本編
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「………」
意識がゆっくり浮上して煉獄は目を覚ました。窓から明るい日差しが差し込んだ部屋の中はしんといている。
自分の手を掲げて見た煉獄はそっと息を吐いた。
(生きている)
パタパタと蝶屋敷の者の足音が遠くで聞こえて煉獄は首を巡らせた。
「…紗雪」
個室であるはずの室内にもう一つベットが入れられ、そこに紗雪が眠っていた。隊服を着たままぐっすり眠り込んでいる。
「紗雪」
掠れた声でもう一度名を呼ぶ。ピクリと瞼が震えて紗雪が目を開けた。ぼんやりと煉獄を見つめた後、ガバッと身を起こす。
「師は…っ!」
紗雪が勢い余ってベッドから転がり落ちゴン!と痛い音が響いた。体を起こせない煉獄は見守るしかない。
「大丈夫か」
「師範!!」
紗雪は膝立ちになると煉獄の手を両手で掴んだ。
「ここがどこかわかりますか!?」
「…蝶屋敷だな」
「じゃあ私が誰かわかりますか?」
必死で煉獄の意識レベルを確認する紗雪の手を強く握りしめる。
「紗雪椎名…俺の大事な継子だ」
「………良かった…」
紗雪は煉獄の手に自分の額を押し当てた。気が緩んだついでに涙腺も緩む。グスッと鼻を啜った紗雪に煉獄が小さく笑った。
「泣くな」
「泣くぐらいしますよ」
「俺は大丈夫だ」
「腹に穴開けた人が何言ってるんですか」
「君のお陰で生きている」
「師範がびっくり人間大会優勝者だからですよ」
「初耳だ」
笑った振動が体に響いて煉獄が顔をしかめる。紗雪が涙を拭うと立ち上がった。
「胡蝶さんを呼んできます。愼寿郎さんや千寿郎さんにも知らせなくちゃ。宇髄さんや蜜璃さん達も来たんですよ。炭治郎君たちも心配してます」
「君は?」
煉獄は掴んだままの紗雪の手を引くと顔を見た。生き抜いた事への不思議な高揚感が煉獄を後押しする。煉獄は熱っぽい瞳で紗雪を見つめた。
「案じてくれたのだろう?」
「…師範が回復したら一発ぶん殴ることにします」
しかし紗雪は目を座らせるとそう言い切った。目を丸くして沈黙する煉獄にフイと背を向ける。
「えぇ、えぇ。何があろうと絶対殴りますとも」
「紗雪待…」
バタンと閉じられた戸に煉獄は特大のため息をついた。
(やらかした)
後悔先に立たずを実感する煉獄だった。
「ご無事で何よりでした煉獄さん」
「無事とは言い難いがな」
紗雪が去った後やって来た胡蝶に煉獄は診察を受けていた。左の瞼を押し上げて胡蝶が首を振る。
「やはり潰れていますね」
「そうか。炎柱の立場をお館様にお返ししなくてはな」
片目を失い、腹に開いた穴の所為で全集中の常中を使うことが出来ない。覚悟を決めていた煉獄は穏やかにそれを受け入れた。
「俺はどのくらい眠っていたんだ?」
「2週間ですね。長引かなくて良かったです。紗雪さんが持たないところでしたから」
「紗雪が?」
胡蝶の意外な言葉に煉獄が目を丸くした。一つ頷くと胡蝶が続ける。
「現在煉獄さんが担当されていた区域は紗雪さんが受け持っています。それに加えて自分の任務に、階級が下の隊士の補佐。怪我をした隊士を蝶屋敷に担ぎ込んでくることもしばしばです」
「煉獄さんの弟さんの心理的補佐もされている様ですし、時間があれば煉獄さんの看病にも来ていました。それでなくても煉獄さんに輸血した後、2日寝込んでいましたからよく持っているなと思います」
「待て。2日寝込んだとはどう言うことだ」
あら…と胡蝶は口に手を当てたが、煉獄の顔を見ると悪びれもせず続けた。
「紗雪さんは煉獄さんに直接輸血をした際およそ1リットルの血液を失いました。これは軽度の血圧降下や意識の不穏を引き起こすとされています。要は貧血で倒れたと言うことですね」
「血液というのは一日二日で元に戻るものではないのに無理をされるので、煉獄さんの看病を止める気がないのだからここで寝てしまいましょうとベッドを運び込んだんですよ」
「青い顔で紗雪さんがウロウロするものですからカナヲがその後を泣きそうな顔でついて歩いて大変可愛い…痛ましかったです」
煉獄は目を閉じると難しい顔で黙り込んだ。胡蝶がニコニコしたまま尋ねる。
「どうかされましたか?煉獄さん」
「…反省している所だ」
死にかけたとは言え今の状態の紗雪に言って良い言葉ではなかった。ただの自分勝手な妄言だ。煉獄の心底反省している様子に胡蝶の笑みが深まった。
「そうですね。あそこまでボロボロになっている紗雪さんに案じてくれてたのか?は無いですね」
「…聞いていたのか」
「あら、すいません」
