本編
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「よぅ!派手に邪魔するぜ!」
「宇髄か!」
煉獄が庭で鍛錬をしていると宇髄が訪ねて来た。手拭いで汗を拭うと宇髄と並んで縁側に腰掛ける。
「鍛錬なんぞして腹の傷は良いのか?」
「あぁ!前と同じ様にはいかないが問題ない!それに紗雪に玖ノ型を教えてやらなければならないからな!」
「その紗雪はどうした?」
昼間なのに姿が見えない。宇髄が尋ねれば煉獄は以前と変わらない快活さで答えた。
「蝶屋敷に行っている!胡蝶に頼まれていた医学書の翻訳がそろそろ終わるらしい!!」
「はー、派手にすごい奴だよな。英語が出来て医学の知識があって次期炎柱で…あいつ中に人間二人ぐらい入ってんじゃねぇの?」
「それは怖いな!」
宇髄の言葉に頭に浮かんだ想像があまりにグロテスクで煉獄は顔を引き攣らせた。宇髄がニヤニヤする。
「んじゃ、それがどっちも紗雪だったら?」
「…最高だな!」
「お前ね」
返事するまでのわずかな間が大変リアルである。宇髄は横目で煉獄を見ながら口を開いた。
「正直な所、お前は紗雪のことどう思ってるんだ?」
初めから距離はおかしかったが、今は既に異常な距離感である。近いなんて言葉では生易しい。
「愛しているぞ」
静かな煉獄の声に宇髄は目を見張った。煉獄は穏やかな顔で庭を見つめていた。
「俺は彼女を一人の女として愛している」
「…マジか」
「マジだ!」
言い切られて宇髄は頭をかいた。
「派手に自覚してんなら俺が言う事は何もねぇわ。ただ、禰󠄀豆子が太陽を克服した今、最終決戦が近いってのが本部の見方だ。気持ちがあるんなら伝えといたら良いんじゃねえの?」
「いや!全ての方がつくまで伝える気はない!」
「………」
言葉をなくす宇髄を煉獄が見る。その表情に迷いはなかった。
「紗雪は最近になって漸く次期炎柱としての自覚が芽生えて来た所だ!それに俺も紗雪も器用な方ではない!大事な決戦を前に余計な事で紗雪の頭を悩ませるつもりはない!!」
「余計な事、ねぇ。ま、お前がそれで良いなら良いんじゃねえの?」
塀の向こうを物売りが行き過ぎる音がして、二人は暫く黙った。やがて宇髄が再び口を開く。
「だがな、今日生きている奴が明日も生きている保証は無いんだ。ちょっとぐらいは何かを伝えたって悪くねぇんじゃねえの?」
「…考えておく!」
煉獄の返事に満足した宇髄は急にニヤリと笑うと肩肘をついた。
「で、派手に興味本位で聞くけどよ。いつからだ?」
煉獄は初めから紗雪を気に入ってはいたが、愛してるまでいくとは中々だ。煉獄は腕を組むと宇髄を横目に見た。
「何だ宇髄!俺は君と奥方達の酒の肴になる気はないぞ!?」
「そう言うなって!煉獄のこんな話聞いてやれるのは派手に俺ぐらいなもんだろ!!駄賃がわりだと思って話せよ!」
「酷い言い草だな!」
「まぁまぁ!」
引く気のない様子の宇髄に煉獄は腕組みしたまま胸を張って答えた。
「わからん!」
「もうちょっと派手に掘り下げろ!」
「…継子だったからではない。炎の呼吸を使えたからでもない。ひたむきに頑張る娘だと思った。人をよく見ている娘だとも思った。紗雪が俺を呼ぶ声が好きだと思った。笑っている顔も泣いている顔も怒っている顔も愛しいと思った。そうしているうちにいつの間にか愛する様になっていた。だからわからん!」
「おぉ!言うねぇ!」
明るい朴念仁だった煉獄とは思えない台詞に宇髄は楽しくなって笑った。死にかけた男が愛する相手を見つけたのだ。これが嬉しくなくてなんとする。
「ちなみに紗雪はどう思ってると思う?」
「それがわかれば苦労はせん!」
「違いない!!」
宇髄は腹を抱えて笑った。あんまりな笑い様に煉獄が渋い顔をする。
「笑いすぎだ宇髄!紗雪は好意的に思ってくれているとは思うが、それがどの好意なのか俺には見当がつかん」
敬愛か、恋愛か、はたまたまるで違うものか…。笑いすぎて腹を痛くした宇髄が大きく息を吐いた。
「まぁ、派手に良い方に考えておいても良いんじゃねぇの?じゃなきゃ一緒の布団でなんか寝たりしねぇし」
「何故知っている!?」
「元忍舐めんな!」
「楽しそうですね」
「「!!?」」
