本編
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「師範の任務にですか?」
「あぁ!紗雪も任務が続いている所すまないが短期間のうちに四十名以上が行方不明になっている汽車がある!数名の隊士も消息を絶ったので俺に話が回ってきた!!」
紗雪は久しぶりに自分の装備品を検品していた。大体は胡蝶の所へ見本として渡してしまったが、貴重な薬やこちらでは手に入れようのないものは残してある。
注射器の金属針やシリンジに異常がないことを確認すると専用のポーチに収納し、紗雪は漸く煉獄の方へ向き直った。
「お待たせして申し訳ありません師範。すぐに出発されますか?」
「無論だ!鬼は人を喰うのを待ったりはしないからな!」
「わかりました。蝶屋敷にだけ寄ってもいいですか?装備品を保管しておいてくれるそうなので」
「大丈夫だ!では走ることにしよう!!」
紗雪は煉獄と共に蝶屋敷に寄って用を済ませると任務へと出発した。要と紅の先導に従い駆けて行く。
「何処へ向かいますか?」
「無限列車と言う汽車だ!行方不明者が出た為に点検の名目で機関庫に入れられていたものが再運行するらしい!」
屋根を飛び越え人気のない路地に降りると人混みの中にそれとなく紛れる。駅を目指して歩きながら紗雪が尋ねた。
「…こちらの汽車と言うと蒸気機関車ですか?あれ、煙と音が凄いんですよね?」
「紗雪の所は違うのか?」
「電車と言いまして、電気を動力に動かしてましたね。あと…磁力で動くのもあったような?」
あまり詳しくないので話がふわっとしてしまう。しかし煉獄は興味深く話を聞いてくれた。
「電気とは部屋を明るく照らすものだと思っていたが、活用法があるものだな!」
もう少しで駅という所で笛の音が鋭く鳴り、二人は足を止めた。警官が何故か煉獄と紗雪を指差し走ってくる。
「えっ!?」
「走るぞ!」
煉獄が紗雪の手を取ると細い路地へと駆け込んだ。何度か別れ道を曲がり物陰に隠れる。警官の足音が近くを通り過ぎた。
「師範、何が…」
「流石に大きな駅の近くだからな。日輪刀を見咎めたのだろう」
「非公認組織って辛いですね」
ナイフも銃も大手を振ってと言うわけにはいかないが、所持を咎められたことのない紗雪には切ない話である。
「…今日の警官は頑張るな」
再び近づいてきた警官の気配に煉獄は紗雪を奥へと押した。しかし二人が隠れるにはやや狭い。
「見つかると厄介ですよね」
「そうだな。任務に支障があってはいけない」
「師範、ちょっと失礼しますね」
紗雪は煉獄を壁の方に立たせると自分の羽織を脱いだ。黒い詰襟の上着を脱ぐとワイシャツの第二ボタンまで外し、髪を解く。羽織を腰に巻いてスカートのように装うと紗雪は煉獄にしな垂れかかった。
「紗雪…」
「適当に合わせてください」
警官の持つ懐中電灯の明かりが近づいてきて煉獄が紗雪を抱きしめた。鼻先を擦り合わせるように顔を近づける。
(手慣れてませんかね!?)
紗雪が内心の動揺を隠して煉獄の首に腕を回す。灯りに照らされ紗雪が気怠そうに警官を振り返った。
「何か御用かしら?」
「い、いや…帯刀した怪しい奴を見なかったか?」
「そんなの見てる暇あったと思う?」
面白そうに笑うと紗雪は煉獄の胸に頭を預けた。煉獄の指先が紗雪の頬をくすぐる。
「見なかったならいい!」
警官は真っ赤になると逃げるように去っていった。気配が遠ざかって行くのを確認すると、紗雪は両手で顔を覆いしゃがみ込んだ。顔や耳どころか首まで赤い自覚がある。
「…刀じゃなく耳から炎が出るかと思いましたよ」
「………」
「…師範?」
軽口への返事が無い事に紗雪が顔を上げると、煉獄もまた顔を真っ赤に染めていた。衝撃の光景に紗雪が固まる。
「…やはり君は留守番だな」
煉獄は片手で顔を覆うとそう告げた。紗雪が慌てて立ち上がると煉獄の腕に縋る。
「そんな!ついて行きます!!」
「頼む!俺が任務に集中出来ない!!」
柱としてあるまじき台詞だが、煉獄の正直な気持ちだった。任務中、紗雪の顔を見るたび今見た姿がチラつくなんて耐えられる気がしない。煉獄は紗雪のワイシャツに手を伸ばすとボタンを上まで止めた。
「君の鎹鴉は飛ぶのが速い。何かそちらでも分かったことがあれば知らせてくれ」
情報収集は無限列車まで行かなくとも出来る。紗雪は詰襟の隊服を着て羽織を着ると頷いた。自分の我儘を通して煉獄を困らせる訳にはいかない。
「わかりました」
「うむ!では後を頼むぞ紗雪!」
