と言っても頭の傷は塞がりましたし、血は増えるのに時間がかかるだけです。肺の細胞は一度死ぬと戻る事はないのでこれ以上の回復は見込めませんし、する治療がないんですよ」
「テメェも無惨の毒は要経過観察だろうがぁ」
不死川の指摘に紗雪は気不味そうに頭をかいた。
「…そうですけど」
「ところで、何故隊服を着ているんだ?」
冨岡のもっともな疑問に紗雪が答える。
「予備で余っていた隊服を頂きました。汚れてもすぐに落ちるし便利なので」
効率一本やりの台詞である。冨岡の呆れた視線を受けて紗雪が苦笑した。
「結構まだまだいるんですよ?無惨戦の事を思い出して急に暴れては傷を悪化させる人」
「あぁ、夜中に聞こえる叫び声はそれかぁ」
「寝ましょうね不死川さん」
「君がそれを言うのか紗雪」
煉獄は呆れた顔で笑うと自分の隣の椅子を叩いた。
「こちらへおいで」
「…はい」
煉獄の顔を見た紗雪は神妙な顔になるとその隣に腰掛けた。隠が庭で談笑している声が小さく聞こえる。煉獄は紗雪を見ると口を開いた。
「あれから竈門少年に一度も会いに行っていないそうだな」
意外な煉獄の台詞に宇髄達が目を丸くした。口籠る紗雪を全員が見る。
「何故だ?」
煉獄の口調は決して責めていなかった。むしろ温かく紗雪を慰めているようだ。それに背中を押されて紗雪がポツリと呟いた。
「…申し訳なくて」
「何がだ」
「……あの時、私だけが最後の最後まで炭治郎君を斬るつもりでした。炭治郎君が人に戻る事を私だけが信じていなかったんです」
ヘチョと眉も肩も下げきって紗雪が泣きそうな顔をする。
「だから炭治郎君にも禰󠄀豆子ちゃんにもカナヲちゃんにも申し訳なくて、合わせる顔がありません」
「阿呆かテメェはぁ!俺だって意識さえありゃ同じことするぞぉ!」
不死川に怒られても紗雪の眉は下がったままだ。冨岡が続く。
「合わせる顔が無いというならば俺の方だろう。実際炭治郎に刀を刺したし、炭治郎を殺せと命令したのは俺だ」
「でも冨岡さんは斬らなかった!…炭治郎君が薬で倒れた後、一生懸命呼び掛けてたじゃ無いですか」
ウジウジと頭にキノコが生えそうな紗雪に宇髄がため息をついた。
「んなもん派手に気にしてたって仕方ねぇだろ。炭治郎や禰󠄀豆子なら気にしてねぇよ」
「そんなの…」
「では今から聞きに行くとしよう!!」
そんなの分からないと言おうとした紗雪は、急に立ち上がった煉獄に目を見開いた。煉獄が紗雪の手を取り歩き出す。
「あの、ちょ…師範!?」
「他の者が何を言っても納得出来ないなら本人から聞くのが一番簡単だ!!」
「うぇぇ〜!?」
煉獄と紗雪が部屋を出て行くと宇髄が口を開いた。
「元気な重傷者だなぁアイツ」
「死にかけてたんだぜぇ、あれでも」
「煉獄が荒れて大変だった」
「マジか!!」
アオイによるとなにより肺の状態が良くなかったらしい。上弦の鬼の血気術に無惨の毒で、愈史郎の血気止めの薬がなければどうなっていた事か。煉獄は事後処理に追われながらも見舞いを欠かさなかったという。
「肺って事は呼吸は…」
「もう使えねぇとよぉ。紗雪が真っ先に煉獄に謝ってたぜ」
「炎の呼吸を継いでいけずに申し訳ありません、だったか」
「煉獄が怒りまくってなぁ」
煉獄とは短く無い付き合いのつもりだったが、不死川も冨岡もあそこまで怒った煉獄を見るのは初めてだった。
「そんなものがお前の命より大事だと思うのか?とか何とか」
「…あいつらさっさとくっ付きゃ良いのにな」
宇髄がボヤけば二人がこっくりと頷いた。