気付けば隣に立っていた紗雪に煉獄と宇髄は飛び上がった。いくら賑やかに言い合っていたとは言え全く気配がしなかった。宇髄が引き攣った笑みを浮かべた。
「いつからいたんだ?派手に気配がしなかったな!?流石は次期炎柱殿だぜ!」
「ご冗談を」
紗雪は小さく笑うとキョロリと辺りを見回した。
「そうか、千寿郎さんは今日愼寿郎さんとお出掛けされたんでしたね。今、お茶を入れて来ます」
「いや、お構いなく」
宇髄は手を挙げて制したが、紗雪は持っていた風呂敷を掲げてみせた。
「胡蝶さんからお団子を沢山いただいたんです。蜜璃さんのおすすめのお店らしくて。師範、お出しして良いですか?」
「あぁ!頼む!!」
「はい。では少々お待ち下さい」
紗雪は頭を下げると台所へと向かって行った。その姿が見えなくなると二人揃って脱力する。
「宇髄。君、出禁になるのと一生恨まれるのとどっちが良い?」
「派手に悪かったって。紗雪には聞こえてなかった様だし大丈夫だろ」
「聞こえてたらその髪の毛全て毟り取るぞ」
「悪かったって!!」
煉獄の本気を感じ取り宇髄は頭を押さえた。紗雪がお茶と団子を盆に乗せ戻ってくる。懐から手紙を取り出すと紗雪は煉獄にそれを差し出した。
「預かって来た手紙です。ご覧になって下さい」
「俺にか?」
「宇髄さんにも預かってきています」
煉獄と宇髄は顔を見合わせると手紙を開いた。揃ってニヤリとしてしまう。
「隊士達への柱稽古とは悲鳴嶼さんも考えることが派手だな!」
「うむ!俺達には隊士に基礎を叩き込めとの仰せだ!!」
煉獄は手紙を懐にしまうと紗雪を見た。
「紗雪も柱稽古に行ってくると良い」
「良いんですか?」
煉獄を手伝うつもりだった紗雪は目を丸くした。勿論行けるのならば行きたい。
「他の柱に稽古をつけて貰えれば得るものも多いだろう。ただし!」
「た、ただし?」
紗雪は思わず姿勢をただした。煉獄が団子に手を伸ばすとひと齧りする。
「美味い!」
「師範!?」
人の緊張を返せ。紗雪がジトッと煉獄を睨めば笑い声が返って来た。
「玖ノ型を習得してからだ」
「わかりました。頑張ります」
「うむ!」
(こいつらこれが師弟の距離感だと思ってるんだから恐れ入るよな)
宇髄は程よく焦げ目のついた団子を手にすると口に放り込んだ。
「宇髄か!」
煉獄が庭で鍛錬をしていると宇髄が訪ねて来た。手拭いで汗を拭うと宇髄と並んで縁側に腰掛ける。
「鍛錬なんぞして腹の傷は良いのか?」
「あぁ!前と同じ様にはいかないが問題ない!それに紗雪に玖ノ型を教えてやらなければならないからな!」
「その紗雪はどうした?」
昼間なのに姿が見えない。宇髄が尋ねれば煉獄は以前と変わらない快活さで答えた。
「蝶屋敷に行っている!胡蝶に頼まれていた医学書の翻訳がそろそろ終わるらしい!!」
「はー、派手にすごい奴だよな。英語が出来て医学の知識があって次期炎柱で…あいつ中に人間二人ぐらい入ってんじゃねぇの?」
「それは怖いな!」
宇髄の言葉に頭に浮かんだ想像があまりにグロテスクで煉獄は顔を引き攣らせた。宇髄がニヤニヤする。
「んじゃ、それがどっちも紗雪だったら?」
「…最高だな!」
「お前ね」
返事するまでのわずかな間が大変リアルである。宇髄は横目で煉獄を見ながら口を開いた。
「正直な所、お前は紗雪のことどう思ってるんだ?」
初めから距離はおかしかったが、今は既に異常な距離感である。近いなんて言葉では生易しい。
「愛しているぞ」
静かな煉獄の声に宇髄は目を見張った。煉獄は穏やかな顔で庭を見つめていた。
「俺は彼女を一人の女として愛している」
「…マジか」
「マジだ!」
言い切られて宇髄は頭をかいた。
「派手に自覚してんなら俺が言う事は何もねぇわ。ただ、禰󠄀豆子が太陽を克服した今、最終決戦が近いってのが本部の見方だ。気持ちがあるんなら伝えといたら良いんじゃねえの?」
「いや!全ての方がつくまで伝える気はない!」
「………」
言葉をなくす宇髄を煉獄が見る。その表情に迷いはなかった。
「紗雪は最近になって漸く次期炎柱としての自覚が芽生えて来た所だ!それに俺も紗雪も器用な方ではない!大事な決戦を前に余計な事で紗雪の頭を悩ませるつもりはない!!」
「余計な事、ねぇ。ま、お前がそれで良いなら良いんじゃねえの?」
塀の向こうを物売りが行き過ぎる音がして、二人は暫く黙った。やがて宇髄が再び口を開く。
