本編
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ばささっ!
鎹鴉の紅が紗雪の肩に舞い降りた。その足には手紙が付けられている。紗雪は紅の言葉を聞きながら喉をかいてやると手紙を外した。
(師範は最近筆まめだ)
煉獄の予定が書かれた簡潔な手紙に目を通す。煉獄が買ってくれた万年筆を取り出すと紗雪は自分の予定を簡単に書き記した。
「これを師範に届けたら少しお休み」
「紅届ケル。椎名ノ手紙届ケル」
紗雪の頬に頭を擦りつけると紅は夜空に飛び立った。煉獄は最近こうしてマメに手紙を寄越す。大抵は事務的な連絡事項だが最後には必ず紗雪の体を気遣う言葉が添えられており、紗雪をむず痒い気持ちにさせる。
(まぁ、私も似たようなものか)
自分の報告事項にちょっとだけ私信を乗せる。その時折思いついた事を書いているので内容はまちまちだ。
「さて、お仕事しますか」
黒くそびえる那田蜘蛛山を見上げると紗雪は気合を入れた。もう冨岡や胡蝶、カナヲが入ったと聞くのであまり出番はないだろうが、お呼びがかかっているのだから行くしか無い。
「一番厄介そうなのはあっちか」
鬼の気配を探りながら紗雪は山の中へ足を踏み入れた。倒れている隊士の中で息のある者の手当てをしながら先を進む。
「じゃあ後は宜しくお願いします」
「畏まりました」
腕を無くした隊士の処置を済ませると走り出す。戦闘は止んだようだがおかしな気配が一つある。紗雪はグンと足を速めるとその場にたどり着いた。カナヲが小さな少女に刀を向けている。
「あー!あー!あー!」
紗雪は慌てて少女とカナヲの間に割って入った。刀を向けてくるカナヲに両手を上げて無抵抗を示す。
「椎名、どいて」
「凄いはっきり喋ってくれて嬉しい限りです!でもちょっと待ちましょうかカナヲちゃん!」
「鬼を斬るの。どいて」
「凄いはっきり言いますね!?あれ?伝令を受けてるの私だけですかね!?」
刀を向けてくるカナヲに必死で訴える。その後ろでグッタリしている市松模様の羽織の隊士も気にかかる。
「向こうの彼はどうしましたかね!?生きてます!?」
「知らない」
「知らない!?」
ひぃぃ…と紗雪は顔を引き攣らせた。確かに鬼殺の邪魔は隊律違反だがこの状況でカナヲのような美少女に無表情で刀を構えられるのは怖すぎる。
じり…とにじり寄られ紗雪の背中を冷や汗が流れた。
「伝令!伝令!!炭治郎・禰󠄀豆子、両名ヲ拘束!!本部ヘ連レ帰ルべシ!!」
「!」
鎹鴉の伝令にカナヲがピタリと動きを止めた。ほっと胸を撫で下ろす紗雪と鎹鴉を交互に見る。
「炭治郎、額ニ傷アリ!竹ヲ噛ンダ鬼禰󠄀豆子!!」
「………」
カナヲは刀を下げるとだらだらと汗を流した。紗雪の顔を見るとギュッと目を閉じる。
「………ご、ごめ」
「カナヲちゃん待って待って。謝らないで大丈夫です。たまたま私の鎹鴉の伝令が早かっただけですから」
煉獄の手紙を届けながら伝令もいの一番とは紅はなかなか優秀な鎹鴉なのかもしれない。紗雪はそんな事を思いながらカナヲを慰めた。
「それから」
くるりと後ろを振り返る。紗雪は隠達が遠巻きにしている禰󠄀豆子の前にしゃがみ込んだ。カナヲや隠達が固唾を呑んで見守る。
「禰󠄀豆子ちゃん?」
「むー」
尋ねればきちんと答えが返ってくる。紗雪は一つ頷くと隠に箱を持ってきてもらった。
「鎹鴉の伝令を聞いてましたね?君はお兄ちゃんとお館様の所に行かなくちゃいけません」
