本編
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「やぁ、よく来てくれたね」
顔の上半分が爛れた男にそう言われて紗雪は立ち尽くした。夜半から時間をかけておんぶで連れてこられた所はとんでも無く豪華な日本家屋で、煉獄の先導で庭に出た紗雪は呆気に取られていた。陽の光に照らされ綺麗に整えられた庭木がよく映えている。そこに煉獄同様不可思議な格好をした者が八名。座敷には着物を品良く着ている先程声をかけて来た男が座っていた。
「杏寿郎、お客様を連れて来てくれてありがとう。ご苦労だったね」
男の声掛けに煉獄が膝をついて頭を垂れた。
「ははっ!」
(えぇー?時代劇…)
他の八名も全員膝をついている。紗雪が反応に困りそちらを見ると、何人かは紗雪を睨んでいた。
(いや、意味が…あぁ、そうか)
他の者と同じように膝を着こうと紗雪が身を屈めると、着物の男がそれを止めた。
「君はお客様だ。膝をつく必要はないよ。それより名前を聞かせて貰えるかな」
紗雪はピッと姿勢を正すと右手を上げて敬礼した。
「陸上自衛隊所属第二層紗雪椎名と申します」
もちろん違う。人に問われた時はこう返事するよう言われているのだ。それに一応国の機関なので間違ってはいない。
着物の男はちょっと面白そうに笑った。
「そう、私は産屋敷耀哉と言う。彼ら鬼殺隊の取りまとめをさせてもらっている者だよ」
(また出た。鬼殺隊)
聞いたことのない組織である。日本にそんな組織があったとは驚きだ。
(そもそもここは本当に日本なのかな…でもめちゃ日本語だし着物とか建物とか…)
紗雪はポーカーフェイスを装いながら頭を巡らせた。これで敵が紗雪一人を騙すために用意した罠なら逆に凄い。
(無いな)
そもそも紗雪を騙す理由がない。捕まえたければとっとと捕まえて尋問でも何でもすればいい話だ。
「今回椎名に来てもらったのは」
産屋敷が手を挙げると隠が幾つかの迷彩リュックを運んできた。見覚えのあるそれらに紗雪の眉が一瞬動く。
「私達にはこれらが何なのか想像もつかないんだ。良ければ君に教えて貰えたらと思ってね。君も私に聞きたいことがあるだろう?」
「………申し訳ありませんがそれの基盤などは破壊しました。もう使える状態ではありません」
ざわりと周囲の空気が冷えて紗雪は生唾を飲み込んだ。傷だらけの男から放たれる殺意が肌に刺さる。紗雪が死を覚悟していると煉獄が口を開いた。
「恐れながらお館様!紗雪がそれを壊すのを俺も見ていました!!止めなかった俺も同罪です!!」
「違います!他の軍の手に渡らないよう通信機を壊すのは決まりなんです!!煉獄さんはこれが何なのか分かってないはずです!」
叫んだ瞬間、紗雪の腕は後ろに回り地面に組み伏されていた。首に蛇を巻いた男に上から押さえつけられる。
「っ!」
「お館様に声を荒げるとは礼儀知らずめ。お前のような者がお館様と言葉を交わせるだけでも有難いと思え。さぁ、早くお館様の質問にお答えするのだ愚図が」
「小芭内」
産屋敷の呼びかけに伊黒はパッと紗雪から離れると膝をついた。
「申し訳ございません」
「………」
紗雪は痛む腕をさすりながら立ち上がった。全く動きの見えなかった伊黒を警戒する。
(違うか)
紗雪は思った。自分の目には追えない動きをする相手なのだ。警戒するだけ無駄と言うもの。そしてそれは他のメンバーにも当てはまるだろう。
(知りたいことがあるのは確かだしね)
ジワジワと固まりつつある疑惑をはっきりさせる為に紗雪は産屋敷に話をする事に決めた。右手を軽く握ると胸の上に置く。
「改めまして内閣府特殊部隊部隊名紫に所属しています。紗雪椎名と申します」
「どうぞ椎名。こちらへ」
産屋敷に座敷へと手招かれて足を進みかけた紗雪はしかしその場で止まった。煉獄が後ろから顔を覗かせる。
「どうした!紗雪!!」
「いや、装備品外してからでもいいですか?それと…」
紗雪は自分の体を見下ろした。埃だらけの泥まみれでお世辞にも綺麗とは言えない。紗雪の視線の意味に気付いた煉獄が大声で言い放った。
「泥まみれだな!!」
(ドストレート!!)
