本編
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「今度から懐におはぎを忍ばせておいて、不死川に会うときあげようと思う」
「あー!それは良いですね!!」
「そうしたらきっと仲良くなれると思う」
「俺もそうします!」
うっかり冨岡と炭治郎の会話を聞いてしまった紗雪は絶句してしまった。蝶屋敷で頼まれた傷薬を持ってきただけなのにえらい事である。
(止めるべきなんだろうけど…)
正直あそこまでズレられるとちゃんと納得してもらえる自信が無い。紗雪は心の中で不死川に合掌した。
(ご愁傷様です不死川さん)
「紗雪か。どうした」
冨岡に声をかけられ紗雪はペコリと頭を下げた。炭治郎が屈託のない笑みで迎えてくれる。
「紗雪さん!あれ?悲鳴嶼さんの所は随分前に稽古終わりましたよね?」
「伊黒さんと不死川さんの所の稽古で山ほど怪我人が出たので蝶屋敷を手伝っていたんです」
強くする前にリタイヤが沢山出そうな状況である。もしかすると力の足りない者を最終決戦に連れて行かないための気遣いなのかもしれない…多分。
「傷薬を胡蝶さんからお預かりしました。不死川さんとの柱稽古ならどちらかが怪我をしたかもしれないからと」
「怪我する前に不死川は怒って行ってしまった」
「そのようですね」
紗雪はあまり冨岡との接点がこれまで無かった。だが、こんな素直な感じの人だったろうかと思う。冨岡と炭治郎が立ち上がるのに、炭治郎の枕になっていた羽織を紗雪が手にする。
「どうぞ」
「あぁ、ありがとう」
丁寧に汚れを払って渡せば冨岡がそれを羽織った。
「…そう言えば紗雪の羽織はお館様に賜った着物と同じ色だな」
意外な冨岡の台詞に紗雪は目を丸くした。まさかそんな事を覚えていてくれたとは予想外だ。炭治郎がにっこり笑って話を引き継いだ。
「紗雪さんによく似合ってると思います」
「ありがとうございます。私が鬼殺隊士になった時に師範がお祝いとして作ってくれたものです」
その時のことを思い出して紗雪はほんわかと心が暖かくなった。冨岡がじっと紗雪を見つめる。炭治郎が首を傾げた。
「どうしたんですか?義勇さん」
「紗雪の持ち物は全て煉獄が揃えていると聞いたが本当のようだな」
「んん!?」
突然の冨岡の突っ込みに紗雪の喉から変な音が出た。確かに改めて考えてみると全てかもしれない。炭治郎が追い討ちをかける。
「そう言えば剣帯も煉獄さんとお揃いですし、剣の鍔も炎の意匠ですよね」
「おそろ…いや、確かにそうとも言えますけど…」
「胡蝶が紗雪の髪紐は煉獄が買ったものだと前に言っていた」
紗雪は片手で顔を覆った。確かに結局以前の切れた髪紐の代わりも煉獄が買ってきた。
(顔が熱い…って言うかなんか変な汗出てきたんですけど!?)
「この前善逸が紗雪さんは万年筆や懐中時計を持ってて凄いお洒落だって言ってました」
「…それも師範が買ってくれたものです」
紗雪はとうとう両手で顔を覆ってしまった。きちんと自分でも把握はしてたつもりだが人から言われると破壊力が凄い。
「師範には本当にお世話になりっぱなしで…」
「いや、そうではなくて」
冨岡は純粋に心配になって尋ねた。
「男の見立てで全身包んで不快ではないか?必要ならば俺から煉獄に物申すが」
「………それは思ったことなかったです」
あの地獄の14歳の頃、衣服も食べ物もコントロールされていた時とはあまりに違う自分に紗雪は戸惑った。煉獄の手ずから髪紐から懐中時計の果てまで揃えられても不快感はない。むしろ…。
「…余計な心配だったようだな」
真っ赤になってしゃがみ込んでしまった紗雪に冨岡は冷静に告げた。さっきとは種類の違う恥ずかしさに紗雪が頭を抱える。
「あー、あー、うー………師範には黙ってて下さい」
身悶えたって葛藤したって自分の気持ちは騙せない。紗雪は早々に自分の気持ちを飲み込むと冨岡と炭治郎にそう言った。炭治郎が驚く。
「どうしてですか?煉獄さんだ…」
冨岡は炭治郎の口を手で塞いだ。
「人の色恋に口を挟むつもりは無い。だがそれで良いのか?最終決戦で生き残れるか分からないんだぞ」
「えぇ、構いません。死んでしまうかもしれないのに師範に想いを託すのは卑怯な気がするので」
生きて返ってきたらその時に考える。色々なことを考え過ぎて迷走してしまう冨岡にとって紗雪のその考え方はシンプルで好感が持てた。
「ここまで来たんだ。稽古をして行くといい」
「ありがとうございます。是非お願いします」
「俺も!俺もやります!!」
炭治郎が勢いよく手をあげるのに冨岡は首を横に振った。
「さっき頭を打っている。今日は駄目だ」
