本編
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「お久しぶりです。不死川さん」
「よぉ」
蝶屋敷への道すがら紗雪はばったり不死川に会った。ペコリと頭を下げれば気軽に返事を返してくれる。不死川と紗雪は連れ立って蝶屋敷に歩き出した。
「煉獄は退院したんだろぉ?」
「はい。一昨日家に戻りました」
後は飲み薬を飲むだけだから病室にいても邪魔になる、退院しろと胡蝶にズバリ言われていてちょっと可哀想だったのを思い出す。
「宇髄の野郎も引退したしなぁ。柱が二人も欠けるなんざ情けねぇ」
口ではそう言うが煉獄の見舞いに来た回数で言えば不死川は宇髄の次に多いのを紗雪は知っている。
「お前さっさと十ニ鬼月倒して柱に上がって来いよぉ」
「簡単に言いますね!?」
紗雪が顔を引き攣らせると不死川は呆れた視線を向けた。
「お前自分が鬼を何匹斬ったか分かってんのかぁ?46匹だぞ。もう誰もがお前が次期炎柱だと知ってんだ。そのつまんねぇ謙遜はやめろぉ」
「初耳です…」
どうりで最近他の隊士や隠の態度が丁寧だと思った。謎は解けたが紗雪は頭を抱えた。
「ただコツコツやって来ただけの筈なんですけど」
「だから!そのコツコツが鬼殺隊でどんだけ難しいと思ってんだテメェは」
階級の低いものになればなるほどバタバタ死んでいく。いくら軍人上がりとは言え紗雪には間違いなく才能があったのだ。
ったくよぉ!と不死川がため息をついた瞬間、腹の虫が盛大に鳴って二人は沈黙した。チラリと不死川が紗雪を見ると、完全にそっぽを向いている。不死川は頭をかくとため息をついた。
「笑うんなら思いっきり笑ぇ」
「すいません。もうそんな時間なんですね」
紗雪は懐から懐中時計を取り出すと時間を確認した。上蓋のついたハンターケースタイプのそれに不死川が目を止める。
「懐中時計とは洒落たもん持ってんなぁ」
「………」
不死川の言葉に紗雪はピタリと動きを止めた。恐る恐る不死川を見る。
「あの…懐中時計って高級品だったりします?」
「まぁ、あんまり持ってる奴はいないわなぁ」
「あぁぁ、あの人はぁぁぁ」
紗雪はしゃがみ込むと頭を抱えた。目を丸くした不死川が尋ねる。
「おい、往来でしゃがみ込むんじゃねぇ。懐中時計が何だってんだぁ?」
「話せば長いんですけど…」
紗雪は髪紐から始まり羽織、刀の鍔、万年筆そして懐中時計の事を話した。話していくうちに不死川の顔がどんどん呆れていくのが切ない。
「師範にはそう言う高級なものを買うのは止めて欲しいと何度もお伝えしているんですけど…いや、もう最悪は高級品なら高級品と言ってくれと。わかっていれば扱いを変えるともうホント何度も何度も…」
(煉獄ぅ…お前よぉ)
不死川は流石に紗雪に同情した。この時代の物の価値を知らない紗雪がそういったものを気安く使っているのを、事情を知らない隊士や隠が見たらいらないやっかみを買うのは目に見えている。
「開き直るしかねぇだろぉ」
しかし紗雪が隊士になる前からずっとだと言うなら今更感が凄い。何かを気をつけた所で手遅れだろう。不死川がそう言えば紗雪が困った顔をした。
「継子に贅沢させてるとか師範の評判が下がる様な事はしたく無いんですけど…」
「はぁ?気にしてんのはそっちかよぉ」
てっきり紗雪が困っていると思っていた不死川は馬鹿らしくなって手を振った。
「気にすんなの一択だろぉ、阿呆らしぃ」
「あれ?なんか急に雑になりましたね!?切実なんですけど!?」
「煉獄が好きでやってる事で評判下がったって気にする奴じゃねぇよ」
寧ろ嬉々として紗雪の身の回りを自分の選んだもので固めて来そうだ。煉獄の途方もない執着を感じ不死川はチラリと紗雪の剣帯を見た。
煉獄と揃いの剣帯を。
「…なぁ、その剣帯ってよぉ」
「あ、これは違いますよ?師範がお下がりをくださったんです。皮が馴染んでいて使い易いからって」
「…そぉかい」
