本編
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(もう行かねば)
霧の晴れた杉林を見つめたまま煉獄は立ち尽くしていた。鬼の気配の消えた今、もうここに用はないと分かっているのに動けない。
(何と女々しい)
強く目を閉じる。
ザリ…。
「……?」
近づいてくる足音に煉獄は目を凝らした。暗い杉林の中を紗雪が歩いてくる。煉獄は息を飲んだ。
(都合の良い夢でも見ているのか)
そんな事を考える煉獄の少し手前で止まった紗雪は、手に持っていた鬼の服を地面に落とした。
「鬼殺完了しました」
「……紗雪」
(夢ではない)
では何故ここに居るのか?煉獄は唖然として紗雪を見つめた。紗雪も苦い顔で煉獄を見つめ返す。
「紗雪、何故こ…」
「まだ!」
何故こちらに残ったと聞こうとした煉獄の言葉を紗雪は遮った。驚いて言葉を飲み込んだ煉獄を真っ直ぐに見る。
「玖ノ型を使えるようになってません!」
「胡蝶さんの医学書の翻訳だって全部終わってないです!」
「千寿郎さんにエビフライを作る約束もしました!」
紗雪が泣きそうに顔を歪める。
「帰っても誰もいません!」
「紫はみんな死んだんです!」
「ど…どうしてここに居ろって言ってくれないんですか!!」
堪え切れず涙が紗雪の頬を伝った。感情がぐちゃぐちゃで抑えられない。紗雪は何度も涙を拭うと煉獄に背を向けた。
「すいません、何を言って…!」
煉獄は紗雪を引き寄せると抱き締めた。胸の中で罪悪感と歓喜がごちゃ混ぜだ。自分の感情を持て余しながら、煉獄は何とか言葉を絞り出した。
「君は俺の…自慢の継子だ」
「……だっ、たら…」
「君は100年後の人間だ。こことは様々なことが違うだろう。それで君が苦労しているのも見てきた。だから帰れるならばきっと帰りたいだろうと…そう思ったのだ」
煉獄は紗雪の髪に頬を寄せると抱き締める腕に力を込めた。
「家に戻って千寿郎の顔を見れば、君が思い止まるかと愚かな事を考えたりもしたが…」
「え?え?ちょ、ちょっと待って下さい」
紗雪はジタバタもがくと煉獄の腕の中から顔を出した。目尻に溜まっている涙を煉獄が拭う。
「家に一度寄るってそう言う意味ですか!?私てっきり向こうに持って帰る荷物の心配をされたのかと」
「そう…とも取れるのか。俺は家に未練など無いと言う事かと…」
「………」
煉獄と紗雪はしばしポカンとお互いを見つめた。紗雪がははっと気の抜けた笑い声を上げる。
「なんだ!」
なんのてらいもない紗雪の笑みに煉獄の顔にも笑みが浮かぶ。もう一度紗雪を抱き締めると、煉獄はその手を取って歩き出した。
「帰ろう紗雪!俺たちの家へ!!」
「はい!師範!」
しっかりと握ってくれる手の大きさに紗雪はもう一粒だけ涙を落とすと、後は笑って家路に着くのだった。
霧の晴れた杉林を見つめたまま煉獄は立ち尽くしていた。鬼の気配の消えた今、もうここに用はないと分かっているのに動けない。
(何と女々しい)
強く目を閉じる。
ザリ…。
「……?」
近づいてくる足音に煉獄は目を凝らした。暗い杉林の中を紗雪が歩いてくる。煉獄は息を飲んだ。
(都合の良い夢でも見ているのか)
そんな事を考える煉獄の少し手前で止まった紗雪は、手に持っていた鬼の服を地面に落とした。
「鬼殺完了しました」
「……紗雪」
(夢ではない)
では何故ここに居るのか?煉獄は唖然として紗雪を見つめた。紗雪も苦い顔で煉獄を見つめ返す。
「紗雪、何故こ…」
「まだ!」
何故こちらに残ったと聞こうとした煉獄の言葉を紗雪は遮った。驚いて言葉を飲み込んだ煉獄を真っ直ぐに見る。
「玖ノ型を使えるようになってません!」
「胡蝶さんの医学書の翻訳だって全部終わってないです!」
「千寿郎さんにエビフライを作る約束もしました!」
紗雪が泣きそうに顔を歪める。
「帰っても誰もいません!」
「紫はみんな死んだんです!」
「ど…どうしてここに居ろって言ってくれないんですか!!」
堪え切れず涙が紗雪の頬を伝った。感情がぐちゃぐちゃで抑えられない。紗雪は何度も涙を拭うと煉獄に背を向けた。
「すいません、何を言って…!」
煉獄は紗雪を引き寄せると抱き締めた。胸の中で罪悪感と歓喜がごちゃ混ぜだ。自分の感情を持て余しながら、煉獄は何とか言葉を絞り出した。
「君は俺の…自慢の継子だ」
「……だっ、たら…」
「君は100年後の人間だ。こことは様々なことが違うだろう。それで君が苦労しているのも見てきた。だから帰れるならばきっと帰りたいだろうと…そう思ったのだ」
煉獄は紗雪の髪に頬を寄せると抱き締める腕に力を込めた。
「家に戻って千寿郎の顔を見れば、君が思い止まるかと愚かな事を考えたりもしたが…」
「え?え?ちょ、ちょっと待って下さい」
紗雪はジタバタもがくと煉獄の腕の中から顔を出した。目尻に溜まっている涙を煉獄が拭う。
「家に一度寄るってそう言う意味ですか!?私てっきり向こうに持って帰る荷物の心配をされたのかと」
「そう…とも取れるのか。俺は家に未練など無いと言う事かと…」
「………」
煉獄と紗雪はしばしポカンとお互いを見つめた。紗雪がははっと気の抜けた笑い声を上げる。
「なんだ!」
なんのてらいもない紗雪の笑みに煉獄の顔にも笑みが浮かぶ。もう一度紗雪を抱き締めると、煉獄はその手を取って歩き出した。
「帰ろう紗雪!俺たちの家へ!!」
「はい!師範!」
しっかりと握ってくれる手の大きさに紗雪はもう一粒だけ涙を落とすと、後は笑って家路に着くのだった。