戦場にいる分には気にならないが、ここはどこも手入れが行き届いていて気になる。煉獄の容赦のない台詞に紗雪は思わず胸を押さえた。
「煉獄さん、女性にそれは流石に」
蝶の髪飾りを付けた女性が苦笑交じりに寄ってきた。小柄でふんわりとした雰囲気の美少女だ。
「胡蝶!何かおかしな事を俺は言っただろうか!」
「正直に物を申せばいいと言う訳ではありませんよ?」
「そうか!!」
(あ、これは通じてないな)
紗雪は諦めると寄ってきた隠に装備品を渡すべく腰のベルトを外した。ぎょっとする面々を余所にホルスターから拳銃を取り出すと弾倉を取り出し安全装置をかける。ナイフがケースから外れない事を確認すると隠の手に乗せた。その数は3本。
それから医薬品の入ったウェストポーチにワイヤーの仕込がある手袋、防弾仕様のベスト、仕込みナイフ付のブーツを脱ぐ。上下迷彩服のみになった紗雪が胡蝶を見た。
「身体検査します?」
「私に言ってくる常識があって安心しました」
「?」
「女性が殿方の前で身に着けているものを外したりするのはちょっと…」
(えー…)
今時?と言う言葉を紗雪は飲み込んだ。ここではそうなのだと思うしかない。ようやく座敷に上がると紗雪は産屋敷と向かい合った。
顔の上半分が爛れた男にそう言われて紗雪は立ち尽くした。夜半から時間をかけておんぶで連れてこられた所はとんでも無く豪華な日本家屋で、煉獄の先導で庭に出た紗雪は呆気に取られていた。陽の光に照らされ綺麗に整えられた庭木がよく映えている。そこに煉獄同様不可思議な格好をした者が八名。座敷には着物を品良く着ている先程声をかけて来た男が座っていた。
「杏寿郎、お客様を連れて来てくれてありがとう。ご苦労だったね」
男の声掛けに煉獄が膝をついて頭を垂れた。
「ははっ!」
(えぇー?時代劇…)
他の八名も全員膝をついている。紗雪が反応に困りそちらを見ると、何人かは紗雪を睨んでいた。
(いや、意味が…あぁ、そうか)
他の者と同じように膝を着こうと紗雪が身を屈めると、着物の男がそれを止めた。
「君はお客様だ。膝をつく必要はないよ。それより名前を聞かせて貰えるかな」
紗雪はピッと姿勢を正すと右手を上げて敬礼した。
「陸上自衛隊所属第二層紗雪椎名と申します」
もちろん違う。人に問われた時はこう返事するよう言われているのだ。それに一応国の機関なので間違ってはいない。
着物の男はちょっと面白そうに笑った。
「そう、私は産屋敷耀哉と言う。彼ら鬼殺隊の取りまとめをさせてもらっている者だよ」
(また出た。鬼殺隊)
聞いたことのない組織である。日本にそんな組織があったとは驚きだ。
(そもそもここは本当に日本なのかな…でもめちゃ日本語だし着物とか建物とか…)
紗雪はポーカーフェイスを装いながら頭を巡らせた。これで敵が紗雪一人を騙すために用意した罠なら逆に凄い。
(無いな)
そもそも紗雪を騙す理由がない。捕まえたければとっとと捕まえて尋問でも何でもすればいい話だ。
「今回椎名に来てもらったのは」
産屋敷が手を挙げると隠が幾つかの迷彩リュックを運んできた。見覚えのあるそれらに紗雪の眉が一瞬動く。
「私達にはこれらが何なのか想像もつかないんだ。良ければ君に教えて貰えたらと思ってね。君も私に聞きたいことがあるだろう?」