楽しそうに謝る胡蝶に煉獄は今日2度目の特大のため息をついた。
意識がゆっくり浮上して煉獄は目を覚ました。窓から明るい日差しが差し込んだ部屋の中はしんといている。
自分の手を掲げて見た煉獄はそっと息を吐いた。
(生きている)
パタパタと蝶屋敷の者の足音が遠くで聞こえて煉獄は首を巡らせた。
「…紗雪」
個室であるはずの室内にもう一つベットが入れられ、そこに紗雪が眠っていた。隊服を着たままぐっすり眠り込んでいる。
「紗雪」
掠れた声でもう一度名を呼ぶ。ピクリと瞼が震えて紗雪が目を開けた。ぼんやりと煉獄を見つめた後、ガバッと身を起こす。
「師は…っ!」
紗雪が勢い余ってベッドから転がり落ちゴン!と痛い音が響いた。体を起こせない煉獄は見守るしかない。
「大丈夫か」
「師範!!」
紗雪は膝立ちになると煉獄の手を両手で掴んだ。
「ここがどこかわかりますか!?」
「…蝶屋敷だな」
「じゃあ私が誰かわかりますか?」
必死で煉獄の意識レベルを確認する紗雪の手を強く握りしめる。
「紗雪椎名…俺の大事な継子だ」
「………良かった…」
紗雪は煉獄の手に自分の額を押し当てた。気が緩んだついでに涙腺も緩む。グスッと鼻を啜った紗雪に煉獄が小さく笑った。
「泣くな」
「泣くぐらいしますよ」
「俺は大丈夫だ」
「腹に穴開けた人が何言ってるんですか」
「君のお陰で生きている」
「師範がびっくり人間大会優勝者だからですよ」
「初耳だ」
笑った振動が体に響いて煉獄が顔をしかめる。紗雪が涙を拭うと立ち上がった。
「胡蝶さんを呼んできます。愼寿郎さんや千寿郎さんにも知らせなくちゃ。宇髄さんや蜜璃さん達も来たんですよ。炭治郎君たちも心配してます」
「君は?」
煉獄は掴んだままの紗雪の手を引くと顔を見た。生き抜いた事への不思議な高揚感が煉獄を後押しする。煉獄は熱っぽい瞳で紗雪を見つめた。
「案じてくれたのだろう?」
「…師範が回復したら一発ぶん殴ることにします」
しかし紗雪は目を座らせるとそう言い切った。目を丸くして沈黙する煉獄にフイと背を向ける。
「えぇ、えぇ。何があろうと絶対殴りますとも」
「紗雪待…」
バタンと閉じられた戸に煉獄は特大のため息をついた。
(やらかした)
後悔先に立たずを実感する煉獄だった。
「ご無事で何よりでした煉獄さん」
「無事とは言い難いがな」
紗雪が去った後やって来た胡蝶に煉獄は診察を受けていた。左の瞼を押し上げて胡蝶が首を振る。
「やはり潰れていますね」
「そうか。炎柱の立場をお館様にお返ししなくてはな」
片目を失い、腹に開いた穴の所為で全集中の常中を使うことが出来ない。覚悟を決めていた煉獄は穏やかにそれを受け入れた。
「俺はどのくらい眠っていたんだ?」
「2週間ですね。長引かなくて良かったです。紗雪さんが持たないところでしたから」
「紗雪が?」
胡蝶の意外な言葉に煉獄が目を丸くした。一つ頷くと胡蝶が続ける。
「現在煉獄さんが担当されていた区域は紗雪さんが受け持っています。それに加えて自分の任務に、階級が下の隊士の補佐。怪我をした隊士を蝶屋敷に担ぎ込んでくることもしばしばです」
「煉獄さんの弟さんの心理的補佐もされている様ですし、時間があれば煉獄さんの看病にも来ていました。それでなくても煉獄さんに輸血した後、2日寝込んでいましたからよく持っているなと思います」
「待て。2日寝込んだとはどう言うことだ」
あら…と胡蝶は口に手を当てたが、煉獄の顔を見ると悪びれもせず続けた。
「紗雪さんは煉獄さんに直接輸血をした際およそ1リットルの血液を失いました。これは軽度の血圧降下や意識の不穏を引き起こすとされています。要は貧血で倒れたと言うことですね」
「血液というのは一日二日で元に戻るものではないのに無理をされるので、煉獄さんの看病を止める気がないのだからここで寝てしまいましょうとベッドを運び込んだんですよ」
「青い顔で紗雪さんがウロウロするものですからカナヲがその後を泣きそうな顔でついて歩いて大変可愛い…痛ましかったです」
煉獄は目を閉じると難しい顔で黙り込んだ。胡蝶がニコニコしたまま尋ねる。
「どうかされましたか?煉獄さん」
「…反省している所だ」
死にかけたとは言え今の状態の紗雪に言って良い言葉ではなかった。ただの自分勝手な妄言だ。煉獄の心底反省している様子に胡蝶の笑みが深まった。
「そうですね。あそこまでボロボロになっている紗雪さんに案じてくれてたのか?は無いですね」
「…聞いていたのか」
「あら、すいません」
楽しそうに謝る胡蝶に煉獄は今日2度目の特大のため息をついた。