本編
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「待って待って待って!」
柱合会議も終わり各自解散となった頃、紗雪の慌てたような声に煉獄は廊下を走った。スパァン!と障子が開き中から襦袢姿の紗雪が飛び出してくる。煉獄は慌てて足を止めた。
「っ!!」
「!」
しかし紗雪は煉獄の姿を認めると、固まる煉獄にお構いなくその背中に隠れた。
「………」
赤面したまま動かなくなった煉獄の脇から紗雪が顔だけ出す。部屋の中からあまねが困ったように顔を出した。
「紗雪様」
「だから!せめて下着を履きたいんです!!」
「えぇ、ですから腰巻きを履きましたでしょう?」
「これは下着とは言わないのでは!?」
「いいえ、言いますよ?」
「えぇぇ〜?」
不服そうな紗雪にあまねがクスリと笑う。
「紗雪様、煉獄様がお困りですよ」
「えっ!?わっ!」
紗雪が顔を上げるのと同時に煉獄は自分の羽織を脱ぐと紗雪をぐるぐる巻きにした。そのままあまねに引き渡す。
「お手間をおかけして申し訳ない!紗雪!支度ができたら帰るからあまね殿に従うんだ!!」
「わ、わかりました!!」
背中を向けてしまった煉獄が怒っていると思った紗雪は慌てて返事をすると部屋に引っ込んだ。煉獄が縁側に腰掛けると頭を抱える。
「…不甲斐無し」
今ばかりは背中の滅の字も哀愁が漂う煉獄だった。
「あの、本当にすいません。かなり常識はずれなんですね私」
「気にする事はない!これから慣れて行けば良い話だ!!」
煉獄家に帰る道すがら紗雪はかなりしょんぼりして言った。煉獄は口では慰めてくれるが、さっきからこちらを一度も向いてくれない。
(それとも似合ってなさすぎて笑いでも堪えられているんだろうか)
産屋敷が用意してくれていたのは相当質の良い着物だった。淡い薄青の着物に細かな柄の白い帯が涼しげだ。着せられてる感は否めないがそんなに変だろうか。
(まぁ、訓練が始まればこんな立派な着物、着る事はないだろうから多めに見てもらおう)
紗雪とて綺麗な服を喜ぶ感性はある。怒涛の24時間だったが生きているだけで幸運だ。
「煉獄さん!助けて頂いた身です!メチャメチャ頑張りますね!!」
「うむ!いい心がけだ!!」
(やっぱこっち見ないかー)
だが煉獄の声はエネルギーに満ちていて紗雪の気持ちを前向きにしてくれる。
(一から出直し!それも悪くないよ)
そう思える紗雪だった。
(いかん!隣を見る事が出来ん!!)
一方煉獄は内心冷や汗をかいていた。湯を借り綺麗に身支度を整えた紗雪が女性であることを急激に理解してしまって落ち着かない。
(女人という者はこうまで変わる者なのか!!)
迷彩服に身を包んでいた紗雪は体の線こそ頼りなかったがしっかりとした軍人で戦闘員だった。しかし今、隣で歩幅に苦労しながら歩いている紗雪は後ろで一つ結びになった黒髪が軽やかに揺れる和装美人だ。
煉獄は歩き方が不自然にならないよう気を配るので精一杯だった。
「ふふっ」
突然紗雪が笑い出し煉獄は思わずそちらを見た。紗雪の目は楽しそうに細められている。
「何か珍しい物でもあったか!」
「見た事ない風景ばかりですよ。ここって東京ですよね?煉獄さん」
(そうか、彼女は…)
遠い遠い未来から来たのだ。帰れない事に嘆く事もなくこの時代を生きようとしている。
(俺がしっかりしなければ!)
この寄る方 ない娘の帰る場所、帰りたいと思う場所を作ってやらなければ。
(俺は本当に不甲斐無い!!)