「だがな、今日生きている奴が明日も生きている保証は無いんだ。ちょっとぐらいは何かを伝えたって悪くねぇんじゃねえの?」
「…考えておく!」
煉獄の返事に満足した宇髄は急にニヤリと笑うと肩肘をついた。
「で、派手に興味本位で聞くけどよ。いつからだ?」
煉獄は初めから紗雪を気に入ってはいたが、愛してるまでいくとは中々だ。煉獄は腕を組むと宇髄を横目に見た。
「何だ宇髄!俺は君と奥方達の酒の肴になる気はないぞ!?」
「そう言うなって!煉獄のこんな話聞いてやれるのは派手に俺ぐらいなもんだろ!!駄賃がわりだと思って話せよ!」
「酷い言い草だな!」
「まぁまぁ!」
引く気のない様子の宇髄に煉獄は腕組みしたまま胸を張って答えた。
「わからん!」
「もうちょっと派手に掘り下げろ!」
「…継子だったからではない。炎の呼吸を使えたからでもない。ひたむきに頑張る娘だと思った。人をよく見ている娘だとも思った。紗雪が俺を呼ぶ声が好きだと思った。笑っている顔も泣いている顔も怒っている顔も愛しいと思った。そうしているうちにいつの間にか愛する様になっていた。だからわからん!」
「おぉ!言うねぇ!」
明るい朴念仁だった煉獄とは思えない台詞に宇髄は楽しくなって笑った。死にかけた男が愛する相手を見つけたのだ。これが嬉しくなくてなんとする。
「ちなみに紗雪はどう思ってると思う?」
「それがわかれば苦労はせん!」
「違いない!!」
宇髄は腹を抱えて笑った。あんまりな笑い様に煉獄が渋い顔をする。
「笑いすぎだ宇髄!紗雪は好意的に思ってくれているとは思うが、それがどの好意なのか俺には見当がつかん」
敬愛か、恋愛か、はたまたまるで違うものか…。笑いすぎて腹を痛くした宇髄が大きく息を吐いた。
「まぁ、派手に良い方に考えておいても良いんじゃねぇの?じゃなきゃ一緒の布団でなんか寝たりしねぇし」
「何故知っている!?」
「元忍舐めんな!」
「楽しそうですね」
「「!!?」」
気付けば隣に立っていた紗雪に煉獄と宇髄は飛び上がった。いくら賑やかに言い合っていたとは言え全く気配がしなかった。宇髄が引き攣った笑みを浮かべた。
「いつからいたんだ?派手に気配がしなかったな!?流石は次期炎柱殿だぜ!」
「ご冗談を」
紗雪は小さく笑うとキョロリと辺りを見回した。
「そうか、千寿郎さんは今日愼寿郎さんとお出掛けされたんでしたね。今、お茶を入れて来ます」
「いや、お構いなく」
宇髄は手を挙げて制したが、紗雪は持っていた風呂敷を掲げてみせた。
「胡蝶さんからお団子を沢山いただいたんです。蜜璃さんのおすすめのお店らしくて。師範、お出しして良いですか?」
「あぁ!頼む!!」
「はい。では少々お待ち下さい」
紗雪は頭を下げると台所へと向かって行った。その姿が見えなくなると二人揃って脱力する。
「宇髄。君、出禁になるのと一生恨まれるのとどっちが良い?」
「派手に悪かったって。紗雪には聞こえてなかった様だし大丈夫だろ」
「聞こえてたらその髪の毛全て毟り取るぞ」
「悪かったって!!」
煉獄の本気を感じ取り宇髄は頭を押さえた。紗雪がお茶と団子を盆に乗せ戻ってくる。懐から手紙を取り出すと紗雪は煉獄にそれを差し出した。
「預かって来た手紙です。ご覧になって下さい」
「俺にか?」
「宇髄さんにも預かってきています」
煉獄と宇髄は顔を見合わせると手紙を開いた。揃ってニヤリとしてしまう。
「隊士達への柱稽古とは悲鳴嶼さんも考えることが派手だな!」
「うむ!俺達には隊士に基礎を叩き込めとの仰せだ!!」
煉獄は手紙を懐にしまうと紗雪を見た。
「紗雪も柱稽古に行ってくると良い」
「良いんですか?」
煉獄を手伝うつもりだった紗雪は目を丸くした。勿論行けるのならば行きたい。
「他の柱に稽古をつけて貰えれば得るものも多いだろう。ただし!」
「た、ただし?」
紗雪は思わず姿勢をただした。煉獄が団子に手を伸ばすとひと齧りする。
「美味い!」
「師範!?」
人の緊張を返せ。紗雪がジトッと煉獄を睨めば笑い声が返って来た。
「玖ノ型を習得してからだ」
「わかりました。頑張ります」
「うむ!」
(こいつらこれが師弟の距離感だと思ってるんだから恐れ入るよな)
宇髄は程よく焦げ目のついた団子を手にすると口に放り込んだ。