羽織を翻し歩いて行く煉獄の後ろ姿をじっと見送る紗雪だった。
「あぁ!紗雪も任務が続いている所すまないが短期間のうちに四十名以上が行方不明になっている汽車がある!数名の隊士も消息を絶ったので俺に話が回ってきた!!」
紗雪は久しぶりに自分の装備品を検品していた。大体は胡蝶の所へ見本として渡してしまったが、貴重な薬やこちらでは手に入れようのないものは残してある。
注射器の金属針やシリンジに異常がないことを確認すると専用のポーチに収納し、紗雪は漸く煉獄の方へ向き直った。
「お待たせして申し訳ありません師範。すぐに出発されますか?」
「無論だ!鬼は人を喰うのを待ったりはしないからな!」
「わかりました。蝶屋敷にだけ寄ってもいいですか?装備品を保管しておいてくれるそうなので」
「大丈夫だ!では走ることにしよう!!」
紗雪は煉獄と共に蝶屋敷に寄って用を済ませると任務へと出発した。要と紅の先導に従い駆けて行く。
「何処へ向かいますか?」
「無限列車と言う汽車だ!行方不明者が出た為に点検の名目で機関庫に入れられていたものが再運行するらしい!」
屋根を飛び越え人気のない路地に降りると人混みの中にそれとなく紛れる。駅を目指して歩きながら紗雪が尋ねた。
「…こちらの汽車と言うと蒸気機関車ですか?あれ、煙と音が凄いんですよね?」
「紗雪の所は違うのか?」
「電車と言いまして、電気を動力に動かしてましたね。あと…磁力で動くのもあったような?」
あまり詳しくないので話がふわっとしてしまう。しかし煉獄は興味深く話を聞いてくれた。
「電気とは部屋を明るく照らすものだと思っていたが、活用法があるものだな!」
もう少しで駅という所で笛の音が鋭く鳴り、二人は足を止めた。警官が何故か煉獄と紗雪を指差し走ってくる。
「えっ!?」
「走るぞ!」
煉獄が紗雪の手を取ると細い路地へと駆け込んだ。何度か別れ道を曲がり物陰に隠れる。警官の足音が近くを通り過ぎた。
「師範、何が…」
「流石に大きな駅の近くだからな。日輪刀を見咎めたのだろう」
「非公認組織って辛いですね」
ナイフも銃も大手を振ってと言うわけにはいかないが、所持を咎められたことのない紗雪には切ない話である。
「…今日の警官は頑張るな」
再び近づいてきた警官の気配に煉獄は紗雪を奥へと押した。しかし二人が隠れるにはやや狭い。
「見つかると厄介ですよね」
「そうだな。任務に支障があってはいけない」
「師範、ちょっと失礼しますね」
紗雪は煉獄を壁の方に立たせると自分の羽織を脱いだ。黒い詰襟の上着を脱ぐとワイシャツの第二ボタンまで外し、髪を解く。羽織を腰に巻いてスカートのように装うと紗雪は煉獄にしな垂れかかった。
「紗雪…」
「適当に合わせてください」
警官の持つ懐中電灯の明かりが近づいてきて煉獄が紗雪を抱きしめた。鼻先を擦り合わせるように顔を近づける。
(手慣れてませんかね!?)
紗雪が内心の動揺を隠して煉獄の首に腕を回す。灯りに照らされ紗雪が気怠そうに警官を振り返った。
「何か御用かしら?」
「い、いや…帯刀した怪しい奴を見なかったか?」
「そんなの見てる暇あったと思う?」
面白そうに笑うと紗雪は煉獄の胸に頭を預けた。煉獄の指先が紗雪の頬をくすぐる。
「見なかったならいい!」
警官は真っ赤になると逃げるように去っていった。気配が遠ざかって行くのを確認すると、紗雪は両手で顔を覆いしゃがみ込んだ。顔や耳どころか首まで赤い自覚がある。
「…刀じゃなく耳から炎が出るかと思いましたよ」
「………」
「…師範?」
軽口への返事が無い事に紗雪が顔を上げると、煉獄もまた顔を真っ赤に染めていた。衝撃の光景に紗雪が固まる。
「…やはり君は留守番だな」
煉獄は片手で顔を覆うとそう告げた。紗雪が慌てて立ち上がると煉獄の腕に縋る。
「そんな!ついて行きます!!」
「頼む!俺が任務に集中出来ない!!」
柱としてあるまじき台詞だが、煉獄の正直な気持ちだった。任務中、紗雪の顔を見るたび今見た姿がチラつくなんて耐えられる気がしない。煉獄は紗雪のワイシャツに手を伸ばすとボタンを上まで止めた。
「君の鎹鴉は飛ぶのが速い。何かそちらでも分かったことがあれば知らせてくれ」
情報収集は無限列車まで行かなくとも出来る。紗雪は詰襟の隊服を着て羽織を着ると頷いた。自分の我儘を通して煉獄を困らせる訳にはいかない。
「わかりました」
「うむ!では後を頼むぞ紗雪!」
羽織を翻し歩いて行く煉獄の後ろ姿をじっと見送る紗雪だった。