本編
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「お館様、紗雪様がいらっしゃいました」
「入って貰って…おくれ…」
紗雪は産屋敷家に来ていた。にちかの案内で産屋敷の寝所に案内される。中に入るよう促された紗雪は入り口で思わず立ち止まった。
「こんな姿で…すまないね……お入り…椎名」
「紗雪、お館様がお呼びだ」
もはや鼻と口以外の見える所全てが包帯で覆われた産屋敷の寿命が尽きようとしているのは一目瞭然だった。横に控えた悲鳴嶼に言われて一歩離れた場所に座る。畳に手をつくと紗雪は頭を下げた。
「紗雪椎名、参りました」
「突然呼び出して…すまないね……どうしても、椎名に…直接尋ねたいことが…あるんだ……」
「はい」
紗雪は背筋を正すと産屋敷を真っ直ぐ見つめた。その余分な力のないすっきりした居住まいに悲鳴嶼が手を合わせる。
(煉獄よ、君は継子を立派に育て切ったのだな)
「椎名…君は最終決戦に……行く必要は、無いんだよ…」
「お館様!」
悲鳴嶼は驚いて口を挟んだ。紗雪は今や重要な戦力だ。しかし言われた当の紗雪はじっと産屋敷の言葉を待っていた。
「君は…鬼のいない時代の子だ……わざわざ、鬼と戦う…必要が無い…」
「たまたま…この時代に来てしまっただけで……椎名…君は最終決戦に…本当に行くのかい…?」
紗雪は一度目を閉じるとそれから静かに口を開いた。
「紫では遺書を書くことが許されませんでした」
思いがけない告白に悲鳴嶼は数珠を握り締めた。遺書を書くことで心置きなく戦場に赴ける事を自分がよく知っている。心残りを抱えての戦いはあまりに辛い。
「秘密部隊だったので、隊員の死は全て海難事故で行方不明と言う扱いでした。銃創の残る遺体を遺族に返すわけにはいきませんでしたから」
「だから最終選別に通って鬼殺隊士になった後、遺書を書くよう言われて嬉しかったです。誰かに言葉を残して良いと言われたのは初めてだったので…ただ」
紗雪はちょっと言いにくそうに頬をかいた。
「問題は誰に当てて書いたらいいのか分からないことでした。師範の所にお世話になっているとはいえ、煉獄家の皆さんに遺書を残すのはちょっと違う気もしましたし、かと言って他に誰か知り合いがいる訳でもありませんし」
「では…何も書いては…いないのかい…?」
部屋の中で一番具合の悪い産屋敷に気遣われて紗雪は申し訳なく思った。慌てて続きを語る。
「こちらに残る事を選んだ後から少しずつ書けるようになりました。最近やっと書き終わりましてホッとしている所です」
産屋敷が長いため息のような笑いを漏らした。
「そう…良かった…」
「ですので最終決戦に行かせてください」
紗雪は畳に両手をつくと深く頭を下げた。
「言葉を残したい人はこの時代にいます。その人を守る為に戦いたいんです」
「……ありがとう…椎名」
産屋敷に手招きされて紗雪はその隣まで近づいた。包帯の巻かれた手を差し出され、それをそっと両手で包む。
「私も願うよ…君が、君の守りたい人と…幸せになれる…ことを……」
「…ありがとうございます」
紗雪は産屋敷の手を額を押し当てると深々と頭を下げたのだった。
「入って貰って…おくれ…」
紗雪は産屋敷家に来ていた。にちかの案内で産屋敷の寝所に案内される。中に入るよう促された紗雪は入り口で思わず立ち止まった。
「こんな姿で…すまないね……お入り…椎名」
「紗雪、お館様がお呼びだ」
もはや鼻と口以外の見える所全てが包帯で覆われた産屋敷の寿命が尽きようとしているのは一目瞭然だった。横に控えた悲鳴嶼に言われて一歩離れた場所に座る。畳に手をつくと紗雪は頭を下げた。
「紗雪椎名、参りました」
「突然呼び出して…すまないね……どうしても、椎名に…直接尋ねたいことが…あるんだ……」
「はい」
紗雪は背筋を正すと産屋敷を真っ直ぐ見つめた。その余分な力のないすっきりした居住まいに悲鳴嶼が手を合わせる。
(煉獄よ、君は継子を立派に育て切ったのだな)
「椎名…君は最終決戦に……行く必要は、無いんだよ…」
「お館様!」
悲鳴嶼は驚いて口を挟んだ。紗雪は今や重要な戦力だ。しかし言われた当の紗雪はじっと産屋敷の言葉を待っていた。
「君は…鬼のいない時代の子だ……わざわざ、鬼と戦う…必要が無い…」
「たまたま…この時代に来てしまっただけで……椎名…君は最終決戦に…本当に行くのかい…?」
紗雪は一度目を閉じるとそれから静かに口を開いた。
「紫では遺書を書くことが許されませんでした」
思いがけない告白に悲鳴嶼は数珠を握り締めた。遺書を書くことで心置きなく戦場に赴ける事を自分がよく知っている。心残りを抱えての戦いはあまりに辛い。
「秘密部隊だったので、隊員の死は全て海難事故で行方不明と言う扱いでした。銃創の残る遺体を遺族に返すわけにはいきませんでしたから」
「だから最終選別に通って鬼殺隊士になった後、遺書を書くよう言われて嬉しかったです。誰かに言葉を残して良いと言われたのは初めてだったので…ただ」
紗雪はちょっと言いにくそうに頬をかいた。
「問題は誰に当てて書いたらいいのか分からないことでした。師範の所にお世話になっているとはいえ、煉獄家の皆さんに遺書を残すのはちょっと違う気もしましたし、かと言って他に誰か知り合いがいる訳でもありませんし」
「では…何も書いては…いないのかい…?」
部屋の中で一番具合の悪い産屋敷に気遣われて紗雪は申し訳なく思った。慌てて続きを語る。
「こちらに残る事を選んだ後から少しずつ書けるようになりました。最近やっと書き終わりましてホッとしている所です」
産屋敷が長いため息のような笑いを漏らした。
「そう…良かった…」
「ですので最終決戦に行かせてください」
紗雪は畳に両手をつくと深く頭を下げた。
「言葉を残したい人はこの時代にいます。その人を守る為に戦いたいんです」
「……ありがとう…椎名」
産屋敷に手招きされて紗雪はその隣まで近づいた。包帯の巻かれた手を差し出され、それをそっと両手で包む。
「私も願うよ…君が、君の守りたい人と…幸せになれる…ことを……」
「…ありがとうございます」
紗雪は産屋敷の手を額を押し当てると深々と頭を下げたのだった。