箱を地面に置くと戸を開ける。
「行くのに時間がかかるし、もうすぐ夜明けです。この中に入ってくれますか?」
「む」
素直に頷く禰󠄀豆子の頭を紗雪は撫でた。鬼なのはわかっているが、どうにも邪気がなくて嫌という気持ちが湧いてこない。
「良い子ですね」
微笑んでそう言えば禰󠄀豆子はてちてち歩いて箱の中に収まった。蓋を閉めようとする紗雪の手を捕まえる。
「椎名っ」
声を上げるカナヲを紗雪は手をあげて制した。禰󠄀豆子が捕まえた紗雪の手を自分の頭に持っていく。
(撫でろって事か。まるで小さな子供だ)
紗雪は禰󠄀豆子の頭を優しく何度も撫でた。
「今から行く所で君とお兄ちゃんは大変な目に遭うかもしれません。辛いかもしれないけど、君がお兄ちゃんを守るんですよ」
「むー」
紗雪は今度こそ蓋を閉めると箱を隠に引き渡した。縛り上げられている炭治郎の方へ向かう。
「ちょっとだけ待ってください」
紗雪は炭治郎の状態を確認した。あちこち切り傷が酷い上に顎が腫れている。
(このまま運ばれるって事だよね…それは痛そう)
見える所だけでもと紗雪は炭治郎の顔や手に薬を塗った。鎮痛薬を首から注射する。
「あの…それは?」
「運ばれてる最中に痛みで目を覚ますのは可哀想なので。少しはマシだと思いますよ」
隠の問いに答えると紗雪は注射の後に白いテープを貼った。胡蝶が見れば簡易的に処置したことに気付いてくれるだろう。
「ではお願いします」
運ばれていく炭治郎と禰󠄀豆子を見送ると紗雪はため息をついた。
(柱合会議だって師範の手紙に書いてあったよな…あの子達、あの場所に連れてかれるのか)
客分扱いだった自分でさえ中々のプレッシャーを感じた事を思い出し、紗雪は心の中で炭治郎と禰󠄀豆子に手を合わせるのだった。
鎹鴉の紅が紗雪の肩に舞い降りた。その足には手紙が付けられている。紗雪は紅の言葉を聞きながら喉をかいてやると手紙を外した。
(師範は最近筆まめだ)
煉獄の予定が書かれた簡潔な手紙に目を通す。煉獄が買ってくれた万年筆を取り出すと紗雪は自分の予定を簡単に書き記した。
「これを師範に届けたら少しお休み」
「紅届ケル。椎名ノ手紙届ケル」
紗雪の頬に頭を擦りつけると紅は夜空に飛び立った。煉獄は最近こうしてマメに手紙を寄越す。大抵は事務的な連絡事項だが最後には必ず紗雪の体を気遣う言葉が添えられており、紗雪をむず痒い気持ちにさせる。
(まぁ、私も似たようなものか)
自分の報告事項にちょっとだけ私信を乗せる。その時折思いついた事を書いているので内容はまちまちだ。
「さて、お仕事しますか」
黒くそびえる那田蜘蛛山を見上げると紗雪は気合を入れた。もう冨岡や胡蝶、カナヲが入ったと聞くのであまり出番はないだろうが、お呼びがかかっているのだから行くしか無い。
「一番厄介そうなのはあっちか」
鬼の気配を探りながら紗雪は山の中へ足を踏み入れた。倒れている隊士の中で息のある者の手当てをしながら先を進む。
「じゃあ後は宜しくお願いします」
「畏まりました」
腕を無くした隊士の処置を済ませると走り出す。戦闘は止んだようだがおかしな気配が一つある。紗雪はグンと足を速めるとその場にたどり着いた。カナヲが小さな少女に刀を向けている。
「あー!あー!あー!」
紗雪は慌てて少女とカナヲの間に割って入った。刀を向けてくるカナヲに両手を上げて無抵抗を示す。
「椎名、どいて」