自分の動揺に振り回されている場合ではない。煉獄はぐっと落ち着きを取り戻すと紗雪に話しかけた。
「そうだ!ここは特に賑やかな通りだが紗雪の知っている帝都はどのようなものだ!!」
「ここよりもっと人が多いです。建物だって凄く高いですよ。20階建てなんでざらです」
「よもや!それ程の建物を一体何の為に!」
「商売をしている会社が入ったり、ショッピングモール…えっと、お店が何件も入っていて、服屋とか、食べ物やとか、本屋とか。」
紗雪は急に普通に戻った煉獄にちょっとビックリしながら答えた。煉獄が自分の時代に興味を持ってくれて嬉しい。
「目が回りそうだな!君はどう言ったものが好きなんだ?」
「そうですね…本屋に行ったら時間を忘れます。ただ、あまり部屋に戻ることがなかったので買いはしませんでしたね。煉獄さんは?」
「俺は能や歌舞伎が好きだ!相撲を観戦するのも良いぞ!!」
おぉ、インテリ…と煉獄の分からない言葉で感心する紗雪に笑う。
「機会があれば一緒に観に行こう!」
「内容が私にわかると良いんですけど」
へにょっと眉を下げた紗雪が急に幼く見えて煉獄が優しい笑みを浮かべた
「俺がいるから大丈夫だ」
「…じゃあ楽しみにしてます」
(この人は思ってるよりずっと繊細な人なのかも)
煉獄の人としての奥深さを垣間見た気がして紗雪は心が暖かくなるのだった。
柱合会議も終わり各自解散となった頃、紗雪の慌てたような声に煉獄は廊下を走った。スパァン!と障子が開き中から襦袢姿の紗雪が飛び出してくる。煉獄は慌てて足を止めた。
「っ!!」
「!」
しかし紗雪は煉獄の姿を認めると、固まる煉獄にお構いなくその背中に隠れた。
「………」
赤面したまま動かなくなった煉獄の脇から紗雪が顔だけ出す。部屋の中からあまねが困ったように顔を出した。
「紗雪様」
「だから!せめて下着を履きたいんです!!」
「えぇ、ですから腰巻きを履きましたでしょう?」
「これは下着とは言わないのでは!?」
「いいえ、言いますよ?」
「えぇぇ〜?」
不服そうな紗雪にあまねがクスリと笑う。
「紗雪様、煉獄様がお困りですよ」
「えっ!?わっ!」
紗雪が顔を上げるのと同時に煉獄は自分の羽織を脱ぐと紗雪をぐるぐる巻きにした。そのままあまねに引き渡す。
「お手間をおかけして申し訳ない!紗雪!支度ができたら帰るからあまね殿に従うんだ!!」
「わ、わかりました!!」
背中を向けてしまった煉獄が怒っていると思った紗雪は慌てて返事をすると部屋に引っ込んだ。煉獄が縁側に腰掛けると頭を抱える。
「…不甲斐無し」
今ばかりは背中の滅の字も哀愁が漂う煉獄だった。
「あの、本当にすいません。かなり常識はずれなんですね私」
「気にする事はない!これから慣れて行けば良い話だ!!」
煉獄家に帰る道すがら紗雪はかなりしょんぼりして言った。煉獄は口では慰めてくれるが、さっきからこちらを一度も向いてくれない。
(それとも似合ってなさすぎて笑いでも堪えられているんだろうか)
産屋敷が用意してくれていたのは相当質の良い着物だった。淡い薄青の着物に細かな柄の白い帯が涼しげだ。着せられてる感は否めないがそんなに変だろうか。
(まぁ、訓練が始まればこんな立派な着物、着る事はないだろうから多めに見てもらおう)
紗雪とて綺麗な服を喜ぶ感性はある。怒涛の24時間だったが生きているだけで幸運だ。
「煉獄さん!助けて頂いた身です!メチャメチャ頑張りますね!!」
「うむ!いい心がけだ!!」
(やっぱこっち見ないかー)
だが煉獄の声はエネルギーに満ちていて紗雪の気持ちを前向きにしてくれる。
(一から出直し!それも悪くないよ)
そう思える紗雪だった。
(いかん!隣を見る事が出来ん!!)
一方煉獄は内心冷や汗をかいていた。湯を借り綺麗に身支度を整えた紗雪が女性であることを急激に理解してしまって落ち着かない。
(女人という者はこうまで変わる者なのか!!)
迷彩服に身を包んでいた紗雪は体の線こそ頼りなかったがしっかりとした軍人で戦闘員だった。しかし今、隣で歩幅に苦労しながら歩いている紗雪は後ろで一つ結びになった黒髪が軽やかに揺れる和装美人だ。
煉獄は歩き方が不自然にならないよう気を配るので精一杯だった。
「ふふっ」
突然紗雪が笑い出し煉獄は思わずそちらを見た。紗雪の目は楽しそうに細められている。
「何か珍しい物でもあったか!」
「見た事ない風景ばかりですよ。ここって東京ですよね?煉獄さん」
(そうか、彼女は…)
遠い遠い未来から来たのだ。帰れない事に嘆く事もなくこの時代を生きようとしている。
(俺がしっかりしなければ!)
この
(俺は本当に不甲斐無い!!)
自分の動揺に振り回されている場合ではない。煉獄はぐっと落ち着きを取り戻すと紗雪に話しかけた。
「そうだ!ここは特に賑やかな通りだが紗雪の知っている帝都はどのようなものだ!!」
「ここよりもっと人が多いです。建物だって凄く高いですよ。20階建てなんでざらです」
「よもや!それ程の建物を一体何の為に!」
「商売をしている会社が入ったり、ショッピングモール…えっと、お店が何件も入っていて、服屋とか、食べ物やとか、本屋とか。」
紗雪は急に普通に戻った煉獄にちょっとビックリしながら答えた。煉獄が自分の時代に興味を持ってくれて嬉しい。
「目が回りそうだな!君はどう言ったものが好きなんだ?」
「そうですね…本屋に行ったら時間を忘れます。ただ、あまり部屋に戻ることがなかったので買いはしませんでしたね。煉獄さんは?」
「俺は能や歌舞伎が好きだ!相撲を観戦するのも良いぞ!!」
おぉ、インテリ…と煉獄の分からない言葉で感心する紗雪に笑う。
「機会があれば一緒に観に行こう!」
「内容が私にわかると良いんですけど」
へにょっと眉を下げた紗雪が急に幼く見えて煉獄が優しい笑みを浮かべた
「俺がいるから大丈夫だ」
「…じゃあ楽しみにしてます」
(この人は思ってるよりずっと繊細な人なのかも)
煉獄の人としての奥深さを垣間見た気がして紗雪は心が暖かくなるのだった。