「………申し訳ありませんがそれの基盤などは破壊しました。もう使える状態ではありません」
ざわりと周囲の空気が冷えて紗雪は生唾を飲み込んだ。傷だらけの男から放たれる殺意が肌に刺さる。紗雪が死を覚悟していると煉獄が口を開いた。
「恐れながらお館様!紗雪がそれを壊すのを俺も見ていました!!止めなかった俺も同罪です!!」
「違います!他の軍の手に渡らないよう通信機を壊すのは決まりなんです!!煉獄さんはこれが何なのか分かってないはずです!」
叫んだ瞬間、紗雪の腕は後ろに回り地面に組み伏されていた。首に蛇を巻いた男に上から押さえつけられる。
「っ!」
「お館様に声を荒げるとは礼儀知らずめ。お前のような者がお館様と言葉を交わせるだけでも有難いと思え。さぁ、早くお館様の質問にお答えするのだ愚図が」
「小芭内」
産屋敷の呼びかけに伊黒はパッと紗雪から離れると膝をついた。
「申し訳ございません」
「………」
紗雪は痛む腕をさすりながら立ち上がった。全く動きの見えなかった伊黒を警戒する。
(違うか)
紗雪は思った。自分の目には追えない動きをする相手なのだ。警戒するだけ無駄と言うもの。そしてそれは他のメンバーにも当てはまるだろう。
(知りたいことがあるのは確かだしね)
ジワジワと固まりつつある疑惑をはっきりさせる為に紗雪は産屋敷に話をする事に決めた。右手を軽く握ると胸の上に置く。
「改めまして内閣府特殊部隊部隊名紫に所属しています。紗雪椎名と申します」
「どうぞ椎名。こちらへ」
産屋敷に座敷へと手招かれて足を進みかけた紗雪はしかしその場で止まった。煉獄が後ろから顔を覗かせる。
「どうした!紗雪!!」
「いや、装備品外してからでもいいですか?それと…」
紗雪は自分の体を見下ろした。埃だらけの泥まみれでお世辞にも綺麗とは言えない。紗雪の視線の意味に気付いた煉獄が大声で言い放った。
「泥まみれだな!!」
(ドストレート!!)
戦場にいる分には気にならないが、ここはどこも手入れが行き届いていて気になる。煉獄の容赦のない台詞に紗雪は思わず胸を押さえた。
「煉獄さん、女性にそれは流石に」
蝶の髪飾りを付けた女性が苦笑交じりに寄ってきた。小柄でふんわりとした雰囲気の美少女だ。
「胡蝶!何かおかしな事を俺は言っただろうか!」
「正直に物を申せばいいと言う訳ではありませんよ?」
「そうか!!」
(あ、これは通じてないな)
紗雪は諦めると寄ってきた隠に装備品を渡すべく腰のベルトを外した。ぎょっとする面々を余所にホルスターから拳銃を取り出すと弾倉を取り出し安全装置をかける。ナイフがケースから外れない事を確認すると隠の手に乗せた。その数は3本。
それから医薬品の入ったウェストポーチにワイヤーの仕込がある手袋、防弾仕様のベスト、仕込みナイフ付のブーツを脱ぐ。上下迷彩服のみになった紗雪が胡蝶を見た。
「身体検査します?」
「私に言ってくる常識があって安心しました」
「?」
「女性が殿方の前で身に着けているものを外したりするのはちょっと…」
(えー…)
今時?と言う言葉を紗雪は飲み込んだ。ここではそうなのだと思うしかない。ようやく座敷に上がると紗雪は産屋敷と向かい合った。