本編
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煉獄が意識を取り戻してから更に2週間が過ぎた。
その間に愼寿郎に詫びを入れられ、千寿郎及びかまぼこ隊には泣かれ、不死川に凄まれ、冨岡に謎の煽りをくらい、甘露寺からは山のような甘味の見舞いを受け取り、伊黒に嫌味を言われ、宇髄から派手な怪我だと褒められ(?)煉獄は賑やかに過ごしていた。
「じゃ、俺は派手に追ってる案件があるから行くぜ!」
「わざわざすまないな!宇髄!!」
煉獄の傷はかなりの所まで回復していた。胡蝶に言わせると紗雪が感染症に細心の注意を払ったお陰だという。宇髄が帰り静かになった病室で煉獄はベッドから暮れていく空を見ていた。
(紗雪は何をしているのだろうか)
煉獄が意識を取り戻してから紗雪は一度も蝶屋敷を訪れていなかった。甘露寺が言うにはそれこそ忙殺の勢いで任務に当たっているらしい。
(不甲斐ない)
せめて目が無事ならば10分の1でも代わってやれるのにと思う。仲間が任務に行くのをここから見送ることしか出来ない自分に煉獄は拳を握りしめた。
「師範〜…」
「?」
何とも力の抜けたか弱い声がして煉獄は窓へと寄った。高く伸びた木の枝に紗雪が腰掛けている。隊服どころか寝巻きのままの姿に煉獄は目を丸くした。
「紗雪!」
「お邪魔して良いですか?」
「無論だ!さぁ」
窓の前を空ければ紗雪が音もさせずに入ってくる。夏の初めとは言え夜の空気は肌寒い。煉獄は来ていた羽織を紗雪の肩にかけた。
「こんな格好でどうした?紗雪」
「ここ二日ほど激務がたたって寝てました。でも!二日も寝たからもう大丈夫なんですよ!?なのに愼寿郎さんには正座でガチ説教されるし、千寿郎さんには隊服も日輪刀も隠されてしまうし…」
居た堪れなくなって思わず出て来てしまった。そう告げる紗雪に煉獄はその目の下を撫でた。
「父上と千寿郎が正しいぞ紗雪。目の下のクマが酷い」
「う………落ち着かないんです」
紗雪は俯いて羽織を握りしめると呟いた。
「私が休んでいる間に誰かが死んでいるんじゃ無いかと思うと気が急くんです。眠らず走れば間に合うんじゃ無いかと」
体は疲れて休もうとするけれど、心が休まらない。煉獄は紗雪の頭に手を置くとそっと抱き寄せた。
「俺も昔はそうだった。柱になる前、ただ我武者羅に鬼を斬っていた。誰よりも速く、誰よりも遠くまで腕を伸ばし人々を掬わねばと」
「………」
「だが、その無理が災いして成り立ての隊士を二人死なせてしまった」
自分の任務に目の前の成り立て隊士達が追っていた鬼。その上近場からの救援要請。煉獄はそのどれもを救おうとし…結果失敗した。
「紗雪、柱とて出来ることには限りがある。俺が良い証拠だ。だからこそ出来ることを確実にせねばならない」
「ですから…!」
紗雪が反論しようとするのをその口に人差し指を当てて止める。泣きそうな顔の紗雪に煉獄の胸が痛んだ。
(紗雪に背負わせてしまったのだな)
次期炎柱にと言いながら煉獄はその覚悟はしていなかった。いつでも自分が代わりに背負ってやれると思っていたのだ。
(俺は紗雪の育手だ!しっかりしなければ)
「休むときにはしっかり休む。美味いものを食べている時はしっかり味わう。綺麗なものを見たときには素直に感動する。それも【出来ること】だ紗雪」
それをしなければ心が死んでしまう。己を叱咤し律するばかりでは駄目なのだ。
「看病の時に使っていたベッドがまだある。今日はここで休んでいくと良い」
「……あの」
紗雪は煉獄の袖を掴むと上目遣いに見上げた。
「一緒に寝ても良いですか?」
煉獄はちょっとビックリした顔をしたが、穏やかに微笑んだ。それだけ紗雪が弱り切っていると言うことだ。
「体の大きな隊士用に大きめには出来ているが広くは無いぞ?それでも良ければ構わない」
コクリと頷く紗雪と共にベッドに潜り込む。紗雪が落ちてしまわないよう煉獄が背中に手を回した。
「お休み紗雪」
「…すいません、甘えたことを言って……私、今までもずっと師範に甘えていたんですね」
煉獄が休んでいるから自分が休んでも気にならない。煉獄が美味い美味いと食べるから味わって食べても良い。煉獄が、煉獄が…それを理由に紗雪は人並みの生活がおくれて来たのだ。
「今日も師範がここにいてくれて良かったです」
背中にある煉獄の手が暖かくて安心する。紗雪はあっという間に眠りに落ちていった。煉獄はその寝顔に『任務に行けない自分』からようやく抜け出せたと感じた。
(任務に共には行けずとも、紗雪の心なら守ってやれる)
辛い時に辛いと言える場所はあるだけで救われる事が多い。まだ自分にもやれる事がある。それは煉獄にとっても救いだった。
(来てくれて良かったと言うべきは俺の方だ)
「んー…」
モゾリと蠢いて煉獄に擦り寄ってくる紗雪をそっと抱き寄せると、煉獄は窓枠に止まっている要に合図を送った。
(千寿郎も父上も心配しているだろう)
要は静かに飛び立っていった。紗雪を起こさないよう要なりに気を使ったのだろう。