「凄いはっきり喋ってくれて嬉しい限りです!でもちょっと待ちましょうかカナヲちゃん!」
「鬼を斬るの。どいて」
「凄いはっきり言いますね!?あれ?伝令を受けてるの私だけですかね!?」
刀を向けてくるカナヲに必死で訴える。その後ろでグッタリしている市松模様の羽織の隊士も気にかかる。
「向こうの彼はどうしましたかね!?生きてます!?」
「知らない」
「知らない!?」
ひぃぃ…と紗雪は顔を引き攣らせた。確かに鬼殺の邪魔は隊律違反だがこの状況でカナヲのような美少女に無表情で刀を構えられるのは怖すぎる。
じり…とにじり寄られ紗雪の背中を冷や汗が流れた。
「伝令!伝令!!炭治郎・禰󠄀豆子、両名ヲ拘束!!本部ヘ連レ帰ルべシ!!」
「!」
鎹鴉の伝令にカナヲがピタリと動きを止めた。ほっと胸を撫で下ろす紗雪と鎹鴉を交互に見る。
「炭治郎、額ニ傷アリ!竹ヲ噛ンダ鬼禰󠄀豆子!!」
「………」
カナヲは刀を下げるとだらだらと汗を流した。紗雪の顔を見るとギュッと目を閉じる。
「………ご、ごめ」
「カナヲちゃん待って待って。謝らないで大丈夫です。たまたま私の鎹鴉の伝令が早かっただけですから」
煉獄の手紙を届けながら伝令もいの一番とは紅はなかなか優秀な鎹鴉なのかもしれない。紗雪はそんな事を思いながらカナヲを慰めた。
「それから」
くるりと後ろを振り返る。紗雪は隠達が遠巻きにしている禰󠄀豆子の前にしゃがみ込んだ。カナヲや隠達が固唾を呑んで見守る。
「禰󠄀豆子ちゃん?」
「むー」
尋ねればきちんと答えが返ってくる。紗雪は一つ頷くと隠に箱を持ってきてもらった。
「鎹鴉の伝令を聞いてましたね?君はお兄ちゃんとお館様の所に行かなくちゃいけません」
箱を地面に置くと戸を開ける。
「行くのに時間がかかるし、もうすぐ夜明けです。この中に入ってくれますか?」
「む」
素直に頷く禰󠄀豆子の頭を紗雪は撫でた。鬼なのはわかっているが、どうにも邪気がなくて嫌という気持ちが湧いてこない。
「良い子ですね」
微笑んでそう言えば禰󠄀豆子はてちてち歩いて箱の中に収まった。蓋を閉めようとする紗雪の手を捕まえる。
「椎名っ」
声を上げるカナヲを紗雪は手をあげて制した。禰󠄀豆子が捕まえた紗雪の手を自分の頭に持っていく。
(撫でろって事か。まるで小さな子供だ)
紗雪は禰󠄀豆子の頭を優しく何度も撫でた。
「今から行く所で君とお兄ちゃんは大変な目に遭うかもしれません。辛いかもしれないけど、君がお兄ちゃんを守るんですよ」
「むー」
紗雪は今度こそ蓋を閉めると箱を隠に引き渡した。縛り上げられている炭治郎の方へ向かう。
「ちょっとだけ待ってください」
紗雪は炭治郎の状態を確認した。あちこち切り傷が酷い上に顎が腫れている。
(このまま運ばれるって事だよね…それは痛そう)
見える所だけでもと紗雪は炭治郎の顔や手に薬を塗った。鎮痛薬を首から注射する。
「あの…それは?」
「運ばれてる最中に痛みで目を覚ますのは可哀想なので。少しはマシだと思いますよ」
隠の問いに答えると紗雪は注射の後に白いテープを貼った。胡蝶が見れば簡易的に処置したことに気付いてくれるだろう。
「ではお願いします」
運ばれていく炭治郎と禰󠄀豆子を見送ると紗雪はため息をついた。
(柱合会議だって師範の手紙に書いてあったよな…あの子達、あの場所に連れてかれるのか)
客分扱いだった自分でさえ中々のプレッシャーを感じた事を思い出し、紗雪は心の中で炭治郎と禰󠄀豆子に手を合わせるのだった。