なんでここまでの気遣いが出来るのに不死川にはアホになるのだろうと思ってしまう紗雪だった。
「あー!それは良いですね!!」
「そうしたらきっと仲良くなれると思う」
「俺もそうします!」
うっかり冨岡と炭治郎の会話を聞いてしまった紗雪は絶句してしまった。蝶屋敷で頼まれた傷薬を持ってきただけなのにえらい事である。
(止めるべきなんだろうけど…)
正直あそこまでズレられるとちゃんと納得してもらえる自信が無い。紗雪は心の中で不死川に合掌した。
(ご愁傷様です不死川さん)
「紗雪か。どうした」
冨岡に声をかけられ紗雪はペコリと頭を下げた。炭治郎が屈託のない笑みで迎えてくれる。
「紗雪さん!あれ?悲鳴嶼さんの所は随分前に稽古終わりましたよね?」
「伊黒さんと不死川さんの所の稽古で山ほど怪我人が出たので蝶屋敷を手伝っていたんです」
強くする前にリタイヤが沢山出そうな状況である。もしかすると力の足りない者を最終決戦に連れて行かないための気遣いなのかもしれない…多分。
「傷薬を胡蝶さんからお預かりしました。不死川さんとの柱稽古ならどちらかが怪我をしたかもしれないからと」
「怪我する前に不死川は怒って行ってしまった」
「そのようですね」
紗雪はあまり冨岡との接点がこれまで無かった。だが、こんな素直な感じの人だったろうかと思う。冨岡と炭治郎が立ち上がるのに、炭治郎の枕になっていた羽織を紗雪が手にする。
「どうぞ」
「あぁ、ありがとう」
丁寧に汚れを払って渡せば冨岡がそれを羽織った。
「…そう言えば紗雪の羽織はお館様に賜った着物と同じ色だな」
意外な冨岡の台詞に紗雪は目を丸くした。まさかそんな事を覚えていてくれたとは予想外だ。炭治郎がにっこり笑って話を引き継いだ。
「紗雪さんによく似合ってると思います」
「ありがとうございます。私が鬼殺隊士になった時に師範がお祝いとして作ってくれたものです」
その時のことを思い出して紗雪はほんわかと心が暖かくなった。冨岡がじっと紗雪を見つめる。炭治郎が首を傾げた。
「どうしたんですか?義勇さん」
「紗雪の持ち物は全て煉獄が揃えていると聞いたが本当のようだな」
「んん!?」
突然の冨岡の突っ込みに紗雪の喉から変な音が出た。確かに改めて考えてみると全てかもしれない。炭治郎が追い討ちをかける。
「そう言えば剣帯も煉獄さんとお揃いですし、剣の鍔も炎の意匠ですよね」
「おそろ…いや、確かにそうとも言えますけど…」
「胡蝶が紗雪の髪紐は煉獄が買ったものだと前に言っていた」
紗雪は片手で顔を覆った。確かに結局以前の切れた髪紐の代わりも煉獄が買ってきた。
(顔が熱い…って言うかなんか変な汗出てきたんですけど!?)
「この前善逸が紗雪さんは万年筆や懐中時計を持ってて凄いお洒落だって言ってました」
「…それも師範が買ってくれたものです」
紗雪はとうとう両手で顔を覆ってしまった。きちんと自分でも把握はしてたつもりだが人から言われると破壊力が凄い。
「師範には本当にお世話になりっぱなしで…」
「いや、そうではなくて」
冨岡は純粋に心配になって尋ねた。
「男の見立てで全身包んで不快ではないか?必要ならば俺から煉獄に物申すが」
「………それは思ったことなかったです」
あの地獄の14歳の頃、衣服も食べ物もコントロールされていた時とはあまりに違う自分に紗雪は戸惑った。煉獄の手ずから髪紐から懐中時計の果てまで揃えられても不快感はない。むしろ…。
「…余計な心配だったようだな」
真っ赤になってしゃがみ込んでしまった紗雪に冨岡は冷静に告げた。さっきとは種類の違う恥ずかしさに紗雪が頭を抱える。
「あー、あー、うー………師範には黙ってて下さい」
身悶えたって葛藤したって自分の気持ちは騙せない。紗雪は早々に自分の気持ちを飲み込むと冨岡と炭治郎にそう言った。炭治郎が驚く。
「どうしてですか?煉獄さんだ…」
冨岡は炭治郎の口を手で塞いだ。
「人の色恋に口を挟むつもりは無い。だがそれで良いのか?最終決戦で生き残れるか分からないんだぞ」
「えぇ、構いません。死んでしまうかもしれないのに師範に想いを託すのは卑怯な気がするので」
生きて返ってきたらその時に考える。色々なことを考え過ぎて迷走してしまう冨岡にとって紗雪のその考え方はシンプルで好感が持てた。
「ここまで来たんだ。稽古をして行くといい」
「ありがとうございます。是非お願いします」
「俺も!俺もやります!!」
炭治郎が勢いよく手をあげるのに冨岡は首を横に振った。
「さっき頭を打っている。今日は駄目だ」
なんでここまでの気遣いが出来るのに不死川にはアホになるのだろうと思ってしまう紗雪だった。