翌朝、半泣きの千寿郎が荷物を持って駆け込んでくるまでグッスリと眠った煉獄と紗雪であった。
その間に愼寿郎に詫びを入れられ、千寿郎及びかまぼこ隊には泣かれ、不死川に凄まれ、冨岡に謎の煽りをくらい、甘露寺からは山のような甘味の見舞いを受け取り、伊黒に嫌味を言われ、宇髄から派手な怪我だと褒められ(?)煉獄は賑やかに過ごしていた。
「じゃ、俺は派手に追ってる案件があるから行くぜ!」
「わざわざすまないな!宇髄!!」
煉獄の傷はかなりの所まで回復していた。胡蝶に言わせると紗雪が感染症に細心の注意を払ったお陰だという。宇髄が帰り静かになった病室で煉獄はベッドから暮れていく空を見ていた。
(紗雪は何をしているのだろうか)
煉獄が意識を取り戻してから紗雪は一度も蝶屋敷を訪れていなかった。甘露寺が言うにはそれこそ忙殺の勢いで任務に当たっているらしい。
(不甲斐ない)
せめて目が無事ならば10分の1でも代わってやれるのにと思う。仲間が任務に行くのをここから見送ることしか出来ない自分に煉獄は拳を握りしめた。
「師範〜…」
「?」
何とも力の抜けたか弱い声がして煉獄は窓へと寄った。高く伸びた木の枝に紗雪が腰掛けている。隊服どころか寝巻きのままの姿に煉獄は目を丸くした。
「紗雪!」
「お邪魔して良いですか?」
「無論だ!さぁ」
窓の前を空ければ紗雪が音もさせずに入ってくる。夏の初めとは言え夜の空気は肌寒い。煉獄は来ていた羽織を紗雪の肩にかけた。
「こんな格好でどうした?紗雪」
「ここ二日ほど激務がたたって寝てました。でも!二日も寝たからもう大丈夫なんですよ!?なのに愼寿郎さんには正座でガチ説教されるし、千寿郎さんには隊服も日輪刀も隠されてしまうし…」
居た堪れなくなって思わず出て来てしまった。そう告げる紗雪に煉獄はその目の下を撫でた。
「父上と千寿郎が正しいぞ紗雪。目の下のクマが酷い」
「う………落ち着かないんです」
紗雪は俯いて羽織を握りしめると呟いた。
「私が休んでいる間に誰かが死んでいるんじゃ無いかと思うと気が急くんです。眠らず走れば間に合うんじゃ無いかと」
体は疲れて休もうとするけれど、心が休まらない。煉獄は紗雪の頭に手を置くとそっと抱き寄せた。
「俺も昔はそうだった。柱になる前、ただ我武者羅に鬼を斬っていた。誰よりも速く、誰よりも遠くまで腕を伸ばし人々を掬わねばと」
「………」
「だが、その無理が災いして成り立ての隊士を二人死なせてしまった」
自分の任務に目の前の成り立て隊士達が追っていた鬼。その上近場からの救援要請。煉獄はそのどれもを救おうとし…結果失敗した。
「紗雪、柱とて出来ることには限りがある。俺が良い証拠だ。だからこそ出来ることを確実にせねばならない」
「ですから…!」
紗雪が反論しようとするのをその口に人差し指を当てて止める。泣きそうな顔の紗雪に煉獄の胸が痛んだ。
(紗雪に背負わせてしまったのだな)
次期炎柱にと言いながら煉獄はその覚悟はしていなかった。いつでも自分が代わりに背負ってやれると思っていたのだ。
(俺は紗雪の育手だ!しっかりしなければ)
「休むときにはしっかり休む。美味いものを食べている時はしっかり味わう。綺麗なものを見たときには素直に感動する。それも【出来ること】だ紗雪」
それをしなければ心が死んでしまう。己を叱咤し律するばかりでは駄目なのだ。
「看病の時に使っていたベッドがまだある。今日はここで休んでいくと良い」
「……あの」
紗雪は煉獄の袖を掴むと上目遣いに見上げた。
「一緒に寝ても良いですか?」
煉獄はちょっとビックリした顔をしたが、穏やかに微笑んだ。それだけ紗雪が弱り切っていると言うことだ。
「体の大きな隊士用に大きめには出来ているが広くは無いぞ?それでも良ければ構わない」
コクリと頷く紗雪と共にベッドに潜り込む。紗雪が落ちてしまわないよう煉獄が背中に手を回した。
「お休み紗雪」
「…すいません、甘えたことを言って……私、今までもずっと師範に甘えていたんですね」
煉獄が休んでいるから自分が休んでも気にならない。煉獄が美味い美味いと食べるから味わって食べても良い。煉獄が、煉獄が…それを理由に紗雪は人並みの生活がおくれて来たのだ。
「今日も師範がここにいてくれて良かったです」
背中にある煉獄の手が暖かくて安心する。紗雪はあっという間に眠りに落ちていった。煉獄はその寝顔に『任務に行けない自分』からようやく抜け出せたと感じた。
(任務に共には行けずとも、紗雪の心なら守ってやれる)
辛い時に辛いと言える場所はあるだけで救われる事が多い。まだ自分にもやれる事がある。それは煉獄にとっても救いだった。
(来てくれて良かったと言うべきは俺の方だ)
「んー…」
モゾリと蠢いて煉獄に擦り寄ってくる紗雪をそっと抱き寄せると、煉獄は窓枠に止まっている要に合図を送った。
(千寿郎も父上も心配しているだろう)
要は静かに飛び立っていった。紗雪を起こさないよう要なりに気を使ったのだろう。
翌朝、半泣きの千寿郎が荷物を持って駆け込んでくるまでグッスリと眠った煉獄と紗雪であった。