もう色々手遅れな気がしてそう返事をするのがやっとの不死川だった。
「よぉ」
蝶屋敷への道すがら紗雪はばったり不死川に会った。ペコリと頭を下げれば気軽に返事を返してくれる。不死川と紗雪は連れ立って蝶屋敷に歩き出した。
「煉獄は退院したんだろぉ?」
「はい。一昨日家に戻りました」
後は飲み薬を飲むだけだから病室にいても邪魔になる、退院しろと胡蝶にズバリ言われていてちょっと可哀想だったのを思い出す。
「宇髄の野郎も引退したしなぁ。柱が二人も欠けるなんざ情けねぇ」
口ではそう言うが煉獄の見舞いに来た回数で言えば不死川は宇髄の次に多いのを紗雪は知っている。
「お前さっさと十ニ鬼月倒して柱に上がって来いよぉ」
「簡単に言いますね!?」
紗雪が顔を引き攣らせると不死川は呆れた視線を向けた。
「お前自分が鬼を何匹斬ったか分かってんのかぁ?46匹だぞ。もう誰もがお前が次期炎柱だと知ってんだ。そのつまんねぇ謙遜はやめろぉ」
「初耳です…」
どうりで最近他の隊士や隠の態度が丁寧だと思った。謎は解けたが紗雪は頭を抱えた。
「ただコツコツやって来ただけの筈なんですけど」
「だから!そのコツコツが鬼殺隊でどんだけ難しいと思ってんだテメェは」
階級の低いものになればなるほどバタバタ死んでいく。いくら軍人上がりとは言え紗雪には間違いなく才能があったのだ。
ったくよぉ!と不死川がため息をついた瞬間、腹の虫が盛大に鳴って二人は沈黙した。チラリと不死川が紗雪を見ると、完全にそっぽを向いている。不死川は頭をかくとため息をついた。
「笑うんなら思いっきり笑ぇ」
「すいません。もうそんな時間なんですね」
紗雪は懐から懐中時計を取り出すと時間を確認した。上蓋のついたハンターケースタイプのそれに不死川が目を止める。
「懐中時計とは洒落たもん持ってんなぁ」
「………」
不死川の言葉に紗雪はピタリと動きを止めた。恐る恐る不死川を見る。
「あの…懐中時計って高級品だったりします?」
「まぁ、あんまり持ってる奴はいないわなぁ」
「あぁぁ、あの人はぁぁぁ」
紗雪はしゃがみ込むと頭を抱えた。目を丸くした不死川が尋ねる。
「おい、往来でしゃがみ込むんじゃねぇ。懐中時計が何だってんだぁ?」
「話せば長いんですけど…」
紗雪は髪紐から始まり羽織、刀の鍔、万年筆そして懐中時計の事を話した。話していくうちに不死川の顔がどんどん呆れていくのが切ない。
「師範にはそう言う高級なものを買うのは止めて欲しいと何度もお伝えしているんですけど…いや、もう最悪は高級品なら高級品と言ってくれと。わかっていれば扱いを変えるともうホント何度も何度も…」
(煉獄ぅ…お前よぉ)
不死川は流石に紗雪に同情した。この時代の物の価値を知らない紗雪がそういったものを気安く使っているのを、事情を知らない隊士や隠が見たらいらないやっかみを買うのは目に見えている。
「開き直るしかねぇだろぉ」
しかし紗雪が隊士になる前からずっとだと言うなら今更感が凄い。何かを気をつけた所で手遅れだろう。不死川がそう言えば紗雪が困った顔をした。
「継子に贅沢させてるとか師範の評判が下がる様な事はしたく無いんですけど…」
「はぁ?気にしてんのはそっちかよぉ」
てっきり紗雪が困っていると思っていた不死川は馬鹿らしくなって手を振った。
「気にすんなの一択だろぉ、阿呆らしぃ」
「あれ?なんか急に雑になりましたね!?切実なんですけど!?」
「煉獄が好きでやってる事で評判下がったって気にする奴じゃねぇよ」
寧ろ嬉々として紗雪の身の回りを自分の選んだもので固めて来そうだ。煉獄の途方もない執着を感じ不死川はチラリと紗雪の剣帯を見た。
煉獄と揃いの剣帯を。
「…なぁ、その剣帯ってよぉ」
「あ、これは違いますよ?師範がお下がりをくださったんです。皮が馴染んでいて使い易いからって」
「…そぉかい」
もう色々手遅れな気がしてそう返事をするのがやっとの不死川だった。